暴行・傷害 [公開日]2017年8月14日[更新日]2025年6月13日

脅迫罪になる言葉|成立要件とは?

脅迫罪になる言葉|成立要件とは?

酔った勢いや、ついかっとなってしまった場合などに、「脅迫罪で検挙されてしまった」と弁護士相談に来られる方は実は多くいます。

暴力事件の一種としてよく耳にする「脅迫罪」ですが、具体的にどのような言葉が脅迫罪となるのでしょうか。
本コラムにおいて、は、脅迫罪の成立要件に加え、脅迫罪を犯して被疑者(加害者)として逮捕されてしまった場合にどうすれば良いのか、弁護士に弁護依頼をするとどのような弁護活動がされるのかという流れまでを解説します。

1.脅迫罪とは?

(1) 脅迫罪の成立要件

「脅迫」とは、「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知」することをいいます。

脅迫 刑法第222条
一 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
二 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

例えば「殴るぞ」「殺してやる」「家を燃やしてやる」などと恫喝(どうかつ)し、相手に恐怖感を与えることが典型です。
また、相手自身ではなく、相手の親族の「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知」した場合にも成立します。

脅迫罪は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます。

害悪を告知して恐怖心を生じさせる行為は、多くの場合、それによって被害者に何らかの行動を実行させたり、実行を諦めさせたりする目的で行われます。それ故、脅迫罪は「人の意思決定の自由」を保護法益とする犯罪と理解する考え方が有力です。

ただ刑法は、害悪を告知する行為それ自体を処罰対象としており、被害者の意思決定を侵害する目的や実際に侵害されたことを犯罪の成立要件とはしていません。
このため安全感・安心感・私生活の平穏が保護法益であると理解する立場も少なくありません。

いずれにしても、害悪を告知しただけで犯罪が成立し、実際に被害者が恐怖を感じたか否か、被害者の何らかの意思決定が害されたか否かは、犯罪の成否には無関係です。

【「死んでやる」は脅迫罪?】
条文で規定されているとおり、害悪を加えるとする相手方は被害者本人または被害者の親族に限られています。「死んでやる」といった場合の「死ぬ」対象は告知者本人となります。そのため、「死んでやる」というだけでは、脅迫罪は成立しないことになります。これと同様の理由で、「お前の友人のAを殺すぞ」や「あなたの恋人のBが大切にしているブランド品を壊すぞ」という発言も、脅迫罪には該当しないことになります。
もっとも、「お前の自宅で焼死してやる」となれば、被害者の生命・身体あるいは財産への危害が告知されていると言えるようにもなります。

(2) 脅迫罪と恐喝罪の違い

恐喝 刑法249条
一 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
二 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

「恐喝」とは、相手の犯行を抑圧しない程度の暴行・脅迫により被害者を畏怖させて財産を交付させることをいいます。恐喝罪は財産犯であり、害悪の告知は「恐怖させて財物を交付させること」に向けられている必要があります。
「殴られたくなければ金を出せ」などと言い、相手に金を払わせたというような行為は、典型的な脅迫による恐喝に当たります。

また、貸したお金を返してほしいと相手に請求をしたというような場合にも、その手段が暴行や行き過ぎた脅かしであり、社会的に相当でなく権利行使として許される範囲を超えると評価される場合は恐喝になってしまう場合があります。

恐喝罪は、10年以下の懲役に処せられます(刑法249条1項)。罰金刑はありませんので、起訴をされた場合は公開の法廷で正式な刑事裁判を受けなくてはなりません。
相手を畏怖させるだけでなく、財産的被害も生じさせることに向けられていることから、法定刑も脅迫罪よりも重くなっています。
※脅迫罪には罰金刑があるため、正式な裁判には発展せず書面だけの手続きで罰金を命じられる略式手続で済む場合があります。

すなわち恐喝罪における暴行・脅迫は違法に財産を得るための手段であり、その主たる保護法益は被害者の財産権なのです。

脅迫罪 恐喝罪
構成要件 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知すること。 相手を犯行を抑圧しない程度の暴行・脅迫で畏怖させて財産を交付させること。
刑罰 2年以下の懲役又は30万円以下の罰金 10年以下の懲役
公訴時効 3年 7年
未遂罪の有無

2.脅迫を行ってしまった際に取るべき行動

(1) 釈放・不起訴のための弁護士依頼

脅迫罪を犯してしまい、被害者が警察署に被害届を提出したケースでは、「逮捕」される可能性があります。
逮捕されると、留置場や拘置所で最大23日間身体拘束されることになり、会社の解雇や退学などの危険にさらされます。

そのような事態にならないように、脅迫で逮捕されたら直ちに弁護士に刑事弁護を依頼し、早期釈放にむけた弁護活動を依頼してください。

泉総合法律事務所では、逮捕直後に弁護を依頼いただければ、検察官に身元引受書や上申書、弁護士意見書を提出して、裁判所へ勾留請求しないように働きかけます。同じように、裁判官にも勾留を決定しないように働きかけます。
また、勾留が決定された場合にも、諦めずに準抗告を申し立て、裁判官が下した勾留決定の取り消しを求めます。

準抗告とは?早期釈放を目指すなら泉総合法律事務所へ!

[参考記事]

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(2) 被害者との示談交渉

弁護活動は、それだけにとどまりません。
脅迫罪は被害者がいる犯罪です。被害者としては、脅迫による精神的な苦痛・損害が生じています。

被疑者は、民事上の責任として慰謝料の支払いや被害弁償をする義務を負っていますから、弁護士が被害者との示談交渉を行って、示談金の支払で被害を賠償するとともに、被害者から許しを得る示談を成立させることが非常に重要です。

起訴・不起訴を決めるにあたって、検察官は、被疑者が被害者に対して被害回復の措置をしたかどうか、それによって被害者の処罰感情が沈静化されたか否かを重視します。
初犯であれば、被害者との示談が成立していれば、脅迫罪についてはよほど特別の事情がない限り不起訴となる可能性が高いです。

示談金の相場は一概には言えませんが、刑事弁護の経験豊富な弁護士であれば、過去の例から適正な金額を判断できますので、弁護士とよく相談することをお勧めします。

3.罰金でも前科!前科回避のため泉総合法律事務所へ

前科で経歴にキズをつけることは、皆さんが思っている以上に大きな悪影響を及ぼすものです。
もし、脅迫や恐喝行為を行ってしまい検挙されたら、刑事弁護の経験が豊富な弁護士に刑事弁護を依頼することをお勧めします。

泉総合法律事務所は、様々な刑事事件の弁護活動に携わってきており、示談交渉も多数の成功事例があります。脅迫・恐喝の弁護実績も豊富ですので、弁護士・泉義孝までどうぞ安心してご相談ください。

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