執行猶予中の犯罪(再犯)|必ず逮捕・起訴されるのか
執行猶予中に再び罪を犯してしまった場合、検察官や裁判官からの印象が悪くなるのは必然です。
しかし、「絶対に逮捕・起訴される」「執行猶予は確実に取り消されてしまう」のかというと、そのようなことはありません。
確かに、再犯で再度の執行猶予を受けるハードルは高いものです。しかし、再犯の内容や事件の状況、適切な弁護活動によって、結果が大きく変わる可能性があります。
本コラムでは、執行猶予中の再犯がどのように扱われるのか、わかりやすく解説します。
執行猶予中に犯罪を起こしてしまったら、一人で悩まず、お早めに弁護士にご相談ください。
1.執行猶予とは?
執行猶予とは、刑事事件を犯した被告人に有罪判決が下された際、刑の執行を一定期間待ってもらえる制度のことです。期間中に再犯せず無事に期間を経過したときには、刑の言い渡しの効力がなくなり、実際には刑罰を受けることがなくなります。
執行猶予付き有罪判決は、「被告人を1年6月の拘禁刑に処する」「この判決確定の日から3年間、刑の執行を猶予する」という形で言い渡されます。
この例では、執行猶予中の3年間、新たな罪を犯さずに過ごすことができれば、「1年6月の拘禁刑」という刑の言い渡しの効力が消滅します。
執行猶予期間中は、何の制約もなく自由に生活を送ることができます。
※ただし、保護観察がついた場合には、保護観察官との面会などのルールは守る必要があります。
刑法25条1項では、言い渡される刑罰が、「3年以下の自由刑(拘禁刑)」「50万円以下の罰金刑」のいずれかの場合には、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その刑の執行を猶予することができることになっています。
これらを超える刑期の自由刑・超える金額の罰金刑は執行猶予の対象外です。また、拘留、科料も執行猶予の対象外です。
執行猶予が付くか否かは、被疑者それぞれの情状により裁判所の裁量で決まります。
この場合の情状とは、犯行動機・目的・犯行態様・被害程度などといった犯罪行為それ自体に関する情状だけでなく、反省状況・示談成立の有無などといった犯行後の事情も総合します。
その上で、犯情が軽微で、刑の執行を猶予することによって自主的な更生が期待できると判断できる場合に、執行猶予が認められます。
なお、執行猶予といってもあくまで有罪判決ですので、前科はつきます。

[参考記事]
執行猶予とは?執行猶予付き判決後の生活について(仕事、旅行)
2.執行猶予中に罪を犯した場合
(1) 執行猶予が取り消されるケース
執行猶予中に再度罪を犯すと、執行猶予が取り消されて実刑を受ける可能性があります。
具体的には、次の場合に執行猶予が取り消されます(刑法26条)。
- 猶予の期間内に更に罪を犯して拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき
- 猶予の言渡し前に犯した他の罪について拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき
- 猶予の言渡し前に他の罪について拘禁刑以上の刑に処せられたことが発覚したとき
つまり簡単に言えば、執行猶予中に拘禁刑以上の刑を処せられると、一発で執行猶予が取り消されてしまうのです。
逆に言えば、これらの取り消しの要件を満たしていないならば、状況によっては「再度の執行猶予」「執行猶予の維持」を獲得できる可能性はあります。
また、次の場合には、刑の全部の執行猶予を“取り消すことができる”と定められています(刑法26条の2)。
- 猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき
- 第25条の2第1項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いとき
- 猶予の言渡し前に他の罪について拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部の執行を猶予されたことが発覚したとき
(2) 執行猶予が取り消された後の刑罰
執行猶予が取り消された場合、
①執行猶予が取り消される原因となった新たな犯罪
②執行猶予が取り消される前の最初の犯罪
の2つの刑罰を合算したものが、最終的に受ける刑罰になります。
たとえば、拘禁刑1年執行猶予3年と言い渡されたのち、執行猶予期間中に拘禁刑3年の実刑判決を受けたとします。
すると、新たに受けた拘禁刑3年と、もともとの拘禁刑1年の刑罰が合算され、合計4年間、服役することになります。
執行猶予中の犯罪だということが重視され、新たな罪についても厳しい判断(多くの場合は実刑判決)がなされるでしょう。
(3) 再度の執行猶予を得られる可能性
執行猶予中に罪を犯して有罪判決を宣告される場合でも、「情状に特に酌量すべきものがあるとき(刑法第25条2項)」には、もう一度だけ執行猶予付き判決の言い渡しができる、と定められています。これが「再度の執行猶予」です。
再度の執行猶予判決の場合には、執行猶予は保護観察付きとなります。
しかし、一度執行猶予としてやり直す機会を与えられたにも関わらず、再び罪を犯してしまったわけですから、この規定によって再度の執行猶予付きの判決を受けることは容易ではありません。
また、再度の執行猶予を言い渡すには、初回の執行猶予判決で保護観察に付されておらず、言い渡す拘禁刑の期間が1年以下の場合に限定されています。初回と異なり、罰金刑は再度の執行猶予の対象外です。
【前科者の執行猶予判決について】
なお、執行猶予の期間が終了しているものの「前科」のある被告人に執行猶予付きの判決をするには、執行猶予に必要な基本条件に加えて、以下のどれかの場合に該当する必要があります。
・前科が罰金刑・拘留・科料であった場合
・前科が執行猶予付きの判決で、その執行猶予期間が経過している場合
・前科が実刑判決で、刑の執行の終了(または刑の免除)の日から5年が経過している場合
3.執行猶予中に逮捕されたらどうするべきか
このように、執行猶予中に新たに逮捕・起訴されると、執行猶予が取り消され、元の刑と新しい刑を合わせて長期で服役することになる可能性があります。
執行猶予中に犯罪を犯して警察に逮捕されてしまったならば、すぐに弁護士に連絡をしてください。
逮捕後72時間以内に勾留が決まるため、この初期段階での対応が極めて重要なのは、初犯でも再犯でも同じです。
弁護士に依頼をすれば、以下のような弁護活動を行ってくれます。
- 取り調べで不利な供述を防ぐためのアドバイス
- 勾留阻止・早期釈放の働きかけ
- 執行猶予取消の回避・不起訴・再度の執行猶予獲得の可能性が高くなる

[参考記事]
刑事事件に強い弁護士の選び方|弁護士選びのポイントとは?
4.まとめ
執行猶予期間中に罪を犯した場合、ふたたび執行猶予判決を受けるためには、①1年以下の拘禁形の言い渡しを受け、②情状に特に酌量すべきものがあるときに限る、と定められています(刑法25条2項本文)。
とは言え、多くのケースでは、執行猶予中の犯罪は「反省していない」と評価されてしまいます。特に、薬物の使用など重大犯罪である場合は、実刑判決を回避することは難しいかもしれません。
しかし、早期に弁護士へ相談して被害者との示談、裁判への対応を適切に行えば、再度の執行猶予判決や不起訴を得られる可能性はあります。
どうか早急に刑事事件を専門とする弁護士にご相談ください。
5.執行猶予に関する実際の質問
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Q.窃盗罪の執行猶予中に万引きをしましたが、再度の執行猶予はつきますか?
私は前歴2件、前科2件(罰金30万と懲役1年執行猶予3年)、いずれも窃盗罪です。執行猶予中(判決から2年半過ぎた頃)に職場の販売店から2万程の商品を持ち出して逮捕されました。
2万円の商品は即時返却され、既に商品として販売している状況です。
示談については担当弁護士が交渉中になります。こちらからは勾留中に書いた謝罪文を提出し、情状証人として夫に出てもらいました。今は反省し二度と犯罪を犯さず真っ当に生きますと誓い、切実に思っている次第です。執行猶予を頂ける可能性はありますでしょうか。
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A.実刑判決の可能性が高いと思われます。
現在、前刑の執行猶予中との理解でコメントさせていただきます。
今回は執行猶予中の前科同種と同種であり、情状も通常のものですから、再度の執行猶予は難しく、実刑判決の可能性が高いと思います。前刑の執行猶予期間が経過した場合でも、執行猶予期間満了から5年以内だと、実刑の可能性が高いと思います。

