自転車窃盗の刑罰|初犯・未成年でも罰金は科されるの?

自転車窃盗は、窃盗犯の中でも特に多い犯罪類型の1つです。
駅や商業施設に置かれてある自転車は所有者の目を離れているので、勝手に他人が乗っていってしまうことも少なくありません。
軽い気持ちで自転車を盗んでしまったというケースや、飲み会の帰りに酔った勢いでそのまま他人の自転車に乗って帰ってしまったというケースもあるようです。
しかし、これはれっきとした犯罪(窃盗罪)です。
では、自転車を盗んでしまったら、どのような罪に問われるのでしょうか?
今回は、自転車窃盗について解説します。
1.自転車を盗んだ場合は「窃盗罪」
他人の自転車を盗むという行為は、刑法上「窃盗罪」に該当します。
刑法235条では「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪」とすると定めています。
つまり、窃盗罪が成立するには、他人の財物を「窃取」すること、すなわち財物に対する占有(事実上の支配状態)を侵害することが必要です。
自転車窃盗の場合、他人の家に置かれている自転車はもちろん、商業施設、駅などに駐輪している自転車であっても、それを持っていけば窃盗罪が成立します。商業施設や駅などに駐輪しており、たとえ所有者がその場を離れていても、その占有は未だ失われていないと評価されるからです。
なお、後に返すつもりで自転車を盗った場合にも窃盗罪は成立します。
窃盗罪で逮捕されると「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に処される可能性があります。
また窃盗罪以外にも、人の家や商業施設の敷地内に置いてある自転車を盗った場合には、住居・建造物侵入罪(130条)として「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」に処される可能性もあります。

[参考記事]
不法侵入・住居侵入罪の初犯で逮捕された!刑罰はどうなる?
さらに、自転車の鍵を壊した場合には、261条の器物損壊罪として「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」の可能性もあります。
このように、自転車窃盗で捕まった場合、想像しているよりも重い刑罰が課される可能性があるのです。
2.自転車窃盗の処罰の重さ
「自転車くらいなら、反省さえすればすぐに釈放されるのだろう」と考えている方も多いでしょう。
しかし、これはケースバイケースといえます。
(1) 初犯の場合
初犯で被害金額も少なく、他に前科等もない場合には、被害者と示談をしていればすぐに釈放してもらえて、そのまま不起訴となる可能性が高いです。
これに対し、自転車窃盗や万引きを何度も繰り返すなど常習性が認められたり、余罪が多数で被害者の数が相当だったり、被害金額が相当な高額だったりすると、初犯でもいきなり起訴される可能性は十分にあります。
また、起訴されても、初犯の場合は罰金刑で済んだり執行猶予がついたりする可能性が高いですが、再犯の場合や、被害者が多い・被害金額が高額という場合は、懲役刑の実刑もありえます。
(2) 未成年の場合
未成年の場合、「若気の至りでママチャリを盗んでしまった」というケースもあります。
では、中学生や高校生など、18歳未満の犯罪の場合、逮捕され刑罰に処されることはあるのでしょうか?
まず、犯行が発覚すれば逮捕される可能性はあります。
しかし、逮捕後は原則として成人と同じ刑事裁判を受けることはなく、家庭裁判所に送致され、少年鑑別所に収容されて調査を受けた後、少年審判を受け、保護観察や少年院送致などの保護処分を受ける可能性があります。
14歳未満の場合には、刑事責任能力を欠くので刑法上の犯罪とはなりませんが、触法少年として警察から児童相談所などに送られ、一時保護という名目で身柄を拘束される場合があります。
さらに、児童相談所の判断により家庭裁判所に送致される場合もあり、その後は14歳以上の場合と同じ手続となります。
このように、未成年者の自転車窃盗で成人と同じ刑事処分を受けることは通常ありませんが、無条件に許されるというわけではなく、未成年者の保護育成のために用意された手続による扱いを受けることになります。
3.自転車窃盗で逮捕されたらどうなる?
窃盗罪で逮捕された場合、一般論としては次のように手続きが進んでいきます。
(1) 一般的な逮捕後の手続き
まず、逮捕後は警察官による取り調べを受けます。
逮捕から48時間以内に事件と身柄は検察に送致され、検察官は裁判官に勾留請求を行うかどうかを判断します。勾留請求は、送致を受けてから24時間以内、かつ逮捕から72時間以内に行う必要があります。
逃亡の可能性や罪証隠滅の可能性があると検察官に判断された場合には勾留請求が行われ、これを認める裁判官により勾留決定が下ったら、勾留請求の日から10日間は原則として身柄が拘束されます。
また、勾留が延長されればさらに10日間(最高で逮捕から23日間)家に帰れなくなってしまいます。
通常、勾留中に起訴・不起訴が決定します。不起訴となれば釈放されますが、起訴となると略式起訴(罰金刑)で終わらない限り被告人勾留が続きます。
検察官は十分な証拠が出揃ってから起訴を決定しますので、起訴されると99%の確率で有罪となります。なお、罰金刑でも有罪であることには変わりないので、前科がつきます。
このように、逮捕されると長期間の身柄拘束や起訴につながる可能性もあるのです。
(2) 逮捕後の釈放の可能性
自転車窃盗で逮捕されたら、すぐに釈放されることはあり得るのでしょうか?
一般的に初犯の場合であれば、警察に捕まった後きちんと反省しており、被害者に処罰意思もない場合(自転車を返還している、弁償して示談が成立しているなど)であれば、検察官への送致を要しない「微罪処分」としてすぐに釈放してもらえる可能性はあります。
しかし、先にお伝えした通り、悪質なケース・再犯のケースでは、逮捕後に正式な手続きが進められ身柄が勾留されることもあります。
個々の具体的な事案でどのようになる可能性があるのかは、刑事事件の実績豊富な弁護士に見通しを聞いてみることをお勧めします。
4.自転車窃盗における示談について
窃盗罪で逮捕された場合、できるだけ早い段階で被害者との示談交渉に動くべきです。
というのも、示談が成立していれば、起訴後に執行猶予を勝ち取れる可能性が上がるだけでなく、そもそも「不起訴」になる可能性も高くなるためです。
最後に、示談による刑罰や量刑への影響や、支払うべき示談金はどれくらいなのかをご説明いたします。
(1) 示談の効果
示談とは、当該事件に関して被害者と和解をすることを指します。示談交渉の際には、被害者への誠意ある謝罪と被害金額の弁償、慰謝料の支払いなどが必要となります。
起訴・不起訴を判断するのは検察ですが、通常、示談が成立している窃盗事件であれば、(被害金額が大きく、再犯であるケースでない限り)不起訴の可能性が高くなります。
検察も、被害者との和解が済んでいる事件を無理に起訴しようとはしないためです。
また、仮に起訴されてしまったとしても、被害者との示談は量刑においても評価されます。
起訴されてしまうとほぼ確実に有罪となってしまい前科はつきますが、示談が考慮され、内容によっては罰金刑で済む可能性も高くなりますし、多くの場合で執行猶予がつきます。
このように、示談をすることには、不起訴を獲得しやすくなる、量刑等で考慮してもらえるなど多くのメリットがあります。
(2) 自転車窃盗の示談金の相場
示談をするためにかかる示談金の相場は気になるところです。
示談金がいくらになるのかは、被害者が何を求めているかにも左右されます。
例えば、自転車窃盗の場合は、「反省して、盗んだ自転車を返してくれれば良い」とする被害者もいるでしょう。この場合、自転車を返還すればそれで示談金が不要となることもあります。
しかし、被害者の被害感情が強い場合には、自転車の代金に加え、慰謝料として数十万円程度支払うこともあります。
最近ではロードバイクが人気ですが、通常のママチャリと違い、ロードバイクは数十万円することもあります。この場合、通常の自転車よりも被害弁償にお金がかかるという可能性もあります。
さらに、自転車を壊した、売ってしまった場合には、代わりの自転車を用意するためのお金が必要になります。
このように、自転車窃盗の示談金といっても多種多様です。
どのような自転車を盗み、弁償代金はいくらなのか、被害者が和解のために何を求めているのかによって示談金額は変わってきます。詳しくは弁護士にお尋ねください。
5.自転車窃盗で捕まったら、弁護士に相談を
自転車窃盗を犯してしまった場合には、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は今とるべき対応に関するアドバイスだけでなく、示談交渉までサポートしてくれます。
また、逮捕されてしまった場合にも、できるだけ早く弁護士に依頼してください。
刑事事件では早期釈放を目指し、日常生活にできる限り支障がないように示談を進めていくべきです。早く動けば、その分示談成立も早まり、不起訴処分が得られる可能性も高くなります。
窃盗事件を起こしてしまった方は、刑事弁護の実績豊富な泉総合法律事務所の弁護士 泉義孝に一度ご相談ください。