盗撮で現行犯以外の逮捕が難しい理由と後日逮捕の可能性

盗撮事件では、被疑者は犯行現場で現行犯逮捕されることが多いです。
例えば、電車やエスカレーターにおいて女性のスカート内部を撮影したところ、被害者本人や目撃者に発見されて現行犯逮捕されるケースです。
では、犯行が見つかったものの盗撮の現場から逃げてしまった場合、現行犯以外で逮捕(後日逮捕)されるケースはあるのでしょうか?
盗撮が発覚しても、逃げきってしまえばそのまま逮捕されないのでしょうか?
ここでは、盗撮の現行犯以外の逮捕=後日逮捕について詳しく説明します。
1.盗撮で後日逮捕(通常逮捕)されるケース
(1) 後日逮捕とは?
結論から言えば、盗撮を行った者が、後日に現行犯以外で逮捕される可能性はあります。
現行犯逮捕は、犯罪を行っている、あるいは犯罪が終わってから間もない時にしか行えません(刑事訴訟法212条1項)。
そのため、盗撮行為から時間が経った場合に行われる逮捕は、基本的に通常逮捕となります。
通常逮捕(=後日逮捕)とは、検察官、検察事務官、司法警察職員(警察官、麻薬取締官、海上保安官など)が裁判所から得た逮捕令状で逮捕することをいいます(刑事訴訟法199条1項)。
令状を請求された裁判官は、被疑者が本当に罪を犯した疑いがあるか、逮捕の必要性があるか等を踏まえ、令状を発布します。
令状を持った警察官等は、被疑者の元へ行き、令状を提示した上で被疑事実の要旨を述べ、被疑者を逮捕することになります。
盗撮で通常逮捕されるケースとしては、盗撮行為がバレた後に現場から逃げたものの被害者から被害届が提出された場合や、盗撮の事実が防犯カメラの映像などから後日に発覚して警察の捜査が開始した場合が挙げられます。
公衆トイレなどに設置したカメラが発見され、カメラの所有者であることがバレた場合も盗撮で後日逮捕される可能性があります。
あるいは、盗撮が現場で発覚し取り調べを受けたものの解放され、後に逮捕される場合もあります。例えば、後日の警察からの呼び出しに応じない場合や、余罪があることが発覚した場合です。
これらの事情があると、被疑者に逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れがあるとされ、通常逮捕が行われることがあります。
(2) 盗撮事件で被疑者を特定する方法
最近では、街中やデパート等の商業施設の他、駅構内の改札、エスカレータ及び階段の乗り口・降り口、エレベータの中など、至る所に防犯カメラが設置されています。さらに、一部の電車内にも防犯カメラが設置されているようです。
捜査官は、この防犯カメラから入手された映像資料をもとに、被疑者の顔を特定するための捜査を行います。
例えば、店の駐車場に防犯カメラが設置されていた場合、車のナンバーから被疑者を特定することが可能です。
また、SUICAやPASMOなどのカードには個人情報(氏名、住所など)が記載されている場合があり、防犯カメラに映る改札からの出場の映像、時間、カードの出場時刻を照合することで、被疑者を特定することが可能なのです。
さらに、被疑者に前科や前歴があれば、入手された被疑者の顔の映像を元に、過去に立件された者の写真リスト、運転免許証の写真、被害者や目撃者の記憶を照合し、被疑者を特定していくことも可能です。
【盗撮では発覚してから捕まるまで何日かかる?】
その場で現行犯逮捕されなかったとしても、後に名前や住所が割れ、逮捕の必要性(逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れがある場合)があると判断された場合には、通常逮捕がなされる可能性があります。
しかし、これは犯行から1週間程度後の場合もあれば、1ヵ月後、1年後の場合もあり、「何日かかるか」を明言することはできません。捜査官が被疑者を特定し、令状を得た段階で逮捕が行われます。
2.盗撮の現行犯以外の逮捕が難しい理由
上記の通り、盗撮事件において後日に通常逮捕されることは「ない」というのは誤りです。
もっとも、実際に盗撮で通常逮捕される確率は少なく、全体の数パーセントにも満たないと言われています。
それは以下の理由によります。
- 被害者に気づかれず犯行が発覚しないため、被害届も出されない
- その場で身柄を抑えなければ証拠を集めることが困難
- 後日に犯行が発覚しても、防犯カメラの映像などの限られた証拠しか存在せず犯人を特定できない
3.盗撮で通常逮捕されるのを回避するには
このように、盗撮で後日逮捕される確率は極めて低いですが、0ではありません。
特に、盗撮行為が発覚した後に逃げきった場合、被害者が被害届を出すことで、警察が防犯カメラやICカードの出入場記録(Suicaなど)を捜査し、最終的に被疑者にたどり着くこともあります。
そのため、「逃げきれたのでもう捕まらないだろう」と思っていると、警察が家に来ていきなり逮捕されるといった事になりかねません。
では、盗撮で後日逮捕されるのを防ぐ方法はあるのでしょうか?
現行犯・後日逮捕問わず、発覚している盗撮で逮捕されるのを回避するには、被害者と示談を成立させることが重要です。
示談が成立している=被害者から犯罪事実について許しを得たことを意味し、被疑者を逮捕する必要性が低くなるためです。
また、仮に逮捕されたとしても、示談が成立していれば後の勾留を回避できたり、不起訴処分を獲得できたりする可能性が高まります。
もっとも、盗撮から逃走した場合、被害者の情報・連絡先を全く把握していないのが通常です。
仮に知っていたとしても、加害者と被害者が直接交渉をするとトラブルが拡大するおそれがあり、また、直接の連絡は証人威迫・罪証隠滅の可能性が高まったと判断され逮捕の可能性が高まってしまいます。
したがって、盗撮の示談を考えた場合は、一度弁護士にご相談ください。
弁護士は被疑者の方の現状を踏まえた上で「今どうするべきか」をアドバイスしてくれるだけでなく、後日逮捕されそうならば、警察・検察を通して被害者の連絡先を教えてもらい、示談交渉を代理することが可能です。
4.盗撮で逮捕されそうなら弁護士へ相談を
通常逮捕がされるのは、逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れなどがある場合です。
弁護士が間に入って適正に対応するのであれば、これらの恐れがないと警察官・検察官に効果的に主張することができます。
したがって、早期に弁護士を入れると、逮捕される可能性を減らすことができるのです。
盗撮の容疑で逮捕されるかも、と不安の方は、盗撮案件を多数扱っている泉総合法律事務所の弁護士・泉義孝にご相談ください。