口座売買 [公開日]2025年6月30日[更新日]2025年6月30日

口座を売るとどうなる?口座売買の末路と逮捕リスク

口座を売るとどうなる?口座売買の末路と逮捕リスク

「使っていない銀行口座を売れば、すぐに現金が手に入る」
SNSや掲示板などで、このような甘い誘い文句を見たことはありませんか?

最近では「闇バイト」の一環として、若者や生活に困窮する人たちが口座売買に関与してしまうケースが急増しています。

しかし、口座の売買や譲渡は犯罪行為です。軽い気持ちで関与したとしても、後に重大な刑事責任を問われ、逮捕・起訴され刑事罰が科される可能性があります。

しかも、一度でも口座売買に関与すると、今後は一切、口座が作れなくなるリスクもあります。

今回は、口座売買がどのような犯罪に当たるのか、逮捕された場合の対処法などについて、刑事事件に詳しい弁護士が解説します。

1.口座の売買・譲渡しは犯罪!

軽い気持ちやバイト感覚で口座売買に手を染める人もいますが、口座売買は犯罪です。

(1) 口座売買は何罪になる?

近年、SNSやインターネット掲示板などで「口座売買」の闇バイトに手を染める方が増えてきています。短時間で高収入を得られるという誘い文句で、軽い気持ちで口座売買をしてしまう方もいますが、実は口座売買は犯罪行為です。

口座売買をしたことが警察にバレてしまうと、以下のような罪に問われます。

①犯罪収益移転防止法違反

銀行口座を他人に譲渡・売却する行為は、犯罪収益移転防止法に違反します。

同法では、犯罪に利用される可能性のある金融口座を他人に提供する行為を禁止しており、違反した場合、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されることがあります。

②詐欺罪

金融機関に対して虚偽の情報を用いて口座を開設した場合、あるいは他人に譲渡する意図で口座を作った場合には、金融機関に対する詐欺罪に問われる可能性もあります。

詐欺罪が成立した場合、罰金刑はなく、10年以下の拘禁刑が科されます。

(2) 有償・無償を問わず犯罪になる

犯罪収益移転防止法では、有償・無償を問わず、他人に自己の口座を提供することを禁止しています。つまり、「報酬をもらっていない」「知人に頼まれて譲っただけ」などの言い逃れは通用しません。

これは、口座売買が犯罪組織による資金洗浄(マネーロンダリング)や詐欺被害拡大を防ぐために、厳しく取り締まられている行為だからです。

(3) 自分名義の銀行口座が全て利用停止・強制解約になるリスク

口座売買が発覚すると、実際に売却した口座だけでなく、手持ちの銀行口座すべてが利用停止・強制解約されるリスクがあります。
また、口座売買に関与した情報は、信用情報機関を通じて他の金融機関に共有されますので、他の金融機関でも口座開設が困難になります。

このような状態になると、日常生活において以下のような支障が生じます。

  • 給与振込口座が作れない
  • スマホ決済やネットショッピングが利用できなくなる
  • 公共料金の引き落としができない
  • クレジットカードや住宅ローンの審査に通らない

安易な気持ちで行った口座売買で、今後の人生に重大な不利益が生じることになるのです。

2.口座売買の手口

上記のようなリスクを知らないままでいると、以下のような口座売買の手口により犯罪行為に加担してしまう可能性が大いにあります。

(1) 闇バイト等で口座売買を持ちかけられる

口座売買は、最近は高額な報酬が得られるアルバイト(闇バイト)として行われるケースが多いです。

「誰でも簡単に高収入が得られる」「眠っている口座でお小遣い稼ぎしませんか?」などの持ち掛け、誘いに乗って連絡してきた人と取引をするという手口が代表的なものといえます。

「簡単にお金が稼げる」というのは違法な闇バイトの常套句ですので、犯罪グループの誘いに乗らないよう十分に注意するようにしましょう。

(2) SNSなどで勧誘される

口座売買が近年急増している背景には、SNSでの闇バイトの広がり、そして経済的困窮があるといわれています。

X(旧Twitter)やインスタグラム、匿名掲示板などでは、「口座を売るだけで3万円」「即日現金振込」などといった甘い言葉で勧誘が行われています。特に、学生や若年層、失業中の方などがターゲットとなりやすく、生活苦の中で「口座ぐらいなら…」と軽い気持ちで応じてしまう人が後を絶ちません。

加えて、闇バイトの募集主は「違法じゃない」「バレない」と虚偽の説明をして、罪悪感を抱かせないよう巧みに誘導します。その結果、犯罪だと知らずに加担してしまうケースも少なくありません。

しかし、自分の名義の銀行口座が犯罪に使われれば、持ち主である本人が被疑者として捜査対象になる可能性があります。
実際に、知らぬ間に詐欺グループの一員として扱われ、ある日突然警察から連絡が来たり、逮捕されたりする事例もあります。

(3) 売られた口座はどのようなことに使われるの?

口座売買で売られた口座は、主に以下のような犯罪に利用されています。

  • 振り込め詐欺や還付金詐欺の受け皿口座
  • 投資詐欺や情報商材詐欺の送金先口座
  • 違法薬物、闇金、マネーロンダリング取引の資金移動手段
  • 偽装就職や不正受給の証拠隠滅

3.口座を売ってしまい逮捕された場合の弁護士依頼

口座売買は犯罪行為ですので、捜査機関に発覚すれば逮捕されるリスクが非常に高いといえます。
万が一、口座売買で逮捕されてしまったときは、すぐに弁護士に相談するようにしてください。

(1) 少しでも軽い刑罰になるよう尽力してくれる

口座売買は犯罪行為ですので、その事実が捜査機関に発覚した場合、逮捕される可能性は非常に高くなります。
特に、売却した口座が詐欺などの犯罪に利用されていた場合には、たとえ口座を提供しただけであっても厳しい処罰の対象となる可能性があります。

こうした状況に置かれたとき、もっとも重要なのは、できる限り早く弁護士に相談することです。

弁護士は、事件の状況や本人の反省の程度、社会的背景などを踏まえて主張を組み立て、有利な情状を引き出すための弁護活動を行うことが可能です。

(2) 自首や取り調べなどに関するアドバイスを受けられる

口座売買が捜査機関に発覚する前であれば、自首をすることで刑罰を軽くできる可能性があります。
しかし、自首をすることで逮捕されるリスクもあるため、自首をするべきかどうかは、弁護士に相談しながら慎重に判断した方がよいでしょう。

自首のやり方と成立要件|出頭との違い

[参考記事]

自首のやり方と成立要件|出頭との違い

また、口座売買で逮捕されてしまったときは警察による厳しい取り調べを受けることになりますが、不利な供述調書を取られてしまうとその後の裁判で不利な判決が下されるリスクが高くなります。

そのため、逮捕されたときは一刻も早く弁護士と面会して、取り調べに対するアドバイスを受けることが重要です。

弁護士の助言を受けることで、不用意な供述により不利な状況に陥ることを防げます。

警察による取り調べの対応策を弁護士がアドバイス

[参考記事]

警察による取り調べの対応策を弁護士がアドバイス

4.まとめ

このように、口座売買は犯罪行為の助長につながりますので、報酬の有無にかかわらず絶対にやってはいけない行為です。

近年では、SNSや闇バイトを通じて安易に口座売却を持ちかけられるケースが増えており、軽い気持ちで応じてしまった結果、重大な刑事責任を問われる若者が後を絶ちません。

すでに口座を売ってしまった方や、捜査の不安を感じている方は、一人で悩まず、刑事事件に精通した弁護士に早めに相談してください。早期に適切な対応をとることで、最悪の結果を避けられる可能性があります。

刑事事件コラム一覧に戻る