盗撮 [公開日]2017年9月21日[更新日]2025年4月11日

「盗撮」とはどこから?カメラを向けた、設置しただけで犯罪なのか

「盗撮」とはどこから?カメラを向けた、設置しただけで犯罪なのか

スマートフォンやスマホアプリ、小型カメラなど、電子機器の進化と共に、「盗撮」といわれる犯罪も大きく増加しています。
しかし、「撮影するためにカメラを向けた」「女子トイレにカメラを設置した」など、「盗撮」として犯罪になる行為がどこからなのか、具体的には知らない方が多いのではないでしょうか。

今回は、盗撮事件について、「どのような行為が盗撮に当たるのか」を解説していきたいと思います。

1.盗撮を取り締まる法律

盗撮とは、一般的には無断で人物を動画ないし静止画で撮影することを指します。しかし、その全部について法が禁止して刑罰の対象となるものではありません。
たとえば、「風景を動画ないし静止画で撮影したところ、その映像にたまたま人物が映っていた場合」には法の禁止する盗撮にはなりません。

盗撮を取り締まる法律は複数あり、以下に当てはまった場合には「盗撮」犯として処罰される可能性があります。

(1) 性的姿態等撮影罪(=撮影罪)

盗撮の罪(撮影罪)は、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(性的姿態撮影等処罰法)」において、以下のように規定されています。

第二条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態

二 刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為

三 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為

四 正当な理由がないのに、十三歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は十三歳以上十六歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為

二 前項の罪の未遂は、罰する。

上記を簡単にまとめると、以下の通りです。

  1. 正当な理由なく、人の性的姿態などをひそかに撮影する(盗撮する)行為
  2. 同意できない状態の被害者を撮影する行為
  3. 被害者を誤信させて撮影する行為
  4. 16歳未満の人の性的姿態などを撮影する行為
  5. 1から4の行為の未遂行為

つまり、撮影罪となる盗撮行為の典型は、「エスカレーターに乗って下から前にいる女性のスカートの中・下着を撮影する行為(ないし撮影しようとした未遂行為)」「電車内で前に座っている女性のスカートの中の下着を撮影しようとする行為(ないし撮影しようとした未遂行為)」「女性用更衣室や女性用トイレにスマートフォンや小型デジカメなどを設置して女性の下着姿を撮影する行為(ないし撮影しようとした未遂行為)」です。未遂も処罰されるという点は覚えておきましょう。

撮影罪の刑罰は、「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」です。

「撮影罪」の要件・刑罰|盗撮をするとどのような罪になるのか

[参考記事]

「撮影罪」の要件・刑罰|盗撮をするとどのような罪になるのか

(2) 迷惑防止条例

迷惑防止条例」は、撮影罪に当てはまらない、およそ女性などの下着姿以外の容姿を無断で撮影しようとする行為を違法行為として定めています(※正確には男女問いません)。
迷惑防止条例は都道府県ごとによりその名称も規定する内容も異なりますが、基本的に同じような行為を「盗撮」と定義しています。

東京都の条例(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)では、「盗撮」について以下のように定めています。

第五条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物
 前二号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。

言い換えると、「通常衣服を脱ぐような場所or多数の者が利用する公共の場」で、「通常衣類で隠されているような下着or身体の一部」を、「実際に撮影するor撮影目的でカメラ等を差し向けるor撮影目的でカメラを設置する」というのが定義となります。

そして、これら以外にも、三においては「公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること」が規制されています。
つまり「細身のズボンを着用していた女性の後ろ姿の臀部を撮影する(最高裁平成20年11月10日決定)」「女性の胸元(谷間)をひそかに撮影する」などの行為は、卑わいな言動」として迷惑防止条例違反にあたる可能性があります。

また、ほとんどの都道府県で、やはり撮影するつもりでカメラ機能を有するスマートフォンを差し向けただけ、駅のトイレの個室などにカメラを設置しただけでも「盗撮」にあたります。

東京都における迷惑防止条例違反で有罪になると、以下の刑罰が科される可能性があります。

カメラを差し向けた・設置した場合 6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金
常習の場合:1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
実際に撮影した場合 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
常習の場合:2年以下の懲役又は100万円以下の罰金

2.盗撮事件は泉総合法律事務所へ

以上のように、一言で「盗撮」といっても、行為や態様により適用される法律は様々です。

基本的に、下着や裸体など、本来であれば衣服で隠れている身体の部分の撮影、あるいは衣服を付けないでいるような場所での撮影が処罰対象となっています。
もっとも、近年は盗撮行為が厳罰化されており、性的姿態撮影等処罰法施行以後は盗撮事案のかなりの件数が逮捕されるようになりました。

どこからが盗撮として犯罪となるのか?という判断は、一般の方には困難なケースがあります。
自分勝手に「この程度なら大丈夫だろう」などと判断するのは危険です。

泉総合法律事務所の弁護士泉義孝は、刑事事件の弁護経験が豊富で、盗撮事件においても多くの実績を残しております。
盗撮を疑われてしまった方、盗撮で逮捕されてしまった方、不起訴にしてもらうため被害者と示談したい方は、どうぞお早めに初回相談料無料の泉総合法律事務所にご相談ください。

盗撮事件の示談交渉の流れと弁護士に依頼するメリット

[参考記事]

盗撮事件の示談交渉の流れと弁護士に依頼するメリット

刑事事件コラム一覧に戻る