万引など窃盗 [公開日]2020年5月18日[更新日]2025年5月13日

下着泥棒で警察に逮捕されたらどうすればいい?

下着泥棒で警察に逮捕されたらどうすればいい?

ベランダや庭に干されている洗濯物を盗むなどの下着泥棒をやめられずに繰り返していると、警察に逮捕されてしまう可能性が非常に高くなります。

下着泥棒は、刑法上の窃盗罪に該当する重大な犯罪です。
被害者との示談などを含めて早く対処しなければ、起訴されて罰金や実刑判決を受けてしまうこともあります。

この記事では、下着泥棒で逮捕された場合の流れと、下着泥棒で逮捕された場合の対処法などについて詳しく解説します。

1.下着泥棒は窃盗罪になる

冒頭の通り、下着泥棒には窃盗罪という刑法上の罪が成立します。
しかし、犯行の様態によっては窃盗罪以外の犯罪行為となる可能性もありますので、まずは下着泥棒が何罪になるのかについて見ていきましょう。

(1) 窃盗罪

下着泥棒は、被害者の意思に反して下着という財物の占有を奪う行為です。
したがって、下着泥棒には窃盗罪(刑法235条)が成立します。

窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

(2) 住居侵入罪

下着泥棒を行う際には、被害者の住居への侵入を伴うことが多いです。
この場合には、住居侵入罪(刑法130条前段)も成立することになります。

住居侵入罪の法定刑は3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。

ただし、窃盗罪と住居侵入罪は目的・手段の関係にあり、いわゆる牽連犯(刑法54条1項)に該当します。

牽連犯では2つの犯罪の法定刑を比較して、刑の上限も下限も重いものを適用します。
窃盗罪と住居侵入罪の場合、刑の上限は窃盗罪の10年以下が重いので、これを上限として適用します。刑の下限もまた、窃盗罪の50万円以下が重いので、これを下限とすることになります。

(3) 強盗罪など

下着泥棒を行う際に住人に見つかってしまい、その住人に危害を加えた場合には、きわめて重い罪である強盗罪(下着を奪うために暴行・脅迫を加えた場合:刑法236条1項)または事後強盗罪(逮捕を免れるためや、下着を奪い返されないために暴行・脅迫を加えた場合:刑法238条)が成立してしまいます。
いずれも5年以上の有期懲役刑です。

その際、被害者に怪我をさせてしまえば、強盗致傷罪(240条)となり、無期または6年以上の懲役刑となります。

2.下着泥棒で逮捕された場合の流れ

下着泥棒は、その場で現行犯逮捕されたり、被害者による被害届を受けて捜査を始めた警察により通常逮捕(後日逮捕)される可能性があります。

下着泥棒では、一度捕まっても再度犯行を繰り返してしまうという人が一定数存在します。また、証拠品(盗んだ下着類)を自宅にしまっているケースがほとんどです。
よって、警察は「このまま在宅で捜査をすると犯行が繰り返される可能性が高い」「自宅に帰しては証拠隠滅を図るかもしれない」と危惧し、被疑者を逮捕する可能性が高いです。

逮捕されると、逮捕から48時間以内に、警察官は被疑者の身柄と事件に関連する書類を検察官に送致します(=送検)。送致を受けた検察官は、身柄を受け取ってか24時間以内かつ逮捕から72時間以内に、被疑者の勾留を裁判官に請求するかどうかを決定します。
勾留請求が裁判官に認められると、「起訴前勾留」という段階に移行し、引き続き被疑者の身柄は拘束されます。

この起訴前勾留期間中(最大20日間)に、検察官は被疑者を起訴するかどうかを決定することになります。

検察官が被疑者を起訴することを決定した場合には、「起訴後勾留」に切り替わり、被疑者は「被告人」としてさらに引き続き身柄を拘束されます。

3.下着泥棒で不起訴を得るために

下着泥棒は窃盗罪という刑法犯罪であるため、初犯であっても起訴されて裁判にかけられ前科が付いてしまう可能性も0ではありません。
特に、下着泥棒を常習的に繰り返しているという場合には、実刑判決を受けてしまう可能性が高いといえます。

下着泥棒を行ってしまい警察に逮捕された場合、長期間の身柄拘束や懲役刑・罰金刑などを避けるためには、検察官に良い情状をアピールして不起訴処分(起訴猶予処分)にしてもらうよう努力するしかありません。

(1) 被害者との示談交渉の重要性

不起訴処分を得るために行われる活動のうち代表的なものが、被害者との示談交渉です。

窃盗罪や住居侵入罪は、起訴するために被害者の告訴が必要とはされていません(非親告罪)。
そのため、被害者との示談が成立したとしても、必ず不起訴になるというわけではありません。

しかし、被害者に対して誠心誠意謝罪した上で、できる限りの金銭的な補償をし、被害者の処罰感情を軽減したということは、被疑者にとって有利な情状として考慮されます。

そのため、示談を成立することができれば、不起訴処分になったり、仮に起訴されたとしても罰金刑で済んだり、執行猶予判決を得て実刑判決を免れたりすることにつながります。

(2) 示談を行うための方法

示談交渉を被疑者・被害者の当事者同士で行うことは現実的ではありません。

下着泥棒のような性犯罪では、被害者は被疑者に対して強い嫌悪感、恐怖感と処罰感情を持っていることが多いといえます。
そのため、例え被害者の連絡先を知っていたとしても、直接顔を合わせての交渉は拒否される公算が大きく、仮に交渉できたとしても交渉過程で被害者の感情を逆撫でしてしまうおそれが大きいでしょう。

また、警察官や検察官に「示談のため、被害者の連絡先を教えてほしい」などと言っても、被害者保護の観点から教えてもらうことはできません。

被害者との示談交渉を行う際には、弁護士に交渉を依頼するのがおすすめです。

弁護士は、被害者の方の感情にも配慮しながら、慎重に示談交渉を進めていきます。
被疑者が今回の事件について深く反省していることを伝え、また、被疑者の謝罪の手紙を渡すなどしながら、全面的に矢面に立って交渉を行ってくれるのです。

なお、下着泥棒の被疑者は被害者の住居を知っているので、被疑者の方は再犯や報復を恐れるのが通常です。
そこで、下着泥棒の示談交渉においては、示談の条件として「被疑者が被害者宅の住居に容易に行けない場所へ引っ越す」「被害者が引っ越すための引っ越し費用を被疑者が負担する」というものが盛り込まれるケースも多いです。

(3) 示談金(慰謝料)の相場

示談交渉では、示談金の決定が主な争点となります。

下着泥棒の示談金ですが、これは具体的な事件によってさまざまであるというのが実情です。

一般に、下着それ自体の経済的な価値は高額ではありませんから、示談金のほとんどを占めるのは慰謝料となります。
しかし、慰謝料は精神的な傷を慰めるものですから、客観的な基準・相場はありません。

「住居侵入を伴う態様で行われたかどうか」「同一の被害者から盗んだのは何度目か」などの犯行態様・悪質性も斟酌しますが、実際に決め手となるのは、「被害者がどの程度の処罰感情を抱き、いくらなら納得してくれるか」という点と、「加害者側の支払能力」の如何です。
これらを考慮し、下着泥棒の示談金相場は、おおむね20万円~100万円程度になることが多いようです。

いずれにしても、被害者に対して心から謝罪するという態度を明確に見せることが、示談を成立させるための重要なポイントになります。

4.逮捕されたら弁護士へ相談を

下着泥棒は、性的な目的というよりも「下着を盗む」というプロセスに依存し、ゲーム感覚で繰り返しているというケースもあります。「女性のプライバシーに関与している」ことによる背徳的な興奮をおぼえるという例も多いようです。
通常の金品目的の窃盗とは異なり特殊な性癖を原因とする場合が多いため、窃盗全体に占める件数の割合は低いと言えます。

また、女性の家内までは侵入する必要はないが故に、他の窃盗犯罪よりも検挙率が低く、油断して犯行を繰り返してしまうケースは多いようです。

しかし、下着泥棒で逮捕されてしまうと、長期間身柄を拘束された上に、最悪の場合では罰金刑や懲役刑に処され、前科がついてしまいます。
下着泥棒という罪名は、世間体も非常に悪く、会社にバレれば社会復帰が困難になってしまうかもしれません。

万が一下着泥棒で警察に逮捕されてしまった場合には、弁護士に相談して、被害者との示談交渉などできる限りの善後策を速やかに講じる必要があります。

弁護士は、被疑者・被告人の身柄拘束からの解放のほか、不起訴処分の獲得、起訴された場合には被告人に有利な判決の獲得などに向けて、法律の専門的知識と経験を活かして被疑者・被告人のために尽力します。

窃盗事件の刑事弁護でしたら、刑事弁護経験豊富な泉総合法律事務所の弁護士・泉義孝にご相談ください。

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