万引など窃盗 [公開日]2018年6月1日[更新日]2025年5月21日

酔って電車でスリをしてしまった!窃盗罪で逮捕されたらどうする?

酔って電車でスリをしてしまった!窃盗罪で逮捕されたらどうする?

金曜日になると、多くのサラリーマンが飲みに出かけ、酔っ払った状態で帰路につく光景を目にします。

しかし、お酒を飲み過ぎてしまったことで罪を犯してしまうというケースがあります。
被疑者のご家族が週末に弁護士事務所に急遽かけこんで、「家族がスリ(窃盗)で捕まった」というご相談を受けることがあるのです。

今回は、酔っ払って電車内や路上でスリをはたらいてしまった場合の「窃盗罪」の罪状について解説します。

1.スリ・盗難は窃盗罪

スリのように他人の所持品を盗む行為は「窃盗罪」が成立します。

刑法235条 窃盗罪
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

頻発する窃盗罪の代表例としては、スリの他にも、「万引き」「空き巣」などがあります。
これらは「窃盗罪」とは違う一般名称がついていることから軽い犯罪に見られがちですが、いずれも10年以下の懲役の可能性もある犯罪行為です。

窃盗罪の場合、犯行の悪質性だけでなく、被害金額の大きさが量刑に影響します。数千円、数万円であれば罰金で済む可能性も高いですが、被害額が数十万、数百万に及ぶ場合には懲役刑になる可能性も高くなるということです。

また、他の犯罪と同様に、初犯よりも再犯の方が刑罰は重くなります。
何度もスリの犯行を繰り返しているケースでは、常習性が高いと判断され刑罰も重くなってしまいます。

実務上、窃盗罪は懲役になっても3年以下のケースが多く、罰金刑では20-30万円以下が多くなっています。
しかし、もちろんこれは事件の内容にもよるため、これ以上の重罪になること十分に考えられます。一応の目安程度に考えておきましょう。

2.酔って覚えてない場合も罪に問われる

刑法39条には、「心神喪失者の行為は、罰しない。」「心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。」との規定があります。
心神喪失者とは行為の善悪や是非について判断ができない状態の人、心神耗弱者とは行為の善悪や是非について判断が著しく困難である状態の人を指します。

これは精神障害のある人などを想定して作られた規定ですが、酩酊、いわゆるお酒に酔った状態の人も対象となります。

しかし、酩酊(=お酒に酔った状態)の場合でも、「少し酔っているな」「今日はいつもより酔っ払っているかも」くらいの意識があれば、当然ながら39条の適用外となります。
この場合は、責任能力があると判断され、スリを働いた場合は窃盗罪が成立します。

また、仮に記憶がないくらいに泥酔していたとしても、スリを行ったという事実は「窃盗行為を行うだけの多少の意識があった」と認識されます。
酔って記憶がないからといって「否認」を続けると、情状は悪化する可能性が高いので注意しましょう。

以上のように、酔っ払ってスリを働いた場合であっても、無罪とはならないと考えるべきです。
たとえ記憶がなくても、防犯カメラや目撃者の証言などからスリを行ったことが明確ならば、罪を認めて真摯に対応していくべきです。

3.スリで逮捕された後の処遇

酔っ払ってスリをしてしまった際、被害者や周囲の人が気づいた場合は現行犯逮捕となります。
他方、被害者が家に帰ってから犯行に気づいた場合は、後で後日逮捕となるケースがあります。

(1) 微罪処分になるケース

軽微な事案については、警察に検挙されたとしても検察には送致されず、警察で処分を完結させることがあります。これを「微罪処分」といいます。

微罪処分になるための要件としては、窃盗金額が低額(目安として2万円以下)であること、初犯であること、犯行態様が悪質でないことが挙げられます。
実際、窃盗罪の場合は微罪処分で済まされることが多くなっています。

ところが、スリの場合は被害者が犯行時に気づかないケースが多く、現行犯逮捕で捕まる確率は低いという理由から、犯人が他にも犯行を行っている可能性があるとされます。よって、微罪処分では済まさず、警察や検察がしっかりと捜査を行い他にも余罪がないかチェックされることが通常です。

(2) 逮捕・起訴の可能性

窃盗に関する事実を否認している場合や、スリという犯行態様を重く捉えられた場合(常習犯、反省の色なし等)、初犯ではなかった場合などには、微罪処分で済まされないケースも想定できます。

この場合、警察による逮捕から48時間以内に検察へと被疑者の身柄が送致され、その後24時間以内に検察は裁判官へ勾留請求を行うかどうかが判断されます。
勾留請求が行われ、裁判官も勾留を決定した場合には、そこから最大で20日間身体拘束が続く可能性もあります。

「逃亡や罪証隠滅の危険がないから、自宅に帰らせても問題ないだろう」と判断されて勾留請求が行われない場合は、釈放されてその日のうちに帰宅できます。その後は、在宅事件として捜査が進んでいくことになります。

一方、勾留が決定した場合には長く勾留されることになるため、社会生活にも影響が生じえます。
つまり、会社や学校を休まなければいけなくなり、結果的に周囲に逮捕がバレてしまうことが起こりえます。

勾留期限が終わる頃、検察は被疑者を起訴をするかどうかの判断を行い、不起訴となればそこで事件は終了です。
起訴となれば、略式起訴で罰金になるか、あるいは公判請求により約1ヶ月後に裁判が開始されます。

このように、微罪処分とならなかった場合は、勾留・起訴の可能性も十分にあります。

窃盗罪の中でも、スリについては重い処分が行われる可能性が高い犯罪となっています。必ず重い判断が下されるとは限りませんが、窃盗罪の中の類型でいうと比較的重い判断が下されることが多いのです。
そのため、早期釈放や不起訴を勝ち取るためには、適切な弁護活動が必要です。

4.スリの窃盗罪の刑事弁護

では、酔っ払った状態でスリをしてしまい逮捕された場合、前科を避けて早期釈放・不起訴にしてもらうためにはどうすればよいのでしょうか。

逮捕が行われた後は、できる限り早く被害者と示談をまとめることが大切です。被害者に被害金額を弁償・私物を返納し、誠意ある謝罪と示談金を受け取ってもらうことで、早期釈放・不起訴処分を目指すことになります。

示談は、起訴・不起訴や量刑を検察官が判断する際の考慮すべき材料となります。示談が成立している場合としていない場合とでは起訴の確率は大きく変わってきます。

示談は、当事者同士でもできると考えるかもしれません。
確かに、当事者同士が以前からの知り合いで連絡先を知っているのであれば、それも不可能ではありません。しかし、スリの事件では被害者の連絡先を知らないことがほとんどですし、そもそも被害者は加害者と直接話したくないものです。例え家族であっても、怒りや恐怖心から示談交渉を拒否するケースが多いです。

この点、弁護士であれば「話をしてもいい」と言ってもらいやすくなります。第三者である弁護士が代理人となることで、示談成立もスムーズに進みます。

トラブルを避けるためにも、窃盗事件は当事者同士だけで解決しようとせず、法律のプロである弁護士に解決を任せることをおすすめします。

示談したい

5.スリで逮捕されたら弁護士に相談を

刑事事件とは無関係のサラリーマンでも、たった一夜の飲酒がきっかけで事件を起こしてしまう可能性はあります。
仮に酔っ払って事件を起こしてしまうと、目が覚めたら警察署で身柄を拘束されていた…というケースもあります。

酔っ払って窃盗事件を起こしてしまった場合や、あるいは家族が刑事事件を起こしてしまった場合には、弁護士にご相談ください。

被害者と早期に示談をすることで、起訴を回避できる可能性が高くなります。また当事者同士で話し合おうとするのはほとんど不可能ですので、間にプロを挟んで示談交渉を進めていくのが必須です。

スリなど窃盗事件でお悩みの場合には、どうぞお早めに泉総合法律事務所にご相談ください。

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