窃盗の初犯で執行猶予になる確率は?実刑判決を回避する弁護活動
「窃盗で逮捕されてしまったけれど、初犯なら執行猶予になって刑務所に行かずに済むだろう」と、どこか楽観視していませんか?
確かに、日本の刑事裁判において、初犯の窃盗罪は起訴されても執行猶予がつく確率が比較的高い傾向にあります。
しかし、それは決して「何もしなくても自動的に執行猶予になる」という意味ではありません。
被害額の大きさや犯行の悪質性によっては、初犯であっても実刑判決となり、そのまま刑務所へ収容されるケースは現実に存在します。
本コラムでは、初犯の窃盗事件で執行猶予を勝ち取るための現実的な確率や、執行猶予となる条件、そして刑務所行きを回避するために弁護士が行う具体的な弁護活動について解説します。
1.初犯の窃盗罪で「執行猶予」になる確率
刑事統計や裁判の実務を見ると、前科がない初犯の窃盗事件において、起訴されて裁判になったとしても執行猶予がつく確率は「比較的高い」と言えます。
最高裁判所の司法統計や法務省の犯罪白書のデータを基にすると、窃盗罪で懲役刑・拘禁刑の判決を受けた人全体(前科がある人も含む)のうち、例年約47〜48%の割合で執行猶予がついています。
これが「初犯」に限定されれば、執行猶予を獲得できる確率はさらに上がります。
しかし、このデータには見落としてはならない重要な「裏」があります。それは、この確率が「適切な弁護活動や被害弁償を行った結果」として成り立っているという事実です。
「初犯だから、何もしなくても裁判所が大目に見てくれるだろう」という思い込みは非常に危険です。何も対策を講じないまま裁判の日を迎えてしまえば、裁判官から「被害者への謝罪も弁償もないから、反省していない」「再犯のリスクが極めて高い」と判断され、初犯であっても実刑(執行猶予なしの拘禁刑)を言い渡されてしまう可能性は十分にあると言えます。

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つまり、執行猶予は自動的に与えられるものではなく、自らの行動で勝ち取りにいかなければならないものなのです。

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2.「実刑判決」となる初犯の窃盗事件の具体例
前述の通り、初犯であれば多くのケースで執行猶予が検討されますが、裁判官が「これは社会の中で更生させるのは不可能であり、実刑に処すべきだ」と判断せざるを得ない深刻なケースでは、初犯であっても即刑務所行きとなるリスクがあります。
具体的な状況は、以下の4つです。
(1) 組織的・計画的な犯罪グループへの関与がある
「SNSで知り合ったグループで役割分担をして空き巣に入った」「万引きグループの指示役や運搬役として加担した」といったケースです。
単独での突発的な犯行とは異なり、組織的な窃盗は社会的な悪質性が極めて高いとみなされ、初犯であっても厳しい実刑判決が下される可能性があります。
(2) 被害額が数百万円規模など著しく高額である
盗んだ物品や現金の総額が一般常識の範囲を大きく超えて高額な場合(数百万円〜数千万円規模など)です。
被害者の受けている経済的ダメージが大きすぎるため、たとえ初犯であっても執行猶予がつかず、実刑をもって償うよう求められる可能性があります。

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(3) 動機が身勝手で裁判でも反省の態度が見られない
「ギャンブルや夜の街での遊興費が欲しかった」「高級ブランド品を買い漁りたかった」といった、自己中心的な欲求を満たすための犯行の場合です。
さらに、取り調べや法廷で言い訳を終始繰り返すなど、真摯な反省の態度が見られないと判断されれば、裁判官の心証は当然ながら悪くなります。
(4) 前科はないが、「常習犯」である証拠がある
これまでに逮捕されて判決を受けた「前科」はなくても、余罪が何十件も発覚した場合や、自宅から大量の盗品が押収された場合などです。
「今回たまたま見つかっただけで、日常的に窃盗を繰り返している常習犯だ」と証明されてしまうと、初犯という扱いにはならず、厳しい目を向けられてしまいます。
これらの要素に一つでも心当たりがある場合は、事態は非常に緊迫していると言えます。
少しでも実刑のリスクを下げるためには、法廷で裁判官の心証を覆すための弁護活動が不可欠です。
3.執行猶予獲得のためのポイント
万が一、起訴されて刑事裁判になってしまった場合、実刑を回避して執行猶予を勝ち取るためには、裁判官に対して「この被告人は刑務所に送るのではなく、社会の中で更生させるべきだ」と納得させるだけの客観的な証拠を提示しなければなりません。
法廷で弁護人(弁護士)が展開する、実刑回避のための重要な「3つのポイント」を解説します。
(1) 「被害回復」を客観的に証明する
窃盗事件の裁判において、裁判官が最も重視するのは「最終的に被害がどれだけ回復したか」という結果です。
弁護士が被害者側と粘り強く示談交渉し、受け取ってもらった被害弁償金(示談金)や成立した示談書の内容を証拠として提出します。
万が一、被害者側の処罰感情が強く、現金の受け取りを拒否された場合でも、「供託」「贖罪寄付」などを行うことで、金銭的な賠償の意思と実績を形にして裁判所に示します。

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(2) 「再犯の可能性が極めて低いこと」を立証する
法廷で「もう二度としません」と口頭で反省を述べるだけでは、裁判官の心を動かすことはできません。なぜ犯行に及んでしまったのかという原因を分析し、その原因を排除したことを具体的に証明する必要があります。
例えば、悪友にそそのかされたのであれば「交友関係の完全な遮断」や「遠方への転居」、生活困窮が引き金なら「新しい就職先の内定」など、再犯を防ぐための環境改善を具体的に提示します。
(3) 社会的なサポート体制(身元引受人)を構築する
本人が一人きりで社会に戻れば、再び孤立して同じ過ちを繰り返すのではないかと裁判官は懸念します。
そこで、家族や親族に「情状証人」として実際に法廷の証言台に立ってもらいます。
裁判官の目の前で「今後は自分が責任を持って本人を厳しく監視し、二度と犯罪をさせない」と証言してもらうことで、更生を支える強固な受け皿があることをアピールします。
4.「クレプトマニア(窃盗症)」について
窃盗事件、特に万引きの中には「経済的には十分にお金を持っているのに、盗む行為そのものをやめられない」というケースが少なくありません。
これは単なる悪意や生活苦ではなく、「クレプトマニア(窃盗症)」という精神的な疾患(依存症の一種)が背景にある可能性が高いです。
この病気がある場合、法廷で単に「深く反省しています」「二度とやりません」と涙ながらに訴えるだけでは、執行猶予を勝ち取るのは難しくなります。
なぜなら裁判官は、「本人の意志の力だけでは抑えられない病気である以上、社会に戻してもまたすぐに繰り返すのではないか」と判断し、刑務所での強制的な矯正(実刑)を選択するリスクが高まるからです。
クレプトマニアが疑われる事件では、刑事手続きと並行して「医学的な治療」をスタートさせることが不可欠です。弁護士は専門の医療機関やカウンセリング施設と連携し、本人がすでに治療を開始している実績や、今後の具体的なリハビリ計画を客観的な証拠として裁判所に提出します。
「刑罰によって罰するのではなく、医療による治療を行うことこそが本当の再犯防止につながる」とアピールすることで、裁判官から執行猶予付きの判決を引き出せる可能性が高くなります。

[参考記事]
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5.窃盗事件は逮捕直後から弁護士へ相談を
執行猶予を勝ち取るための「被害弁償」や「再犯防止の環境づくり」「医療機関との連携」といった取り組みは、一朝一夕でできるものではありません。起訴されて裁判が決まってから慌てて準備を始めても、限られた時間の中で裁判官を納得させるだけの証拠を揃えるのは非常に困難です。
だからこそ、逮捕直後や捜査段階といったできるだけ早い段階から、綿密な準備を進めておくことが「実刑回避の確率」を高めるために必須です。
「刑務所行きを避け、社会の中でやり直したい」「大切な家族の未来を守りたい」と願うのであれば、一刻も早い行動が必要です。
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