不同意性交等 [公開日]2018年4月21日[更新日]2025年4月7日

不同意性交等罪とは?|刑法改正による変更点と構成要件

不同意性交等罪とは?|刑法改正による変更点と構成要件

2023年7月13日、適用各種性犯罪に関する抜本的な改正がありました。
近年は性犯罪が社会問題視されているという側面もあり、性犯罪の厳罰化が行われたのです。

今回は、この中でも重大な性犯罪となる、新設「不同意性交等罪」について、刑法の内容を解説します。

1.不同意性交等罪とは?

2023年の刑法改正では、従来の「強制性交等罪」について、「不同意性交等罪」への名称変更と構成要件の修正が行われました。
(※なお、過去の「準強制性交等罪」も「不同意性交等罪」に統合されています。)

かつての強制性交等罪は、被害者の抵抗を著しく困難にして性交等をした場合に成立すると解されていました。
しかし、被害者の抵抗可能性の程度が争われることが多く、本来処罰すべき行為を適切に処罰できないとの批判がありました。

そこで、より幅広い行為を「不同意性交等罪」による処罰の対象とすることで、実質的な性犯罪の厳罰化がされています。

不同意性交等罪は、その名の通り相手の同意なく性交等(肛門性交又は口腔性交を含む)をすることです。被害者の性別は問いません。

(1) 不同意性交等罪の構成要件

「不同意性交等罪」は、以下の①②の要件を両方満たす場合に成立します。

①以下のいずれかの行為(=性交等)をしたこと

  • 性交
  • 肛門性交
  • 口腔性交
  • 膣・肛門に身体の一部(陰茎を除く)または物を挿入する行為

②「次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じ」ていること(=不同意)

  1. 暴行もしくは脅迫を用いること又はそれらを受けた
  2. 心身や身体の障害を生じさせること又はそれがある
  3. アルコールもしくは薬物を摂取させること又はそれらの影響がある
  4. 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にある
  5. 不意打ちなど、同意しない意思を形成、表明、全うするいとまがない
  6. 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、もしくは驚愕させること、又はその事態に直面して恐怖し、もしくは驚愕していること
  7. 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがある
  8. 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮している

他にも、「行為がわいせつなものでないとの誤信をさせ、もしくは行為をする者について人違いをさせ、またはそれらの誤信・人違いをしていることに乗じて性交等をした」場合は不同意性交等罪となります。
また、性交等の相手が16歳未満ならば、たとえ相手が同意をしていたとしても犯罪が成立します(※相手が13歳以上16歳未満の場合は、5歳以上年上の者のみが処罰の対象となります)。

具体的に、以下のような行為が不同意性交等罪にあたります。

  • 女子を羽交い絞めにして、抵抗できない状態にしてから性交に及んだ
  • 男子にナイフを突きつけて「騒ぐと殺すぞ」と脅して肛門性交に及んだ
  • 何度も相手を殴打して、抵抗する気力を失わせてから性交に及んだ
  • 会社の上司に当たる者がその地位を利用して嫌がる部下と性交に及んだ

2.不同意性交等罪の特徴

(1) 「不同意」を類型化し、処罰範囲を拡大

新しい刑法では、不同意性交等罪を基礎づける「不同意」が認められる行為・事由を具体的に類型化した点が大きな特徴と言えます。

「不同意」の事由は、過去の刑法における強制性交等罪・準強制性交等罪よりも拡大されており、実質的に処罰範囲が広げられています。

(2) 性交同意年齢を13歳から16歳に引き上げ

過去の刑法における強制性交等罪では、13歳未満の者に対して性交等をした場合、暴行・脅迫を用いていなくても処罰されました。
この「13歳」というボーダーラインは、性交相手を自分の判断で選べるという意味で「性交同意年齢」と呼ばれることがあります。

快晴刑法では、性交同意年齢が13歳から16歳へと引き上げられました。これにより、16歳未満の者に対する性交等は、不同意事由が存在しなくても不同意性交等罪によって処罰されます(改正刑法案177条3項)。

(3) 公訴時効期間を10年から15年に延長

刑法改正と同時に盛り込まれた刑事訴訟法改正により、不同意性交等罪の公訴時効期間は、従来の10年から15年に延長されました。

性犯罪は、二次被害に対する恐怖などが原因で、刑事告訴が遅れてしまうケースがよくあります。
公訴時効期間の延長には、性犯罪被害者の泣き寝入りを減らす効果があると考えられます。

3.不同意性交等罪の刑罰

不同意性交等罪の刑罰は、5年以上20年以下の有期拘禁刑です。罰金刑はありません。
また、不同意性交等罪は非親告罪であるため、起訴前に示談が成立すれば必ず不起訴になるとは言えません。

一般的に、不同意性交等罪の量刑を行う場合、次の項目を基準として総合的に判断します。

  • 性交等の程度
  • 性交等の態様(悪質性、計画性など)
  • 性交等の動機
  • 被害者の処罰感情
  • 示談の有無・示談金額
  • 前科や前歴の有無

実務上では、被疑者との示談が成立しなかった場合にはほぼ間違いなく公判請求され、裁判となると考えるべきです。裁判になった後は犯行態様の悪質さなどが量刑において問題となりますが、不同意性交等罪の場合には初犯であっても実刑となってしまう可能性もあります。もし、同種の前科などがあれば、その可能性は高まるといえます。

なお、不同意性交等罪は酌量減軽(刑法66条)がなされない限り執行猶予が付きません。

4.不同意性交等罪で逮捕後の流れ

(1) 逮捕・勾留

不同意性交等罪は性犯罪の中でも極めて悪質であると考えられているため、事件が発覚すると、被疑者は警察により逮捕されてしまう可能性が高いと言えます。

逮捕された被疑者は、警察での取り調べや捜査を受けた後、48時間以内に検察庁に身柄を送致されます。
検察官は、警察から身柄を受け取ってから24時間以内(かつ逮捕から72時間以内)に被疑者を釈放するか、裁判官に勾留請求をしなくてはなりません。
勾留とは、逮捕の後、逮捕に引き続き身体を拘束することです。

勾留請求を受けた裁判官は、被疑者に対して勾留質問を行って、その当否を審査します。
通常は、不同意性交等罪を犯した疑いがあり、住居不定、無職など、罪証隠滅や逃亡のおそれがあると判断される場合には、裁判官は被疑者の勾留を認めます。

なお、勾留期間は原則10日間ですが、やむを得ない場合には更に10日以内の延長が認められることもあります。
さらに、起訴された場合には、保釈が認められない限り身体の拘束が続くことになります。

(2) 逮捕・勾留中の被疑者と家族の面会

逮捕中は、弁護士以外の人が被疑者と面会することができません。
被疑者は警察署の留置場等に留置され、外部との連絡も自由にできなくなりますので、逮捕中の被疑者と連絡を取るためには弁護士に依頼するしか方法がないことになります。

他方で、逮捕後の勾留中は家族も面会できますが、家族や親族、友人などの面会には多くの制限があります。
一般的な例でいいますと、平日の日中の時間帯でかつ時間制限(15~20分程度)、回数制限(1日1回)、人数制限(1回の面会で3人まで)、警察官等の立会いといった条件があります。さらに、接見禁止等の決定がなされますと、面会できるのは弁護士だけとなります。

(3) 起訴・不起訴の判断

検察官は、勾留の期間が満了するまでに、被疑者を起訴するか否かの判断をし、起訴しない場合には釈放しなくてはなりません。

被疑者を起訴するか否かは、犯罪の重大性、犯行態様の悪質性、被疑者の前科や反省の有無、被害者との示談の成立の有無等が考慮されます。

起訴されて有罪判決が下されると、例えそれが罰金刑でも前科がついてしまいます。

4.被害者との示談交渉の重要性

不同意性交等罪において被疑者の処分結果に最も影響を与えるのが、被害者との示談です。
不同意性交等罪で逮捕された人に有利となる結果を導くには、いかに早期に示談を成立させることができるかにかかっています。

しかし、示談となりますと、被害者の心情に配慮しなければなりませんので、殊に被害者の心理的ダメージが大きい性犯罪ではかなり高度な交渉ごとになります。
よって、示談交渉は刑事弁護経験豊富な弁護士に委ねることが適切です。

弁護士に依頼をすれば、この種の性犯罪の事犯でも示談が成立するケースは格別珍しいものではありません。

示談成立が早ければ早いほど、不起訴や早期の釈放など、被疑者・被告人に有利な処分結果が出ることが期待できます。

ご相談内容「示談したい

5.性犯罪を犯してしまったら弁護士にご相談を

性犯罪については年々厳罰化が図られています。
捜査機関に性犯罪で検挙されてしまった場合、あるいは逮捕されてしまった場合は、速やかに弁護士・泉義孝へご相談ください。適切な弁護活動により、早期に身柄解放を実現できるだけでなく、被害者との示談交渉により処罰を軽くできる可能性があります。

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