盗撮事件における自首と弁護士依頼の重要性

盗撮行為が発覚すれば、刑事罰を受けたり、会社を解雇されたりするおそれがあります。盗撮現場から逃げてきたケースでは、「バレてしまうのではないか」「急に警察が来て逮捕されるのではないか」と不安になることでしょう。
特に被害者や目撃者を振り払って盗撮現場から逃走してきた場合、警察に犯人と特定されるのは時間の問題かもしれません。
そんな時は、今後の対応次第で状況は大きく変わります。自首をすれば、刑の減軽や被害者との示談成立につながる可能性が高くなります。
しかし、自首は慎重に検討しなければなりません。一人で悩み続けるよりも、専門家の助言を受けながら誠実に問題と向き合うことが大切です。
1.盗撮の刑事責任
(1) 盗撮行為は何罪になる?
近年、性犯罪に対する厳罰化が進んでいます。
盗撮についても、2023年に施行された「性的姿態撮影等処罰法」により、新たに「撮影罪」が創設されました。これにより、従来の「迷惑防止条例違反」よりも厳格な処罰となる可能性が高くなっています。
撮影罪は、正当な理由がないのに、ひそかに、人の性的な部位や人が身に着けている下着を撮影する行為などを処罰対象としています。
また、盗撮をしようとカメラを向けた、設置しただけという未遂行為であっても処罰されます。
撮影罪の法定刑は「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」と定められています。

[参考記事]
「撮影罪」の要件・刑罰|盗撮をするとどのような罪になるのか
(2) 盗撮がバレたら後日逮捕されるのか
近年では、駅構内や電車内、商業施設などに多数の防犯カメラが設置されており、盗撮の瞬間だけでなく、現場への到着から離脱までの一連の行動が記録されます。
さらに、交通系ICカードの利用履歴、モバイルSuiceなどと紐付いたクレジットカードの決済記録なども、捜査の手がかりとなります。
被害者の証言や目撃者の情報と合わせて、これらの客観的証拠が積み重なることで、遅かれ早かれ被疑者の特定に至るケースが大多数となっています。
つまり、盗撮をした際、被害者や目撃者に見つかっており、その上で逃走したならば、警察が防犯カメラや交通系ICカードなどの証拠を元にして被疑者を特定するのは難しくないということです。
2.自首のメリット・法的効果
このままでは盗撮がバレて逮捕されるかもしれない…という状況ならば、自首をすることで以下のようなメリットが得られることもあります。
(1) 自首で盗撮の刑が減軽される可能性
刑法第42条では「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる」と定められています。
「減軽することができる」とあるように、自首による刑の減軽は裁判所の裁量によるため、必ず適用されるわけではありません。
しかし、自首が量刑判断において有利な事情として考慮される可能性は高いので、初犯の盗撮で自首をすれば不起訴や少額の罰金刑にとどまるケースもあります。
また、自首をすれば逮捕・勾留を免れ、在宅事件で手続きが進む可能性も高くなります。身柄拘束による職場・学校生活への不利益を防げるのは大きなメリットです。
(2) 被害者と早期に示談交渉できる
自首をすれば、被害届を出していた被害者との示談交渉を迅速に開始できます。弁護士が捜査機関に被害者の連絡先を聞き、代理で示談交渉をすることで、示談が成立すればほとんどの場合で不起訴処分を勝ち取れるでしょう。
被疑者が自首をしたという事実は、被害者の処罰感情の軽減にもつながります。こうなると示談も成立しやすくなりますので、被害者に示談金を渡して、被害届の取り下げや宥恕(ゆいじょ=許す、刑事処罰を求めないという意味)をしてもらえる可能性が高くなります。
(3) 被疑者の精神的負担も減る
盗撮でいつ捕まるか分からないという恐怖や罪悪感を抱えながら生活するのは、被疑者の方にとっても大きな負担となります。
自首をすればそのような状況から解放されますので、精神的にも安心することでしょう。たとえ留置所や刑務所に行くことになっても、ずっと気が楽です。
3.自首の弁護士依頼の必要性
(1) 自首の必要性やタイミングが分かる
撮影罪は比較的新しい法律であり、適用範囲や量刑の傾向については専門的な知識が必要です。
弁護士は、盗撮事案に関する自首のタイミング、取り調べ時の供述内容の検討・対応方法などについて、事前に的確なアドバイスができます。
自首は、捜査機関による被疑者の発覚前に行う必要があり、このタイミングを逃すと刑法上の自首の効果は得られません。
一方、そもそも盗撮がバレていない、被害届が出されていないのならば、自首をすることがデメリットになる可能性もあります。
弁護士は、自首をするべきか、しない方が良いかという問題に始まり、最も効果的な自首のタイミングまで判断できます。
また、自首の際には事前に供述内容や書類を整理し、万が一逮捕されてしまった場合の前準備をすることも必要です。
弁護士の助言を受ければ、自首後の不安についても解消することでしょう。

[参考記事]
自首のやり方と成立要件|出頭との違い
(2) 被害者との示談交渉を代行できる
被害者との直接交渉は、当事者同士が直接するべきではありません。そもそも、捜査機関は被疑者に被害者の連絡先を教えてくれることがないので、自力の示談交渉は不可能と考えるべきです。
一方、弁護士が代理人として交渉することで、冷静かつ適切な条件下での示談が可能になります。

[参考記事]
弁護士なしでの示談はリスク大!示談交渉を弁護士に依頼すべき理由
(3) 自首後の対応についてアドバイスがもらえる
弁護士は、事案の内容、被疑者の罪状なども見ながら、個別のケースで最も有利な結果を得るための戦略を立案します。
自首をすれば捜査が開始することになりますが、その中で不起訴処分とするため、起訴された場合でも執行猶予付き判決を目指すための具体的な弁護活動を行うことができます。
さらに、弁護士が検察官に働きかけることで、逮捕・勾留を回避できる可能性が高まります。
また、勾留された場合でも、準抗告や被害者との示談交渉により早期の身柄解放を目指すことが可能です。
刑事手続全般において、弁護士のサポートは大きな助けになるのです。
4.自首から事件解決までの流れ
自首を決めてから盗撮の事件の処分の判断が下されるまでの流れは、以下のとおりです。
(1) 弁護士に自首について相談する
まず、自首の同行を受任している刑事事件対応の弁護士に相談し、事件について自首をするべきか、しない方がいいか、そして今後の見通しなどを確認します。
自首をするべき案件ならば、自首のタイミングとやり方について弁護士と協議し、最適な戦略を立てていきます。
さらに、取り調べでの供述内容を整理し、取り調べでの対応方法についても事前指導を受けます。
逮捕されることが予想されるならば、事前に家族や職場への対応方針を検討します。周囲への事前の連絡をするほか、身の回りのもの・お金を準備する必要もあります。
(2) 警察に自首をして取り調べを受ける
原則としては事前連絡の上、弁護士に同行してもらって警察署に出頭し、正式に自首を申告します。
通常は、そのまま被疑者として任意の取り調べを受け、事実関係について供述調書を作成することになります。証拠品(撮影機器等)の任意提出や、実況見分への協力も発生するかもしれません。
盗撮事件ではそのまま身柄拘束となる可能性も0ではありませんが、初犯であったり罪状が軽かったりするならば、在宅事件となるケースが多いです。
(3) 警察・検察の捜査と処分決定
自首の後は、検察官による取り調べ・捜査を経て、起訴・不起訴の判断を待つことになります。弁護士は、この間も被害者との示談交渉を行ったり、検察官との協議を進めたりして、不起訴処分獲得に向けた働きかけを行います。
初犯で自首をしているケースや、被害者との示談が成立したケースでは、不起訴処分になる可能性が高いです。
常習犯や悪質性があるケースであっても、自首をした上で弁護士のサポートを受けていれば、罰金刑や執行猶予付き判決の獲得となる可能性はあるので諦めてはいけません。
5.盗撮の自首をお考えなら弁護士へ
盗撮は撮影罪として重い刑罰が科される可能性がある犯罪ですが、自首により減刑となる可能性もあります。
しかし、自首の適切なタイミングを逃したり、不適切な対応をしたりすれば、かえって不利になる場合もあります。
弁護士に自首について相談することで、利益を最大限にする自首のタイミングや方法、被害者との示談交渉、不起訴処分や執行猶予獲得に向けた戦略立てなど、刑事手続に関するサポートを一貫してお任せすることができます。
一人で悩み続けるよりも、専門家の助けを借りて誠実に問題と向き合うことが大切です。
泉総合法律事務所は、自首への同行を行なっているだけでなく、刑事事件に非常に力を入れており、警察に逮捕された後の対応・被害者との示談交渉も万全の体制で執り行っております。
お悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
6.盗撮の自首に関する実際の質問
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Q.二日連続で、同じ商業施設内で盗撮をしてしまい、自首を考えています。
女子高生のスカートの中を狙い、二日連続で同じ商業施設内で盗撮をしてしまいました。
2日目のエスカレーターでは、しっかりとスカートの中が撮れてしまいました。
撮れてしまった内容を確認した瞬間正気になり、自分がしていることが犯罪であることに気付き、後悔と、ことの重大さから慌てて撮影した全ての動画とアプリを削除しました。両日ともに被害者の方や目撃者から何か言われることも無く、気付かれてはいないと思うのですが、防犯カメラに私の姿は間違いなく映っていると思います。
現在は警察の方から連絡や家に直接来るのではないかと怯えている状況です。もしも警察の方から連絡等があったら全て素直に言うつもりです。
自首した方がいいのではないかとも考えております。盗撮については今回が初犯で、前科もありません。
一体どうすればいいのでしょうか?A.自首するかどうかは慎重にご検討ください
女子高校生のスカートの中を盗撮するという行為は、撮影罪(性的姿態撮影等罪)となります。
まず、商業施設の防犯カメラで撮影されているとしても、施設内でクレジットカード決済や電子マネー決済などしていなければ、質問者様の特定は難しいように思います。
自首をした場合ですが、防犯カメラの映像から盗撮が本当のことだと判明しても、そもそも被害者の特定が難しいように思います。
被害者の特定ができなければ不起訴を目指す示談交渉ができません。仮に特定できたとしても、被害者が女子高校生とのことで示談交渉の相手方は親御さんとなります。親御さんは、子どもへの被害に大きな怒りを覚えますので、示談をしてくれないことが経験上多々あります。
上記の点も考えて、自首をするべきかどうかは慎重に検討するべきです。
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Q.盗撮をしてしまい後悔して自首するか迷ってます。