ストーカー [更新日]2025年10月29日

ストーカーの接近禁止命令が出された!違反するとどうなるのか

ストーカーの接近禁止命令が出された!違反するとどうなるのか

裁判所からストーカー規制法に基づく接近禁止命令が出された場合、その重大性を理解していますでしょうか?
この命令に違反すると、刑事罰の対象となり、逮捕される可能性があります。

本コラムでは、接近禁止命令違反の具体的な罰則内容と、違反と見なされる行為、そして命令が出された後に取るべき適切な対応について詳しく解説します。

1.ストーカー規制法とは?

ストーカー規制法(正式名称:ストーカー行為等の規制等に関する法律)は、2000年に制定された法律で、特定の人物に対する執拗なつきまといや嫌がらせ行為を規制するものです。

この法律では、恋愛感情やそれが満たされなかったことへの怨恨の感情を充足する目的で、相手やその家族などに不安を覚えさせるような行為を「つきまとい等」と定義しています。

その内容について、具体的にはストーカー規制法2条1項において掲げられています。つきまとい、待ち伏せ、押しかけ、見張り、無言電話、連続した電話・メール・SNSメッセージの送信、名誉を傷つける行為などが該当します。

1号 つきまとうこと、待ち伏せすること、進路に立ちふさがること、住居、勤務先等の付近において見張りをしたり、みだりにうろついたりすること、住居や勤務先等に押しかけること
2号 対象者の行動を監視していると思わせるような事項を告げること等
3号 面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること
4号 著しく粗野又は乱暴な言動をすること
5号 無言電話をかけること。相手が拒否しているのに、連続して(短時間や短期間に何度も)、電話をかけたり、FAXを送信したり、電子メールの送信等をしたりすること
6号 汚物などを送りつけること
7号 名誉を害する事項を告げること
8号 性的羞恥心を害する文書・画像・動画などを送信すること

そして、これらの「つきまとい等」の行為を同一の者に対して繰り返して行うことが「ストーカー行為」と定義されます。ここでいう「繰り返し」とは、必ずしも同じ種類の行為である必要はなく、異なる類型の「つきまとい等」を組み合わせた場合も該当します。
例えば、1回目は自宅付近での待ち伏せ、2回目は執拗なメッセージ送信というように、異なる行為であっても、それらが相手に不安を与える目的で反復されていれば「ストーカー行為」として規制対象となります。

ストーカー行為は、警察による警告や公安委員会による禁止命令等の対象となり、さらに悪質な場合や緊急性が高い場合には、被害者の申し立てにより裁判所が接近禁止命令などの保護命令を発令することができます。

なお、「つきまとい等」行為自体には罰則はありません。
ただし、「つきまとい等」行為を反復することで「ストーカー行為」と認定された場合や、禁止命令を受けたにもかかわらず命令に違反して「つきまとい等」行為を行った場合には、2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金が科されます(18条)。

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2.公安委員会の禁止命令等と裁判所の接近禁止命令

ストーカー行為に対しては、段階的に異なる法的措置が取られます。

公安委員会の禁止命令等と裁判所の保護命令(接近禁止命令)は、どちらか一方のみが発令される場合もあれば、両方が同時に効力を持つ場合もあります。いずれの命令が出ている場合でも、違反すれば刑事罰の対象となることに変わりはありません。

重要なのは、どちらの命令であっても、それが発令された時点であなたの行為が法的に許されない段階に達しているということです。命令の内容を正確に理解し、絶対に違反しないことが求められます。

(1) 公安委員会による禁止命令等

ストーカー行為があった場合、まず警察本部長または警察署長が加害者に対して「警告」を行うことがあります。これは行政指導であり法的拘束力はありませんが、今後同様の行為を繰り返さないよう注意を促すものです。

この警告に従わない場合や、警告では不十分と判断される場合、公安委員会が「禁止命令等」を発令します。これは行政処分であり、以下のような内容が命じられます。

  • つきまとい等の行為の禁止
  • 特定の場所や時間帯における行為の禁止
  • 一定の距離を保つこと

公安委員会の禁止命令等に違反した場合、2年以下の懲役または200万円以下の罰金という刑事罰が科されます。

警察からストーカー警告された!納得いかない場合の正しい対応

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(2) 裁判所による接近禁止命令等(保護命令)

裁判所の接近禁止命令等は、被害者からの申し立てに基づいて発令される「保護命令」の一種です。
これは公安委員会の禁止命令等よりも強力で、公安委員会の禁止命令等では被害を防止することが困難であり、緊急の必要性があり、かつストーカー行為により被害者の身体の安全、住居等の平穏、名誉、行動の自由が著しく害されるおそれがある場合に発令されます。

裁判所は、主に以下のような保護命令を発令することができます。

  1. 接近禁止命令:被害者の住居、勤務先、学校その他通常所在する場所の付近をうろつくことの禁止
  2. 退去命令:被害者と共に生活の本拠としている住居からの退去および当該住居付近のうろつきの禁止

接近禁止命令は原則として6ヶ月間、退去命令は2ヶ月間有効です。期間満了後も必要があれば、被害者は再度の申し立てを行うことができます。

裁判所の保護命令に違反した場合も、やはり2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科されます。
公安委員会の禁止命令等違反と同じ刑罰ですが、裁判所命令違反はより重大な違法行為として扱われ、実際の量刑も重くなる傾向があります。

3.ストーカー規制法違反で逮捕されてしまったら

もし接近禁止命令等に違反して検挙・逮捕されてしまった場合、迅速かつ適切な対応が必要です。

まず、逮捕されると警察による取り調べが始まりますが、被疑者には黙秘権があります。焦って不正確な供述をしたり、不利な内容を話してしまったりすることは避けるべきですので、慎重な対応を心がけてください。

逮捕後は、警察に「弁護士を呼びたい」と頼むことができます。もし知っている弁護士や依頼をしたいと考えている弁護士がいる場合は、その弁護士を直接呼んでもらうこともできるかもしれません。
あるいは、警察から逮捕の連絡を受けた家族が弁護士に依頼するケースも多いです。

(1) 弁護士のサポートを受けながら対応する

ストーカー規制法違反で逮捕された場合、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。
刑事事件・ストーカー事件の弁護経験が豊富な弁護士は、主に以下のようなサポートで被疑者の方の権利を守ります。

  • 取り調べへのアドバイス
    取り調べでどのように対応すべきか、何を話すべきか、何を黙秘するべきか等について具体的な助言を受けられます。
  • 早期釈放のための弁護活動
    弁護士は、意見書などを作成して勾留の必要性がないことを具体的に主張することで、早期釈放の実現に向けて活動します。
  • 被害者との示談交渉
    ストーカー事案において、被害者との示談は非常に重要です。弁護士が代理人として被害者側と交渉し、謝罪・賠償を行うことで、処罰の軽減や不起訴処分につながる可能性があります。
  • 刑事手続きの見通しを立てて対策を行う
    起訴される可能性、予想される刑罰、裁判になった場合の公判での戦略など、今後の見通しについて専門的に検討し、アドバイスを受けられます。
  • 再犯防止のサポート
    ストーカー行為が止められない場合、カウンセリングや治療プログラムへの参加を勧めるなど、根本的な問題解決と再犯防止に向けた助言も行います。これは、量刑判断においてもプラスの要素となります。

(2) 反省と更生の姿勢を示す

弁護士に対応を任せっきりになるのではなく、被疑者本人も逮捕後の対応として、真摯に反省し、更生に向けた具体的な行動を取ることが重要です。
自分の行為が被害者にどれだけの恐怖や苦痛を与えたかを理解した上で心から反省し、更生しようとするために努力しているという姿勢は、裁判において情状酌量の材料となり、執行猶予や減刑につながる可能性があります。

また、依存症の疑いがある場合は、その治療も併せて行うことが大事です。
専門家によるカウンセリングや治療を受けながら、「被害者の住む地区には行かない」「自ら引っ越しをする」など、二度と同じ過ちを繰り返さないための具体的な計画を立てるようにします。

一方で、以下の行為は絶対に避けなければなりません。

  • 被害者に直接または間接的に連絡を取る
  • 証拠を隠滅しようとする
  • 被害者や関係者に口止めを依頼する
  • SNSなどで事件について発信する

4.まとめ

ストーカー規制法に基づく接近禁止命令が発令された時点で、あなたの行為は法的に許されない段階に達しています。これらの命令に違反すれば、2年以下の懲役または200万円以下の罰金という重い刑事罰が科され、逮捕される可能性も高くなります。

もし逮捕されてしまった場合は、すぐに弁護士に相談してください。弁護士は取り調べへの対応、早期釈放の実現、被害者との示談交渉など、あなたの権利を守るために全力でサポートをします。同時に、自分の行為を深く反省し、カウンセリングなどを通じて更生への道を歩むことが重要です。

ストーカー規制法違反を犯してしまいお悩みの方、家族が逮捕されてしまったという方は、どうぞお早めに泉総合法律事務所にご相談ください。

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