窃盗(万引きなど)
窃盗とは?
窃盗とは、他人所有の財物の占有を、占有者の意思に反して取得した場合に成立する罪です。簡単に言えば、物を盗む行為のことです。
なお、窃盗罪における「財物」の定義ですが、財産的価値ある有体物を指し、不動産は含まれません。
ただ、電気は有体物ではないものの刑法245条で財物とみなされているため、たとえば電柱から電気を引き込んだ場合には電気窃盗として処罰されます。
窃盗に当たる5つの行為
他人から財物を盗む行為については多くの種類があり、代表的なものだと以下のような類型があります。
- 万引き:店にある商品を盗んだ場合など
- 置き引き:電車内に放置されてある他人の荷物を盗んだ場合など
- 空き巣:人の住居に侵入して金品を盗んだ場合など
- スリ:人が身に付けている衣服やカバンから財布を盗んだ場合など
- 車上荒らし:車のカギを壊して車内にあった荷物を盗んだ場合など
上記のような行為は全て窃盗罪として処罰される可能性があります。
最近では、駐輪場からカギを壊して自転車を盗む自転車の窃盗も多発しているようです。
窃盗の未遂と既遂
窃盗には未遂罪が存在します。
窃盗未遂罪が成立するには、窃盗行為の着手が必要とされます。したがって、着手行為があった時点で窃盗未遂罪が成立します。
たとえば、住居侵入窃盗の場合、住居に侵入しただけでは足りず、金品の物色をするためにタンスの引き出しを開けた時点などで「着手あり」とみなされます。
スリの場合には、財布が入っているかを確かめるためにポケットに軽く触れる“当たり行為”は着手に当たらず、実際に財物をスルためにポケットに触った時点で「着手あり」とみなされます。
そして、窃盗罪は財物の占有を取得したときに既遂になるとされています。
しかし、いつ既遂になったかの判断は画一的ではなく、財物の性質、財物搬出の難易、占有者の事実上の支配状況などを総合して判断します。
判例では、次の行為があった時点を既遂時期と判断しています。
- 店舗内の商品を衣服の中に隠した時点
- 他人の浴室内で発見した所有者不明の指輪を、後で回収するために浴室内の簡単に発見できない場所に隠匿した時点
- スーパーで買い物をしてレジで精算せずにそのまま店外に出た場合においては、レジを通り過ぎた時点
一方、工場内などで物品を窃取したが工場から出ていない場合、その時点では未だ既遂に達していないと判断されています。
窃盗罪の刑罰
窃盗罪の刑罰は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金(刑法235条)です。
一般的に、窃盗罪の量刑を行う場合、次の項目を基準として総合的に判断します。
- 窃盗罪による被害金額の大小
- 窃盗行為の内容(入念な計画に基づくものかなど)
- 窃盗を遂行する際の手段の危険性
- 窃盗の目的・動機
- 窃盗の頻度
- 余罪・前科の有無
- 示談ないし被害弁償の有無・その金額
- 共犯者の有無
- 反省状況 など
店舗等での万引き事案では、被害の額が安く、かつその手口の悪質性も低いようなケースでは、微罪処分で済む可能性もあります。
たとえ微罪処分で済まなかったとしても、被害金額が少なく初犯であれば、略式手続による罰金で終わるのが通例です。
一方、被害金額が大きい場合や、倉庫に忍び込むなど計画性の高い場合、立件されている事件が複数件ある場合は、公判請求されて刑事裁判になる可能性もあります。
また、同種の前科がある場合には、被害金額が少ないと略式手続による罰金刑で済み、被害金額が大きいと公判請求されて刑事裁判になるケースが多いです。
ただ、その場合であっても、前科の数がそれほど多くなければ執行猶予付き判決が下されることが多いです。
弁護士をつけて示談交渉を行い示談が成立すれば、万引きの事案であれば多くは不起訴となるでしょう。
とは言え、上で述べた通り「被害額が大きい」「計画性が高い」といった事案の場合には、それでも罰金や公判請求の可能性もあります。
そうなった場合にも、示談が成立していることは裁判で有利に扱われますので、いずれにしても示談交渉が重要です。
窃盗罪の弁護方針
示談成立を目指す
不起訴処分や執行猶予付き判決を下してもらうべく、検察官や裁判官への心証を良くするためには、示談成立をアピールすることが最も有効な手段と言えます。
窃盗事件では、被害者に十分な謝罪と示談金を提示して、早期の示談成立を目指します。窃盗罪における示談金は、盗んだ品物相当額だけでなく、迷惑料や慰謝料を加えた金額が相場となります。
ちなみに、万引きなどの場合、コンビニやスーパーなどの店舗が被害者となります。
ただ、会社の方針で示談には応じないと決めており、被害弁償や被害品の買取にも応じてくれないケースもあります。
そのような場合には被害者(店舗やオーナー)を相手方として「供託」をすることになりますが、供託さえもできないときには、「贖罪寄付(しょくざいきふ:慈善団体などへの寄付)」をすることで、反省の気持ちを示します。
反省文、謝罪文を書く
窃盗行為に及んでしまったという事の重大さを被疑者の方に理解してもらい、深く反省してもらいます。
そのためにも、被疑者の方には謝罪文や反省文を作成してもらい、被害者、そして検察官や裁判官にその書面を提出して、きちんと反省している姿勢をアピールしていきます。
仮に示談が成立しないような場合でも、被害者にしっかりと謝罪しているかどうかという点はとても重要なのです。
ご相談内容「示談したい」
早期釈放を目指す
在宅事件にならず被疑者が身柄を拘束されている場合には、早期の身柄解放を目指して、以下のような弁護活動を全力で行います。
- 勾留請求をしないよう検察官に対して要求する。
- それでも勾留請求されてしまった場合には、勾留決定しないよう裁判官に要求する。
- それでも勾留決定が下されてしまった場合には、勾留決定を取り消してもらうよう、別の裁判官に対して要求する(準抗告を行う)。
当事務所では、これまで窃盗事件における多くの勾留阻止、身柄解放の実績があります。どうぞご安心ください。
ご相談内容「釈放・保釈してほしい」
クレプトマニアとは?
「ダメだと分かっていても他人の物を盗んでしまう」「窃盗に成功すると快感を感じてしまう」
金銭的に困っているわけではないのに盗みへの欲求が抑えられず、窃盗行為を繰り返してしまうなど、常習性のある被疑者の方は「クレプトマニア(窃盗症、窃盗癖)」と呼ばれる病気の可能性があります。
一般的な窃盗の場合、「その品物が欲しいから」というのが動機ですが、クレプトマニアの場合、「盗む行為、それ自体に快感を覚えるから」というのが動機になります。
クレプトマニアは心の病気であり、うつ病や摂食障害など、精神疾患と併発して見られる傾向があります。
たとえば、万引きで店員に捕まった時は涙を流しながら許しを乞う態度を見せていたのに、数日も経てば何事もなかったようにまた窃盗行為を行うということを平然と繰り返してしまうのが、クレプトマニアなのです。
このような状態の方が万引きを繰り返し続ければ、いずれはその常習性から実刑判決が下されます。
ただ、刑務所に服役したとしても心の病が完治されるわけではありません。専門医による根本的な治療を受ける必要があります。
クレプトマニアの方の刑事弁護をする場合、まず再犯防止専門のクリニックで治療を受け、その証拠となる診断者やカルテを検察官や裁判官に提出します。
そうすることで、再犯防止に向けて努力しているという姿勢を示すことができるからです。
さらに言えば、こういった治療自体、今後ご自身を更生させていくためにもとても有益なはずです。
なお、クレプトマニアには長期的な治療が必要となるため、本人の「絶対に克服する」という強い意志と、家族や周囲の人たちのサポートが不可欠です。