身代わり出頭は犯人隠避罪!人蔵匿・隠避について
「交通事故を起こしてしまった。免許を取り消されたくないから、代わりに出頭してくれないか」
例えば、幼なじみからこのように懇願され、断り切れず警察署へ出頭したとします。しかし、やがて隠しきれなくなり、「本当は身代わりで出頭しました」などと自白すると、出頭をした人は犯人隠避罪で、出頭を頼んだ人はその教唆犯として逮捕される可能性があります。
「親友を助けたかっただけ」「一日だけ家で匿っただけ」
そんな善意であっても、犯人を隠したり庇ったりする行為は、刑法が定める犯罪です。
本記事では、犯人隠避罪(犯人蔵匿罪)の内容や罪の重さ、なぜ発覚してしまうのか?等をわかりやすく解説します。
もしすでに身代わりで出頭をしてしまった、あるいは逃走中の人物を自宅に泊めてしまったという方は、早急に刑事事件専門の弁護士へご相談ください。
1.犯人隠避罪とは?
犯人隠避罪は、刑法第103条(犯人蔵匿等) に規定されています。
罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
読み解くと、「罰金刑・拘禁刑などが定められている罪を犯した者や、拘置所・刑務所などから逃走した者を、かくまったり逃がしたりすれば処罰される」という意味です。
(1) 「蔵匿」と「隠避」の違い
条文に登場する2つの行為には、それぞれ異なる意味があります。
蔵匿(ぞうとく)とは、官憲(警察など)による発見・逮捕を免れさせるために、場所を提供して犯人を匿うことを指します。
自宅の空き部屋を使わせる、山小屋に隠す、といった行為がこれにあたります。
隠避(いんぴ)とは、蔵匿以外の方法で発見・逮捕を免れさせる一切の行為を指します。その範囲は非常に広く、以下のような行為が含まれます。
- 逃走資金や変装用の衣類を提供する
- 「警察が近くを捜索している」と犯人に知らせる
- 警察官に対し犯人の所在について虚偽の説明をする
- 身代わりとして警察に出頭する
冒頭の事例の「身代わり出頭」は、まさにこの隠避にあたります。
(2) 犯人隠避罪の具体例
このように、単なる身代わり出頭だけでなく、「親切」が犯人隠避罪になってしまうケースも少なくありません。
たとえば、「事件を起こしてしまった。警察に追われているから数日だけ泊めてくれ」と頼んできた友人を自宅に泊めた場合です。
これは場所を提供して犯人をかくまう「蔵匿」にあたり、犯人蔵匿罪が成立します。
また、「逮捕されそうだから、少しの間、あなたの車に乗せていてほしい」と頼まれて同乗させた場合や、「警察がうちの周りを張り込んでいるから離れたほうがいい」などと犯人に連絡した場合も、隠避にあたる可能性があります。
善意から行った行為でも、法的には犯罪として問われうることを理解しておく必要があります。
(3) 犯人隠避罪の成立には「故意」が必要
ただし、犯人隠避罪が成立するためには「故意(わかっていてやったこと)」が必要です。
「友人が何か悪いことをしたとは知らず、単に旅行中だと信じて泊めてあげた」というように、相手が犯罪を犯した事実を知らなかった場合には、犯人隠避罪は成立しない可能性があります。
ただし、注意が必要なのは「罪の種類や法定刑まで正確に知っている必要はない」という点です。
判例(最高裁判所昭和29年9月30日決定)は、「罰金以上の刑にあたる罪を犯した者だという認識があれば足りる」としています。
「詳しい罪名は知らなかったが、何か悪いことをしたとはわかっていた」という状態であれば、故意が認められる可能性が高いです。
もし「本当に知らなかった」という事情がある場合は、その事実を正確に弁護士に伝えることが重要です。
(4) 犯人隠避罪の刑罰の重さ
犯人隠避罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。
軽微な犯罪の隠避であれば罰金刑にとどまるケースもありますが、重大な事件(殺人・強盗・重大な交通事故など)に関連する隠避であれば、実刑判決を受ける可能性も十分にあります。
また、身代わり出頭を依頼した側の真犯人も、判例上は犯人隠避罪の「教唆犯(きょうさはん)」として同じ刑罰が科されます。
つまり、依頼した側・された側の両方が処罰対象になるのです。
【家族の場合は刑が免除されることも】
刑法第105条には、「親族による犯罪に関する特例」が設けられています。
「前二条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯した場合には、その刑を免除することができる。」
配偶者・6親等以内の血族・3親等以内の姻族が、親族の利益のために犯人隠避罪を犯した場合、刑が免除される可能性があります。
ただし、これは「免除しなければならない」という絶対的な規定ではなく、「免除することができる」という任意的免除にとどまります。最終的には裁判官の判断に委ねられるため、親族であれば必ず許されるとは限りません。重大な事件への関与や、積極的かつ組織的な隠避行為があった場合などは、親族であっても厳しい処分が科される可能性があります。
2.犯人隠避はなぜバレる?
「犯人隠避は本当にバレるのだろうか」「うまくやればわからないのではないか」と思っている方もいるかもしれません。
しかし、犯人隠避行為が発覚するケースは非常に多く、甘く見るのは危険です。
(1) 供述の矛盾、つじつまが合わない
身代わりに出頭した場合、その人物の供述が事実と食い違うケースは非常に多く見られます。
たとえば、ひき逃げ事件の身代わり出頭では、現場の状況・車両の特徴・走行ルートなどについての供述が事実に合わなかったり、二転三転したりすることで捜査員に不審を抱かれます。
警察官は現場検証や目撃証言・防犯カメラ映像などを通じて事実関係を把握しており、「本当の犯人でなければ知り得ないはずのことを知らない」という矛盾がすぐに浮かび上がるのです。
(2) 防犯カメラ・デジタル記録による特定
現代の捜査では、防犯カメラの映像・ETC記録・スマートフォンのGPSデータ・通話・メッセージ履歴など、デジタル技術を駆使した証拠収集が進んでいます。
「身代わり出頭した人物が、事件当時に現場近くにいなかった」ことは、こうした記録によって容易に確認されます。
また、真犯人と身代わり出頭者の間の連絡記録(LINEや通話履歴など)も、捜査令状があれば取得可能であり、計画的な身代わりであったことが証明されることもあります。
(3) 関係者の証言・内部からの発覚
逃亡中の被疑者を泊めたケースでは、家族・近隣住民・知人の証言によって発覚することがあります。
また、被疑者本人が別件で捜査を受けた際に、自身の利益のために隠避してくれた人物の名前を供述することもあります。
さらに、事件を知る複数の関係者がいた場合、そのうちの誰かが捜査に協力することで芋づる式に発覚するケースも少なくありません。
3.犯人を匿ってしまった場合は、すぐに弁護士へ
「気づかないうちに犯人隠避に加担していた」「断れずに身代わり出頭してしまった」「逃げてきた知人を泊めてしまった」
そのような状況に置かれた方は、一刻も早く刑事事件に強い弁護士に相談することが重要です。
弁護士に相談することで、以下のような対応が可能になります。
①現在の状況について整理してもらえる
そもそも自分の行為が犯人隠避罪にあたるのか、故意の有無や家族特例の適用可能性など、法的観点から正確に現在の状況を判断してもらえます。
②最善の対応方針を一緒に考えられる
自首を検討すべきか、黙秘を続けるべきか、どのような供述をすべきかについては、弁護士と戦略を立てることができます。
早期に弁護士が介入することで、逮捕・勾留を回避できたり、処分を軽減できたりするケースがあります。
③逮捕後の接見・早期釈放への対応
すでに逮捕されている場合でも、弁護士は速やかに接見(面会)を行い、取り調べへの対応をアドバイスするとともに、早期釈放・不起訴・執行猶予を目指した弁護活動を進めます。
4.まとめ
「大したことではない」「バレなければ問題ない」と軽く考えて放置しておくと、その後の捜査で発覚したときに状況がより深刻になりかねません。
発覚した後に最も注意すべきことは、発覚を恐れて嘘の供述を続けることが、偽証・証拠隠滅などの別の犯罪につながりかねない点です。
取り調べで事実と異なる供述を続けると、捜査機関からの心証が悪化し、最終的な処分が重くなる可能性があります。
「もうバレているかもしれない」「どうしたらいいかわからない」と感じたとき、独断で行動するのは非常に危険です。
犯人隠避に関わってしまったかもしれないと思ったら、まずは当事務所の刑事専門の弁護士・泉義孝に無料相談ください。
あなたの事情を詳しくお聞きした上で、最善の解決策をご提案いたします。

