性犯罪 [公開日]2017年12月4日[更新日]2025年6月10日

公然わいせつ罪とは?逮捕されたらどうなるのか

公然わいせつ罪とは?逮捕されたらどうなるのか

公然わいせつ罪の刑罰は、性犯罪の中では比較的軽く定められているので、略式手続により罰金刑となったり不起訴となったりする場合も多いです。
したがって、初犯であったり、実質的な被害者(性器の露出行為を見させられた者、公然わいせつ行為が行われたマンション等の管理者等)と示談できたりする場合は、不起訴とされることも少なくありません。

他方で、悪質性の高い事案や、前科が複数回を越える、同種犯罪の再犯であるといったケースは、公判請求される可能性が高くなっています。
もっとも、この場合でも、実質的な被害者と示談が成立している場合は多くのケースで執行猶予が付されています。

したがって、公然わいせつ罪の刑事弁護活動においては、実質的な被害者と示談契約を成立させることがポイントになってきます。

本記事では、公然わいせつ罪の成立要件、公然わいせつの容疑がかかった人が逮捕された場合の対応方法について解説します。

1.公然わいせつ罪とは?

刑法174条
公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

このように、公然わいせつ罪は「公然」と「わいせつな行為」を行った際に成立します。
それでは、「公然」「わいせつ」とはそれぞれどのような場合をいうのでしょうか?

(1) 「公然」の定義

公然わいせつ罪における「公然」とは、判例によれば、「不特定または多数人が認識しうる状態」であるとされています。「認識しうる」とは、認識される可能性があれば足り、現実に認識されたかどうかは問いません。

具体例として、誰にも見つからずとも公園内を下半身を露出して散歩した、全裸で路上や河川敷等を歩いた、という場合が挙げられます。
公園や路上は、複数人が誰でも入れる場所ですから、不特定または多数人が認識しうる状態にあるとして、公然性が認められることになります。

また、住居の一室で知人ら20名と女の下半身が露出された映像を放映して鑑賞したという場合、不特定の者が出入りする場所でもなく、認識したのは知人らという特定人ではあっても、20人は「多数」と言えますから、法律の理屈の上では公然性が認められることになります。

なお、同じく住居の一室で映像を見たのが3名だけであったときは多数人とは言えませんが、その3名が客引き等によって室内に入ってきた者であれば、「不特定人」と言えるので、やはり公然性が認められます。

下半身露出の罪|逮捕後に示談をすると不起訴になるか

[参考記事]

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(2) 「わいせつ行為」の定義

わいせつ行為とは、判例によれば「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する」ことと判示されています。
具体的には、男女を問わず性器を露出することや、性行為を行うことは「わいせつ行為」に該当するとされています。

ただし、公然わいせつ罪は、「健全な性風俗」を守るための法律であり、現在社会において公然と行われても、「健全な性風俗を害するとまでは言えない」行為は、「わいせつ行為」にはあたりません。
例えば、著名な刑法学者の教科書(※)によれば、公園で男女がキスをすることは、わいせつ行為に当たらないとされています。
※大塚仁「刑法概説(各論)第3版増補版」516頁など

特殊な例としては、カップル喫茶での性行為、ストリップショーで女性が下半身を露出する行為は、わいせつ行為にあたるものとされています。

2.公然わいせつで逮捕後の流れ

公然わいせつ罪で逮捕される場合の多くは、現行犯逮捕となります。
公然わいせつ行為が行われた場所で、その行為を見た目撃者や通行人・管理者、現場に駆けつけた警察官によって逮捕されることになります。

一方、目撃者や通行人等の通報があった場合は、防犯カメラの映像の捜査などにより証拠を固めてから被疑者を特定し、通常逮捕(後日逮捕)するケースもあります。

公然わいせつで逮捕されると、以下のような流れで手続きが進んでいきます。

(1) 逮捕、取り調べ

公然わいせつ罪で警察官に逮捕されると、警察における取り調べの後、通常は逮捕後48時間以内に所轄の検察庁に送致の手続がとられます(検察官送致)。

被疑者が検察庁に送致されると、検察官は、犯罪事実についての被疑者の弁解を聞いて、勾留の理由・必要性があると考えられる場合は、裁判所に勾留請求を行います。
具体的には、反省の色が見られない、容疑を否認している、逃亡・証拠隠滅の恐れがある場合には、勾留請求が行われる可能性が高いです。

なお、公然わいせつ罪の場合は軽微な事件も多いですから、勾留が請求されない場合はこの段階で釈放されることになります。

【逮捕・勾留されず在宅事件になるケースもある】
公然わいせつ行為を犯してしまっても、その行為態様が悪質でない場合は逮捕・勾留されない場合もありえます。
これを在宅事件と言いますが、この場合、被疑者は警察署の留置施設に留置されません。その代わり、警察官から呼び出しがあった場合には、その呼び出しに応じて自ら警察署に出頭しなければなりません。この出頭は任意ですが、これに応じない場合は「逃亡や証拠隠滅のおそれがある」として逮捕されてしまうケースがありますので、注意が必要です。

(2) 裁判官の勾留質問と勾留決定

勾留請求された場合、裁判官は被疑者に対し勾留質問を行い、勾留を判断します。
勾留が決定すると、勾留請求の日から数えて10日間身柄が拘束されます。

この間に警察官は、被疑者を犯行現場に連れて行き犯行状況について再現させたり、引き続きの取り調べを行ったりします。検察官も必要に応じて取り調べを行っていきます。

勾留開始から10日経った段階でも更なる捜査が必要と判断されると、その後最長で10日間勾留が延長される可能性があります。

捜査が終了すると、検察官は起訴・不起訴の判断を行います。

(3) 公判請求

行為が悪質である場合や、前科・同種前科が複数回以上ある場合には、被疑者は起訴され、以後「被告人」と呼ばれます。

起訴後、~約1ヶ月半後に、第1回公判期日が開かれます。1回の公判で結審する場合は、その数日後〜1ヶ月後の間に判決が出されます。

なお、公然わいせつ罪は罰金刑がありますので、起訴の中でも略式起訴の判断がされた場合は、公判は開かれず罰金を支払うことで釈放となります。しかし、この場合も前科は残ります。

3.公然わいせつ事件の弁護のポイント

上述したように、被疑者が逮捕されてから起訴されるまでの間、最大で23日間、被疑者は身柄拘束され続けることになります。
しかし、公然わいせつ事件でも比較的軽微な犯罪であれば、弁護士の尽力により早期の身柄解放がされたり、不起訴を勝ち取れたりする可能性があります。

そのために最も重要なのは、実質的な被害者との示談成立です。

実は、公然わいせつ罪では、特定の被害者が存在しません。
公然わいせつ罪の保護法益は、「健全な性的風俗の維持」という社会全体の利益(社会的法益)です。つまり、被害者は個人ではなく、あえて言えば社会全体が被害者ということになります。

ただ、下半身を故意に見せられた人、目撃者・通報者、公然わいせつが行われた敷地(マンションの共用部分等)内の居住者や管理人など、迷惑をかけられた方は実在します。
このような実質的な被害者との示談成立であっても、刑事処分にあたって、被疑者・被告人に有利な事情として考慮してもらうことができます。

さらに、万が一起訴されて公判となった場合の裁判の際にも、示談契約が成立していれば多くのケースで執行猶予判決の取得が可能となります。

4.公然わいせつ罪の刑事弁護もお任せください

不同意わいせつ罪などと比べると軽い問題とも思われがちな公然わいせつ罪ですが、これは懲役刑も定められている重大犯罪です。万が一犯してしまった場合には、しっかりと反省し、対応しなければなりません。

「公然わいせつ事件で検挙され在宅事件となった」「親族等が公然わいせつ事件で逮捕されてしまった」などの刑事事件は、ぜひ、経験豊富な泉総合法律事務所にご相談ください。

前述のとおり、公然わいせつ罪は、善良な性風俗という社会的法益に対する罪であり法的な意味での特定の被害者は存在しません。しかし、実質的な被害者と示談することにより、不起訴になったり、罰金刑で終了となったりするケースも多いです。

刑事事件は迅速な対応が重要なので、出来るだけ早いタイミングでの相談・依頼が大事です。
早期の身柄解放の実現や、不起訴や略式起訴・執行猶予判決の取得のため、刑事事件の弁護経験豊富な弁護士・泉義孝が解決まで全力でサポートいたします。

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