痴漢・不同意わいせつ [公開日]2017年12月25日[更新日]2025年4月8日

痴漢の刑事弁護全般について

痴漢の刑事弁護活動

1.痴漢とは

痴漢とは、一般的には「相手方被害者が性的羞恥心を抱くようなわいせつ行為」を意味します。

具体例は、満員電車内やバス乗車中に他の乗客の下半身を触ることですが、当所が弁護に当たった事案としては、「満員電車の乗車中に誰が行ったか分からないことに乗じて特定の女性のスカートの中に手を入れて局部を触る」などした事案が複数件あります。
また、「満員電車で長椅子の端に座り、手すりに上腕を乗せたところ被害女性の尻が上腕にあたり、そのまま乗車し続けることを頻繁に繰り返していた事案」「ホテル内で同意を得ずに女性の局部に触った事案」も痴漢として検挙され、当所が弁護の刑事依頼を受けています。

2.痴漢を処罰する法令

痴漢は、刑法上の不同意わいせつ罪に該当する場合と、不同意わいせつ罪には該当しないが都道府県の迷惑行為防止条例に違反する場合とがあります。
大雑把な言い方をすると、悪質な痴漢(電車内で下着に手を入れて女性の局部触った事案など)は不同意わいせつ罪、軽度な痴漢(電車内で着衣の上から局部、臀部、乳房等を触る事案など)は迷惑行為防止条例違反となります。

(1) 不同意わいせつ罪の場合

不同意わいせつ罪は下記の刑法176条に規定されており、以下に該当する場合に成立します。

刑法176条の条文
1. 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
2. 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。
3. 十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。」

上記の刑法176条に該当する不同意わいせつ罪の実行行為である「わいせつな行為」とは、被害者が性的羞恥心を持つような行為を意味します。

では、不同意わいせつ罪の対象となる16歳未満の女性に対して、16歳以上と誤信してわいせつ行為を行った場合はどうでしょうか。

誤信したことが客観的証拠により裏付けられる場合(例えば、学生証など身分証明書で年齢を確認したなどの事情)には、故意を欠くものとして、不同意わいせつ罪として検挙されることはないでしょう。
よくあるのは、出会い系サイトなどで16歳未満の女性とともにホテルでわいせつ行為に及び、ホテル周辺を巡回していた警察官に職務質問されて発覚したり、その16歳未満の女性が警察官に補導されて発覚することです。

ホテルなどで16歳未満の女性にわいせつ行為にとどまらず性行為などに及んだ場合には、「不同意性交罪」に問われます。
被害女性が16歳以上で18歳未満の場合に、加害者が金銭を渡して性交渉に及んだ場合は「児童買春」となり、厳罰に処せられます。

(2) 都道府県の迷惑行為防止条例違反の場合

都道府県で規定の表現は異なりますが、東京都の迷惑行為防止条例(略称)では次のように規定されています。

東京都迷惑防止条例5条1項
「1. 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、次に掲げるものをしてはならない。
(1) 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。」

当所で弁護した事案としては、電車内で近くにいる女性の局部や臀部、乳房を着衣の上から触るという事例が大半を占めます。

3.痴漢の刑罰

不同意わいせつ罪を犯した場合は6月以上10年以下の拘禁刑となります。

迷惑行為防止条例違反の場合は都道府県で若干異なりますが、東京都迷惑行為防止条例違反では、刑罰は「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」です。常習の場合には、「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が科されます。

痴漢を含む性犯罪が社会問題となり、2023年(令和5年)に性犯罪に関する刑法改正、盗撮に関する性的姿態撮影等処罰法の制定施行により性犯罪一般の厳罰化が進んでいます。

4.痴漢の弁護

(1) 捜査機関の捜査

痴漢は満員電車など他人に発覚されにくい状況で行われることから 、被害者の証言以外に客観的証拠がないことが通常です。そのため、痴漢冤罪も少なからずあります。

当所で相談を受けた事例として、痴漢の犯人と人違いで誤解され警察署に連行されたが否認して、微物検査(手のひらに被害女性の衣服の繊維が付着していないかどうかの検査)やDNA検査(口腔に綿棒を入れて粘膜からDNAを採取して被害者に同じDNAが付着していないか調べる)を受けてそのまま帰宅した事案が少なからずあります。

相談では、被害者と相談者の電車内での立ち位置などを聞き取り、人違いの可能性が高いと判断した時は、「DNA検査や微物検査で陽性となり警察に呼び出されたら、また相談して下さい」と言って相談を終わることが多々あります。
その後、相談を受けた方で警察から呼び出しを受けて当所に再相談された方はおりません。警察も状況から人違いの可能性があるとして、被害者以外の目撃証言などがない場合には慎重に対応し、すぐ逮捕とすることはあまりないのではと思います。

逆に、被害者の証言供述が具体的で迫真性をもっており信用性が高い場合や、目撃者の目撃証言があるなどの事情があるのに被疑者が否認した場合には、性犯罪の厳罰化傾向から逮捕・勾留される可能性が高くなります。

不同意わいせつ罪に該当する場合で自白しても、逮捕・勾留される可能性は相当程度あると思います。

(2) 自白の場合の弁護

被疑者が痴漢行為を認めている自白事案での弁護活動ですが、被害者から示談を取り付けて不起訴を目指すことが中心となります。

示談が取れないなどで起訴された場合は、迷惑行為防止条例違反の痴漢では初犯ならば略式起訴で罰金刑となります。
不同意わいせつ罪は法定刑に罰金刑がありませんので、起訴され正式裁判となることを避ける(言い換えれば不起訴処分を獲得する)には被害者からの示談を取り付けることが極めて重要となります。

示談していれば起訴されても初犯ならば執行猶予が付きますが、示談がないと起訴されれば初犯でも実刑の可能性は否定できません。

弁護士に弁護を依頼する場合には、示談交渉に多数取り組み弁護経験豊富な弁護士に依頼されることを強くお勧めします。

(3) 否認の場合の弁護

被疑者が否認している場合は、自白して罪を認めて行う示談をすることはできません。

警察の捜査が中心となる起訴前の弁護では、弁護士が被疑者から取り調べ内容をその都度聴取して、取り調べに対する適切な対応方法を助言して嫌疑不十分による不起訴を目指します。ここでは、検察官が起訴するか嫌疑不十分で不起訴するかについて刑事経験ある弁護士が明確な見通しをもって被疑者と協議しながら弁護活動をすることが必要になります。

取り調べ内容などから起訴するだけの証拠が十分あるとなれば、否認から自白に転じて示談を取り付けることも考えなければなりません。この判断は弁護経験豊富な弁護士でないと難しいものと言えます。

5.終わりに

迷惑行為防止条例違反は罰金刑がありますが、不同意わいせつ罪には罰金刑がありませんので、起訴前弁護で不起訴処分を取り付けることが極めて重要になります。
その弁護には痴漢の刑事弁護経験豊富な弁護士に依頼すべきです。

弁護士泉義孝は痴漢弁護の経験が十分ありますので、弁護士選びにお悩みの方は是非弁護士泉義孝にご相談・ご依頼ください。

痴漢の刑事弁護は泉総合法律事務所、弁護士泉義孝まで

痴漢など絶対にしないと思っていても、ふと魔が差して痴漢をしてしまった、ということは誰にでもあり得ることです。迷惑防止条例違反の行為といえども、逮捕・起訴される可能性がありますし、処分が罰金であっても前科となります。

最終処分を不起訴など有利に導くためには、刑事弁護の経験豊富な弁護士に弁護依頼をしてください。

泉総合法律事務所の弁護士、泉義孝は、刑事事件、中でも痴漢の弁護経験につきましては大変豊富であり、勾留阻止・釈放の実績も豊富にあります。

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