盗撮 [更新日]2025年11月6日

「撮影罪」の要件・刑罰|盗撮をするとどのような罪になるのか

「撮影罪」の要件・刑罰|盗撮をするとどのような罪になるのか

撮影罪とは、同意なしに(ひそかに)性的姿態を写真やビデオで撮影する行為を刑事犯罪として処罰する法律です。
日本ではこのような行為を「盗撮」と呼び、警察に検挙されれば逮捕や勾留の後に起訴されてしまう可能性もあります。

近年は性犯罪も厳罰化され、撮影罪もその一環で2023年より施行されました。
本コラムでは、まだ新しい「撮影罪」について分かりやすく解説していきます。

1.日本における「盗撮」の罪

日本の法律では、過去の盗撮は「迷惑行為防止条例違反」あるいは「軽犯罪法違反」で処罰されていました。
しかし、2023年に「性的姿態撮影等処罰法」が施行され、現在の盗撮は「性的姿態等撮影罪(=撮影罪)」として処罰されます。

例えば、以下のような行為は撮影罪となります。

  • 電車の中で女子高生のスカートの下にカメラを差し入れ、その中を無断で撮影した。
  • 風呂、更衣室、トイレ等にカメラを仕掛け、秘密裏に性的姿態を撮影した。

撮影罪の刑罰は、「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」です。
この刑罰は、過去の迷惑行為防止条例違反「6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金」や軽犯罪法違反「1年以下の懲役または100万円以下の罰金(常習の場合)」よりも厳罰化されています。

なお、盗撮行為をするために住居やビル内に立ち入った場合には、別途、住居侵入罪や建造物侵入罪が成立する可能性があります。

「盗撮」とはどこから?カメラを向けた、設置しただけで犯罪なのか

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2.撮影罪となる盗撮行為の具体例

盗撮罪は、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」において、以下のように規定されています。

第二条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態

二 刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為

三 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為

四 正当な理由がないのに、十三歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は十三歳以上十六歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為

本条文で言う「正当な理由」と言えば、例えば医師が意識不明の患者の裸体を医療行為上やむを得ず撮影する必要があると認められる場合や、家族が子どもの成長記録として自宅の庭でプール遊びをしている風景を撮影する場合などが当てはまります。
しかし、このように限定的なものですので、盗撮で問題となる多くのケースでは「正当な理由がある」と認められることはありません。

皆さんが想像されるような性的な部位・下着の撮影以外にも、わいせつな行為や性交等の姿態を撮影すると、盗撮罪に当てはまります。(第二条一)
例え交際相手であっても、その相手との性行為の様子を無断で隠し撮りするのは撮影罪となるのです。

さらに、暴行や脅迫などで抵抗できないようにした上で撮影した場合(第二条二)や、「今日撮る写真はヌード作品で、芸術だ」「(本当はインターネットにアップする予定があるが)誰にも見せないから撮らせてほしい」などと言って相手を騙し性的な写真を撮影した場合(第二条三)も、撮影罪が成立します。

年齢的な規制を言えば、13歳未満の者を対象とする性的姿態等の撮影は、例え本人が同意をしていたとしても撮影罪の処罰対象となります。さらに、13歳以上であっても16歳未満ならば、撮影者が本人より5歳以上年長である場合、本人の同意にかかわらず撮影罪による処罰の対象です。
例えば、15歳の少女の裸体を21歳の交際相手が撮影した場合は、撮影罪が成立します。

なお、性的姿態撮影等処罰法では、上記のような撮影行為以外にも、性的な画像の提供、陳列、保管、送信、記録などの関連行為も処罰の対象となります。

3.盗撮の罪と逮捕された後の流れ

逮捕後、被疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合、警察はすぐに被疑者を釈放せず、留置施設に留置したまま取り調べを行うことができます(48時間以内に限る)。
そして、被疑者は逮捕から48時間以内に警察から検察庁へ送致されます。

その後、検察官が逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断した場合には、検察官の判断で釈放されます。
一方、「さらに身柄を拘束して取り調べる必要がある」と検察官が判断した場合、検察官が裁判官に対して勾留請求を行います。

検察官から勾留請求を受けた裁判官は被疑者に質問したり、被疑者の弁解を聴取したりします。
そのうえで、逃亡や証拠隠滅を図るリスクを十分考慮して、検察官からの勾留請求を認めるか否かを裁判官が判断します。

もし裁判官が勾留請求を認めれば、勾留決定がなされます。
勾留となった場合はそこから最大で20日以内に、釈放となった場合は必要な捜査が全て終わった後に、検察官が起訴・不起訴の判断を行います。

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盗撮の初犯では、住居侵入行為を伴ったり、盗撮画像をネットで公開・販売していたりといった悪質性の高い事案でない限り、仮に起訴されても略式手続(罰金刑)であり、拘禁刑が選択されることはないでしょう。
※罰金刑も回避するには被害者との示談を成立させることが重要です。

一方、正式起訴(略式手続によらない起訴)された場合は、起訴後勾留に移行して引き続き身柄を拘束されます。
正式起訴からおおむね1ヶ月程度が経過した後、公判手続きが開催されます。

盗撮の初犯で逮捕・起訴される?実刑の可能性

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盗撮の再犯の場合

過去にも盗撮で立件されたことがある場合には、起訴されて拘禁刑が選択される可能性が高くなります。
しかし、再犯でも刑事弁護次第では起訴猶予となったり、起訴されても略式起訴(罰金刑)となったりする可能性は大いにあります。

一方、過去に盗撮で執行猶予判決を受け、その執行猶予中に盗撮をした場合、起訴されたうえ執行猶予がつかず拘禁刑となる可能性が極めて高いでしょう。仮に盗撮以外の前科であったとしても、執行猶予中の犯行であることは不利な事情として斟酌されます。

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4.盗撮罪の刑事弁護

盗撮行為に対しては、有罪判決が確定すれば罰金刑でも前科となってしまいます。
ことに拘禁刑は、長期間刑務所に拘禁されて強制的に労働させられる刑であり、本人はもとより家族など周囲に与える精神的・経済的な打撃は測り知れません。

盗撮事件で逮捕されてしまった場合、あるいは逮捕されずとも検挙されて在宅捜査が始まった場合、弁護士に依頼をすれば以下のような刑事弁護活動を受けられるため、不起訴を獲得できる可能性が高くなります。

(1) 逮捕・勾留の回避、早期釈放

弁護士は、逮捕やそれに続く勾留を阻止する、あるいは早期釈放を目指す活動をしてくれます。

最初に、検察官が裁判官に勾留請求することを阻止します。このためには、弁護士が被疑者本人や家族から聞き取りを行った上で、検察官と面会したり、意見書を出したりして、「勾留の必要性や相当性がないこと」「在宅捜査に対応できること」「家族が身元引受をすること」などを検察官に対し説明することが重要です。
他にも、家族の方に身元引受書や上申書を作成いただくほか、弁護人意見書も作成します。

これらを警察官・検察官に事前に提出することで、釈放を促したり、勾留請求をしないように働きかけたりすることが可能です。
盗撮では、このような刑事弁護活動で多くの場合は勾留請求されず釈放となります。

それでも勾留請求されてしまった場合や、勾留中からご依頼をいただいた場合には、「準抗告」を申し立てます。準抗告とは、勾留決定に対する不服申立です。

準抗告では、そもそも被疑事実が重いものではないこと、被疑者には仕事や家族があり逃亡するおそれがないこと、証拠を隠滅する蓋然性がないこと、前科前歴がないこと、余罪がないことなどから、勾留の必要性や相当性がないことを主張することになります。

釈放・保釈してほしい

(2) 被害者との示談交渉・被害弁償

釈放をされても、それだけで不起訴になるとは限りません。
不起訴を獲得するには、被害者と示談交渉をする必要があります。

犯罪の被害はお金で代替できるものばかりではありませんが、被害者が謝罪を受けたか、被害者が許す気持ちになっているか、被害者が被害弁償を受けているか、慰謝の措置を受けているかということは非常に重要なことです。そのような被害者の気持ちを考慮して検察官は処分を決めるのです。

そこで、示談が成立し、被害者が許す気持ちになっていれば、初犯の盗撮であれば通常は不起訴になり前科もつきません。

示談交渉では、弁護士が被疑者に代わってお詫びをお伝えし、被疑者が書いた謝罪の手紙を渡します。
時には数回に渡って示談交渉を重ね、やがて被疑者の反省・謝罪をご理解いただければ、示談金額を提示し、ご検討していただきます。

最終的に被害者の方が示談金(慰謝料)について納得すれば、示談書の締結と示談金のお支払いとなります。

起訴を避けるための示談は、検察官が起訴処分とするか否かの判断を下すまでの期間(逮捕されたときは、逮捕から最大23日)にする必要があります。
盗撮をしてしまった方やその家族は、なるべく早い段階で弁護士に相談しましょう。

盗撮事件の示談交渉の流れと弁護士に依頼するメリット

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5.盗撮・撮影罪でお困りなら弁護士へ

もし、盗撮行為などを疑われ、撮影罪等で警察官による取調べの対象になってしまったら、速やかに泉総合法律事務所の弁護士泉へご相談ください。
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