刑事弁護・裁判 [公開日]2017年11月20日[更新日]2025年6月16日

家族が逮捕されたらどうなる?何をするべきか解説

家族が逮捕されたらどうなる?何をするべきか解説

自分の家族や親戚は刑事事件とは無縁だと思っていても、ある日突然「近しい人が窃盗や痴漢、盗撮で逮捕される」といった事態に遭遇するかもしれません。
特に、一家の支柱である旦那や、毎日子どもの世話をしている妻が逮捕されてしまった場合、今後の生活について不安になると思います。勾留が理由で会社を長期で休まざるを得ない場合、その理由を家族が会社に上手く説明するのは難しくなるでしょう。

刑事事件の逮捕についてはどのように知らされ、また、知らされた家族はどのような行動を取ればいいのでしょうか?

以下では、刑事事件で家族が逮捕された場合にどうすれば良いのかについて説明します。

1.家族に逮捕の連絡が行くのはいつ?

まずは、刑事事件解決の流れを踏まえた上で、家族に逮捕・勾留の連絡が行くのはいつなのかを見ていきましょう。

(1) 逮捕の連絡

①警察からの連絡

まず考えられるのは、逮捕直後です。被疑者が家族に連絡してほしいと警察官に頼むことも多いでしょう。
しかし、警察が家族に連絡する義務があるわけではなく、依頼に応じて連絡をしてくれるかどうかは各警察官の裁量により、ケースバイケースです。

例えば、痴漢行為で逮捕された会社員が妻への連絡を依頼すれば、通常はこれに応じてもらえるでしょう。逮捕の事実を妻に伝えても、捜査に支障を生じることは通常は考えられないからです。

しかし、例えば薬物犯罪で逮捕された場合は同じとは言えません。自宅に証拠の薬物が隠されている可能性は高く、妻が共犯者である可能性もあります。家宅捜索前に妻が証拠隠滅を図る危険性も考慮しなくてはなりませんから、連絡をしてくれることはまずありません。

同様に、たとえ万引き事件であっても、例えば、1度に多数の書籍やDVDをカバンに入れており転売目的が疑われるときは、自宅に盗品が保管されている可能性があるので、家族への連絡は応じてくれないこともあります。

また、「逮捕されているが、理由は一切言えない」という場合も決して少なくありません。
逮捕理由を教えてくれる場合でも、せいぜい「痴漢で逮捕」「喧嘩して傷害で逮捕」「万引きで逮捕」などの大雑把な罪名を教えてくれる程度で、「あとは面会できるようになったら本人に直接聞くか、弁護士を依頼して先生から聞いてくれ」ということになります。

②当番弁護士からの連絡

被疑者は、逮捕・勾留された時に1回だけ無料で当番弁護士に面会を要請し、相談することができます。これが「当番弁護士」です。

逮捕された被疑者は警察官から取り調べを受けますが、その際に弁護士に依頼することができます。
知り合いに弁護士がいない場合は、当番弁護士を呼ぶことができることも説明されます。

被疑者が希望すれば、警察から弁護士会へ連絡がいき、当日の当番として事務所に待機している弁護士が、原則としてその日のうちに警察署へ面会に訪れます。
その面会時に、被疑者から家族への連絡を依頼されれば、面会が終わった後に弁護士が家族に電話で連絡をすることになります。

(2) 勾留の連絡

刑事訴訟法79条は、「被告人を勾留したときは、直ちに弁護人にその旨を通知しなければならない。被告人に弁護人がないときには、被告人の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹のうち被告人の指定する者1人にその旨を通知しなければならない」と定めています。
この規定は、被疑者の勾留の場合にも準用されています(同207条1項)。

裁判所での勾留質問の際にいまだ弁護人が選任されていなければ、裁判所書記官から、「勾留決定された場合には誰への通知を希望するか」を尋ねられます。

そこで、被疑者が指定した家族の1人に、裁判所から被疑者が勾留されたことが通知されます。

通知の方法は法定されていないことから、実務上、通知書の送付がなされることが多いのですが、電話による場合もあります。
裁判所からの通知書には、罪名、勾留場所が記載されています。

2. 家族が逮捕された場合にとるべき行動

逮捕の連絡を受けた家族はとても不安な状況に陥ってしまいますが、何らかの行動をしなければなりません。

それでは、どのような行動を取るべきなのでしょうか?

(1) 面会(接見)に行く

面会が可能である場合には、勾留場所である警察署に面会に行きましょう。家族と話ができるだけで、被疑者は非常に安心するものです(ただし、後述のように、ご家族が面会にいくよりも先に弁護士に面会してもらうことが大切です)。

家族は、平日の昼間に警察署で面会を申し込むことができます。
1回の面会時間は15~20分程度しかないので、この間、差し入れの希望、職場への連絡などについて、要領よく話す必要があります。

ただし、弁護士以外との面会には警察官が立ち会い、事件の内容に関する会話は一切禁止されます。事件の内容を聞き出そうとすると面会を中止されてしまいますから、注意が必要です。

なお、逮捕中や、接見禁止になっている勾留の場合には、家族でも面会をすることができません。

接見禁止とは、勾留中に弁護人以外の人との面会や、書類の授受を禁止すると裁判所が決定をしている状態のことです。
接見禁止は、刑事訴訟法81条によって認められており、逃亡のおそれ、又は、罪証隠滅すると疑うに足りる理由がある場合に裁判所が決定することができることになっています。

例えば、共犯者がいて口裏合わせをするのではないかと考えられる場合などです。
大麻や覚せい剤などの薬物事件では入手先という共犯者がほぼ必ず存在するので、接見禁止とされる例が多くなります。

(2) 差し入れをする

逮捕の段階では面会はできませんが、家族からの差し入れは逮捕時から受け入れてくれることが多いです。
現金の他、衣服や本、手紙などを差し入れることができます。特に現金は勾留中に必要になることが多いので喜ばれるでしょう(留置場の中でも、食べ物や歯ブラシなどの物品を購入することができます)。

なお、勾留段階に接見禁止がついていれば、手紙などの書類を差し入れすることはできません。

(3) 早期に弁護士に面会に行ってもらう

もっとも大事なことは、できるだけ早く弁護士に面会に行ってもらうことです。
逮捕後、第1回目の弁護士による面会は非常に重要な意味を持っています。

逮捕された本人は、自分にどのような権利が保障されているか、今後どのように手続が進行するのか、どんな処分が待っているのか、何も分からず不安だらけです。そのような状態で、「素直に認めれば、大ごとにしないですぐに帰れる」などと警察官から言われれば、やってもいない犯罪を認めてしまう危険すらあります。

よって、できる限り早く弁護士の第1回面会を実施して、刑事手続の仕組みを説明し、黙秘権などの権利があること、訊かれたこと以外は話すべきではないこと、話した内容と異なる供述調書への署名は拒否することなど、取り調べを受ける上での注意点もアドバイスし、今後の見通しを教えることで、精神的な安定を取り戻させることが非常に重要です。

早く弁護士が事情を把握すれば、示談交渉のスタートも早く切ることができ、示談成立による早期の釈放や不起訴の可能性も高まります。不起訴となれば前科がつくことはありません。

被疑者を少しでも早く釈放し前科を免れるためには、早急に刑事事件について相談できる弁護士を探して、本人との面会を依頼すべきなのです。

3.まとめ

家族が逮捕された場合、勾留決定まで家族に連絡が行かないこともあります。
そのような場合には、なおさら迅速な対応が大事です。

家族の逮捕を知ったら、お早めに刑事弁護経験豊富な泉総合法律事務所の弁護士に法律相談をしていただければと思います。

なお、家族が逮捕されることについて、他の家族への法律的な影響はありません。家族だからという理由で身体を拘束されたり、被疑者本人の代わりに罰金を支払う義務が生じたりすることはありませんので、ご安心ください。

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