【2026年4月】自転車の青切符導入で何が変わる?刑事罰を防ぐために
自転車による交通事故の抑止を目的として改正された「道路交通法」が、2026年4月1日施行されました。
この改正の目玉は、自転車の運転者による道路交通法違反に「交通反則通告制度」、俗にいう「青切符」制度を導入した点です。
これにより、自転車の交通ルール違反でも、これまでの自動車やバイクの違反と同様に「青切符」が切られ、反則金を納めなくてはならないケースが発生します。
この記事では、そもそも「青切符」制度とは何か?その導入で何が変わるのか?どのようなケースで青切符が交付されるのか?など、改正法についての基礎知識を説明します。
1.そもそも「青切符」制度とは何か?
道路交通法は、安全・円滑な道路交通を図るための交通ルールであり、違反に刑事罰が科されるルールもあります(道路交通法115条〜124条)。
その対象となる「車両」には、自動車やバイクだけでなく、「軽車両」の一種である「自転車」も含まれています。
すなわち、道路交通法が定める交通ルール違反に対する刑事罰は、もともと自転車にも適用されるものなのです。
(1) 青切符とは?
通称「青切符」とは、「反則行為に関する処理手続の特例」(道路交通法125条以下)に基づき、違反者に交付される「交通違反告知書」のことです。
本来、道路交通法が刑事罰を定めているルールに違反した場合は、刑事事件として立件され、捜査を受けたうえで、検察官により起訴・不起訴の処分がなされます。
起訴されたときは、裁判所による審理を経て罰金や拘禁刑といった刑事罰を受けることになります。当然、有罪判決が確定すれば、前科として記録されます。
しかし、交通違反は日々大量の事案が発生しており、その全てをこのような通常の刑事手続によって取り扱うことは事実上不可能です。
また、比較的軽微な違反を刑事事件として処理すると、国民の多くに「前科」がつくこととなってしまい、好ましいことではありません。
そこで、道路交通法違反事件のうち軽微な事案を、特に「反則行為」として政令(施行令など)で定め、その違反者に対しては、警察官が反則行為の事実内容などを記載した「交通反則告知書」を交付します。
違反者が反則金を支払った場合には、20歳以上の反則者は起訴されず、少年(20歳未満)の反則者は家庭裁判所の審判に付されません。
この「交通反則告知書」が青色の用紙であることから、通称「青切符」と呼ばれています。
【自転車と青切符の歴史】
これまで、青切符制度は、自転車の運転者を対象とはしていませんでした。このため、自転車による道路交通法違反については、原則通り刑事手続が行われることとされていました。ただ、自転車の軽微な違反をいちいち刑事事件として立件するのは現実的ではありませんから、実際は、自転車の違反は取締の対象とはしないで黙認するか、事実上の指導・警告で済ませていました。
一方、被害者の死傷といった重大な結果を招いた事故は刑法上の過失致死傷罪・重過失致死傷罪を適用して刑事事件とし、道路交通法違反についても同時に処理することが通常という、二極化した取り扱いがなされてきたのです。

[参考記事]
交通違反でも刑事事件に!道路交通法違反の種類と罰則
(2) 青切符導入の背景
自転車による重大事故の発生は、徐々に見過ごすことができない状態となってきました。
警察庁が公表している統計表(「令和7年における交通事故の発生状況について」警察庁交通局令和8年2月26日発表)によれば、令和7年における交通事故の死者数は、事故発生状況別にみると、自転車に乗車中の事故による死者数が306人で全死者数の12%を占めています。
また、このうち第1当事者(故当事者のうち過失の程度が最も重い者)または第2当事者(次に重い者)に該当する者を調べると、何らかの「法令違反あり」と認められた者が79.7%を占めています。
そこで、自転車の運転者にも、本来は道路交通法の定めるルールを守る法的義務があることを周知し、自覚させることで、事故発生を抑制する必要があります。
そのために、これまで自転車を対象外としていた「反則行為に関する処理手続の特例」制度、すなわち青切符制度を、自転車にも適用することとしたのです。
(3) 青切符と赤切符の違い
青切符に対して、「赤切符」と俗称されるものがあります。
道路交通法違反のうち、「反則行為に関する処理手続の特例」手続の対象とならない違反は、刑事事件として捜査→起訴→裁判→判決という刑事手続を経ることになります。
ただ、軽微とは言えない違反でも、交通違反事件はやはり大量に発生するため、迅速な処理が必要です。
このため、警察・検察・裁判所が、簡易な裁判手続である「即決裁判」や、書面審理である「略式手続」をスムーズに運用し易いよう、複数の共通した書式(共用書式)が定められています。正式名称は、「道路交通法違反事件迅速処理のための共用書式」です。
そのうち、警察官によって違反者に交付される「告知書・免許証保管書」が赤色の用紙であるため、通称「赤切符」と呼ばれています。
赤切符は、あくまでも刑事手続を迅速に進めるための制度です。反則金を支払えば刑事罰を免れる青切符とは異なることに注意してください。
2.青切符の対象者
16歳未満の者は、青切符制度の適用対象外です(道路交通法125条2項4号)。
つまり、未成年者でも16歳以上の者は適用対象ですし、高齢者も適用対象です。
16歳未満の自転車による道路交通法違反については、事実上の指導・警告が原則となり、当該自治体の警察によっては、「指導警告書」や「自転車安全指導カード」などの名称の書面が交付され、注意を促す扱いとなります。
3.青切符(反則金)の対象となる反則行為
警察庁の資料(自転車を安全・安心に利用するためにー自転車への交通反則通告制度(青切符)の導入【自転車ルールブック】)によれば、道路交通法上、自転車が対象とされている「反則行為」は、65種類に分類されています。
以下では、代表的な反則行為についていくつか説明します。
(1) 信号無視・一時不停止
もっとも検挙されやすいのは、運転者が「うっかり」やりがちな違反行為で、現場の警察官による視認が容易なので取締の対象ともなり易い違反です。
たとえば、次の各行為です。
1 信号無視
自転車も信号に従わなくてはなりません。
これに違反した場合の反則金は、6000円(点滅信号無視は5000円)です。
2 一時停止違反
自転車でも、道路標識などで一時停止が指定されている場所では、停止線の直前などで一時停止しなくてはなりません。
これに違反した場合の反則金は、5000円です。
(2) 「ながらスマホ」や傘差し運転
1 自転車運転中にスマホの画面を注視・通話する行為
自転車を運転中は、停止しているときを除き、スマホや携帯電話で通話をしたり、その画面を注視したりすることは禁止されています。「注視」とは、画像を見続ける行為です。
違反した場合の反則金は、1万2000円です。
なお、スマホ等の通話・注視禁止は厳罰化されており、これに違反したうえ、反則金を納めず、刑事罰となった場合は、6月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金刑(道路交通法118条1項4号)となります。
さらに、違反して現実に交通の危険を発生させたとき(事故を起こした、歩行者の通行を妨害したなど)は、反則金制度の対象外となり、1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金となります(道路交通法117条の4第1項2号)。
2 傘差しやイヤホンをしながら自転車を運転する行為
各都道府県の公安委員会は、道路・交通の状況により、危険防止・安全確保に必要と認める事項を運転者の遵守事項として定めることができます。
これを受けて、例えば東京都では、公安委員会の規則である「東京都道路交通規則」の中に、運転者の遵守事項として、「傘を差し自転車を運転しないこと」「イヤホーン等を使用してラジオを聞く等安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で(中略)運転しないこと」と定めています。
これらに違反すると「公安委員会遵守事項違反」として、反則金3000円となります。
なお、前出の警察庁の資料※によれば、傘差し運転、イヤホン運転は、東京都に限らず、すべての都道府県で禁止されているということです。
(※「自転車を安全・安心に利用するためにー自転車への交通反則通告制度(青切符)の導入【自転車ルールブック】」48頁)。
(3) 反則金の相場と支払いを拒否した場合のリスク
反則金は、最も高い携帯電話使用等で反則金1万2000円、最も安い自転車道通行義務違反などが反則金3000円です。
支払いを拒否した場合、刑事手続に移行し、検察官によって起訴される危険性があります(道路交通法130条)。
もちろん、青切符を切られても、反則行為を行った事実がない場合は、反則金を納めず刑事裁判で争うことも選択肢のひとつです。
4.「赤切符」が切られる重大な刑事事件のケース
重大な違反行為は青切符制度の対象外であり、前述した赤切符が交付され、刑事手続によって処理されます。
これも代表的な違反行為をいくつか説明しましょう。
(1) 酒酔い運転・酒気帯び運転
その程度にかかわらず、飲酒して自転車を運転する行為は禁止されています(道路交通法65条1項)。
飲酒して、酒に酔った状態(アルコールの影響で正常な運転ができないおそれがある状態)で運転をした場合は、「酒酔い運転」として、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金となります。
さらに、飲酒して、アルコールの濃度が血液1リットルにつき0.3mg以上、または呼気1リットルにつき0.15mg以上の状態で運転をした場合は、「酒気帯び運転」として、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金となります。

[参考記事]
飲酒運転で逮捕後の流れ|実刑を避け執行猶予にできるか
(2) 妨害運転(あおり運転など)
自転車といえども、他の車両の通行を妨害する目的で、交通の危険を生じさせるおそれのある方法によって道路交通法違反の行為を行うことは禁止されています。
例えば、次の各行為です。
- 走行中の自動車や他の自転車の直前で急ブレーキをかける行為
- 進路を変更して、後方を走行中の自動車や他の自転車の直前に割り込む行為
- 他の自動車や自転車による回避行動が必要となる「幅寄せ」「蛇行運転」「あおり運転」等
これらの行為は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑となります(道路交通法117条の2の2第1項8号)。
【自転車による妨害運転で実刑判決となった裁判例】
自転車の運転者が、「嫌がらせをして快感を味わいたい」という動機から、自動車の通行を妨害する目的で急ハンドルを切って、後続する車の直前に出るなどの妨害運転を繰り返した事案で、裁判所は、被告人に対し懲役8月の実刑判決を下しました(さいたま地裁令和3年5月17日判決)。
(3) 交通事故が発生した場合
自転車での道路交通法違反の結果、交通事故(人の死傷若しくは物の損壊)を起こしてしまった場合は、青切符制度の適用対象外であり、刑事手続によって処理されます。
また、事故で他人を死傷させた場合には、道路交通法とは別に、刑法上の過失致死傷罪、重過失致死傷罪の容疑でも捜査を受け、起訴される場合があります。

[参考記事]
交通人身事故の刑事弁護全般
5.自転車事故・違反で「被疑者」になった時の対処法
では、自転車による道路交通法違反で刑事手続の対象、すなわち被疑者となってしまった場合に、刑事罰を避けるために、どのような点に注意すれば良いでしょうか?
(1) 警察の取り調べでの注意点
自転車に限らず、交通事故事件では「事故態様」、すなわちどのような状況で事故が発生したのかが、最も重要な問題となります。
事故態様を認定し事件の結果を左右する証拠が、警察による実況見分(現場検証)と、被疑者・被害者の供述です。
前者は、たとえば自転車の運転者が歩行者を最初に発見した地点や、ブレーキをかけた地点などを、被疑者・被害者・目撃者などの指示説明に基づいて特定し、実況見分調書に記録します。
後者は、たとえば被疑者が取り調べにあたって供述した内容を、捜査官が供述調書として書面化したものです。
どちらも、交通事故事件にとっては重要な証拠です。警察に言われるままに安易に事実と異なる指示説明や供述を行うと、後にその内容を撤回することが困難となって、事実ではない犯罪事実で処罰されてしまう危険があります。
記憶があいまいで自信をもって事故状況を説明できないときや、捜査官がこちらの言い分を聞いてくれないときは、被疑者に保障された黙秘権・供述拒否権を行使するべきです。
このような捜査への対応方法や権利保障は、弁護士を選任し、接見(面会)して助言を得ることが大切です。
(2) 逮捕・勾留の回避
被疑者の身柄を拘束する逮捕と勾留は、「逃亡」や「証拠の隠滅」の恐れがあると認められる場合に行われます。
そこで、身体拘束を回避し、万一拘束されてもその拘束期間を短くするには、「逃亡」や「証拠の隠滅」の恐れがないことを、検察官・裁判官に説明し納得させる必要があります。
そのためには、家庭環境(家族がいること、持ち家であることなど)、仕事関係(信用ある企業に長年勤務していること、勤務成績が良好であることなど)に問題がなく、家族や上司が身元引受人となることを誓約していること、すでに警察によって客観的な証拠の収集は完了していることなどを、証拠とともに主張する必要があります。
このような活動は、被疑者自身はもちろん、その家族や友人でも行うことは事実上困難です。専門家である弁護士による刑事弁護活動が必要です。
(3) 事実関係に間違いがないなら「示談」が最優先
自転車の交通事故で相手に被害が発生した場合は、(被疑事実の事実関係に間違いがないならば)被害者との示談交渉を行って示談を成立させることが肝要です。
道路交通法違反、過失致死傷罪での刑事事件は、諸般の事情を考慮して、検察官が起訴・不起訴を決定します。
被害者との示談が成立し、賠償金が支払い済みとなり、被害者が宥恕(寛大な気持ちで許すこと)の意思を表明してくれれば、不起訴処分を得られる可能性が高くなります。
6.自転車の事故・刑事事件でお困りなら弁護士へ
このように、今後は自転車による反則行為があったとして、青切符を交付されることがあります。
違反と言われることに納得できず反則金の納付をためらう方もいるかと思いますが、支払いを拒否した場合、刑事手続に移行し、検察官によって起訴される危険性があります。
また、自転車による人身事故や飲酒運転、あおり運転などは刑事罰を受けてしまうリスクがあります。
お困りの場合、弁護士による法律相談をおすすめします。

