性犯罪 [公開日]2020年5月14日[更新日]2025年6月10日

下半身露出の罪|逮捕後に示談をすると不起訴になるか

下半身露出の罪|逮捕後に示談をすると不起訴になるか

「男が路上で性器を露出をした疑いで現行犯逮捕されました。」などというニュースを見たことがある方もいるでしょう。
このように公の場で自分の体を露出することは、社会の秩序を乱す行為であり、絶対にやってはいけません。露出行為は犯罪なのです。

中には、「すぐに逃げれば捕まることはないだろう」と思う方もいるようですが、こういった認識は誤りです。
たとえ露出行為をしてその場で逮捕されなくとも、後日逮捕される可能性はあります。

下半身露出で逮捕されたら、すぐに弁護士に相談して、早期釈放・不起訴を目指し弁護活動をしてもらう必要があります。

ここでは、路上などで露出をした場合に成立しうる犯罪と、逮捕されてしまった後の対処方法について解説します。

1.公然と露出をした場合の罪

公の場で下半身などの局部を露出した場合、以下の3つの犯罪が成立する可能性があります。

(1) 迷惑防止条例違反

各都道府県は、公衆に著しく迷惑をかける行為を禁止し、市民生活の平穏を保持するために「迷惑防止条例」をそれぞれ定めています。露出以外にも、痴漢や盗撮など公衆に迷惑をかける行為を広く規制しています。

たとえば、東京都の迷惑防止条例5条1項3号では、「人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること」が禁止されています。
この規定に違反した場合には、6月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます(同条例8条1項2号)。

「卑わいな言動」とは、「社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作」と理解されており(※北海道迷惑防止条例に関する最高裁平成20年11月10日決定)、尻や局部の露出は、これに該当する場合があります。
迷惑防止条例違反となった場合、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(常習犯は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)。

(2) 軽犯罪法違反(身体露出の罪)

公然と体の一部を露出する行為は、軽犯罪法違反にも該当する可能性があります。
軽犯罪法は、比較的軽微な犯罪行為を規制する法律です。軽犯罪法では33の行為を違法なものとして規定しています。

その中で、軽犯罪法1条20号は、「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」を拘留もしくは科料に処すことを規定しています。

なお、拘留とは30日未満の身体拘束、科料とは1000円以上1万円未満の罰金を言います。
拘留と科料は併科されることもあります(同法2条)。

(3) 公然わいせつ罪

公然と体の一部を露出する行為は、刑法174条に規定される公然わいせつ罪にも該当する可能性があります。

刑法174条
「公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」

「公然」とは、不特定人または多数人が認識できる状態を指します。電車や公園でわいせつな行為をした場合は「公然性あり」とされます。実際に不特定人または多数人が認識したか否かは問いません。

「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為を言います。分かりにくい表現ですが、他人が性的な意味で恥ずかしいと思うような行為を指します。
性器を露出することは、もちろんわいせつな行為にあたります。

以上より、野外で露出行為をすると、公然わいせつ罪に該当します。

公然わいせつ罪とは?逮捕されたらどうなるのか

[参考記事]

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2.下半身露出で逮捕される場合

冒頭で述べたように、下半身や局部を露出をした場合、現行犯ではなくとも逮捕される場合があります。

(1) 現行犯逮捕

露出で逮捕される場合でもっとも多いのは、現行犯逮捕によるものと考えられます。

例えば、公園や路上、電車内で露出行為をした場合に、目撃者など周りにいた人や、駆け付けた警官に取り押さえられた場合です。

(2) 通常逮捕

通常逮捕とは、犯行後、警察官等が令状を取得して行う逮捕です。
通常逮捕をするには、警察が裁判官から逮捕を許可する令状の発付を受けている必要があります。

露出で通常逮捕がされる場合として多いのは、露出行為を繰り返しており、近所で噂になっているケースです。被害届が出されていれば、警察は露出犯の捜査を始めていると思われます。
証言などから犯人が特定されたり、あるいは監視カメラに記録されていたりしていれば、犯人の特定に至り警察が後日逮捕に繰り出す可能性があります。

(3) 露出で逮捕されないケース

露出をすると逮捕される場合はありますが、必ずしも逮捕されるというわけではありません。
逮捕は刑罰ではなく、捜査や裁判のために被疑者の身柄を確保しておく手段に過ぎません。逮捕をすると被疑者の身体の移動の自由を侵害することになるので、実際に被疑者の身体拘束をするには「逮捕の必要性」が求められるのです。

逮捕の必要性がある場合とは、例えば、被疑者が容疑を否認して罪証隠滅の恐れがあったり、住所不定で逃亡の恐れが推認されたりする場合です。

他方、犯行の証拠が全て集まっていたり、被疑者が容疑を認めていたり、同居家族がいる定まった住所があり定職についていたりする場合は、逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れがないと評価され、逮捕の必要性がないと判断される可能性が高まります。

しかし、この場合も在宅で捜査は続きますので、警察・検察に呼び出されて取り調べを受ける必要があります。
必要な捜査が終われば、在宅事件でも例外なく起訴・不起訴の判断がなされます。

3.下半身露出の刑罰

上記の通り、公然と体の一部を露出した場合、その場で現行犯逮捕されたり、後日に通常逮捕されたりする可能性があります。
そして逮捕後、証拠隠滅や逃亡の恐れがあると判断されれば、引き続き勾留(逮捕と合わせて最大23日間)されます。

勾留中は取り調べを受けることになりますが、最終的に検察官が起訴の決定をすると、被告人は刑事裁判を受けることになります。
逮捕・勾留されずに捜査が進んだ場合(在宅事件)も、起訴された場合には刑事裁判となります。

起訴されても、初犯の場合は(よほど悪質なケースを除いて)罰金刑以下になることがほとんどです。
しかし、罰金刑(または拘留もしくは科料)という比較的軽い刑罰であっても、刑罰に処せられてしまえば前科が付くことになります。

前科が付いてしまうと、自己の職業などに影響がおよぶ可能性があり、社会生活上の大きなデメリットになってしまいます。

そのため、被疑者としては、不起訴にしてもらえるようにできる限りの活動をすることが重要になります。

4.示談成立の重要性

露出行為により逮捕されたり、捜査の対象となったりした場合には、目撃者と示談をすることが不起訴になるためにプラスに働きます。

(1) 示談は有利な情状として考慮される

被害者との示談成立は、不起訴となる確率を高める重要な要素です。示談による示談金の支払いで被害が金銭的に回復し、被害者の処罰感情も減少または消滅したと評価できるからです。

公然わいせつ罪など露出事件の保護法益は、「健全な性的風俗の維持」という社会全体の利益(社会的法益)です。
つまり、被害者は個人ではなく、あえて言えば社会全体が被害者ということになります。

では、被害者がいないから、およそ示談は考えられないことになるのかというと、そんなことはありません。

  • ケース1:酔っ払って、深夜の公園で全裸になり、走り回っていたところ、目撃した通行人が110番し、駆けつけた警官に逮捕された。
  • ケース2:夜の路上で、帰宅途中の女性の前に立ちふさがって、露出した性器を見せつけたところ、驚いて逃げた女性が110番し、駆けつけた警官に逮捕された。

どちらのケースでも、刑法の理屈では、侵害されたのは社会的法益ですから個人の被害者はいません。
しかし、社会常識で考えてみれば、ケース1の目撃者はともかく、ケース2の女性は誰の目から見ても「被害者」と評価されるはずです。現実に、見たくもないものを見せつけられ、驚くだけでなく恐怖や嫌悪感を抱いたことは想像に難くありません。

また、刑事面とは別に民事の観点から考えると、被疑者の行為は女性に精神的損害を与える不法行為であって、慰謝料の支払義務があります
つまり民事の面では、この女性は明らかに損害を受けた「被害者」なのです。

検察官が起訴・不起訴の判断をする際には、あらゆる事情が考慮されます。刑法の理屈上の「被害者」ではないとしても、現実に被害・損害を受けた人、民事上の被害者に損害を賠償し、示談書に「刑事処分を望まない」などの文言を記載してもらえれば、やはり有利な事情となり得るのです。

他方、ケース1の目撃者については、事案にもよりますが、精神的なショックを与えたとまで言えない場合が多いでしょうから、民事的にも被害者とまでは言えません。

ただ、通報したことにより、後に警察や検察に呼び出されて事情聴取を受けるという事実上の負担・迷惑をかけてしまう場合があります。
そのような場合、たとえば弁護士を通じて謝罪の手紙を送ったり、迷惑料として一定額(数万円から10万円程度)を受け取ってもらうことで誠意を示し、これを有利な事情として考慮してもらうことが考えられます。

(2) 示談金の相場

露出行為の示談金がどの程度の金額になるかは、具体的な事情により異なります。

「慰謝料」は、精神的な傷を補てんするものなので、客観的な基準はありません。そのため、かなり幅があります。
下半身露出の場合は、おおよそ10万円から50万円程度の範囲に収まるケースが多いようです。

もちろん、示談が成立するかどうかは、目撃者が被疑者の謝罪を受け入れ、示談に応じてくれるかどうか次第になります。
そのため、目撃者が高額の示談金を要求してくれば、必然的に示談成立のために必要な示談金も高額になる傾向にあります。

5.露出で逮捕された場合に弁護士に相談すべき理由

露出で逮捕された場合には、即座に弁護士に相談することをお勧めします。理由は以下の通りです。

(1) 身体拘束からの早期解放を目指す

逮捕がなされると、まずは2~3日の拘束がなされます。その期間は家族と会うことや、仕事に行くことはできません。
更に、逮捕に続き勾留がなされると、追加で10日以上の身体拘束がなされます。

このような長期の拘束を防ぐためには、適切な弁護活動が必要です。

弁護士であれば、被疑者の解放のために、最善の弁護活動を行ってくれます。

(2) 起訴・有罪を回避

逮捕された場合でも、在宅事件の場合でも、露出事件について検察官が起訴し裁判となる可能性はあります。裁判となり有罪判決が下されると、たとえ罰金でも前科がついてしまいます。
日本の司法は有罪率99%と言われるように、裁判となった場合は有罪判決が出される可能性が高いので、起訴されるのを避ける(不起訴にする)のが最重要です。

しかし、起訴を回避するために何をすべきなのか、一般の方が分からないのは当然です。

刑事事件に精通した弁護士に相談すれば、検察官とのやり取りなどを通じて、被疑者を不起訴にしてもらうために最大限尽力します。
必要に応じて、被疑者が反省していることを示す書面などを作成した上で、検察官の説得を試みます。

これより不起訴を獲得したり、起訴をされても罰金刑に留めたりすることができる可能性が飛躍的に上がります。

これは、刑事手続についての知識と経験を持った、法律の専門家である弁護士にしかできないことです。

(3) 被害者との示談交渉を代理

被疑者が目撃者(被害者)との間で示談を行うためには、弁護士に依頼することが必須といえます。

一般的に、被害者は被疑者との直接のやり取りを拒否する可能性が高いです。警察官も、被疑者に被害者の連絡先を直接教えてくれることはありません。

また、示談を成立させるためには被害者に対して言葉を尽くして謝罪をする必要があります。
そのためには、相手を不快にさせないよう、事前に謝罪の仕方や内容について慎重に検討するべきです。

刑事専門の弁護士は、露出などを含む刑事事件の示談交渉を数多く担当した経験を持っています。示談交渉の代行をしてくれるだけでなく、謝罪文の書き方、捜査機関からの取り調べへの対応方法などについてアドバイスを受けることができます。

6.刑事事件の弁護は泉総合法律事務所へ

公然と自分の体の一部(性器・局部など)を露出する行為では、重い刑罰を課される可能性は比較的低いです。
しかし、罰金などであっても、刑罰が課されれば前科が付いてしまい、社会生活上不利に働きます。

そのため、被疑者は目撃者との示談交渉など、不起訴にしてもらうための最大限の対応をする必要があります。

露出に限らず、刑事事件の被疑者になってしまった場合には、法律の専門家である弁護士にご相談ください。
弁護士は、刑事事件に関する豊富なノウハウを活用して、被疑者を刑事手続から解放するために全力で弁護します。

泉総合法律事務所では、刑事事件の解決実績豊富な弁護士が、示談交渉・起訴回避を全面的にサポートいたします
今後の人生への影響を最小限に抑えるためにも、警察に取り調べをされた・逮捕されるか不安などという段階でも、是非一度、代表弁護士泉の無料相談をご利用いただければと思います。

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