児童買春,ポルノ・淫行 [公開日]2025年8月7日

面会要求罪とは|16歳未満に会うのは犯罪になる?

面会要求罪とは|16歳未満に会うのは犯罪になる?

令和5年に刑法に新設された「面会要求等罪(面会要求罪)」は、多くの人が無自覚のうちに犯してしまう可能性のある犯罪です。
例えば、16歳未満の少年・少女に対してわいせつ目的で会いたいと告げたり、「お金を渡すから」などと言って執拗に面会を要求したりすると、刑事罰の対象となる場合があります。

実際に面会要求罪で有罪になれば前科がつき、社会的地位や職業に深刻な影響を与える可能性があります。

本記事では、どのような行為が面会要求罪に該当するのか、刑罰の内容、そして逮捕されてしまった場合にするべきことについて詳しく解説します。

1.面会要求罪とは?

(1) 面会要求罪の規定

令和5年の性犯罪の厳罰化に伴い、「性的グルーミング」を防止する規定として、「16歳未満の者に対する面会要求等の罪」、通称、面会要求罪が新設されました(刑法182条の1項及び2項)。
「性的グルーミング」とは、若年者と性的行為に及ぼうとする者が、若年者と接触して懐柔する行為です。

令和5年の性犯罪の厳罰化について解説

[参考記事]

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わいせつの目的で、かつ不当な手段(お金などを支払うことを約束する等)を用いて16歳未満の者に対して会うことを要求した者は、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑となります。被害者の性別は問いません。

また、面会要求行為を行った者が、その結果として実際に面会を実行した場合(※ビデオ通話などは除く)は、2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金刑という、より加重された刑に処せられます。

(2) 映像送信要求罪について

なお、若年者に、自分の裸を撮影して送信しろと命ずる行為を防止する「映像送信要求罪」もあります(刑法182条3項)。
16歳未満の者に対し、一定の性的な姿態をとって、その映像を送信するよう要求した者は、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑となります(182条3項)。

具体的には、次のような映像です。

  1. 性交・肛門性交又・口腔性交をする姿態
  2. 膣や肛門に身体の一部(陰茎を除く)や物を挿入する姿態(挿入される姿態も含む)
  3. 性的な部位(性器・肛門・これらの周辺部・臀部・胸部)を触る姿態(触られる姿態含む)
  4. 性的な部位を露出した姿態その他の姿態

2.面会要求罪の構成要件

(1) 面会要求罪にあたるケース

面会要求罪の構成要件は、以下の3つです。

  1. わいせつの目的である
  2. 相手方が16歳未満の未成年
  3. 不当な手段で面会を要求した

3つ目の「不当な手段」とは、以下のような行為を言います。

  • 威迫・偽計・誘惑を用いて面会を要求する行為
  • 拒否されたのに、反復して面会を要求する行為
  • 金銭その他の利益を供与したり、その申込みや約束をしたりして、面会を要求する行為

威迫とは、「他をおさえつけて服従させる強い力・勢力」を意味します。つまり、脅しなどを用いて面会するように要求することを指します。
偽計とは、本来の言葉の意味は、「人をあざむくこと。計略をめぐらせること」です。面会要求罪においては、「わいせつなことはしない」「ただ食事をするだけ」などという嘘をついて面会を要求することが含まれます。

なお、年齢について、被害者が13歳以上16歳未満の場合は、被害者の誕生日よりも5年以上前に生まれた加害者に限って処罰対象となります(年齢差要件)。
13歳未満の者は、性的行為の意味や自己に与える影響を理解・認識する能力に欠けていると評価されます。一方、13歳以上16歳未満の者には、その能力が備わっているものの、5歳以上の年長者との関係では、年長者からの性的な働きかけに対し適切に対処できる能力は未だ不十分と考えられているのです。

面会要求罪は、その名の通り面会の「要求」を規制するものですので、未成年と実際に会わなくても犯罪が成立します。

(2) 16 歳未満と知らなかった場合

相手が16歳未満と知らなかった場合でも、16歳以上と誤信したことについて過失があれば処罰される可能性があります。

過失の有無は、相手の年齢を確認する義務を尽くしたかどうか(身分証や学生証を確認したか等)で判断されますから、たとえ相手が16歳以上だと嘘をついていたとしても、それだけで直ちに「過失がない」とされるものではありません。

また、16歳未満だと知らなくとも、「未必の故意」がある場合は故意犯ですので、過失犯の処罰規定がない都道府県であっても処罰の対象です。この場合の未必の故意とは、「16歳未満かもしれないが、それでもかまわない」という認識のことです。

例えば、相手の容姿が明らかに幼く、通常ならば16歳未満ではないか?と疑う状況があれば、未必の故意が認定される可能性が高くなります。

3.面会要求罪に関連した他の性犯罪

面会を要求した結果、実際に16歳未満の者と面会をしたとします。
この場合、その後の行動によっては以下のような犯罪が成立する可能性があります。

(1) 不同意わいせつ罪

不同意わいせつ罪は、相手の同意なく(不同意で)わいせつな行為をした場合に成立します。しかし、相手が16歳未満であれば、「不同意」は必要なく、単にわいせつな行為をしただけで不同意わいせつ罪とされます。

つまり、16歳未満の者と面会し、実際にわいせつな行為をした場合は、不同意わいせつ罪として、「6ヶ月以上10年以下の拘禁」というより重い罪に問われます。

「わいせつな行為」とは、「被害者の性的感情を害し、被害者に恥ずかしいと思わせるような行為」のことを言います。

具体的には、相手の身体(胸・太腿・お尻など)に触れる、下着の中に手を入れる、相手に自身の性器を触らせる、衣服を脱がるなどの行為が該当します。

不同意わいせつ罪の弁護

(2) 不同意性交等罪

16歳未満と面会後、わいせつ行為に留まらず性交等を行えば不同意性交等罪が成立します。
不同意わいせつ罪と同様、16歳未満の者に対しては、たとえ相手の同意があった場合でも不同意性交等罪が成立します。

性交等には、肛門性交又は口腔性交、膣・肛門に身体の一部(陰茎を除く)または物を挿入する行為も含みます。

不同意性交等罪の刑罰は、5年以上20年以下の有期拘禁刑です。罰金刑はありません。

不同意性交等罪の弁護

(3) 児童買春の罪

面会した16歳未満の者と性交渉などを行い、対価としてお金や物品を与えると、児童買春(=援助交際)の罪が成立します。対価といえば、典型的には現金やブランド品などですが、それに限られるものではありません。

児童買春の罪の刑罰も非常に重く、5年以下の拘禁もしくは300万円以下の罰金刑です。

児童買春・援助交際の罪|逮捕される?

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(4) 青少年保護育成条例違反

青少年保護育成条例とは、青少年(18歳未満の者)の健全な保護育成を図ることを目的とした、各地方公共団体が定める条例の総称です。
青少年保護育成条例は地方公共団体がそれぞれ制定しているため、その内容については差異があります。しかし、青少年保護育成条例の規制内容としては、「青少年とのみだらな行為(淫行)の禁止」共通で挙げられます。

青少年保護育成条例の中でも、「みだらな性行為」を規制する条文(淫行処罰規定)は、通称「淫行条例」といわれています。

対価なしに児童と性交・性交類似行為を行った場合には、児童買春にはならず、この「淫行条例」という条例違反が問題になってきます。

青少年とみだらな行為(淫行)をした場合、例えば「東京都青少年の健全な育成に関する条例」では、罰則として2年以下の拘禁または100万円以下の罰金に処せられます。

青少年保護育成条例違反で逮捕された!不起訴のためにするべきこと

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(5) 児童福祉法違反

児童福祉法では、あらゆる脅威から児童を保護し、健全な成長をサポートすることを目的として、児童の支援に関する各種の制度や、児童に対する禁止行為などに関するルールを定めています。

そんな児童福祉法34条に定められた児童に対する一般的な禁止行為に関する規定では、「児童に淫行をさせる行為」が禁止されています。
「淫行」とは、性行為やそれに類するわいせつ行為(性交類似行為)をいいます。

16歳未満の者と面会し、淫行をさせると、児童福祉法違反として刑事罰を受ける可能性もあるということです。

児童福祉法違反を解説|児童との性行為で逮捕されてしまったら

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(6) 未成年者拐取罪・営利目的等拐取罪

未成年者と面会をした際、「家出をしたから匿ってほしい」などと言われ、自宅に連れ込んだとします。
この場合は、未成年者の同意があったとしても、未成年者拐取罪(刑法224条)となる可能性があります。

また、わいせつ、結婚又は生命・身体に対する加害の目的で人を略取又は誘拐すると、営利目的等拐取罪(刑法225条)が成立します。
営利目的等拐取罪は、未成年者を実力的支配下に置いたときに既遂に達するので、実際にわいせつな行為を行ったか否かは問いません。

他にも、一度面会した後も恋愛感情などから継続して会いたいと思い、しつこくつきまとい行為を行うと、ストーカー規制法違反となる可能性もあります。

ストーカー規制法違反に当てはまる?どこからがストーカー行為か

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4.面会要求罪で逮捕されたらどうする?

面会要求罪で逮捕された場合、一刻も早く弁護士に依頼することが重要です。
面会要求罪は比較的新しく制定された法律のため、適切な弁護方針を立てるには刑事事件に関する専門的な知識と経験が不可欠となります。

弁護士がいれば、取り調べへの対応に関するアドバイスを受けられ、「何を供述するべきか」「黙秘するべきことはあるのか」を把握できるため、冷静に取り調べに臨むことができます。
「16歳未満だと知らなかった」と反論したいケースでも、弁護士ならば適切な主張方法を検討することができます。

また、被害者(未成年の保護者)との示談交渉も、不起訴・減刑のためには重要な要素です。保護者との示談交渉は難航するものですが、適切に示談が成立すれば、起訴猶予・執行猶予を獲得できる可能性が高まります。

面会要求等罪は構成要件が複雑で、行為の悪質性や常習性、反省の程度によって量刑が大きく変わります。経験豊富な弁護士なら、事案ごとの特徴を踏まえた最適な弁護戦略を立て、被疑者の社会復帰に向けたサポートを提供できます。

5.まとめ

面会要求罪は、日常的な行為が犯罪となりうるものです。「食事に誘っただけ」「何度か会おうと言っただけ」という軽い気持ちでも、相手が拒絶している中でしつこく要求すれば処罰対象となります。

大切なのは、16歳未満の子どもとは会わないこと、そして相手が明確に拒絶の意思を示した時点できっぱりと諦めることです。「もう一度だけ」「今度こそ」という考えは危険です。

もし既に問題となっている行為がある場合は即座に中止するべきですし、警察に検挙されてしまっているならば早期に弁護士に相談することをお勧めします。

6.面会要求罪に関する実際の質問

  • Q.少女に何度か会いたいと言ってしまいましたが、逮捕されますか?

    SNSアプリで、高校1年生に不純目的で会いたいと何度か言ってしまいました。実際には会っていませんが、日時の約束もしました。

    その後、その女の子が別件で警察の取り調べを受けたそうです。その際に、そのSNSアプリを開いた状態で5分程度スマホを警察に見せたそうで、おそらく会話の内容が見られたそうです。

    その女の子はもう取り調べは終わっているそうなのですが、捜査が進み私は逮捕されますか?

    A.本件の場合は逮捕される可能性は低いです。

    少女に何度か不純目的での面会を求めたとのことですが、「少女から断られていても面会を求めた」「金銭などの供与を伝えたり、脅したり・嘘をついたりした」などなければ、面会要求罪には当たらないと思われます。

    仮に面会要求罪となる場合ですが、警察が少女のスマホにある会話内容を見て、立件しようと考えれば、少女にその会話内容について詳しく事情聴取していると思います。しかし、少女が会話内容について警察から聞かれていなければ、立件はないと考えていいようにも思えます。

    なお、面会要求罪の場合にはそれほどまで逮捕の可能性は高いとは思いません。本件ならば任意捜査・在宅捜査の可能性が高いです(もとより保証の限りではありません)。

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