詐欺 [公開日]2018年4月23日[更新日]2025年5月12日

オレオレ詐欺・振り込め詐欺で逮捕されたらどうなる?

オレオレ詐欺・振り込め詐欺で逮捕されたらどうなる?

振り込め詐欺は、かつては「オレオレ詐欺」という俗称で、家族(息子・娘など)を装い高齢者に電話をかけて騙し、高額の金銭の振り込みをさせるという手口が大半でした。

現在は、そのようなオレオレ詐欺を防止するために、金融機関が高額の振り込みを受け付けなかったり、高齢者の振り込み・預金引き出しに関して職員などが応対し問題ないかどうかチェックしたりするため、同種手口の詐欺事件はほとんどなくなっています。
しかし、振り込め詐欺は手口を変えて検挙を巧みに免れ、現在も被害が続いています。出来心から共犯に及んでしまったり、知らないうちに犯罪の片棒を担いでいたりするケースもあるかもしれません。

今回は、そんな振り込め詐欺(オレオレ詐欺)で逮捕されてしまった場合どうなるのか、弁護士に刑事弁護を依頼するとどんな弁護活動をしてくれるのかを解説します。

1.振り込め詐欺(特殊詐欺)の罪

振り込め詐欺で検挙されるのは、詐欺事件の末端の出し子(金銭を引き出す役割)・受け子(金銭を受け取る役割)・かけこ(電話をかける役割)といった役割を担う方が大半です。

これら末端の被疑者は、中学生を含む未成年なことも多いです。アルバイト感覚で、最初は振り込め詐欺の案件だとは気づかずに関与してしまいます。
そして、振り込め詐欺だとわかった時には、既に詐欺のグループから抜け出せなくなってしまっているのです。

そんな末端の被疑者であっても、振り込め詐欺に関わってしまえば詐欺罪に当たることがあります。
詐欺罪には罰金刑がないため、起訴され有罪判決を受ければ、必ず懲役刑となってしまいます。

刑法246条 詐欺罪
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

また、出し子や受け子として不正に銀行の預金を引き出したり、手渡しで金銭を受け取ったりした場合、窃盗罪が成立します。

刑法235条 窃盗罪
他人の財物を窃取した者は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

振り込め詐欺は被害金額が大きく、被害金が暴力団の資金源になっていることがあります。また、被害者が高齢者に多いため、社会的に大きく問題視されています。
そのため、裁判所の判断も非常に厳しく、初犯であっても重い実刑判決が言い渡される傾向があります。

過去には、オレオレ詐欺犯罪の集団に関与していたケースで、「組織犯罪取締法違反」の併合罪で懲役15年以上の判決が言い渡された例もあります。

振り込め詐欺の判決での量刑・刑罰は、「役割が末端か、中位以上の役割か」「被害金額がいくら程か」「被害者への示談ができているか」「振り込め詐欺に関与するに至った事情」などから総合的に判断されます。

過去に泉総合法律事務所で刑事弁護を担当した事案では、被害額は相当の金額でしたが、役割が末端であったことや、被害者と示談ができたことから、なんとか執行猶予付き懲役刑の有罪判決を得ることができました。
他方で、かなりの部分で示談できていたものの、役割が中位とも言えるようなケースでは、厳しい実刑判決となったこともあります。

後者は、被疑者が一般的な職業と考えて詐欺団体に就職したものの、途中からおかしいと気づいていたケースです。気づいた時点で辞めなかったことが厳しく裁判所に評価されたものと考えられます。
(とは言え、事情を知ってから詐欺グループから抜け出すことは容易ではないのも実情です。)

2.詐欺事件の弁護方針|被害者との示談交渉

振り込め詐欺の弁護方針としては、被害者との示談を成立させることに尽きます。
詐欺罪において示談を成立させるためには、被害弁償額、つまり示談金の金額がとても重要になりますが、弁護士はこのような示談金額についても相場を熟知しています。

逮捕された被疑者の家族は、警察から被害金額を含めたおおよその事情を聴いています。
よって、泉総合法律事務所では、その被害金額を刑事相談に来たご家族に尋ね、それら被害金額を示談金として用意できるかどうかをまず聞き取ります。

示談金として用意できない場合には、残念ながら弁護士を選任しても思うような結果(判決)を得られない可能性が高いと言わざるを得ません。

無事に示談金を準備できそうならば、弁護士は被害者と早期に示談交渉を行い、示談成立を目指して全力を注ぎます。
多くの被害者は当然ながら怒りを抱き感情的になっていることが多いため、交渉は代理人である弁護士に一任するのが最適です。

万が一起訴されてしまったとしても、裁判官が示談成立を考慮して執行猶予付き判決を下す可能性もあるため、やはり示談成立の可否は重要と言えます。

また、被疑者の方に謝罪文や反省文を作成してもらい、被害者、そして検察官や裁判官にその書面を提出して、きちんと反省している姿勢をアピールします。

ご相談内容「示談したい

3.詐欺グループとグルの弁護人に要注意

振り込め詐欺で逮捕された際、家族が依頼していないにも関わらず、とある私選弁護人が被疑者の刑事弁護につく場合があります。
国選弁護人ではなく私選弁護人が勝手についたならば、それは振り込め詐欺グループの幹部や上位者が、被疑者のために私選弁護人を選任したと考えられます。

これは、決して逮捕されたグループメンバーを守るためではなく、自分達(幹部・上位者)を守るために行っていることです。残念ながら、このような詐欺グループとグルになっている弁護士というものは存在します。

(1) 詐欺グループの弁護士がすること

接見禁止の一部解除を申し立てない

振り込め詐欺のような組織犯罪・共犯事件では、逮捕に続く勾留時に「弁護人以外は接見できない接見禁止処分」がつけられるのが一般です。面会者を通じて共犯者との口裏合わせや、共犯者による証拠隠滅が行われる可能性があるためです。

通常の私選弁護人は、この接見禁止処分を家族に限って解除して接見(面会)できるように裁判所に申請します(=接見禁止の一部解除の申し立て)。

しかし、オレオレ詐欺グループが選任した私選弁護人は、そのような接見禁止の一部解除申請は行いません。さらに、被疑者が家族に伝言を依頼しても、家族には伝えないのが通常です。
反対に、被疑者との接見での内容を、詐欺グループに伝えることもあります。

家族の情状証人申請を行わない

また、詐欺グループの私選弁護人は、家族に被疑者(被告人)の状況を伝えることはしません。接見禁止処分がついており面会もできないため、家族は今被疑者がどうなっているか皆目見当がつかないのです。
(※警察から事情聴取を受けることで担当警察官から状況を教えてもらえるかもしれませんが、捜査上の秘密から教えてもらえる内容にも限度があります。)

そして、いずれ裁判(公判)が開かれると、私選弁護人は家族との接触を嫌って、通常なら行うはずの家族の情状証人申請を行いません。家族が情状証人として被告人に有利な証言をすることができないまま審理が集結し、判決となってしまうのが一般的です。

(2) 家族がするべき対応

このような理由から、振り込め詐欺グループから私選弁護人をつけられると、実刑判決になってしまうことが大半です。
そして、被疑者は社会復帰後も振り込め詐欺グループと関係を持つことになりやすく、また同種の事件を繰り返す危険性が高いといえます。

振り込め詐欺グループと完全に縁を切るために、被疑者の家族は(高額に上る示談金は用意できなくとも)別の私選弁護人を選任するかどうかをよく考えなければなりません。

過去には、このようなオレオレ詐欺グループによる私選弁護人が被疑者の刑事弁護を担当していたケースで、ご家族から改めて泉総合法律事務所に被疑者への接見と刑事弁護の依頼がありました。

ある被疑者の方は、泉総合法律事務所の弁護士が接見した結果、前からの私選弁護人(=詐欺グループによる弁護人)を自らの意思で解任しました。
他方で、「従来の私選弁護人で良い」という被疑者本人の考えで、当所の弁護士が選任されなかったケースもあります。

家族が他の弁護士を希望しても、最終的に決めるのは被疑者・被告人自身であり、被疑者の自己責任となります。
しかし、被疑者本人のためにも、ご家族の方は刑事弁護の経験豊富な弁護士に弁護を依頼することをおすすめします。

4.オレオレ詐欺(振り込め詐欺)のご相談は弁護士まで

頻繁に検挙・逮捕されるような末端の被疑者は、詐欺グループの幹部ら上位者のことや、グループの秘密事項は一切知らされていません。そのため、振り込め詐欺は後を絶たずに繰り返されてしまうのです。

振り込め詐欺に関わってしまったとしても、詐欺グループの実態を知らず、前科・前歴のない初犯の未成年者(アルバイト等)でしたら、執行猶予付きの判決を得られることはあります。
しかし、そのためには被害者との示談交渉・被害弁償など、弁護士による刑事弁護活動が必要不可欠でしょう。

振り込め詐欺(オレオレ詐欺)は、それだけ社会問題視されている重大犯罪と言うことができます。

ご家族がオレオレ詐欺・振り込め詐欺で警察に検挙・逮捕されてしまったというご家族の方は、泉総合法律事務所の無料相談を是非ご利用ください。

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