盗撮ハンターへの対応｜脅迫・恐喝されたらどうする？

「盗撮ハンター」（盗撮狩り・盗撮犯狩り）という言葉はご存知でしょうか？

「盗撮ハンター」事件とは、盗撮の目撃者が、盗撮犯に対し「警察に行きたくなければ金を払え」「被害者への示談金を今払え」などと脅して、高額の金銭を巻き上げる犯罪行為を言います。
実際に盗撮をしていた場合、その後ろめたさから言いなりに金銭を支払ってしまうというケースもあります。

今回は、「盗撮ハンター」被害の事案と共に、実際に盗撮ハンターに遭遇したらどうするべきかを解説します。

１．盗撮ハンターの手口

電車内やエスカレーターなどで魔が差して盗撮してしまったとして、その行為を近くにいた第三者に目撃される場合があります。

通常、目撃者は盗撮犯の身柄を確保し駅員・警備員に引き渡したり、自ら110番通報をして盗撮犯を警察官に引き渡したりするものです。

ところが、盗撮ハンターは、盗撮犯を警察、駅員、警備員などに引き渡すことはしません。
彼らの目的は、盗撮犯人を処罰することではなく、盗撮犯の弱みを握って脅したり騙したりして、違法に金銭を支払わせることにあるからです。

盗撮ハンターは「警察に突き出されたくなければ金銭を出せ」などと言い、その場で金銭の要求してきます。目立たないように「場所を変えよう」と、喫茶店、ファミレス、あるは人気のない場所に連れ込まれて金銭を要求される場合もあります。

彼らは、多くの場合「被害者への示談金、慰謝料」という名目で金銭を要求します。あたかも本当に被害者に渡す金銭であるかのように装っているだけ、というケースもあれば、実際に被害女性が彼らとグルであるケースもあります。

盗撮犯は、警察沙汰となることが怖くなり、言われるままに金銭の支払いに応じてしまうことが多いです。手持ちの金銭がないときには、盗撮ハンターが銀行ATMまで同行して預金を下ろさせたり、カードでキャッシングをさせたり、自宅までついてきたりするケースもあります。

また、ほとんどの場合、免許証などの身分証明書、キャッシュカード、クレジットカードなどを提示することを要求され、その画像をスマホで撮影されてしまいますので、本名や住所も把握されてしまいます。当然、電話番号も教えるよう要求されます。

このため、言われるままに金銭を支払い開放されたと思っても、しばらくしてから追加の金銭を要求されるケースもあります。
いったん弱みを握られた者は、「金づる」として、いつまでも「ゆすり・たかり」の被害に遭うのです。

２．盗撮ハンターの行為は恐喝罪・詐欺罪

上記のような盗撮ハンターの行為は、それ自体が犯罪行為です。

(1) 恐喝罪

まず、「金銭を支払わなければ警察へ突き出すぞ」などと脅すことは、恐喝罪に該当します。

刑法249条　恐喝罪
第１項　人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する（以下略）

「恐喝」とは、財物を交付させる手段としての暴行・脅迫のことを言います。「脅迫」とは、人を畏怖させる害悪を告知することです。
つまり、要求に応じないと害悪を受けると怖がらせて、金銭を交付させることが「恐喝罪」です。

「犯罪行為を警察に通報する」という行為は適法な行為ですが、通報される相手は不利益を受けます。よって、盗撮ハンターの「警察へ突き出すぞ」という言葉は、脅された本人にとって「害悪」であることに変わりはなく、恐喝罪が成立するとされます。

(2) 詐欺罪

「こちらが被害者に渡しておくから、示談金を支払え」と騙すことは、詐欺罪に該当します。

刑法246条　詐欺罪
第１項　人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する（以下略）

ここに「人を欺いて」とは、他人を誤信させる行為を意味し、欺罔行為と呼ばれています。

実際は被害者に示談金を渡すつもりがないのに、あたかも被害者への示談金であるかのように装い、盗撮犯を誤信させて金銭を要求することは、欺罔行為に該当します。

３．盗撮ハンターへの対応方法

盗撮ハンターの餌食となることを回避することは簡単です。その場で110番をすれば良いのです。
詐欺または恐喝に遭っていると伝えて、警官に来てもらいましょう。

脅迫や詐欺の証拠となるような音声を録音していなければ、警察官が来ても盗撮ハンターたちを逮捕することはできません。
しかし、警官が来れば、もはやその場で恐喝行為・詐欺行為を続けることはできませんから、盗撮ハンターたちは通常去って行きます。

住所を知られてしまった場合、後日家まで押しかけてきたら、その場でまた110番通報しましょう。彼らはお金が欲しいだけですから、来る度に110番通報する人間とわかれば、面倒くさくなって来なくなります。

さて、このように盗撮ハンターから逃れることは簡単ですが、最大の問題は、盗撮犯である本人が自ら警察に110番をする勇気がないという点です。

確かに、盗撮行為は撮影罪として犯罪行為となります。
しかし、衝動的で計画性もない・初犯であるなどの事情があれば、悪くても罰金で終わり、正式裁判を免れる可能性は高いと言えます。

さらに、盗撮ハンターを回避するためとはいえ、警察に発覚していない盗撮事件を自ら申告する行為は「自首」に該当し、盗撮犯に有利な事情として考慮されることが期待でき、場合によっては不起訴の可能性も出てきます。

したがって、盗撮ハンターに出会した際は、勇気をもって警察に通報することが最善の選択と言えます。

４．盗撮ハンター・恐喝でお悩みの方はご相談ください。

確かに、盗撮を目撃した相手方の要求に従えば、その場では警察沙汰にならないで済むかもしれません。
逆に、相手方の要求を無視した場合には、相手方がどういう対応をとるかわからず恐怖を感じるのは当然のことです。

しかし、一度盗撮ハンターに金銭を払ってしまうと、後日に更なる金銭要求をしてくることも多く、下手をすれば一生食いものにされます。

泉総合法律事務所は、多数の盗撮事件の刑事弁護に取り組んでいる関係で、このような恐喝事件の相談や依頼を受けることもあります。
盗撮ハンターからの恐喝でお悩みの方も、泉総合法律事務所の無料相談をぜひご利用ください。