逮捕・監禁罪とは|成立するケースと正しい対応方法
2025年6月、政治団体党首の演説中に批判の声をあげた男性に対し、その党首が「私人逮捕」を指示し、党首の支援者2名が男性の首に腕を絡ませるなどして怪我を負わせた疑いがあるとして、党首と支援者2名が「逮捕致傷罪」の容疑で書類送検されました(※読売新聞オンライン2025年12月1日記事)。
逮捕罪は、監禁罪と同一の条文に定められた犯罪であり、通常「逮捕監禁罪」としてひとまとめに説明されます。
本コラムでは、この逮捕監禁罪(逮捕監禁致傷罪)とはどのような犯罪なのか、適法な「私人逮捕」との違い、万が一家族が逮捕監禁罪で逮捕された場合の対処方法などについて解説します。
1.逮捕・監禁罪とはどのような罪なのか?
逮捕監禁罪(刑法220条)は、人の身体の「場所的な活動」の自由を侵害する犯罪です。
より具体的には、「一定の場所から他の場所へ移動する自由」を保護法益(刑法によって守ろうとしている利益)としています。
(1) 逮捕とは?
逮捕とは、人の身体に直接的な支配を設定して、場所的な活動の自由を害することです。
例:後ろから羽交い締めにしたり、「動くな!」と刃物を突きつけたりして、一定時間、そこから動けなくする行為
例えば、被害者の両手に鍵のかかる手錠をかけただけで、被害者が自由に場所を移動できる状態であれば、逮捕監禁罪ではありません(※暴行罪に問われる可能性はあります)。
(2) 監禁とは?
監禁とは、人が一定の場所から脱出することを不可能にしたり、著しく困難にしたりすることです。
例1:入口以外に脱出口のない倉庫に被害者を入れて、外部から施錠する行為
例2:被害者を同乗させた車を走行させ、飛び降りなければ、車から出られない状態とする行為
脱出を不可能・困難にする手段は、施錠や緊縛などの物理的な方法だけでなく、脅迫などの心理的な手段で脱出を困難にする場合も含みます。
【裁判例】東京高裁昭和40年6月25日判決
被告人が、被害者女性に対し、カミソリや果物ナイフを突きつけるなどし、「俺は刑務所に入ってもこの気持は変らない。どこにかくれても必ず探し出してやってやる」「俺はてめえの顔を切るといったら必ず切るからな」などと告げ、被害者が後難を恐れる余り、その場を脱出しようにもできなくさせた事案です。裁判所は、この行為を監禁罪と認めました。
この事案では、被害者は室内から鍵をはずして外に出ることも物理的には可能であり、また被告人は、短時間ながら外出したり眠ったりして、被害者を常時監視していたものではありませんでしたが、裁判所は、それでも被害者は恐怖のあまり脱出が不可能だったと判断しています。
【逮捕と監禁を区別する実益はない】
行為者が被害者の身体を直接に拘束している場合が「逮捕」、その場所から出られないという場合が「監禁」と言えますが、逮捕と監禁は、同じく逮捕監禁罪というひとつの条文で禁止され、同一の罰則が適用される犯罪なので、両者を区別する実益はありません。
被害者を逮捕した後に引き続き監禁した場合には、包括して「逮捕監禁罪」というひとつの犯罪が成立するだけであり、逮捕罪と監禁罪が別々に成立するものではないと理解されています(最高裁昭和28年6月17日判決)。
(3) 被害者が逮捕監禁されていると気づかなくても犯罪
逮捕監禁罪が成立するには、被害者が、自分が身体の自由を奪われていることを認識している必要はありません。被害者が知らなくとも、客観的に移動が困難な状況であれば、移動の自由は侵害されているからです。
したがって、被害者が室内で睡眠中に外部から施錠して部屋から出られなくする行為は、眠っている被害者が閉じ込められた事実に気づいていなくとも、監禁罪となります。
このように、逮捕監禁罪が守ろうとしている身体の自由は、「被害者が動こうと思えば動ける自由」であり、現実に動こうとしたか否か、現実に脱出しようとしたか否かとは無関係です。
「被害者が動こうと思えば動ける自由」のことを、「可能的な自由」と呼びます。
【判例1】最高裁昭和33年3月19日判決
被害者を騙して自動車に乗せて走る行為について、被害者が騙されて乗車した時点(つまり、騙されたことに気づいていない時点)から、監禁罪が成立するとしました。【判例2】広島高裁昭和51年9月21日判決刑事裁判月報8巻9・10号380頁
被害者を強姦する目的で、車に乗せて走行した行為につき、被害者が騙されたことに気づいていなくとも、監禁罪の成立を認めました。
2.警察の逮捕とは違うのか?
(1) 警察による逮捕と逮捕監禁罪の違い
警察官(検察官、検察事務官も含む)が犯罪の被疑者を逮捕する行為は、犯罪捜査のために刑事訴訟法によって許された「法令行為」として違法性がなく、犯罪ではありません(刑法35条)。
許される逮捕行為には、次の3種類があります。
- 通常逮捕…裁判官が事前に発布した逮捕状に基づく逮捕(刑訴法199条1項)
- 現行犯逮捕…現に犯罪を行っている者や、犯罪を行って間もないと明らかに認められる者に対する無令状での逮捕(憲法33条・刑訴法212条)
- 緊急逮捕…一定の重大犯罪の被疑者につき、令状を求める余裕のない緊急時に行われる逮捕で、事後的に裁判官の令状発布が必要(刑訴法210条)。
通常逮捕と緊急逮捕は、警察官・検察官など法令上の地位に基づき、法定の手続きに則って認められる行為ですから、たんなる私人に許されるものではありません。たとえ相手が犯罪の犯人と疑われる者でも、たんなる私人がその者を拘束することは、逮捕監禁罪となってしまいます。
(2) 現行犯逮捕の例外
ただし、現行犯逮捕については、何人であってもこれを行うことが許されます(刑訴法213条)。これが「現行犯の私人逮捕」です。この場合は逮捕監禁罪となりません。
現行犯逮捕の対象となるのは、次の「現行犯人」及び「準現行犯人」です(刑訴法212条)。
- 現行犯人…現に犯罪を行っている者
- 準現行犯人…次の①〜④にあたり、犯罪を終えてから間がないと明らかに認められる者
①犯人として追呼されている者(犯人として追われたり、呼びかけられたりしている者)
②盗品や、明らかに犯罪に使われたと思われる凶器などを所持している者
③身体や衣服に顕著な犯罪の痕跡がある者
④誰何されて逃走しようとしている者(声をかけて名前を問い質されている者など)
ただし、私人が現行犯人・準現行犯人を逮捕した場合は、直ちに警察官、検察官など捜査機関に引き渡す必要があります(刑訴法214条)。
したがって、私人が現行犯人を逮捕したからといって、捜査機関に引き渡さず不必要に拘束を続けると、適法とされる範囲を逸脱した違法行為として監禁罪となる可能性があります。
3.逮捕・監禁罪の罰則
逮捕監禁罪の法定刑は、3月以上7年以下の拘禁刑です(220条)。
逮捕行為、監禁行為によって被害者に怪我を追わせたり、死亡させたりした場合は、逮捕監禁致死傷罪となります。
例1:被害者が逃げるのを止めるために、殴って怪我を追わせた
例2:被害者を車のトランクに監禁していたところ、他の車に追突されて、被害者が死亡した(最高裁平成18年3月27日決定)
この場合、「傷害の罪と比較して、重い刑により処断する」(221条)と定められています。
逮捕監禁行為で怪我をさせた場合には、逮捕監禁罪の下限と傷害罪の上限が適用され、3月以上15年以下の拘禁刑が法定刑となります。
逮捕監禁行為で死亡させた場合には、下限上限とも傷害致死罪の刑が適用され、3年以上の有期拘禁刑(上限20年)が法定刑となります。
4.逮捕・監禁罪の具体例
すでに逮捕監禁罪に該当する行為の例をいくつか挙げましたが、さらに代表的なものを数例、紹介しましょう。
(1) 誘拐
「誘拐」行為とは、欺罔・誘惑・甘言を手段として、被害者を現在の生活環境から離脱させて、自己または第三者の事実上の支配下に置く行為です。
刑法上の誘拐罪として、被害者が未成年か否か、誘拐の目的は何かなどに応じで処罰を受けます(刑法224条〜226条)。
誘拐行為がなされた後には、被害者を監禁する行為が行われることが通常です。
例えば、身代金目的で被害者を誘拐し、引き続き監禁した場合は、身代金目的誘拐罪(225条の2第1項)に加えて、別途に監禁罪が成立し、両罪は併合罪となります(最高裁昭和58年9月27日判決)。
(2) いじめ
学校などで、生徒間の「いじめ」行為として、逮捕監禁行為が行われることがあります。
例えば、ある生徒が校内のトイレ個室に入っている際に、ドアの外側に重い物を置いたりチェーンで施錠したりするなどして、個室から出ることを困難としてしまう行為は、監禁罪となります。
この場合、たとえば、被害者がなんとか外へ出ようとするあまり、個室内の採光ガラスを素手で割って怪我をしたり、ドアを蹴り破ろうとして足を骨折したりした場合には、監禁致傷罪となり、重く処罰されることになります。
【裁判例】東京高裁昭和55年10月7日判決・刑事裁判月報12巻10号1101頁)
被害者が監禁場所から逃れようとして、窓から飛び降りて死亡した事案で監禁致死罪の成立を認めました。
(3) 虐待など
例えば、完全に寝たきりの者や、植物人間状態の者などのように、身体の移動能力がない者に対しては、逮捕監禁罪は成立しません。
しかし、身体の移動に困難は伴うものの、移動する能力がある障害者や高齢者に対して、正当な理由もなく拘束着を着せたり、ベッドに縛り付けたり、室内に閉じ込めたりして移動の自由を奪う行為は、虐待であるだけでなく、逮捕監禁罪となります。
【裁判例】京都地裁昭和45年10月12日判決・刑事裁判月報2巻10号1104頁
生後1年7ヶ月の幼児に対する逮捕監禁罪の成否が問題となった事案です。
裁判所は、被害者である幼児が、自力で任意に座敷を這い回ったり、壁・窓などを支えにして立ち上がり歩き回ったりすることできた事実があることから、監禁罪の成立を認めました。
5.逮捕・監禁罪で逮捕された場合の対処法
(1) 逮捕監禁罪が事実ではない場合
逮捕監禁罪で逮捕された場合、それが身に覚えのない事実であるなら、否認し、徹底的に争う必要があります。
警察官・検察官は、「早く認めれば軽い処分で済む」「せいぜい罰金刑だ」「素直にならないと、いつまでも外には出られないぞ」などと、高圧的な態度で罪を認めるよう強く要求することがあります。
身柄拘束の長期化や重罰を懸念して、事実と異なるのに、 被疑者が犯行を認め自白調書に署名してしまうケースも決して珍しくはありません。
しかし、本当に軽い処分で済むという保障はどこにもありませんし、そもそも、このように有利な扱いを約束して自白へ誘導する取り調べ手法は、相当性を欠く捜査方法として許されません。
このような場合は、被疑者の権利として保障された黙秘権を行使して供述を拒否し、また、供述した内容と異なる調書への署名を拒絶するなどの対応をとるべきです。
このような権利の有無、内容、行使方法や、刑事手続の見通しについては、刑事弁護を専門とする弁護士を弁護人として選任し、できるだけ初期の段階から法的アドバイスを受けることが望ましいです。

[参考記事]
黙秘権とは?黙秘権を行使するメリット・デメリット
(2) 逮捕監禁罪が事実の場合
逮捕監禁罪の被疑事実が間違いない場合は、できるだけ早期に、被害者との示談を成立させることが重要です。
示談が成立すれば、検察官による起訴猶予処分(不起訴処分)も期待できますし、仮に起訴された場合でも、示談が有利な事情として、裁判官による執行猶予判決や減刑に結びつきます。
また、早期の示談成立は、逃亡や証拠隠滅の危険性を減少させる事情となり、勾留期間の短縮にもつながります。
被害者との示談交渉は、弁護士を刑事弁護人として選任して行うべきです。被疑者の家族などが交渉を行おうとしても、捜査機関は被害者の連絡先を教えてくれません。
仮に被害者の連絡先が判明していたとしても、被疑者の関係者が接触を試みることは、証拠隠滅や証人威迫の危険がある行為と評価され、かえって不利となってしまう可能性が高いです。
6.まとめ
逮捕監禁罪の容疑で逮捕された場合は、ただちに刑事事件に注力している弁護士に弁護を依頼し、弁護活動を開始してもらうことがベストです。
お困りの方は、泉総合法律事務所にご相談ください。

