ひき逃げ・あて逃げ

ひき逃げ、あて逃げとは?

ひき逃げ

ひき逃げとは、自動車やバイクを運転中に、人を死傷させる交通事故を起こしたにもかかわらず、自動車やバイクを停止させて負傷者の救護や道路上の危険を防止することなく、そのまま事故現場から立ち去った場合に成立する犯罪です。

あて逃げ

あて逃げとは、自動車を物に衝突させて損壊させたにもかかわらず、警察へ報告することなく事故現場からそのまま立ち去った場合に成立する犯罪です。

ひき逃げ、あて逃げの共通点としては、交通事故を起こしたあと、救護や警察への通報を怠った点です。
一方、ひき逃げとあて逃げは交通事故の対象が異なります。ひき逃げの場合は人の死傷が対象である一方、あて逃げの場合は物が対象となります。

ひき逃げ、あて逃げの刑罰

ひき逃げの場合、自動車運転死傷行為処罰法、および道路交通法違反で処罰されます。

交通事故によって相手を怪我させたり死亡させたりした場合、過失運転致死傷罪または危険運転致死傷罪によって処罰されます(関連分野:人身・死亡事故 )。

それに加えて、交通事故を起こしたあと、負傷者の救護や警察への通報を怠ったという点に対する、道路交通法上の「救護義務違反」「報告義務違反」としても処罰されます。

道路交通法上の罰則は以下のとおりです。

救護義務違反
(道路交通法117条2項)
10年以下の懲役又は100万円以下の罰金
報告義務違反
(道路交通法119条1項10号)
3月以下の懲役又は5万円以下の罰金

このように、ひき逃げは「①自動運転死傷行為処罰法(刑法)による規定違反」および「②道路交通法違反」両方の罪が成立することが多く、その場合は「併合罪」となります。

ひき逃げは、一度現場から逃走しているという事情もあり、一般的な交通事故より重く処罰されます。したがって、被害者の怪我の程度が軽く、すでに示談が成立している場合であっても、公判請求され刑事裁判となるケースが多いです。

また、被害者の怪我が重い場合や被害者が亡くなっているような場合には、いくら初犯であっても、執行猶予が付かずいきなり実刑判決が下されることもあります。

あて逃げについては、自動車運転死傷行為処罰法は適用されません。
しかし、たとえ負傷者がいなくても、交通事故を起こした運転手は直ちに運転を止めて道路の危険を防止する等の必要な措置を講じ、かつ警察に報告をしなければなりません。

よって、あて逃げの場合は以下の罰則となります。

報告義務違反
(道路交通法119条1項10号)
3月以下の懲役又は5万円以下の罰金
危険防止等措置義務違反
(道路交通法第72条1項前段)
1年以下の懲役または10万円以下の罰金

ひき逃げ・あて逃げの弁護方針

示談成立を目指す

まず重要なのは、被害者や遺族と示談交渉を行い、早期の示談成立を目指すことです。というのも、被疑者を起訴するかどうか判断するにあたり、検察官は示談の成否を重要視するからです。
不起訴処分を勝ち取るには、示談成立をアピールすることが最も効果的です。

交通事故における示談には、民事上と刑事上の2種類があります。

民事上の示談の多くは、加入している自動車保険会社が代行して行います。その場合の示談金とは、治療費、通院交通費、休業損害などに対するものです。

一方、刑事上の示談では、保険会社とは別に被疑者ご自身が被害者や遺族に対する謝罪金・見舞金などの意味合いで金銭を支払い、被害者や遺族から許してもらうという意味合いがあります。

よく、「交通事故の示談交渉は加入している保険会社の担当に任せているから問題ない」と思われがちですが、これは大きな誤りです。
というのも、保険会社は、刑事上の示談をほとんど考慮せず、民事上の示談対応しか行ってくれないからです。

したがって、「刑事裁判になる可能性が高いが、なんとか罰金刑だけで済ませたい」「不起訴処分にして欲しい」といったご要望があれば、弁護士に刑事上の示談交渉を任せるべきです。

なお、万が一起訴されてしまった後であっても、裁判官が示談成立を考慮して執行猶予付き判決を下す可能性もあるため、やはり示談成立の可否は重要です。

ご相談内容「示談したい

反省文・謝罪文を書く

交通事故によって相手に怪我をさせてしまった(もしくは死亡させてしまった)という事の重大さは、当然ながら深く反省しなければなりません。
そこで、被疑者の方に謝罪文や反省文を作成してもらい、被害者そして検察官や裁判官にその書面を提出して、きちんと反省している姿勢をアピールしていきます。

仮に示談が成立しなくても、「被害者にしっかりと謝罪をしたか」という点は、量刑において非常に重要です。

運転免許の返納、車の処分

運転免許を返納したり車を売却・処分したりすることで「二度と運転しない」という点をアピールすることは、反省している姿勢を示します。
可能な場合はこのような対応を検討してみると良いでしょう。

早期釈放を目指す

ひき逃げ事件の場合、その多くは逮捕・勾留されてしまいます。逮捕・勾留の目的の一つが「逃亡の防止」であるところ、ひき逃げ事件の被疑者は現に一度逃げているため、逮捕勾留しなければまた逃げてしまうのでは?と考えられてしまうからです。

被疑者が身柄を拘束されている場合には、早期の身柄解放を目指し、弁護士は以下の弁護活動を全力で行います。

  • 勾留請求をしないでもらえるよう、検察官に対して要求する。
    ↓(それでも勾留請求されてしまった場合には)
  • 勾留決定しないよう、裁判官に要求する。
    ↓(それでも勾留決定が下されてしまった場合には)
  • 勾留決定を取り消してもらうよう、裁判官に対して要求する。
    いわゆる、“準抗告”を行う。

ご相談内容「釈放・保釈してほしい

ひき逃げに気付かなかったと主張する

ひき逃げは故意犯です。つまり、「人を死傷させる交通事故があったこと」を認識していなければ、道路交通法違反によって処罰されることはありません。
(※交通事故で人を死傷させた点自体については、故意犯でなくても過失運転致死傷罪などで処罰されます。)

もし、ひき逃げを起こしたことに気づいていなかったと主張できる事情があれば、積極的に主張・立証していくのも弁護活動の一つです。
ひき逃げの認識がなく、道路交通法違反については不起訴になるケースは十分にあります。