暴行・傷害 [公開日]2017年9月26日[更新日]2025年5月2日

暴行罪の定義とは?逮捕された場合どうなるのか

暴行罪の定義とは?逮捕された場合どうなるのか

他者に対して殴る・蹴るなどの暴行を加えると、暴行罪となります。
しかし、「胸ぐらを掴んだだけで暴行になるのか」「怪我をさせなかった場合はどうなるのか」など、「どこまでが暴行に当てはまるのか?」が分からないという方は多いでしょう。

本コラムでは、刑法で言う「暴行」の定義と、暴行罪で被害届が出され逮捕されてからの流れ、不起訴を目指す方法などを解説します。

1.暴行罪とは?

他人に対して暴行を行った場合、被害者が怪我をしていなければ暴行罪、怪我をすれば傷害罪となります。

暴行罪(刑法208条)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金に処する

傷害罪(刑法204条)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する

以上より、怪我をさせなくても暴行罪には当たりますので、「胸倉を掴む」「髪の毛を引っ張る」などの行為も暴行罪に当たります。被害者の診断書も不要です。

暴行罪・傷害罪の刑事弁護全般

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2.暴行で逮捕される場合

暴行事件に限らず、警察に検挙された場合には「逮捕されるケース」と「逮捕されないケース」があります。

(1) 逃亡や罪証隠滅の恐れがある

逮捕をするには、被疑者に逃亡と罪証隠滅(ざいしょういんめつ)のおそれがあることが必要です。

罪証隠滅とは、犯罪の証拠を隠したり壊したりすることです。暴行罪で言えば、暴行に使われた道具を隠すこと以外にも、目撃者や被害者本人の連絡先を知っていることで証拠隠滅のおそれが認定されやすくなります(周囲と口裏を合わせようとする可能性があるため)。

また、独身の一人暮らしで定職に就いてない場合などは、逃亡のおそれありと判断されやすくなります。
逆に、同居家族がいて家族が身元引受人となれるケースや、定職に就いているケースならば、逃亡のおそれは低いと判断してもらえます。

なお、現行犯で逮捕をする以外の後日逮捕では、警察や私人が独自の判断で被疑者を逮捕することはできず、裁判所が警察の請求に基づき逃亡と罪証隠滅(ざいしょういんめつ)のおそれを確認した上で、「逮捕状」を発布することで逮捕できるようになります。

なお、逮捕後も引き続き逃亡や罪証隠滅のおそれがあると判断されてしまえば、逮捕に続く勾留をされる可能性があります。
勾留期間は、最長で20日にも及びます。

(2) 逮捕後の流れ

逮捕後は警察による捜査が行われ、48時間以内に検察庁に被疑者の身柄が送致されます。その後、検察官も被疑者を取り調べ、勾留の必要性を検討します。
勾留の必要性があると判断すれば、検察官は裁判官に対して勾留請求をします。

裁判官は、検察官の勾留請求を受けて、本当に勾留の必要性があるかどうかを被疑者に対する勾留質問で判断します。勾留の必要性があると判断すれば、勾留決定をします。

勾留では、10日〜20日間の長期にわたり、警察の留置場で身体拘束されます。会社員ならば、これほどの長期間無断欠勤をすれば、解雇されてしまうリスクがあります。あるいは、会社に事件を起こしたことが知られ、懲戒処分を受けるなど重大な不利益が生じるかもしれません。

このような不利益を避けるためには、弁護士に刑事弁護を依頼して、逮捕・勾留を阻止し、仮に勾留されてしまったならば釈放のための弁護活動をしてもらうべきです。

弁護士は依頼を受けると、被疑者の家族に身元引受書や上申書を作成してもらい、また、弁護士意見書も含めて検察官や裁判官に提出します。弁護士がこのようにして勾留阻止、釈放を働きかければ、それによって釈放となることが多くあります。

3.暴行事件で不起訴を目指す「示談」

暴行事件で被害届が出されるなどして捜査が始まった、あるいは検挙され逮捕されてしまったならば、不起訴処分を目指すことが大切です。不起訴なれば前科がつかず、その後本件の暴行事件についての追及を受けることもありません。

そのために重要なものは、被害者との「示談」です。
被害者に示談金を渡して、被害届の取り下げや宥恕(ゆいじょ。許す、刑事処罰を求めないという意味)を求め交渉をすることになります。

では、暴行罪で逮捕された場合、示談するはどのようにしたらよいのでしょうか?

(1) 示談交渉の初め方

まず、示談交渉をするには被害者の住所や連絡先を知る必要があります。しかし、警察官も検察官も、被害者の保護という観点から関係者に被害者の住所・連絡先を教えません。

仮に被害者の住所や連絡先を既に知っている場合であっても、弁護士を通さずに連絡を取ろうとしてはいけません。

暴行事件の被害者は、事件のせいで大きな恐怖心を抱いています。被害者にしつこく連絡を取ろうとすると、「脅迫を受けた」「被害届の取り下げを強要された」などと言われ、更に情状が悪くなる可能性もあります。被疑者が焦って被害者の気持ちを考えずに接触しようとすることは逆効果なのです。
あるいは、被害者が被疑者のご家族などに仕返しを考える可能性も0ではありません。

そこで、暴行事件の示談交渉は、弁護士に依頼することがおすすめです。

弁護士が警察・検察に被害者の連絡先を聞けば、警察や検察は、被害者の了承を取った上で、弁護士だけに被害者の連絡先を教えてくれます。
つまり、そもそも示談交渉を開始するには弁護士が必要というわけです。

弁護士は、暴行事件で傷ついた被害者の心情にも配慮しながら、代理人として適切かつスピーディに示談交渉を進めていきます。
示談が成立すると、弁護士は示談成立を証明できる「示談書」という書面を作り、警察官や検察官に提出します。

(2) 示談金額の相場

示談金額には決まりがありません。仮に被疑者が「○万円で示談をしてください」とお願いをしても、被害者が拒否をすれば示談は成立しません。反対に、被害者が多額の示談金を提示しても、被疑者が払えなければやはり示談することはできません。

暴行事件ならば、暴行に至るまでの経緯(計画性の有無や動機)、暴行事件時の状況、けがの程度(治療費・治療にかかる期間)、被害者の被害感情、被疑者の経済力などによって変わります。

実際、怪我が伴わない暴行罪の示談金相場は、10万円〜30万円程度です。
ご自身のケースではどれほどの金額になるのか気になる方は、暴力事件に精通している弁護士に見通しを立ててもらうようにしましょう。

4.暴行罪で逮捕されたら弁護士に相談を

暴行罪は頻繁に発生している犯罪というイメージがあるかもしれませんが、起訴されれば罰金でも前科がつきます。
初犯なら通常は罰金刑のケースが多いですが、過去にも暴行事件を起こしていれば正式裁判となり、最悪の場合には懲役刑もあり得ます。

そもそも起訴されないようにするには、被害者との示談成立が重要なポイントとなります。

示談交渉については、被害者の被害感情をくみ取ることができる弁護士が代理人を務める必要があります。当事者同士の示談は避けましょう。
暴行事件でお悩みならば、是非、暴行罪の弁護経験が豊富な泉総合法律事務所の無料法律相談を受け、刑事弁護をご依頼ください。

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