口座売買の弁護

口座売買とは?

口座売買とは、銀行口座や証券口座などの金融機関の口座を、本来の名義人以外の第三者に有償または無償で譲渡・貸与する行為のことです。
口座の通帳だけでなく、キャッシュカードや暗証番号などを譲渡する行為も含まれます。

口座売買は、振り込め詐欺やマネーロンダリングなどの犯罪の基盤となる可能性もあり、近年厳格な処罰が行われています。「軽い気持ちで」「お金に困って」といった動機であっても、結果的に多くの被害者を生む重大犯罪に加担することになるのです。

特に、最近は高額な報酬が得られるアルバイト(闇バイト)として口座売買が行われるケースが多いです。

「誰でも簡単に高収入が得られる」「眠っている口座でお小遣い稼ぎしませんか?」などと持ち掛け、誘いに乗って連絡してきた人と口座取引をするという手口が代表的なものといえます。

口座売買は、初犯かつ十分に反省しているならば、不起訴処分となることもあります。
しかし、以下の要因があれば初犯であっても起訴されることもあります。執行猶予判決あるいは実刑判決もあり得ますので、犯罪に加担してしまったならば一日でも早く弁護士にご相談ください。

  • 提供した口座数が多い
  • 渡した口座が重大な犯罪に使用された
  • 被害額が大きい

口座売買の刑罰

犯罪収益移転防止法違反

「犯罪収益移転防止法」により口座の譲渡・譲受は禁止されており、違反者には1年以下の拘禁または100万円以下の罰金が科せられます。

犯罪収益移転防止法は、犯罪によって得た収益が、組織犯罪(マネーロンダリングやテロ資金の供与など)に使われることを防ぐため、犯罪による収益の移転を防止することを主な目的とした法律です。

詐欺罪

金融機関に対して虚偽の情報を用いて口座を開設した場合、あるいは他人に譲渡する意図で口座を作った場合には、金融機関に対する詐欺罪に問われる可能性もあります。

提供した口座が実際に犯罪に使用された場合、口座提供者も詐欺罪の共犯や幇助犯としてより重い刑事処分を受ける可能性があります。

詐欺罪が成立した場合、罰金刑はなく、10年以下の拘禁刑が科されます。
罰金刑がないということは、起訴されれば必ず裁判を受けることになります。

口座売買の量刑の決まり方

裁判所は、以下の要因を重視して量刑を決定します。

  • 譲渡した口座数の多寡
  • 対価の有無・金額(有償提供か、無償提供か)
  • 実際の被害の程度
  • 犯行の計画性
  • 反省の態度
  • 前科の有無
  • 社会復帰への取り組み

特に、初犯で口座の譲渡数が少なく、被害が軽微と言える場合は、不起訴や執行猶予の可能性は高くなります。

口座売買の弁護方針

事実関係を整理する

口座売買の弁護依頼を受けた弁護士は、依頼者がどのような経緯で口座を譲渡したのか、対価を得たのか(有償で口座を渡したのか)、譲渡先についてどれほど知っているのか、使用目的を認識していたか等を詳細に聞き取ります。口座が実際にどのような犯罪に使用されたかも確認し、被害の程度を把握します。

ヒアリングの結果、譲渡した口座数が少ない場合や、実際には犯罪に使用されていない場合は、その点を有利な情状として検察官や裁判官に主張することができます。

特に「犯罪に使用されることを知らなかった」「単純にお金を貸すつもりだった」といった主観的要素があるならば、故意の有無が多少なり量刑に影響する可能性もあります。

示談交渉と被害回復を目指す

売買された口座が詐欺(オレオレ詐欺など)に使われていた場合、被害者との示談交渉を進めることが有効です。
一般的に、口座提供者は犯罪の一部を担ったに過ぎないため、全額弁償が必須というわけではありませんが、可能な限りの被害弁償を行うことが情状面で重要です。

刑事事件の示談交渉は、まず、被害者の特定から始まります。ただし、被害者のプライバシー保護の観点から、警察官や検察官から被疑者が直接な被害者の連絡先の開示を受けることはできません。
しかし、弁護士ならば捜査機関に対して示談の意向を伝え、被害者側の意向を確認した上で連絡先を教えてもらうことも可能です。

示談金として被害者に支払うべき金額は、被害額の全額(被害者が実際に振り込んだ金額)です。
しかし、詐欺事件の被害額は膨大になるケースが多いですし、殊に口座売買事件では複数の被害者が存在することが多く、全員との示談は現実的に困難なケースも多いです。

このような場合、弁護士は被害額の大きい被害者や、示談に応じてくれる可能性の高い被害者を優先的に選定します。一部の被害者との示談であっても、通常は「被害回復への真摯な取り組み」として評価してもらえます。

示談が成立した場合、適切な示談書の作成が必要です。この点についても弁護士にお任せください。
示談書には示談金額、支払い方法、支払い期限などの基本事項に加え、宥恕条項(被害者が加害者を許すという条項)を盛り込みます。また、示談成立後の刑事処分についても言及し、被害者が厳罰を求めない旨を明記してもらうことも目指します。

→ご相談内容「示談したい

反省文・謝罪文を提出する

被疑者が犯罪に関与した経緯を反省文・謝罪文として書面化し、今後の決意を明確に示すことも大事です。
反省文や謝罪文を警察官や裁判所に提出すれば、被疑者の更生意欲と社会復帰への真摯な姿勢を示す重要な資料として判断してもらえます。

早期釈放を目指す

口座売買で詐欺罪に問われている場合、詐欺事件は共犯者が存在する可能性が高い犯罪類型であるため、在宅事件ではなく逮捕される(身柄拘束される)ケースが多いです。
このような場合には、早期の身柄解放を目指して、以下のような弁護活動を全力で行います。

  1. 勾留請求をしないよう検察官に対して要求する。
  2. それでも勾留請求されてしまった場合には、勾留決定しないよう裁判官に要求する。
  3. それでも勾留決定が下されてしまった場合には、勾留決定を取り消してもらうよう、別の裁判官に対して要求する(準抗告を行う)。

当事務所では、これまで財産事件・詐欺事件における多くの勾留阻止、身柄解放の実績があります。どうぞご安心ください。

→ご相談内容「釈放・保釈してほしい

再犯防止策を主張する

依頼者の生活状況、経済状況、家族関係などを詳細に調査すると、犯行に至った背景が見えてくることがあります。

経済的困窮が動機の場合は、就労支援機関への紹介、生活保護の申請、債務整理の検討など、根本的な解決策を提示します。
未成年が闇バイトで口座売買をしてしまったならば、家庭環境の改善策などを提案することも有効です。

家族や周囲の人間(親戚・友人など)が監督をしてくれるならば、これも良い情状として見てもらえます。

まとめ

口座売買は重大犯罪として近年厳しい目で見られていますが、初犯であること、動機、反省の態度、再犯防止策などを強調すれば、不起訴や執行猶予を獲得できることもあります。

口座売買で検挙されてしまった方、ご家族が逮捕されてしまったという方は、お早めに弁護士へのご相談をご検討ください。

※なお、当事務所では情報提供の観点から口座売買のコラムを掲示しておりますが、弁護業務としては取り扱いをしておりません。