窃盗(万引き)の弁護
窃盗とは?
窃盗罪について
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。
窃盗罪とは、他人所有の財物の占有を、占有者の意思に反して取得した場合に成立する罪です。簡単に言えば、物を盗む行為のことです。
例えば、友人・知人の財産を奪ったり、店で商品を盗んだり(万引き)、電車内に放置されてある他人の荷物を持ち帰ったりしたケースは、窃盗罪で処罰されることになります。
窃盗罪における「財物」の定義ですが、財産的価値ある有体物を指し、不動産は含まれません。
ただ、電気は有体物ではないものの刑法245条で財物とみなされているため、たとえば電柱から電気を引き込んだ場合には電気窃盗として処罰されます。

[参考記事]
「万引き」と「窃盗」の違いとは?
窃盗に当たる5つの行為
他人から財物を盗む行為については多くの種類があり、代表的なものだと以下のような類型があります。
- 万引き:店にある商品を盗んだ場合など
- 置き引き:電車内に放置されてある他人の荷物を盗んだ場合など
- 空き巣:人の住居に侵入して金品を盗んだ場合など
- スリ:人が身に付けている衣服やカバンから財布を盗んだ場合など
- 車上荒らし:車のカギを壊して車内にあった荷物を盗んだ場合など
最近では、駐輪場からカギを壊して自転車を盗む自転車の窃盗も多発しているようです。
窃盗をした場合、現場で店員や万引きGメン・私服警察官などに現行犯逮捕されるケースが多いです。しかし、防犯カメラの映像や被害届の提出などで窃盗行為が後日発覚した場合には、警察が家に来て通常逮捕(後日逮捕)されることもあります。

[参考記事]
万引きがバレなかった場合でも警察に後日逮捕される?
窃盗の未遂と既遂
窃盗には「未遂罪」が存在します。
窃盗未遂罪が成立するには、窃盗行為の着手が必要とされます。したがって、着手行為があった時点で窃盗未遂罪が成立します。
たとえば、住居侵入窃盗の場合、住居に侵入しただけでは足りず、金品の物色をするためにタンスの引き出しを開けた時点などで「着手あり」とみなされます。スリの場合には、財布が入っているかを確かめるためにポケットに軽く触れる“当たり行為”は着手に当たらず、実際に財物を「スル」ためにポケットに触った時点で「着手あり」とみなされます。
そして、窃盗罪は財物の占有を取得したときに既遂になるとされています。
しかし、いつ既遂になったかの判断は画一的ではなく、財物の性質、財物搬出の難易、占有者の事実上の支配状況などを総合して判断します。
判例では、次の行為があった時点を既遂時期と判断しています。
- 店舗内の商品を衣服の中に隠した時点
- 他人の浴室内で発見した所有者不明の指輪を、後で回収するために浴室内の簡単に発見できない場所に隠匿した時点
- スーパーで買い物をしてレジで精算せずにそのまま店外に出た場合においては、レジを通り過ぎた時点
一方、工場内などで物品を窃取したが工場から出ていない場合、その時点では未だ既遂に達していないと判断されています。
窃盗罪の刑罰
窃盗罪の刑罰は、10年以下の拘禁形または50万円以下の罰金(刑法235条)です。
「万引き」などは軽い犯罪と思われがちですが、窃盗罪自体は拘禁刑(懲役刑)も設定されている重い罪と言えます。
一般的に、窃盗罪の量刑を行う場合、次の項目を基準として総合的に判断します。
- 窃盗罪による被害金額の大小
- 窃盗行為の内容(入念な計画に基づくものかどうか)
- 窃盗を遂行する際の手段の危険性
- 窃盗の目的・動機
- 窃盗の頻度・回数
- 余罪・前科の有無
- 示談ないし被害弁償の有無・その金額
- 共犯者の有無
- 反省状況 など
店舗等での万引き事案では、被害金額が安く、かつその手口の悪質性も低い、初犯であるようなケースでは、微罪処分で済む可能性もあります。
微罪処分とは、警察が被疑者に事情聴取をした結果、事件が軽微であることなどを理由に検察官へ送致せずに事件処理を終わらせる手続きです。
たとえ微罪処分で済まなかったとしても、被害金額が少なく初犯であれば、略式手続による罰金で終わるのが通例です。

[参考記事]
窃盗罪の初犯で逮捕・起訴される?どんな処分になるのか
一方、被害金額が大きい場合や、倉庫に忍び込むなど計画性の高い場合、立件されている事件が複数件ある場合は、公判請求されて刑事裁判になる可能性もあります。
また、同種の前科がある場合には、被害金額が少ないと略式手続による罰金刑で済み、被害金額が大きいと公判請求されて刑事裁判になるケースが多いです。
ただ、その場合であっても、前科の数がそれほど多くなければ執行猶予付き判決が下されることが多いです。

[参考記事]
窃盗罪、万引きの罪の重さは被害金額で決まる?
弁護士をつけて示談交渉を行い示談が成立すれば、万引きの事案であれば多くは不起訴となるでしょう。
とは言え、上で述べた通り「被害額が大きい」「計画性が高い」といった事案の場合には、それでも罰金や公判請求(裁判)の可能性もあります。刑事事件では、罰金でも「前科」がつきますので、不起訴を目指して早期から活動することが重要です。
窃盗罪の弁護方針
前科がつくと将来的に様々なリスクがありますので、これを避けるために被疑者の方やその家族は早急に弁護士に相談すべきです。
弁護士は、以下のような弁護活動を行い、被疑者の不利益を最低限に抑えます。
示談成立を目指す
示談の効果
不起訴処分や執行猶予付き判決を目指すべく、検察官や裁判官への心証を良くするためには、示談成立をアピールすることが最も有効な手段と言えます。
窃盗事件では、被害者に十分な謝罪と示談金を提示して、早期の示談成立を目指します。
示談が成立して示談金を支払い、作成した示談書を検察に提出した場合、勾留の回避・釈放、不起訴処分を獲得できる可能性が高まります。仮に起訴処分になっても、被害者との示談が成立していれば、罰金刑に留まる、執行猶予付きの判決となる、仮に実刑でも量刑が軽くなる(刑期が短くなる)ことが期待できます。
ちなみに、万引きなどの場合、コンビニやスーパーなどの店舗が被害者となります。
ただ、会社の方針で示談には応じないと決めており、被害弁償や被害品の買取にも応じてくれないケースもあります。
そのような場合には被害者(店舗やオーナー)を相手方として「供託」をすることになりますが、供託さえもできないときには、「贖罪寄付(しょくざいきふ:慈善団体などへの寄付)」をすることで、反省の気持ちを示します。
示談交渉を弁護士に依頼するメリット
「加害者側なのに、弁護士に依頼しても良いのだろうか?」「弁護士に依頼をせずに自力で解決(示談)はできないのだろうか?」と疑問に思う方もいるでしょう。
しかし、被害者との示談交渉は弁護士に依頼することをお勧めします。
というのも、殊に窃盗事件では、上記の通り被害店舗が一律として示談を受け入れないというケースも多々あります。
このような場合も、弁護士がいれば被害額の弁償のみを行なったり、供託や贖罪寄付をスムーズに行ったりすることが可能になります。
さらに、被疑者やその家族の方は示談交渉の経験がないため、示談の適切な方法、流れがわからないのが通常です。
示談金の相場も分からなければ、適切な額の示談金で示談を成立させることも難しいです。
※窃盗罪における示談金は、盗んだ品物相当額だけでなく、迷惑料や慰謝料を加えた金額が相場となります。
弁護士ならば、個人・法人相手のいずれでもスムーズに示談交渉を進めることができ、示談成立後には適切な内容の示談書を作成することも可能です。
示談は思った以上に高度な交渉ごとになりますので、専門家である弁護士のサポートが必須であると言えるでしょう。
→ご相談内容「示談したい」
反省文、謝罪文を書く
被疑者の反省の具合は、検察官・裁判官の心証に大きな影響を与えます。
そこで、窃盗行為に及んでしまったという事の重大さを被疑者の方に理解してもらい、深く反省してもらうことも重要です。
そのためにも、被疑者の方には謝罪文や反省文を作成してもらい、被害者、そして検察官や裁判官にその書面を提出して、きちんと反省している姿勢をアピールしていきます。
仮に示談が成立しないような場合でも、被害者にしっかりと謝罪しているかどうかという点はとても重要な要素となります。
早期釈放を目指す
窃盗罪で長期の身体拘束(勾留)を受けるケースは少ないです。しかし、被害金額が大きい場合や、倉庫に忍び込むなど計画性の高い場合、立件されている事件が複数件ある(余罪がある)場合は、逮捕・勾留による身体拘束を受ける可能性もあります。
逮捕による身体拘束は2~3日ですが、勾留は原則10日間、場合によってはさらに追加で10日間(合計20日間)も身体拘束されることもあります。
これほどの長期で勾留されると、学校や仕事に悪影響が生じます。欠席・欠勤の理由を伝えられず、窃盗を犯したことがバレてしまうかもしれません。
在宅事件にならず被疑者が身柄を拘束されている場合には、早期の身柄解放を目指して、以下のような弁護活動を全力で行います。
- 勾留請求をしないよう検察官に対して要求する。
- それでも勾留請求されてしまった場合には、勾留決定しないよう裁判官に要求する。
- それでも勾留決定が下されてしまった場合には、勾留決定を取り消してもらうよう、別の裁判官に対して要求する(準抗告を行う)。
窃盗の程度が軽微であり、かつ容疑を認めているならば、弁護士のサポートで勾留を回避したり、釈放されたりする可能性は高いでしょう。
当事務所では、これまで窃盗事件における多くの勾留阻止、身柄解放の実績があります。どうぞご安心ください。
→ご相談内容「釈放・保釈してほしい」
クレプトマニアとは?
「ダメだと分かっていても他人の物を盗んでしまう」「窃盗に成功すると快感を感じてしまう」
金銭的に困っているわけではないのに盗みへの欲求が抑えられず、窃盗行為を繰り返してしまうなど、常習性のある被疑者の方は「クレプトマニア(窃盗症、窃盗癖)」と呼ばれる病気の可能性があります。
一般的な窃盗の場合、「その品物が欲しいから」というのが動機ですが、クレプトマニアの場合、「盗む行為、それ自体に快感を覚えるから」というのが動機になります。
クレプトマニアは心の病気であり、うつ病や摂食障害など、精神疾患と併発して見られる傾向があります。
たとえば、万引きで店員に捕まった時は涙を流しながら許しを乞う態度を見せていたのに、数日も経てば何事もなかったようにまた窃盗行為を行うということを平然と繰り返してしまうのが、クレプトマニアなのです。
このような状態の方が万引きを繰り返し続ければ、いずれはその常習性から実刑判決が下されます。
ただ、刑務所に服役したとしても心の病が完治されるわけではありません。専門医による根本的な治療を受ける必要があります。
クレプトマニアの方の刑事弁護をする場合、まず再犯防止専門のクリニックで治療を受け、その証拠となる診断者やカルテを検察官や裁判官に提出します。そうすることで、再犯防止に向けて努力しているという姿勢を示すことができるからです。
さらに言えば、こういった治療自体、今後ご自身を更生させていくためにもとても有益なはずです。
クレプトマニアには長期的な治療が必要となるため、本人の「絶対に克服する」という強い意志と、家族や周囲の人たちのサポートが不可欠です。

[参考記事]
クレプトマニア(万引き癖)の特徴と治療法
窃盗などの刑事事件は泉総合法律事務所へ
窃盗事件で逮捕された場合、被害金額が大きかったり、計画性のある悪質な窃盗であったり、同種前科があったりすると、そのまま勾留をされて長期の身体拘束が行われる可能性があります。
さらに、窃盗罪を含む刑事事件で起訴された場合には、無罪とはならず前科がついてしまう可能性が非常に高いです。
これらの事態を回避するためには、早急に弁護士に窃盗事件の刑事弁護を依頼すべきです。
窃盗で逮捕された場合、本人やその家族の方は早急に刑事弁護経験豊富な泉総合法律事務所の弁護士、泉義孝にご相談ください。
刑事事件に関するお悩みは無料相談が可能となっております。

[参考記事]
万引きで逮捕されるとどうなる?弁護士に依頼するメリット

