刑事弁護・裁判 [公開日]2026年3月31日

併合罪の量刑|観念的競合・牽連犯との違い

併合罪の量刑|観念的競合・牽連犯との違い
弁護士 泉義孝
監修 弁護士 泉 義孝
所属:第二東京弁護士会
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ある人が複数の犯罪行為を理由として逮捕・起訴された場合、そのひとつひとつの犯罪行為について、別々の刑罰が科されるのでしょうか?それとも、複数の犯罪に対して、まとめた刑罰が科されるのでしょうか?
これが「併合罪」をめぐる問題です。

この記事では、併合罪とは何か、その内容、具体例、制度の理由、観念的競合や牽連犯との違いなど、併合罪に関する基本的な知識をわかりやすく解説します。

1.併合罪とは?

(1) 併合罪=複数の犯罪にまとめて刑を科すルール

例:甲は、窃盗罪、傷害罪、詐欺罪という複数の犯罪を行った

このように、一人の行為者につき、A罪・B罪・C罪といった複数の犯罪(数罪)が成立している場合、刑を科す方法として、

①A罪の刑、B罪の刑、C罪の刑を合計して決める方法
②A罪・B罪・C罪を、ひとつのグループとしてまとめ、そのグループ全体に対してひとつの刑を決める方法

があります。
①を「併科主義」、②を「単一刑主義」と呼びます。

併合罪とは、この②「単一刑主義」が適用される複数犯罪グループです。
例にある甲の場合、窃盗罪・傷害罪・詐欺罪が併合罪とされると、窃盗罪・傷害罪・詐欺罪の各刑が合計されるのではなく、ひとつの併合罪グループとして、まとめて刑を与えられます

(2) 併合罪の種類

この併合罪を定めているのが刑法45条です。

刑法第45条
確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について拘禁刑以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。

この条文では、併合罪には2種類あることを定めています。

確定裁判を経ていない二個以上の罪(前段)
②ある罪について拘禁刑以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪(後段)

①を「同時的併合罪」または「45条前段併合罪」と呼びます。
②は「事後的併合罪」または「45条後段併合罪」と呼びます。

1 同時的併合罪

①同時的併合罪(45条前段併合罪)は、「確定裁判を経ていない二個以上の罪」です。「確定裁判」とは、有罪判決・無罪判決・免訴・略式手続など、通常の訴訟手続では争えない状態に至った裁判のことを指します。

例:甲は、順次A罪→B罪→C罪を犯したが、いずれの犯罪についても、確定判決は受けていない

この場合、甲のA罪・B罪・C罪は、併合罪という同一のグループとしてまとめられ、単一の刑が言い渡されます。

このような取り扱いを行う理由は、以下の3つの観点から説明されています。

  1. 過酷な結果の回避:複数の犯罪の各刑を合計する併科主義は、刑期の著しい長期化など、過酷すぎる結果を招き、その犯罪者の将来的な更生を図る特別予防の見地からも不要・無意味とされます。
  2. 同時審判の可能性:まだ確定判決を受けていない複数犯罪は、ひとつの裁判で同時に審判され得る可能性があったのだから、一括して取り扱うことが手続上も合理的とされます。
  3. 同時非難の可能性:確定判決を受けていない複数犯罪は、まだ裁判による威嚇・けん責を受けない時点で行われたものだから、処罰は個別ではなく、まとめて行うことが妥当とされます。

2 事後的併合罪

②事後的併合罪(45条後段併合罪)は、ある罪について拘禁刑以上の刑に処する確定裁判があったときの、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪です。

例:甲は、①A罪の犯行を行い、②次いでB罪の犯行を行った。そして、B罪で逮捕され、③B罪で拘禁刑とする確定判決を受けた。④さらにその後、C罪の犯行を行い、⑤次いでD罪の犯行を行った

このように、①A罪の犯行→②B罪の犯行→③B罪の拘禁刑以上の確定判決→④C罪の犯行→⑤D罪の犯行という場合、A罪とB罪が事後的併合罪として、ひとつのグループとなります。
C罪とD罪は、確定裁判を経ていない2個以上の罪(同時的併合罪)として、別のグループをつくることになります。

この例のようなA罪とB罪をひとつのグループとする事後的併合罪の取り扱いの理由は、現実には、A罪とB罪は同時に審判を受けたわけではないものの、同時に一括して審判を受ける可能性があったのだから、同時的併合罪の取り扱いと区別するべきではないからとされています。

なお、「A罪・B罪」のグループと、「C罪・D罪」のグループは、単純にグループ毎の刑が合計される併科主義の扱いを受けます(大審院判決明治44年9月25日・大審院刑事判決録17輯1560頁)。

2.併合罪の処理方法

複数の犯罪が、併合罪としてひとつのグループとなった場合、グループに対してひとつの刑(単一刑)が科されますが、その内容は次のように定められています。

  • 併合罪グループの中にあるひとつの犯罪につき死刑に処すべきときは、他の刑(没収を除く)を科さない(46条1項)。
  • 併合罪グループの中にあるひとつの犯罪につき無期拘禁刑に処すべきときは、他の刑(罰金、科料、没収を除く)を科さない(46条2項)。
  • 併合罪グループの中にある2個以上の犯罪につき、有期拘禁刑に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない(47条)。

「窃盗罪と暴行罪が併合罪となり、両方ともに有期拘禁刑に処する場合」を例としてみてみます。

窃盗罪の法定刑「10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑」(235条)
暴行罪の法定刑「2年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金刑または拘留もしくは科料」(208条)

各法定刑を比較した最も重い罪は、窃盗罪における「10年以下の拘禁刑」です。その長期は10年ですから、1.5倍である15年が拘禁刑の長期となるはずです。
しかし、各罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできないという上限があるので、有期拘禁刑に処す場合、12年以下の拘禁刑となります。

また、併合罪グループの中にある2個以上の犯罪につき、罰金刑に処するときは、各罪の罰金刑額の多額の合計額が上限となります(48条2項)。

例えば、窃盗罪と暴行罪が併合罪となり、両方ともに、罰金刑に処する場合、窃盗罪の罰金刑の多額(上限額)50万円と、暴行罪の法定刑の多額30万円を合計した80万円が上限です。

3.併合剤と、観念的競合・牽連犯との違い

併合罪は、ひとりの者に複数の犯罪が成立している場合に刑を科す方法のルールのひとつでした。

同様に、ひとりの者に複数の犯罪が成立している場合に刑を科す方法のルールとして、併合罪とは別に「観念的競合」と「牽連犯」があります。

(1) 観念的競合とは

観念的競合とは、1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合、すなわち、ひとつの行為でありながら、複数の刑罰法規違反となるケースです(54条1項前段)。

例:甲は、乙を射殺しようとピストルで撃ったところ、弾は乙を貫いて絶命させたうえ、その後方にあった丙所有の自動車にも命中し、フロントガラスを破損させた

この場合の甲によるピストルの発射というひとつの行為は、乙に対する殺人罪と、丙に対する器物損壊罪という2つの犯罪に該当します。

観念的競合は、複数犯罪でありながら、科刑のうえではひとつの犯罪と扱われる場合です。
これは、あくまでも行為はひとつしかなく、犯罪遂行を決定した意思もひとつに過ぎないからです。この点で、複数の犯罪を、ひとまとめのグループとして処理する併合罪とは異なります。

観念的競合は、その最も重い刑によって処断されます。

上例の場合、殺人罪の法定刑は「死刑または無期若しくは5年以上の拘禁刑」(199条)であり、器物損壊罪の法定刑である「3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金もしくは科料」(261条)よりも、上限下限が重くなっています。

そこで、この事案を拘禁刑に処す場合は、上限は無期、下限は5年の範囲での拘禁刑となります。

(2) 牽連犯とは

牽連犯とは、犯罪の手段もしくは結果である行為が他の罪名に触れる場合です(54条1項後段)。

例1:窃盗をするために住居に侵入する→窃盗罪は目的、住居侵入罪は手段
例2:公文書を偽造して偽造公文書を提出して行使した→公文書偽造罪は原因、偽造公文書行使罪は結果

このように、2つの犯罪が、「手段→目的」または「原因→結果」の関係にある場合が牽連犯です。

行為がひとつしかない観念的競合とは異なり、牽連犯では、複数の犯罪行為があります。しかし、それらは「手段・目的」「原因・結果」の関係なので、犯罪遂行の意思決定は実質的には1個です。
そこで、観念的競合と同じく、科刑上一罪と扱われます。

牽連犯の処断方法は、観念的競合と同じです。

4.併合罪の判例

複数の犯罪が併合罪となるか、それとも牽連犯となるかが問題となる裁判例は数多くあります。
併合罪では、有期拘禁刑に処す場合、法定刑の長期が1.5倍となるのに対し、牽連犯であれば法定刑が長くなることはないからです。

牽連犯は、複数犯罪が客観的に通常「手段・目的」「原因・結果」の関係にあれば認められるとされますが、実際の裁判例は必ずしもこの判断基準にしたがっているとは言えません。

裁判例において、牽連犯ではなく併合罪とされたものには、次のような例があります。

  • 保険金詐欺目的での放火と保険金の詐取(大審院昭和5年12月12日判決・大審院刑事判例集9巻893頁)
  • 殺人と死体損壊(大審院昭和9年2月2日判決・大審院刑事判例集13巻41頁)
  • 監禁と強姦致傷(最高裁昭和24年7月12日判決
  • 監禁と傷害(最高裁昭和43年9月17日決定

5.併合罪に問われた場合の対応方法

併合罪となるか否かは、有罪判決の宣告時に裁判所の判断で示されるものですが、複数の犯罪が併合罪として扱われると、ひとつの併合罪グループ内における各犯罪の刑が合計される事態(単純併科)を回避することができ、被告人に有利となります。

また、併合罪と扱われるよりも、牽連犯と扱われる方が、刑の長期が長くなることがないので、より被告人に有利です。

したがって、被告人にとっての有利さは、「牽連犯>併合罪>併合罪でない数罪」という関係となります。

弁護人としては、少しでも依頼者である被告人の利益となるよう、併合罪、さらには牽連犯としての評価を裁判所に求める弁護活動を行います。

6.まとめ

刑事事件の被疑者・被告人とされた場合に、自分の行為がどのような法的取り扱いを受けるのかを全く知らないままでは、取り調べに上手く対応することは困難です。

複数の犯罪行為の法的処理にはついては、併合罪、観念的競合、牽連犯以外にも、そもそも「ひとつの犯罪とは何か?」「犯罪の個数を数える基準は何か?」といった根本的かつ明らかな定説のない問題がたくさんあります。
裁判所の判断も、必ずしも統一されているわけではなく、一般の方が理解することは至難です。

できるだけ早期に、専門的な法律知識を持つ弁護士に弁護人を依頼し、助言を受けることが肝要です。

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