性犯罪 [公開日]2025年7月31日

風俗営業法で逮捕される場合|刑罰・罪状は?

風俗営業法で逮捕される場合|刑罰・罪状は?

キャバクラ、クラブ、ホストクラブなどの飲食店、麻雀店、パチンコ店、ソープランド、ヘルスなどの性産業を規制するのが、風俗営業法(正式名称:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)です。

風俗営業法では業種毎に様々な規制が定められており、その違反に対しては、公安委員会による行政処分だけでなく、風俗営業法違反という犯罪として逮捕される場合もあります。

この記事では、風俗営業法の概要と違反に対する刑罰などについて説明します。

1.風俗営業法とは?

(1) 風俗営業法の目的

「性・射幸・飲酒」など、人間の本能的な欲望から需要のある産業は、その歓楽的・享楽的な性格から、非行や違法行為の温床となりやすいものです。
風俗営業法は、そのような産業に適切な規制を行う法律です。

風俗営業法の目的は、次のとおり法定されています。

  1. 善良の風俗・清浄な風俗環境を保持すること
  2. 少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業・性風俗関連特殊営業等について、営業時間・営業区域等を制限し、年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制すること
  3. 風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずること

(2) 風俗営業法の対象業種

風俗営業法の対象となる営業の業種は、大きく次の4つに分かれます。

  • 風俗営業(2条1項1号~5号)
  • 性風俗関連特殊営業(2条6項~10項)
  • 特定遊興飲食店営業(2条11項)
  • 接客業務受託営業(2条13項)

各営業は、さらに細かく分類されています。

風俗営業法の対象業種

 

2.風俗営業法の規制内容

風俗営業法の規制内容は多岐にわたり、非常に細かな規制がなされています。ここでは、代表的な「風俗営業」と「性風俗関連特殊営業」について、主な規制をピックアップしてご紹介します。

(1) 風俗営業に対する主な規制

風俗営業法では、「風俗営業」は、それが健全に営業されるなら、国民に憩いと娯楽を与える、社会的に必要な営業であると評価されています。
この観点から、単に規制をかけて取り締まるのではなく、業務の適正化を促進して、その健全化を図るべきものと位置づけています。

風俗営業に対する規制は、数多く定められていますが、代表的なものを説明しましょう。

■許可制

風俗営業を営む場合には、営業所ごとに、その所在地の都道府県公安委員会の許可を得なくてはなりません。
違反は5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金刑で、併科される場合もあります。

無許可での営業行為を実行した行為者が、たとえば会社などの法人の代表者や従業員で、法人の事業として行われた場合は、行為者の処罰とは別に、事業主である法人も罰金刑となります(無許可営業の事業主が個人事業主の場合も同じ)。

無許可営業で事業主に両罰規定が適用される場合は、3億円以下の罰金刑となります。

■名義貸しの禁止

風俗営業の許可を得た者は、自己の名義をもって、他人に風俗営業を営ませることは禁止されます。

違反は5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金刑で、併科される場合もあります。行為者が法人・個人事業主の場合は、3億円以下の罰金刑です。

■欠格事由

風俗営業を営む許可を得るには、法定の欠格事由に該当しないことが必要です。
たとえば、次のような欠格事由が定められています。

  1. 破産者(3条1項1号)
  2. 拘禁刑、罰金刑に処せられた者(同2号)
  3. 暴力団・犯罪組織の構成員など(同3号、同法施行規則6条)
  4. アルコールや薬物の中毒者(同4号)
  5. 心身の障害者(同5号、同法施行規則6条の2)
  6. 風俗営業の許可を取り消され5年経過しない者(同6号)
  7. 未成年者(同11号)

■構造および設備の基準

営業所の構造・設備は、風俗営業の種別に応じて国家公安委員会が技術上の基準を定めており、これに適合しない場合は許可が下りません。

また、許可後も基準に適合するよう維持しなくてならず、構造・設備の変更には、公安委員会の承認が必要です。

承認を受けずに営業所の構造・設備を変更した場合は、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金刑となります。併科もあります。

■営業時間の制限

風俗営業者は、深夜(午前0時から午前6時までの時間)の営業は原則として禁止されています。

ただし、都道府県は、地域の特性に応じ条例で、特別に深夜営業をできる日や地域を定めることが認められています。

■照度・騒音・振動の規制

風俗営業の営業所内の照度は、風俗営業の種別に応じて、国家公安委員会が定める照度を下回ってはなりません。

営業所周辺において、政令および都道府県の条例で定めた数値以上の騒音・振動を発生させてはいけません。

■広告および宣伝の規制

風俗営業者は、営業所周辺の清浄な風俗環境を害するおそれのある方法で広告・宣伝をしてはなりません。

■料金表示義務

風俗営業者は、国家公安委員会規則の定めにしたがい、営業所において客に見やすいように料金を表示しなければなりません。

■年少者の立入禁止の表示義務

風俗営業者は、国家公安委員会規則の定めにしたがい、18歳未満の立入禁止(ゲームセンターでは午後10時以降の立入禁止)を、営業所の入口に表示しなくてはなりません。

■接客従業員に対する拘束的行為の禁止等

接待飲食等営業を営む風俗営業者は、接客業務に従事する従業員に対し、不相当に高額な債務を負担させたり、そのパスポートや運転免許証などを保管したりすることは禁止されています。

■客引き行為などの禁止

風俗営業を営む者が、客引き行為をすること、あるいは客引き目的で道路等に立ちふさがり・つきまとう行為をすることは禁止されています
違反は6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金刑となります。併科もあります。

 

また、以下の違反は1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金刑となります。併科もあります。

  • 8歳未満の者に客を接待させること
  • 18歳未満の者を午後10時から翌日午前6時の間、客に接する業務に従事させること
  • 18歳未満の者を客として営業所に立ち入らせること
  • 営業所で20歳未満の者に酒・煙草を提供すること

(2) 性風俗関連特殊営業に対する主な規制

風俗営業法は、性風俗関連特殊営業については、性を売り物とする本質的に不健全な営業と評価し、業務の適正化や営業の健全化になじまないものと位置づけています。
そこで、その実態を把握できるように届出制とし、規制をかけて取締の対象としています。

■営業の届出

性風俗関連特殊営業を営もうとする者は、営業所ごとに、その所在地の公安委員会に届出をすることが必要です。

違反すると6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金刑となります。併科もあります。

■店舗型性風俗特殊営業の禁止区域

店舗型性風俗特殊営業は、官公庁施設群・学校・図書館・児童福祉施設・これら以外にも都道府県の条例で指定された施設の周囲200メートルの地域において営むことが禁止されています。

さらに条例では、店舗型性風俗特殊営業を禁止する地域を個別に定めることもできます。違反すると5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金刑となり、併科もあります。

■広告・宣伝の禁止

店舗型性風俗特殊営業者は、

  • 営業禁止区域での広告物(看板、立看板、はり紙、広告塔など)、ビラ・パンフレットなどの配布
  • 営業禁止区域外でも、18歳未満の者へのビラ・パンフレットなどの頒布

を禁止されます。違反すると100万円以下の罰金刑です。

■その他の制限

都道府県は条例で、店舗型性風俗特殊営業の深夜営業を制限することができます。

また、客引き行為の禁止、18歳未満の者に接客させる行為の禁止、18歳未満の者を客として営業所に立ち入らせることの禁止などは、風俗営業者に対する規制と同じです。罰則も同じです。

これら以外にも、店舗型性風俗特殊営業に対する規制は、その営業種類に応じて様々な個別規制があります。

3.風俗営業法違反で逮捕される主な違反行為

(1) 風俗営業法違反での検挙が多い事案

警察庁の報告(※)から、令和5年および6年において、風俗営業法違反として検挙された事案の主なものをピックアップしてみましょう。

違反内容 令和5年の件数(割合) 令和6年の件数(割合)
無許可営業 172件(19.5%) 199件(27%)
客引き・つきまとい等 153件(17.3%) 124件(16.8%)
禁止区域等営業 149件(16.8%) 147件(19.9%)
年少者使用 59件(6.6%) 72件(9.7%)
広告宣伝 37件(4.1%) 3件(0.4%)
名義貸し 23件(2.6%) 21件(3.6%)
総数 882件 737件

※「令和6年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯等の取締り状況について」警察庁生活安全局保安課(令和7年4月)

(2) 風俗営業法違反での主要検挙事例

同じく警察庁の報告では、次の主要検挙事例が紹介されています。

【無許可風俗営業】
公安委員会の許可を受けずに、飲食店内で女性従業員に客を接待させ、酒類を提供し、無許可の風俗営業を営んだ飲食店経営者らを三重県警が検挙(令和6年5月)

【禁止区域での営業】
条例で禁止された地域内であるのに、メンズエステ店に仮装し、マンションの個室内で、女性従業員が客に性的サービスを行う店舗型性風俗特殊営業を営んだ経営者を長崎県警が検挙(令和6年10月)

【未成年者の使用】
飲食店経営者らが、無許可で風俗営業を営んだうえ、女性従業員が18歳未満と知りながら客を接待させたとして、宮城県警が検挙(令和6年9月)

4.風俗営業法違反で逮捕時の刑罰、行政処分

(1) 風俗営業法違反の刑罰

風俗営業法違反に対する罰則については、その主なものを既に説明しました。

ただ、風俗営業法違反で検挙され、逮捕されたとしても、必ずしも拘禁刑や重い罰金刑を受ける結末になるとは限りません。検察官によって起訴猶予処分となり、刑罰を受けずに済む場合もあります。この場合は、前科とはなりません。

起訴されても、実際に公判廷で裁かれるのではなく、書類上の手続で罰金を納める略式裁判で終わる場合もあります。

また、仮に正式裁判にかけられ、公判廷での審理を受けることになっても、罰金刑に留まったり、執行猶予付き判決を得ることで実刑を回避できたりする可能性があります。

起訴猶予とは?不起訴・無罪との違い

[参考記事]

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(2) 風俗営業法違反の行政処分

風俗営業法違反に対しては、刑事罰が科されるだけでなく、それとは別に行政処分が行われる場合があります。

公安委員会は、風俗営業法違反や同法に基づく条例の規定違反に対し、善良の風俗保持などが害されることを防止するために必要な指示を行うことができます。
また、この場合、営業許可の取り消し、6ヶ月を超えない期間での営業停止を命じることができます。

この処分に違反して営業を継続した場合には、5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金刑(併科あり)となり、両罰規定が適用される場合の事業主は3億円以下の罰金刑となります。

5.風俗営業法違反で検挙されたら弁護士へ相談を

風俗営業法違反とならないためには、まずは企業のポリシーとして法令を遵守する姿勢を明確にし、従業員に周知徹底することが大切です。

風俗営業法は頻繁に改正があり、定期的に改廃の確認が必要です。ただ、風俗営業法の規制内容の細部は政令などに譲られており、複雑な構造となっていますから、読み込み理解するには、かなりの時間を要します。

このため、日ごろから、風俗営業法に注力した弁護士のアドバイスを得たり、弁護士を招いての従業員研修を実施したりするなどの工夫がお勧めです。

実際に風俗営業法違反で摘発された場合には、弁護士を弁護人として依頼して刑事手続に対応することになります。この時、風俗営業法や性犯罪に詳しい弁護士による弁護活動を受けられれば、刑事処分を有利に済ませる可能性も高まります。

刑事犯罪でお困りのことがありましたら、一度泉総合法律事務所の弁護士までご相談ください。

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