盗撮 [公開日]2017年7月20日[更新日]2025年4月18日

盗撮の刑事弁護全般について

盗撮で検挙・逮捕されたら?

1.法の禁止する盗撮とは?

盗撮とは、一般的には無断で人物を動画ないし静止画で撮影することを指します。しかし、その全部について法(法律や条例)が禁止して刑罰の対象となるものではありません。
たとえば、「風景を動画ないし静止画で撮影したところ、その映像にたまたま人物が映っていた場合」には法の禁止する盗撮にはなりません。

では、路上や商業施設などで特定の人物を単独ないし複数人を、無断で動画ないし静止画で撮影した場合はどうでしょうか。
この場合には、法の禁止する盗撮に該当します。

何も、女性のスカートの中の下着をエスカレーターの下から撮影する行為や、電車内で向かいに座っている女性の下着を撮影する行為、女子トイレや女性用更衣室に入り女性の下着姿を撮影する行為などだけが法の禁止する盗撮ではありません。

今まで検挙され当所が弁護した盗撮では、商業施設の中で特定の女性を離れたところから撮影した場合も盗撮として検挙され、その時は弁護士に依頼せずに示談しなかったため罰金刑を科された方の弁護も担当したことがあります。
電車内で、やはり少し離れたところから特定の女性を撮影した場合に検挙された方もいます。

上記の法に反する撮影行為以外にも、盗撮のためにスマートフォンやデジカメをトイレや更衣室などに設置する行為も、動画ないし静止画で撮影による盗撮行為と同じく盗撮の一種として処罰されます。

2.盗撮を禁止する法にはどのようなものがある?

盗撮を禁止する法には、各都道府県の制定する迷惑行為禁止条例(都道府県で名称は異なりますが、ここでは迷惑行為防止条例と呼びます)と性的姿態撮影等処罰法(略称)があります。
性的姿態撮影等処罰法の正式名称は「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」と言います。同法律は2023年(令和5年)7月13日に施行されました。

性的姿態撮影等処罰法の処罰対象となる行為は、以下の通りです。

  1. 正当な理由なく、人の性的姿態などをひそかに撮影する(盗撮する)行為
  2. 同意できない状態の被害者を撮影する行為
  3. 被害者を誤信させて撮影する行為
  4. 16歳未満の人の性的姿態などを撮影する行為
    (および1から4の行為の未遂行為)
  5. 撮影行為により生成された記録を提供する行為
  6. 提供する目的で保管する行為
  7. ライブストリーミングにより配信する行為
  8. 配信された映像を記録する行為

同法の禁止する盗撮行為の典型は、「エスカレーターに乗って下から前にいる女性のスカートの中・下着を撮影する行為ないし撮影しようとした未遂行為」「電車内で前に座っている女性のスカートの中の下着を撮影しようとする行為ないし撮影しようとした未遂行為」「女性用更衣室や女性用トイレにスマートフォンや小型デジカメなどを設置して女性の下着姿を撮影する行為ないし撮影しようとした未遂行為」です。

これに対して、およそ女性の下着姿以外の女性(正確には男女問いません)を無断で撮影しようとする行為は、各都道府県の迷惑行為防止条例で禁止されています。

3.禁止されている盗撮行為を行った場合の罰則はどうなのか?

性的姿態撮影等処罰法違反の刑罰の法定刑は「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」となっています。

それに対して各都道府県の迷惑行為防止条例違反の刑罰の法定刑は都道府県によって異なりますが、多くは、常習でない場合は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」、常習の場合は、「2年以下の懲役または100万円以下の罰金」の法定刑となっています。詳しく知りたい方は各都道府県の迷惑行為防止条例でご確認ください。

4.盗撮の厳罰化(法定刑の厳罰化と警察、検察による運用の厳罰化)

2023年(令和5年)7月13日に性的姿態撮影等処罰法が施行される前は、盗撮を処罰する法は各都道府県の迷惑行為防止条例しかありませんでした。
しかし、悪質な盗撮が後を絶たないことから、上記の性的姿態撮影等処罰法を制定・施行して、従来の条例違反の盗撮の「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」(常習でない場合)から、「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」となり、厳罰化されました。

盗撮行為のほとんどは女性の下着を撮影するものですから、性的姿態撮影等処罰法に違反することになり、長期は従来の1年から3年に厳罰化され、罰金も従来の100万円から300万円へと厳罰化されることになりました。

警察、検察の同法の運用についても、同法制定施行以前は盗撮で逮捕される事案は特殊な方法(靴に盗撮用の小型カメラを取り付けるなど)での盗撮やストーカー的盗撮などに限られていましたが、同法施行以後は性的姿態撮影等処罰法に違反する盗撮のかなりの件数が逮捕されるようになりました。

逮捕されれば、少なくとも3日間は警察の留置場で身体拘束されるため、無断欠勤として会社を解雇される可能性があります。さらに、勾留されれば通常10日間警察の留置場で身体拘束され、多くは会社に発覚し懲戒解雇、あるいは学校に発覚し退学処分となります。

盗撮は法定刑の厳罰化だけでなく、実際の運用においても事実上の厳罰化(逮捕などの身体拘束)となっています。

性的姿態撮影等処罰法の施行以来、当事務所でも逮捕など身体拘束を受けて、釈放後に相談に来られ弁護を依頼される方が増えております。

5.盗撮の刑事弁護

盗撮の刑事弁護の在り方ですが、盗撮の被疑者が逮捕された場合には通常10日間に及ぶ勾留を阻止することが重要になります。

弁護士が検察官に意見書を提出して勾留請求しないよう折衝し、検察官が勾留請求を裁判所にした場合には裁判所向けの意見書を作成して勾留決定しないように折衝する弁護活動となります。
もし裁判所が勾留決定をした場合には、裁判所に対して「準抗告」という、勾留決定の取り消し→釈放を求める裁判(不服申立)を提起します。(※準抗告認容→勾留決定取り消しとなる可能性は一般的には厳しいものと受け止めてください。)

勾留を阻止した場合は処分まで時間的余裕ができ、示談交渉への取り組みも多少時間がかかっても支障はありません。しかし、勾留を阻止できなかった場合には(盗撮では通常犯罪の性質からさらに10日間勾留を延長することはないでしょうから)当初の勾留期間10日間で示談を成立させないとならなくなり、示談できないと初犯でも罰金刑に処せられ前科がつくことになります。

罰金でも前科ですから、その後の人生に大きな悪影響を及ぼします。仕事で海外に出張しようとする場合に国によってはビザが下りず、そのことで会社に盗撮での罰金前科が知られることがあり、会社から懲戒解雇となる恐れがあります。
過去にそのような事情がある方から盗撮の弁護依頼を受けたことがあり、被害者は多額の示談金を提示させてもらいましたが、示談には応じていただけず、罰金前科がついたこともあります。

示談とともに有力な弁護手段としては、盗撮は性的依存症の一種であることから、心療内科、特に性犯罪を中心とした性的依存症の治療に力を入れているクリニックの治療を受けることです。本人が同種再犯を犯さないようにするためにも同治療は極めて有用と考えております。

弁護士泉義孝が弁護依頼を受けた事案の中には、示談を取り付けられなかったものの、盗撮の性的依存症の治療を専門クリニックできちんと受け、また、高額の贖罪寄付を行うなどし、(被害者の事情も相まってかと思いますが)不起訴処分となった事例もあります。盗撮で検挙された場合には、盗撮弁護経験豊富な弁護士泉義孝にご相談ご依頼ください。

6.検察官の処分

検察官は警察の捜査により収集した各種証拠をもとに刑事処分を下します。

示談が成立していれば、経験上、同種罰金前科が1犯あっても不起訴処分となるでしょう。もっとも、初犯で示談を取り付けられない事案でも、前記のように弁護士泉義孝が不起訴処分を勝ち取ったこともあります。

しかし、性的姿態撮影等処罰法が制定施行され盗撮が厳罰化されたことから、同種罰金前科が2犯ある場合には示談が成立しても不起訴とならず、罰金刑を免れない可能性があると考えています。

さらに、同種前科が2犯以上あり、示談が成立しない場合には、検察官は起訴、公判請求して正式裁判にかけると思われます。

7.終わりに

盗撮は他の犯罪と違って行おうと思えば簡単にできてしまう犯罪ですが、特に盗撮が厳罰化された今日はその代償は極めて大きなものがあります。盗撮は絶対に行ってはなりません。

万が一魔が差すなどして盗撮を行ってしまった場合には、必ず刑事弁護経験豊富な弁護士にご相談ください。
当所では弁護士泉義孝が刑事弁護経験豊富ですので、弁護士探しに迷った時には弁護士泉義孝にぜひご相談、ご依頼ください。

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