ストーカー [公開日]2018年8月17日[更新日]2025年6月5日

警察からストーカー警告された!納得いかない場合の正しい対応

警察からストーカー警告された!納得いかない場合の正しい対応

近年、ストーカーによる犯罪が増加しています。

ストーカー行為は、被疑者(加害者)が自覚なしに行っているケースも多いです。
どこからがストーカーなのか?」も曖昧であるため、被疑者の方は予想外に警察から警告されることがあるかもしれません。

では、ストーカー規制法違反で警告を受けた場合には、どのように対応すれば良いのでしょうか?
また、ストーカー行為ではないと思われる場合(虚偽の通報をされた場合)、ストーカー扱いを訴えることはできるのでしょうか?

1.ストーカー規制法とは?

ストーカー規制法は、正式名称を「ストーカー行為等の規制に関する法律」と言い、その名の通りストーカー行為を規制する法律です。
では、「ストーカー行為」とは、どのような行為を指すのでしょうか?

ストーカー規制法では、(1)同一の特定の相手(男女問わず)に対して、(2)恋愛感情その他の好意の感情、あるいはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、(3)ストーカー規制法によって定められている「つきまとい等」や「位置情報無承諾取得等」の行為を、(4)反復することを「ストーカー行為」と定義しています(同法2条3項)。

そして、法定された「つきまとい等」の行為をして、身体の安全や住居等の平穏、名誉、行動の自由などが害される「不安」を覚えさせてはならないとしています(3条)。

ストーカー規制法による規制の対象となる行為について、詳しくは以下のコラムをご覧ください。

ストーカー規制法違反に当てはまる?どこからがストーカー行為か

[参考記事]

ストーカー規制法違反に当てはまる?どこからがストーカー行為か

2.ストーカーで警察からの警告を受ける可能性

警察署長などは、①つきまとい等を受けた者からの申し出を受け、②つきまとい等の行為があり、③さらに反復してその行為を行うおそれがあると認められる場合には、行為者に対して、「さらに反復してその行為を行ってはならない」と厳重注意・警告することができます(4条1項)。

警告は、行為者に警告書を交付して行うものとされています。
ただし、緊急を要する場合には、警告を口頭で行い、その後可能な限り速やかに警告書を交付することになっています。

警告書には、上記の1号から8号までの「つきまとい等」の行為を行ってはならない旨及び警告の理由が記載されています。

このような警告制度は、行為をしている者は自分の行いが「つきまとい等」に該当することを自覚していない場合も珍しくないことから、まずは「警告」で自覚を促し、自発的に問題行動を止めてくれることを期待したものです。

この警告を受けた後に、これに従わず更に「つきまとい等の行為」を反復した場合でも、「警告に違反したこと」それ自体に罰則があるわけではありません。
しかし、「ストーカー行為をした者」には罰則がありますので、結局、警告に違反すれば刑事事件になる可能性は高まります。

3.警告を無視してストーカーを続けたらどうなる?

(1) 禁止命令を受ける

警察の警告があっても「つきまとい等」の行為を続ける者(規制法第3条違反の者)に対しては、都道府県公安委員会は、被害者の申出または職権によって禁止命令を発することができます(同第5条)。

「つきまとい等の行為」をさらに反復して行ってはいけないという禁止命令だけではなく、つきまとい等を防止するために必要な命令も行うことができます(同第5条1項)。
例えば、写真やビデオテープを送りつける行為(同第2条1項8号)が反復された場合に、当該、写真のネガやビデオのマスターテープの廃棄を命じることなどです。

この禁止命令は行政処分ですから、命令が出される前には、加害者を呼び出して言い分を聞く「聴聞」という手続きがあります(同第5条2項)。

ただし、緊急の必要があると認めるときは、聴聞又は弁明の機会の付与を行わないで発令が可能であり、発令から15日以内に意見聴取を実施すれば足ります(同第5条3項)。

禁止命令の要件は、①つきまとい等の行為がありそれによって被害者が4つの不安を覚えたこと②その行為を行っている者がさらに反復してその行為を行うおそれがあると認められる場合となっています(同第5条1項柱書)。

禁止命令等の有効期間は1年ですが、被害者の申出により又は職権で、1年ごとに聴聞を経て禁止命令等の更新ができることになっています(同第5条8項乃至10項)。

(2) 逮捕され刑事罰が科される

ストーカー行為は刑事事件になる可能性があります。

第18条
ストーカー行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

第19条
1 禁止命令等(第5条第1項第1号に係るものに限る。以下同じ。)に違反してストーカー行為をした者は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処する。
2 前項に規定するもののほか、禁止命令等に違反してつきまとい等をすることにより、ストーカー行為をした者も、同項と同様とする。

第20条
前条に規定するもののほか、禁止命令等に違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

第19条2項は、禁止命令前の「つきまとい等の行為」それ自体は未だ「ストーカー行為」に至っていなかったものの、禁止命令後に同命令に違反して「つきまとい等の行為」を行い、禁止命令前の行為と禁止命令後の行為とを通じて評価すると一連の行為が「ストーカー行為」に該当するというケースを対象として加重処罰しています。

一方、第20条はストーカー行為を処罰する規定ではありません。

たとえば禁止命令に違反したが、それが行為態様としては相手に不安を覚えさせる方法ではなかったと評価される場合、それ自体は、「ストーカー行為」ではありません。
しかし、命令違反を放置するべきではありませんから罰則が設けられました。

なお、これらは、告訴がなくても公訴を提起する(刑事裁判を起こす)ことができる非親告罪になっています。

【警告を受けて「つきまとい等」をやめれば処罰されない?】
現実には、警告や禁止命令を受けて素直にストーカー行為をやめた加害者が刑事告訴される可能性は少ないと思われます。被害者にとって、ストーカー行為がやんだ以上はもう一切関わりたくないというのが本音だからです。
したがって、警告や禁止命令には素直に従うことが最も大切です。万が一刑事告訴されたとしても、警告や禁止命令に従って速やかに行為をやめたという事実は有利な情状として扱われるでしょう。

4.警告を受けたらするべきこと

稀に「ストーカー扱いを受けたから相手を訴えたい」などと考える方もいらっしゃいますが、警告を受けたならばストーカー行為を速やかにやめるべきです。警告を無視すれば、被害者は禁止命令の申し出を行うでしょう。

「相手に誤解されている」などと言って、メールや電話でさらに連絡を取ろうとするような行為は絶対にしてはいけません。それ自体が「つきまとい等の行為」と評価されかねません。

警告が出されたことに納得いかない場合だけでなく、相手と連絡を取らなければいけない正当な理由がある場合(貸したお金を返してほしい、被害者の家に残している自分の荷物を引き取りたいなど)でも、相手と直接連絡を取ろうとせず、弁護士に相談・依頼し、代理人として交渉に当たってもらったり、物品返還請求訴訟や金銭支払請求訴訟など法的に正当な手段を検討するべきです。

また、相手が被害届を提出している場合、これを取り下げてもらうためには弁護士を代理人として示談交渉を行うことが効果的です。

さらに、ストーカー行為に関して慰謝料の請求を受けたような場合でも、弁護士に相談して慰謝料の金額の妥当性などを判断してもらうことが有効です。

5.ストーカー行為をやめられない場合の対応

前述のとおり、警察から警告を受けると、ほとんどのケースではストーカー行為をやめると言われています。自分がストーカー行為を行っているという自覚がなかった人でも、警告によってそれを認識するからです。
また、警告を受けたことに納得がいかない場合でも、刑事罰を受けるリスクがあるのですから、それ以上つきまとい等の行為を反復しないのが通常と言えるでしょう。

しかし、警察から警告を受けてもストーカー行為をやめられない場合もあります。

このような人は、「相手は自分のことを好きなはずだ」「2人で話せばわかる(相手は周囲の人に騙されているだけだ)」といった妄想を抱いて自己正当化をし、自分を「ストーカー」だと認識できません。これを「認知の歪み」と呼びます。
このような場合、「刑事罰」というだけでは抑止力にならないことがあります。

ストーカーは、常に精神疾患と診断されるわけではありませんが、精神科医等による治療へ積極的に誘導するという取り組みも行われています。

報道によると、ストーカーに対して警察が医療機関での治療を働きかけるケースが近年増加し、2019年は全国で824人に登ったとされています。再発の恐れがある加害者に対して、警察が受診をすすめ、同意を得て、精神科医やカウンセラーにつなぐ取り組みがなされているとのことです(※日本経済新聞(2020年11月4日)「ストーカー治療の要請最多・警察庁、19年は824人」より)。

ストーカー行為をどうしても止められないという方は、専門的な治療(医師との個別精神療法、自助グループなどによる集団療法等)を検討するべきです。

6.まとめ

ストーカー行為を行っているとして警告を受けた人は、速やかに「つきまとい等」に当たる行為をやめましょう。逆上して仕返しを考えてはトラブルが深刻化し、場合によっては逮捕・刑事罰となるケースもあります。
今後の流れに不安がある場合には、一度弁護士に相談するべきです。

泉総合法律事務所には、ストーカー行為を疑われて検挙されてしまったという方や、そのご家族からも多くご相談を受けております。

刑事事件は早めの対処が大切です。初回のご相談は無料となっておりますので、泉総合法律事務所の弁護士・泉義孝に是非一度ご相談ください。

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