示談したい

「痴漢をしてしまった」「人に怪我を負わせてしまった」など、被害者のいる刑事事件では、被害者との「示談」の成立が、不起訴や執行猶予の可能性を高めるうえで最も効果的であると言えます。

示談交渉はできるだけ早く始める必要があります。
そして、被害者との直接の示談交渉は弁護士しかできませんので、お早めにご依頼ください。

1.示談とは?

「示談」とは、法的な紛争を当事者同士の話し合いによって合意で解決することを言います。
刑事事件における「示談」では、被疑者(あるいはその代理人)が被害者に謝罪をして、示談金(損害の賠償金や慰謝料)を支払うことで、被害者から許しを得て被害届や刑事告訴を取り消してもらうことになります。

民事事件の場合は、示談すなわち和解契約が成立すれば事案は終了となります。
しかし、刑事事件では示談をしても犯罪が発生した事実は消えませんし、罪に問われます。

それでも、刑事事件の示談は重要です。なぜなら、刑事事件では「情状」がとても重要になるからです。

(1) 起訴前の示談

刑事事件の被疑者として捜査を受けると、捜査が終わった段階で検察官がその事件を起訴にするのか不起訴にするのかを決めます。

検察官が起訴or不起訴を考えるときの考慮要素は、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重、情状、犯罪後の情状です(刑事訴訟法248条)。
この中で、事件後に変更可能なものは「犯罪後の情状」です。そのため、被疑者になってしまったら、「犯罪後の情状」をよくして不起訴処分を目指すことになるのです。

そして、「犯罪後の情状」の中でもっとも重要なものが示談です。
犯罪の被害はお金で代替できるものばかりではありませんが、被害者が謝罪を受けたか、被害者が許す気持ちになっているか、被害者が被害弁償を受けているか、慰謝の措置を受けているかということは非常に重要なことです。そのような被害者の気持ちを考慮して検察官は処分を決めるのです。

そこで、示談が成立し、被害者が許す気持ちになっていれば、不起訴処分を得られる可能性が高まります。

(2) 起訴後の示談

起訴されてしまって、刑事裁判になった後でも情状は大切です。

刑法66条では、「犯罪の情状に斟酌すべきものがあるときは、その刑を減軽することができる」とされています。
そこで、示談が成立していればよい情状とされて、執行猶予を得たり、実刑の期間を短くしたりする効果が期待できるのです。

(3) 親告罪では示談が最重要

「親告罪」とは、告訴がなければ公訴提起(検察官による起訴)ができない犯罪のことです。告訴とは、捜査機関に対して犯罪を申告して処罰を求める意思表示のことです。
親告罪では、被害者に告訴を取り消してもらえば起訴されることがなくなります。

もっとも、告訴は被害届とは異なり「処罰を求める意思表示」ですから、被害者の被害感情がとても強いということです。告訴されてしまった事件に対する示談は、被害者の気持ちを考慮しながら慎重かつ迅速に行うことが必要になります。

例えば、名誉棄損罪や侮辱罪、過失傷害罪、器物損壊罪などは親告罪にあたります。
不同意わいせつ罪や不同意性交等罪(以前の強姦罪・強制性交等罪)は、刑法改正により親告罪ではなくなりました。

2.示談交渉の注意点

刑事事件では、なるべく早く示談交渉に着手すべきです。
刑事事件から時間が経過すればするほど、被害者に
・「対応が遅い」
・「誠意が感じられない」
・「本当に心から反省しているとは思えない」
などと受け取られてしまう可能性が高まり、示談を成立させることが難しくなります。

また、検察官の処分までの期間の問題があります。
身柄拘束されている場合、逮捕(最大72時間)、勾留(原則10日、最大20日)のあとに検察官の処分があります。つまり、身柄拘束された場合には、最大23日で「起訴」か「不起訴」か、という決定が出てしまうということです。

この期間に示談できなれば、起訴される可能性が高まります。そのためにも、早急に示談交渉に着手する必要があるのです。

3.示談交渉のやり方

(1) 弁護士に依頼する

示談をするには、被害者に謝罪の意を示す必要があります。その上で、被害者にある程度の金額の示談金を示して、金額の交渉をすることになります。

しかし、被害者の方の連絡先を知らない場合、被疑者の方やその家族が警察・検察官に被害者の連絡先を聞いても、通常教えてもらえません。
加害者に連絡をされたくないという被害者が多いのは当然のことですし、連絡先を教えることで犯罪の再発があるリスクも否めないからです。

また、仮に被害者の住所や連絡先を知っていても、弁護士を通じずに連絡を取ろうとするべきではありません。

被害者は加害者に恐怖心を抱いているものですし、犯罪被害によって相当のストレスを受けています。そのような状態にある被害者にしつこく連絡を取ろうとすると、ますます情状が悪くなる可能性もあります。

被害者の気持ちを考えずに焦って接触しようとせず、スムーズな示談のためには弁護士に依頼するべきです。

刑事弁護の依頼を受け代理人となった弁護士は、被害者の同意を得ることができれば、警察・検察から被害者の連絡先を教えてもらうことができます。
被害者と連絡が取れたら、弁護士は被疑者が今回の事件について深く反省していることを伝え、また、被疑者の謝罪の手紙を渡すなどしながら慎重に示談交渉にあたります。

(2) 示談金額を擦り合わせる

示談交渉では、示談金額の交渉が主になります。
示談の金額に決まりはありません。犯行に至るまでの経緯、犯行の状況、被害の程度、治療費等の金銭的な損害の額、治療にかかる期間、被害者の被害感情の大きさ、加害者の経済力などによって変わります。

個々の事件でどのくらいの示談金を提示すれば良いのかについては、弁護士とよく相談する必要があります。

(3) 示談書の作成

示談が成立したら、示談書を交わしてから示談金を支払います。

示談書には、通常、「被害者が加害者を宥恕する」、つまり「加害者を許す」という言葉を入れてもらいます。
もっとも、被害者の被害感情が強く、「宥恕」という言葉に拒否反応を示すこともあります。そのような場合には、「宥恕」という文言を入れることこだわることなく、示談書を交わしてひとまず示談金を受け取ってもらうこともあります。

「宥恕」という言葉にこだわって示談できなくなってしまうよりは、示談金を受け取ってもらったということ(つまり、「被害者に慰謝の措置が講じられた」という事実)だけでも重要だからです。

起訴前の捜査段階で示談が成立した場合、弁護士は、検察官に示談書を提出して不起訴処分にするように働きかけます。示談書を受け取った検察官が被害者に示談の内容に間違いないか確認し、それが処分に反映されます。

起訴後に示談が成立した場合には、刑事裁判に証拠として示談書を提出します。この場合でも、検察官は、被害者に示談書の記載に間違いがないか確認しています。

証拠として提出された示談書は、裁判官が量刑を決めるときの重要な判断材料となります。

3.まとめ

被害者との示談交渉はかなり慎重に行う必要があります。一度被害者との示談交渉がこじれてしまえば、それを修復することは極めて困難です。
慎重な対応が必須とされる示談交渉をサポートしてくれる弁護士を選ぶ場合には、刑事弁護経験豊富な弁護士に刑事弁護を依頼することを強くおすすめします。

いったん起訴されてしまえば、(その後に示談が成立し量刑に示談の結果が反映されるとしても)起訴されたという事実はくつがえることはありません。
その意味では、犯罪の検挙後、起訴となる前に弁護士に刑事弁護を依頼して、早期の示談成立をしてもらうことが極めて重要です。

早期に示談を成立させることで、不起訴処分を獲得できる可能性が高まります。
あるいは、迅速な弁護活動によって警察の介入前に示談成立をまとめられれば、そもそも事件化させないで終わらせることもできます。

刑事事件でお悩みの方は、是非一度当事務所にご相談ください。