不同意性交等(強制性交等) [公開日]2026年8月27日

不同意性交等罪で被害届を出されたら|取り下げと示談交渉の進め方

不同意性交等罪で被害届を出されたら|取り下げと示談交渉の進め方
弁護士 泉義孝
監修 弁護士 泉 義孝
所属:第二東京弁護士会
プロフィールはこちら >

マッチングアプリで知り合った相手と初デートで、居酒屋で飲酒し、酔った勢いもあり「私のマンションで飲み直しませんか?」と誘ったら、付いてきてくれた。いい雰囲気になったので、そのまま性行為に及んだ。

これからも交際したいと考えていたのに、突然、アプリでの連絡が取れなくなった。数週間後、警官が訪れ「事情を聞きたいので、署に同行願いたい。不同意性交等罪で被害届が出されています」と告げられ、驚いてしまった。

相手は、同意していないのに性行為を強いられたと被害を訴えているという。

たしかに、明確に性行為の承諾をもらったわけではないが、強く拒否されたわけではない。このようなケースでは逮捕されてしまうのだろうか?

この記事では、このように不同意性交等罪で被害届が出された場合に逮捕されるか否か、被害届の取り下げが可能かなど、被害届を出されてしまったときの対処法について解説します。

1.被害届が出された場合のリスク「必ず逮捕されるのか?」

(1) 被害届だけで逮捕されるわけではない

不同意性交等罪で、自分を犯人とする被害届が警察に提出された場合、「必ず逮捕されてしまうのだろうか?」と不安になります。

しかし、不同意性交等罪に限らず、何らかの犯罪について、被害届が提出されたからといって直ちに逮捕されるわけではありません
それだけでは、必ずしも逮捕に必要な要件が揃うとは言えないからです。

裁判官の令状による通常逮捕を行うには、「①被疑者が犯罪を行ったと疑うに足りる相当な理由」と「②明らかに逮捕の必要性を欠く場合ではないこと」が要求されます。

このうち「逮捕の必要性」とは、証拠隠滅や逃亡の恐れがあることで、これらの危険がないことが明白であれば、裁判官は逮捕状を発布することは許されません。
その有無は、被疑者の年齢・境遇、犯罪の軽重・態様その他諸般の事情に照らして、裁判官が判断します(刑訴法規則143条の3)。

他方、「相当な理由」には、その時点で収集された証拠に基づき、客観的・合理的な観点から、犯罪の嫌疑を相当程度高度に是認できる必要があります(※東京地裁平成16年3月17日判決)。

捜査機関は裁判官に逮捕状を請求する際、その根拠となる資料を提出しなくてはならず(刑訴法規則143条1項)、被害届だけでは到底足りません。

したがって、たんに被害届を提出しただけで、即、逮捕されるわけではないのです。

不同意性交等罪の証拠がない場合|立証責任・証拠不十分の場合の対応

[参考記事]

不同意性交等罪の証拠がない場合|立証責任・証拠不十分の場合の対応

(2) 被害届の受理までに捜査が進んでいることもある

1 被害届受理前に被害の真実さを吟味される

建前としては、被害届が提出されたならば、警察は事件の管轄区域を問わず受理しなくてはならないとされています(犯罪捜査規範61条1項)。

しかし、被害届の中には、虚偽のもの、内容が趣旨不明のもの、嫌がらせ・いたずら目的のものなど、真に犯罪被害の申告かどうか怪しいものも多数あり、そのすべてを必ず受理するのは、人員と予算の限られた警察に無理を強いることになります。

そこで現実には、被害届を受理する前に、一応その内容の信憑性を吟味・検討してから受理されるのです。

ことに不同意性交等罪は、法定刑が5年以上の有期拘禁刑という重罪ですし、当事者が交際関係や夫婦という場合もあるので、捜査機関としては事案を慎重に検討して進めることになります。

2 被害届の受理と間を置かずに逮捕される危険

したがって、不同意性交等罪の被害届が提出され受理されたということは、その段階で、捜査機関側としては、少なくとも被害者の供述の調書化、暴行・傷害の有無や内容、体液の採取など、ある程度の証拠収集が進んでいることも多いのです。

そうなると、被害届の受理からあまり時間を置かずに逮捕状を請求し、これを執行する可能性は低くはありません。

したがって、被害届の提出が直ちに逮捕を意味するわけではないものの、時間に余裕があると安易に考えることは禁物であり、いつ逮捕されてもおかしくはないと覚悟する必要があります。

2.「被害届」と「告訴」の違い

(1) 被害届と告訴の違い

被害届は、捜査機関に対し何らかの犯罪で被害を受けた事実を申告することであり、法律的には、捜査機関が犯罪の捜査を開始するきっかけに過ぎません。

これに対し、告訴は、犯罪事実を捜査機関に申告するだけでなく、その犯人の処罰を求める意思表示です(刑訴法230条)。

犯罪には、検察官の起訴に被害者等の告訴を条件とする「親告罪」と、告訴がなくても起訴できる「非親告罪」があります。

(2) 不同意性交等罪は非親告罪

かつての強姦罪は、被害者の意思を尊重するなどの観点から親告罪とされていましたが、2017年の法改正により非親告罪となりました。
不同意性交等罪も、これを引き継いで非親告罪とされています。

もっとも、この改正法では、衆参両議院において次のとおりの付帯決議がなされています。

「性犯罪に係る刑事事件の捜査及び公判の過程において、被害者のプライバシー、生活の平穏その他の権利利益に十分な配慮がなされ、偏見に基づく不当な取扱いを受けることがないようにし、二次被害の防止に努めるとともに、被害の実態を十分に踏まえて適切な証拠保全を図り、かつ、起訴・不起訴等の処分を行うに当たっては、被害者の心情に配慮するとともに、必要に応じ、処分の理由等について丁寧な説明に努めること」
第193回国会・閣法第47号「刑法の一部を改正する法律案」に対する附帯決議(衆議院)

また、これを受けて、法務省は、全国の検察庁に対し、この附帯決議を紹介するとともに、被害者の心情に適切に配慮する必要があることなどに留意して適切な運用を求める通達を発出して周知させています(※法務省資料「刑法の一部を改正する法律案附帯決議に対する進捗状況」)。

(3) 不同意性交等罪の起訴は被害者の意向を尊重する運用

1 被害者をプライバシー侵害、二次被害から守る

これら法改正と付帯決議・通達の趣旨は、不同意性交等罪を非親告罪とし、起訴・不起訴の決定権はあくまでも検察官だけにあるとすることで、被害者の心理的な負担を軽くしつつも、その判断にあたっては被害者の意向を十分に尊重する運用を行うというものです。

したがって、非親告罪であっても、被害者のプライバシー保護、二次被害(いわゆるセカンド・レイプ)からの保護に配慮し、起訴するか否かは被害者の意思を最大限尊重して判断されます。

2 被害者の協力がなくては公判維持が困難

また、これは、公判維持に被害者の協力が不可欠という事情もあります。
「公判維持」とは、検察官が起訴から有罪判決を得るまでの裁判活動を完遂することを指します。

被害者の同意があれば(人違いなどの錯誤による同意や、被害者が16歳未満の場合などの無効な同意は除く)、不同意性交等罪は成立しません。

したがって、処罰を求めない被害者の心情を無視し、あえて起訴しても、法廷で被害者の証言を得られなければ、犯罪の立証ができず、無罪判決となる可能性があります。

これらの意味で、今でも、不同意性交等罪において、被害届・告訴の有無は、検察官による起訴・不起訴の判断に大きな影響を与える事情なのです。

3.被害届の「取り下げ」は可能なのか?示談交渉の役割

不同意性交等罪の被害届が提出されていても、被害者との示談を成立させることができれば、被害届の取り下げが可能です。

示談は、加害者が謝罪し示談金を支払う代わりに、被害者から宥恕(ゆうじょ)を得ることです。宥恕とは、寛大な心で許すという意味です。

示談書の中に、「宥恕する」「処罰を望まない」「寛大な処分を望む」などの宥恕文と、被害者が「被害届を取り下げる」旨を記載することで、被害者に処罰の意思が無くなったことを明らかにします。

そのうえで、別途、被害者から署名捺印した「被害届取り下げ願い書」の交付を受け、捜査機関に提出します。

こうして、示談の成立と被害届の取り下げが実現すれば、不同意性交等罪でも、不起訴処分を得られる可能性が高まります。

不同意性交等罪で不起訴になる可能性は?不起訴・起訴の事例を解説

[参考記事]

不同意性交等罪で不起訴になる可能性は?不起訴・起訴の事例を解説

3.示談交渉をスムーズに進めるために

不同意性交等罪での示談は、弁護士を選任し、示談交渉を任せることが最善です。その理由は次のとおりです。

(1) 弁護士がいなければ示談交渉を開始できないことが多い

不同意性交等罪の被害者は、加害者本人やその家族・知人など加害者側の関係者と接触すること望みません。これは加害者に対する恐怖心、嫌悪感、不信感などが原因です。
捜査機関も、加害者側には決して被害者の連絡先を教えません。

ただし、加害者が弁護士を選任すれば、捜査機関は被害者の承諾を得たうえで、弁護士にだけは被害者の連絡先を教えてくれます(被害者側の希望により、捜査機関が被害者に弁護士の連絡先を教え、まずは被害者側から連絡をするというケースもあります)。

したがって、弁護士がつかなくては、そもそも示談のための話し合いをスタートできないことが多いのです。

仮に、被害者が友人や同僚でその連絡先が判明していたとしても、加害者本人やその関係者が被害者に接触を試みることは、証拠の隠滅、脅迫、お礼参りなどの意図があると曲解され、かえって不利な事情となってしまう危険があります。

(2) 法的に有効な示談書の作成は法律の専門家に任せるべき

示談書は、加害者と被害者が当該事件について和解し合意した内容を記載する、一種の契約書であり、法的な効力のある文書です。
宥恕文言や被害届の取下条項以外にも、例えば、次のような重要な条項を記載することが通常です。

  1. 事件内容の特定。事件の当事者、日時場所、事件内容などによって、いかなる事件を対象とした示談なのかを特定しておかないと、後に紛争が蒸し返される危険があります。
  2. 加害者の謝罪文言
  3. 示談金額、その支払い方法、支払期限
  4. 告訴があるときは、被害者が告訴の取り下げをすること(別途、被害者の署名・押印ある告訴取下書を作成します)
  5. 示談内容を捜査機関、裁判所以外の第三者に漏洩しないこと
  6. 精算条項(本示談書記載事項以外に債権債務はないことの確認。民事紛争の蒸し返しを防止します)
  7. その他の特約(例:加害者は今後、被害者に対し、手紙、電話、メール、SNSなど、方法の如何を問わず連絡をしないこと、面会をしないことなど)

これらの各条項を漏れなく、しかも法的な効力が認められるように正確に盛り込むことは、一般の方には困難な作業です。

(3) 示談金の相場がわからない

示談金の適切な相場金額は、刑事事件の経験が豊富な弁護士でなくては判断がつきません。相場よりも著しく低い金額を提案すると却って被害者側の怒りを増幅させてしまいます。

逆に、到底支払えない、あまりにも過大な金額を要求されたならば、その事実を報告書として検察官や裁判官に提出し、示談不成立は被害者側の法外な要求が原因で、加害者側は誠実に交渉を行ったと主張し、加害者側の不利益を避ける必要があります。

4.逮捕や起訴を回避するために「今すぐ何をすべきか」

不同意性交等罪で被害届を出された場合、あるいは被害届を出されそうな状況となった場合、今すぐするべき行動は、刑事事件に強い弁護士に相談し、ただちに示談交渉などの弁護活動を開始してもらうことです。

スタートが早ければ、早期に示談をまとめることで、逮捕や勾留を回避し、起訴を免れる可能性が高くなります。

刑事弁護は泉総合法律事務所、弁護士泉義孝まで

当事務所では、刑事弁護経験24年の弁護士泉が、すべての在宅事件の相談・弁護を直接担当いたします。

着手金は原則25万円と明朗会計です。

平日は9:00~20:00、土日祝は9:00~18:00で受付しておりますので、警察からの呼び出しでお悩みの方は、お早めにご相談ください。

刑事事件コラム一覧に戻る