前科がある人のアメリカビザ申請|入国はできるのか?
刑事事件で有罪判決を受け、それが確定すると「前科」となります。
前科があると、一定の職業に就くことが制限されるなどの不利益があります。
前科による不利益のひとつとして、「海外旅行ができなくなるのでは?」という心配をする方が多くいます。
結論を言えば、前科の内容や渡航先の国によって扱いが異なり、一概には言えません。
この記事では、アメリカへの渡航を希望する場合を例にとって説明します。
1.前科があっても海外へ行くことはできるのか?
(1) 出入国にはパスポートが必要
パスポート(旅券)は、A国の国民が外国へ行く際にA国政府が発行するもので、その者のA国籍・身分を証明すると共に、外国の政府にその者に対する便宜供与と保護を依頼するものです。
日本の場合、日本からの出国にも、海外からの帰国にも、有効なパスポートが要求されています(出入国管理及び難民認定法60条、61条)。
パスポートに記載される個人の情報は、姓名、国籍、生年月日、性別、本籍などであり、前科の有無や逮捕歴は記載されません。したがって、パスポートを見せるだけで、前科や逮捕歴が明らかになることはありません。
(2) 前科によりパスポート取得が困難になるケース
もっとも、前科があることで日本でのパスポートの取得が困難となる場合はあります。
パスポートを発行する権限は、外務大臣およびその指揮監督を受ける領事館にあり、一定の場合には旅券の発給を拒否できるからです(旅券法5条1項、同13条1項)。
一定の場合とは、過去に偽造パスポートを作成したり、虚偽の申請をしてパスポートを不正に取得したりした場合などです。
どのような場合にパスポートの発給を拒否されるかについては、別のコラムで詳しく解説しておりますので、ご覧ください。

[参考記事]
前科がつくと海外旅行に行けない?パスポートへの影響とは
(3) 渡航予定の国の「ビザ」発行
日本国からパスポートの発給を受けられたとしても、次には渡航先の国からビザ(査証)の発行を受けなくてはなりません。
ビザとは、A国民がB国に入国することを希望する場合に、B国が、そのA国民を入国させても問題がないかどうかを、書類や面接によって事前に審査し、審査を通過した者に与えられる証明書です。A国内にあるB国の大使館・領事館が発行するもので、いわば自国に入国させても大丈夫という推薦状のようなものです。
ただし、外国に日本人が入国する際、ビザを要求するか否かは、入国先の方針によります。要は、入国先の国家が、日本国と日本人に信頼を寄せてくれているか否かによるのです。
海外からの日本への信頼は非常に高く、たとえば短期間の観光旅行などであれば、ビザを要求しない取り扱いとしてくれる国は約190カ国にも及ぶとされています(2026年1月時点)。
(4) ビザがあっても渡航先で入国を拒否される場合
渡航先に入国する際、空港・港において入国審査を受け、審査を通過する必要があります。
これはビザの発給を受けているか否かにかかわりません。ビザはあくまで、入国審査にあたって必要とされる条件のひとつに過ぎないからです。
よって、ビザがあっても、入国審査で入国拒否となる可能性はあります。
入国審査においてどのような調査・質問がなされ、どのような理由で入国を拒否するかは、その国の方針次第です。特に犯罪歴の有無を質問しない場合もあれば、日本での犯罪歴の有無を質問する国もあります。ある犯罪歴を申告した場合に、それが入国拒否の理由に該当するか否かも、国ごとに異なります。
各国の方針は、渡航時期によっても変動しますから、各旅行代理店、外務省、渡航先の大使館・領事館などに照会して、事前に十分に調査をしておくことが必要です。
2.アメリカのビザ申請について
(1) アメリカは日本人のビザ不要
米国は、日本人に対して、短期商用・観光等の90日間の滞在目的であれば、ビザの取得を免除しています。
その代わりに、米国行きの航空機や船に搭乗する前に、米国の設ける「電子渡航認証システム」である「ESTA(Electronic System for Travel Authorization)」での審査を受ける必要があります。
これは、オンラインによる申請で、渡米する者の適格性を判断する電子システムです(※外務省サイト「ビザ免除プログラムを利用した米国への渡航」)。
(2) 逮捕歴・犯罪歴(前歴)がある人への制限
逮捕歴や前科のある者が渡米するためには、ビザの取得が必要であり、ESTAを利用することはできません。
米国のサイトでは、逮捕歴・前科のある者については、米国が渡米資格を判断するためにビザの申請が必要であること、申請の際には判決謄本・裁判記録または犯罪歴に関しての関連書類の全てにつき、英訳文を添付して提出することが必要とされています(※米国政府サイト:在日米国大使館と領事館「有罪判決を受けた人」)。
(3) 前科者の渡米のリスク
裁判記録などを提出してビザの審査を受けた場合でも、米国にビザの発給を拒否される可能性はあります。また、ビザの発給を受けたとしても、渡航後に入国審査で入国を拒否される危険もあります。
どのような犯罪歴が各拒否の理由となるのかは公表されてはいませんが、アメリカは薬物犯罪(麻薬、覚せい剤など)に対しては特に厳しく臨む傾向にあると言われています。
このように、前科がある場合でも米国に入国できる可能性はありますが、拒否される可能性も大いにあり、それを覚悟して準備する必要があります。
3.前科を隠して渡米手続きをすることは犯罪
前科を隠して渡航手続きをすることは絶対にやめるべきです。
パスポートの申請の際に前科を隠して申請すると旅券法違反の犯罪となり、5年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金刑となり、両方の刑が併科される場合もあります(旅券法23条1項1号)。
また、前科を隠してESTAの申請をすれば、米国の法律に違反し、米国への入国を永久に許可されないと警告されています(※前記の米国政府サイト:在日米国大使館と領事館「有罪判決を受けた人」)。
4.まとめ
このように、前科には様々な不利益があります。前科を残さないためにも、刑事事件で任意の取り調べを受けたり、逮捕されたりした場合には、早期に弁護士に相談・依頼し、不起訴処分を得ることを目指すべきです。
刑事事件でお困りの方は、泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

