万引など窃盗 [公開日]2018年2月28日[更新日]2025年4月28日

置き引きで捕まる!?窃盗罪で逮捕されたらどうするか

置き引きで捕まる!?窃盗罪で逮捕されたらどうするか

「置き引き」というのはよく耳にする言葉ですが、実はこれは「窃盗罪」に当たり、場合によっては逮捕されてしまうこともあります。

この記事では、置き引きで捕まってしまった場合の対処方法などについて説明します。

1.置き引きの手口

置き引きとは、「店先や車内などで、置いてある他人の荷物を、持ち主のふりをして盗み去ること」(※新村出編「広辞苑(第2版補正板)」(岩波書店)289頁。なお、山田忠雄他編「新明解国語辞典(第6版)」(三省堂)177頁も同旨)です。

「置き引き」は法律用語ではなく、盗みの方法をあらわす一般用語ですが、犯罪白書等の統計では、「万引き」「空き巣」などと並んで、窃盗犯の典型的な手口のひとつとして分類されています。

典型的には、次のようなケースです。

  • 列車の網棚に荷物を置いたままトイレに行った隙に荷物を盗まれてしまった
  • 旅行先の土産物屋でバッグを足元に置いたまま商品を見ていたところ、気付かないうちにバッグを盗まれてしまった

2.置き引きの罪

(1) 置き引きは窃盗罪

置き引きは、窃盗罪(刑法235条)が成立します。

刑法第235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

上の条文にある、窃盗罪の「窃取」とは、財物に対する他人の占有を侵害して、自己または第三者の占有下に移転することを意味します。

「占有」の有無は、①その物に対する事実的な支配という客観的な要素と、②支配する意思という主観的な要素に基づき、社会通念によって判断されます。

先にあげた置き引きの典型的なケースで、トイレに行く際に列車の網棚に置いたままの荷物や、商品を見ている際に足元に置いたバッグは、持ち主と物理的には接触していないものの、著しく離れた距離ではなく、当然持ち主にも依然としてこれを支配し続ける意思が認められますから、社会通念上、持ち主が占有していると評価されます。

したがって、その占有を自己に移せば「窃取」したことになり、窃盗罪となるのです。

窃盗罪の公訴時効は7年です。

なお、他人が占有していない物を持ち去る行為(いわゆるネコババ)は、占有侵害、すなわち窃取行為がないので、窃盗罪は成立しません。この場合は「占有離脱物横領罪」が成立します。
たとえば、財布を路上に落としてしまい、どこで落としたかわからないという場合、持ち主は財布に事実的支配を及ぼしているとは評価できないので、持ち主の占有は認められません。そこで、これを拾った者が自分の物にしてしまえば、占有離脱物横領罪となります。

(2) 置き引きが窃盗罪とされた裁判例

ケース①
バスに乗車する列にいた被害者が、カメラを脇に置いたことを忘れたまま、5分間にわたり前進してしまい、約20メートル進んだところで、カメラを忘れたことに気づいて引き返したという事案で、裁判所はカメラに対する占有は失われていないとして、窃盗罪を認めました(最高裁昭和32年11月8日判決・最高裁判所刑事判例集11巻12号3061頁)。

ケース②
駅の指定・特急券販売窓口のカウンターに財布を置き忘れた被害者が、その1、2分後、15メートル離れた別の窓口で乗車券を購入しようとした時点で財布の置き忘れに気づいて引き返したという事案で、やはり裁判所は財布に対する占有は失われていないとして窃盗罪を認めました(東京高裁昭54年4月12日判決・刑事裁判月報11巻4号277頁)。

ケース③
被害品であるポシェットを公園のベンチに置き忘れた被害者が、歩いて約27メートル離れた時点で、犯人がポシェットを持ち去ったという事案で、最高裁は持ち去られたのが、被害者がポシェットの置き忘れに気づいていない時点であっても、ポシェットに対する占有は失われていないとして窃盗罪の成立を認めました(最高裁平成16年8月25日決定・最高裁判所刑事判例集58巻6号515頁)。

上記は、いずれも被害者が置き忘れたという事案で、置き引き=窃盗罪が成立しています。

被害品を失念しているということは、それを占有する意思を欠いているのではないかという疑問も生じますが、いずれも短時間の失念に過ぎないので、なお占有意思は失われていないと評価することが可能です。

3.置き引きで捕まるケース

置き引きが発覚し、逮捕されるのは、
(ⅰ)第三者に犯行を目撃されて現行犯逮捕されるケース
(ⅱ)被害品のないことに気づいた被害者が被害届を提出し、防犯カメラの映像などから犯人が特定されるケース
に分かれます。

最近では、駅、空港、デパート、スーパー、繁華街などに数多くの防犯カメラが設置されていますから、むしろ置き引きは証拠が残りやすい犯罪と言えます。

置き引きは立派な窃盗罪であり、決して軽い犯罪ではありません。目撃証言や防犯カメラ映像などの証拠があるにもかかわらず置き引きの行為を認めない、つまり否認している場合は、逃亡の恐れや証拠隠滅の恐れありとして逮捕となるのが通常です。
こうなると、逮捕後3日以内に検察官の取り調べがあり、そこでも否認した場合には検察官は裁判所に対して通常10日間の勾留を請求し、裁判所も通常勾留決定します。

逮捕・勾留されて何もしないまま放置していると、やがて起訴されて有罪判決を受け、罰金や服役を余儀なくされる可能性があります。

仮に罰金や執行猶予付き判決となっても、有罪には変わりありませんので前科がついていまいます。

一方、被害金額が少額で被疑者が十分反省し再犯の可能性がないと検察官が判断した場合には、初犯であれば検察官が起訴猶予処分にしてくれることもあります。

4.置き引きで検挙されたら被害者との示談を

置き引き行為が事実であるなら、できるだけ早く被害者と交渉を行い、示談を成立させるべきです。

置き引きを始めとする窃盗事件では、被害者に被害品を返却するのはもちろん、十分な謝罪と示談金を提示して、早期の示談成立を目指します。
窃盗罪における示談金は、盗んだ品物相当額だけでなく、迷惑料や慰謝料を加えた金額が相場となります。

置き引きならば、弁護士が被疑者から弁護依頼を受けて被害者との示談を取り付ければ、多くの場合で不起訴となります。
(※同種前科が複数ある場合には示談を取り付けても刑事罰(主として罰金刑)が下される可能性はあります。)

弁護士に依頼することで、身体拘束や起訴などの不利益を避けることができる可能性が大きく高まるのです。

窃盗で逮捕された場合、本人やその家族の方は、早急に刑事弁護経験豊富な泉総合法律事務所の弁護士、泉義孝にご相談ください。
刑事事件に関するお悩みは、無料相談が可能となっております。

刑事事件コラム一覧に戻る