薬物事件 [公開日]2026年5月27日

麻薬特例法違反で逮捕されたら|弁護士による早期身柄解放・減刑

麻薬特例法違反で逮捕されたら|弁護士による早期身柄解放・減刑
弁護士 泉義孝
監修 弁護士 泉 義孝
所属:第二東京弁護士会
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日本の薬物犯罪に関する法律には、「①麻薬及び向精神薬取締法」「②大麻草栽培規制法(※)」「③あへん法」「④覚醒剤取締法」があり、これを「薬物四法」と呼びます。
さらに、これに「⑤麻薬特例法」を加えて「薬物五法」と称します。

※従来の「大麻取締法」は、令和5(2023)年12月に「大麻草の栽培の規制に関する法律」(略称:大麻草栽培規制法)に改正されました(令和6年12月12日施行)。

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個別の薬物を規制する薬物四法に対し、麻薬特例法は、組織的な薬物犯罪を撲滅するなどのために制定されたものです。麻薬特例法違反の疑いで逮捕された場合、長い身体拘束期間の後に、起訴されて重い刑罰を受け、収益財産を没収される可能性があります。

この記事では、麻薬特例法違反について、基本的な知識を説明し、麻薬特例法違反の事案に対する弁護士による弁護活動を紹介します。

1.麻薬特例法とは?

麻薬特例法」は、その正式名称を「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」と言います。

薬物犯罪が蔓延する大きな原因は、国内外に存在する犯罪組織が、ビジネスとして収益をあげるために、密輸・密売などを繰り返していることにあります。

そこで、薬物犯罪を根絶するには、国際的な取り組みとして、「①薬物犯罪ビジネスを重く処罰して禁圧すること」「②薬物犯罪ビジネスによる不正な利益を維持させないこと」「③薬物犯罪の関係者を的確に検挙する捜査手法を可能とすること」が必要です。

このため、麻薬特例法は、薬物犯罪について特別な定めを置いています。その概要は次のとおりです。

  • 薬物犯罪ビジネスを重く処罰して禁圧するために「業として行う不法輸入等の罪」などを定めています。
  • 薬物犯罪ビジネスによる不正な利益を維持させないために「薬物犯罪収益等隠匿罪」を定めたうえ、薬物犯罪の収益等を没収・追徴するとしています。
  • 薬物犯罪の関係者を的確に検挙する捜査手法として、「コントロールド・デリバリー」を可能とする、出入国管理および税関における手続きなどを定めています。
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2.麻薬特例法違反の罰則

それでは、麻薬特例法が定める主な犯罪と、違反に対する罰則の内容について見てみましょう。

(1) 業として行う不法輸入等の罪(5条)

薬物犯罪を「業とした者」を重く処罰

麻薬特例法は、「業として行う不法輸入等の罪」を定めています。
これは、薬物四法で犯罪とされている行為の一部につき、その行為を「業とした者」に対し、さらに重い刑罰を与えるものです。

「業とした者」とは、薬物の犯罪行為を、反復継続して行う意思のもとに、業態的・営業的活動と認められる形態で(平たく言えば、「ビジネス」として)行う者を指します(※)。

※「刑事法実務の基礎知識・特別刑法入門1(第2版)」安富潔(慶應義塾大学名誉教授)著・慶應義塾大学出版会・64頁注4

たんなる営利目的よりも著しく重い刑罰

例えば、向精神薬を譲渡する行為は、「麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)」違反としての法定刑は3年以下の拘禁刑です(同法66条の4第1項)。
これに営利目的があっても、5年以下の拘禁刑で、情状により100万円以下の罰金刑を併科される場合があるにとどまります。

ところが、同じ行為を「業とした者」に対しては、麻薬特例法違反により、自由刑として無期拘禁刑または5年以上の有期拘禁刑(上限は20年)が科されるだけでなく、必ず、1000万円以下の罰金刑が併科されます(特例法5条1号)。

このように、薬物犯罪が薬物四法違反にとどまらず、麻薬特例法違反に問われてしまうと、非常に重く処罰されるのです。

薬物四法違反と麻薬特例法違反の罰則を比較

その処罰内容を比較するために、薬物四法違反に対する法定刑につき、通常の場合、営利目的の場合、業とした場合(特例法違反の場合)の比較表を作成しましたので、ご参考にしてください。

【薬物四法違反と麻薬特例法違反の罰則比較表】

薬物四法違反と麻薬特例法違反の罰則比較表

(2) 薬物犯罪収益等隠匿罪(6条)

薬物犯罪収益等隠匿罪は、薬物犯罪に関する財産の、いわゆる「マネー・ロンダリング」(資金洗浄行為)を処罰するものです。
これは、ごく平たく言えば、摘発されないように、犯罪で得た利益の出所や所有者をわからなくしてしまうことです。

薬物犯罪収益等隠匿罪の対象となる財産は、次の表のとおりです。

薬物犯罪収益等隠匿罪の対象となる財産

また、薬物犯罪収益等隠匿罪となる行為は、次の表のとおりです。

薬物犯罪収益等隠匿罪となる行為

薬物犯罪収益等隠匿罪の罰則は、10年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金刑となります。両方の刑が併科される場合もあります(麻薬特例法6条1項)。

なお、薬物犯罪収益等隠匿罪の未遂行為も処罰対象です(同6条2項)。また、予備行為も処罰され、2年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑となります(同6条3項)。

(3) 薬物犯罪収益等収受罪(7条)

事情を知りながら、前出の「薬物犯罪収益等」を「収受」する行為を処罰するものです。
「収受」とは、不法な収益を受け取ることですが、その収益を最終的に取得するか否かには関わりません。

たとえば、犯罪組織のボスAの子分Bが、使い走りとして薬物の代金を受取り、ただちにボスAに渡したとしても、子分Bの行為は「収受」として処罰されます(大阪高裁平成10年9月25日判決・判例タイムズ1008号286頁※)。

※千葉雅巳税務大学校研究部教授「脱税がマネー・ローンダリングの前提犯罪とされた場合の論点」316頁

法定刑は、7年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金刑となります。両方の刑が併科される場合もあります。

(4) 規制薬物としての物品の輸入等罪(8条)

前述した「コントロールド・デリバリー」の捜査手法のひとつである「クリーン・コントロールド・デリバリー」を実効化するために「規制薬物としての物品の輸入等罪」が設けられています。

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クリーン・コントロールド・デリバリーでは、荷物の中身は捜査機関がすり替えた無害品ですから、違法薬物を受け取る行為それ自体は存在しません。

しかし、現実には、薬物四法の規制薬物ではない物(無害物)であっても、行為者が規制薬物だと認識し、規制薬物の輸入・輸出に関する犯罪を犯す意思で次の各行為を行った場合、規制薬物としての物品の輸入等罪として処罰するのです。

規制薬物としての物品の輸入等罪

(5) あおり又は唆し罪(9条)

次の①②の各行為を、公然と煽る行為、公然と唆す行為は、麻薬特例法の「あおり又は唆し罪」として、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑となります。

①特例法の定める「業として行う不法輸入等罪」「薬物犯罪収益等隠匿罪」「薬物犯罪収益等収受罪」や、薬物四法で定める薬物犯罪を実行すること
②規制薬物を濫用すること

「公然」とは、不特定または多数人が認識できる状況下であることです。インターネット、SNS上での書き込みや動画は、当然これに該当します。

「煽る行為」とは、すでにある薬物犯罪実行の決意を強める働きかけであり、「唆す行為」とは、新たに薬物犯罪実行を決意させる働きかけです。

(6) 国外犯への適用(10条)

「業として行う不法輸入等罪(麻薬特例法5条)」「薬物犯罪収益等隠匿罪(同6条)」、「薬物犯罪収益等収受罪(同7条)」「あおり又は唆し罪(同9条)」は、行為者の国籍を問わず適用され、日本国内での行為にとどまらず、海外での行為にも適用されます。

(7) 両罰規定(15条)

「業として行う不法輸入等罪(麻薬特例法5条)」「薬物犯罪収益等隠匿罪(同6条)」「薬物犯罪収益等収受罪(同7条)」「規制薬物としての物品の輸入等罪(同8条)」「あおり又は唆し罪(同9条)」には、両罰規定があります。

たとえば法人の代表者や従業員が、その業務に関してこれらの特例法違反を犯したときには、違法行為を行った者とは別に、その法人にも各罰則の定める罰金刑が科されます。

3.特例法による没収・追徴

(1) 没収・追徴とは

「薬物犯罪収益」や「薬物犯罪収益に由来する財産」などは、没収・追徴の対象となります(麻薬特例法11条、12条、13条)。

没収とは、物の所有権を剥奪して国庫に帰属させる処分(刑法9条)、追徴とは、没収が不可能なときに、それに代わる一定の金額を国庫に納付するべきことを命ずる処分です(刑法19条の2)。

(2) 薬物犯罪収益の推定

なお、「業として行う不法輸入等罪(麻薬特例法5条)」の罪を犯した期間内に犯人が取得した財産であって、その価額が、「当該期間内における犯人の稼働の状況または法令に基づく給付の受給の状況に照らし不相当に高額と認められるもの」は、「薬物犯罪収益」と推定されます。

したがって、たとえ「業として行う不法輸入等罪」に該当する行為が事実であっても、これを行っていた期間中に、たまたま犯罪と無関係な高収入があった場合、その全額が不相当に高額と認められて、「薬物犯罪収益」として没収されてしまう危険があります。これを回避するには、自ら、犯罪による収入ではないことを立証しなくてはなりません。

4.弁護士による弁護策

では、麻薬特例法で逮捕された被疑者に対して、弁護士が行う主な弁護活動について、そのポイントを説明しましょう。

(1) 逮捕・勾留中の接見

麻薬特例法違反の事案では、逮捕された被疑者の背後に、組織的な関与者の存在が疑われるので、証拠隠滅や逃亡の危険は高いと判断されやすいです。
よって、通常は裁判官による勾留決定、勾留延長決定がなされ、残念ながら早期の身柄開放は困難な場合が多いです。

また、麻薬特例法違反では、面会者を通じての証拠隠滅の恐れから、裁判官によって面会を禁止されてしまい、弁護士以外には家族であっても面会できなくなることが通常です。

逮捕直後から弁護士を選任して、面会(接見)を実施してもらう必要性・重要性は、より高いと言えましょう。

(2) 薬物犯罪の故意がないことを主張する

例えば、海外から送られた荷物を受取り、コントロールド・デリバリーによって麻薬特例法違反で逮捕された場合でも、本当に荷物の中身が違法な薬物と知らなかったのであれば、犯罪行為の認識(故意)がなく、規制薬物としての物品の輸入等罪を含めて犯罪は成立しません。

したがって、取り調べを受ける際には、違法な薬物とは知らなったことを強く主張するべきです。

ただし、このときに、具体的に中身が覚醒剤だと認識していなくとも、「覚醒剤も含む何らかの違法な薬物かもしれないと思った」などと、取調官に迎合する供述をしてしまうと、薬物犯罪の故意を認定されてしまう危険があります(最高裁平成2年2月9日決定)。

逮捕されてしまったら、できるだけ速く弁護士と面会し、このような注意点について詳細なアドバイスを受けるべきです。

(3) 「合意制度」の活用

麻薬特例法違反は、(無期拘禁刑に当たるものを除き)刑事手続における「証拠収集等への協力及び訴追に関する合意」制度の適用対象となっています。

つまり、被告人が、例えば組織的な薬物犯罪のうち、他人の犯罪について真実を供述したり、証拠収集に協力したりするなどの捜査協力行為を約束し、その見返りとして、検察官が不起訴処分としたり、寛大な求刑をしたりするなどの有利な扱いをすることを約束する合意を結ぶことができるのです。

ただし、例えば法廷において、合意どおりに検察官が寛大な求刑を行ったからと言って、求刑は、あくまで検察官の意見に過ぎませんから、裁判官がそのとおりに寛大な判決をするとは限りません

したがって、合意をするか否か、どのような捜査協力をするか、どのような見返りを求めるかについては、法的かつ戦略的な見地からの慎重な判断が必要です。

検察官との合意を成立させるには、弁護士も交えての検察官との協議が要求され、弁護士の同意が必要とされています。

(4) 不当な没収・追徴を回避する

前出のとおり、「業として行う不法輸入等罪(麻薬特例法5条)」の罪を犯した期間内の高額な収入は、「薬物犯罪収益」と推定され、犯罪とは無関係なのに没収・追徴される危険があります。

弁護士によって、その収入が犯罪によるものではないことを反証し、不当な資産没収を防ぐ必要があります。

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5.まとめ

麻薬特例法違反の事件は、広く社会に害悪を及ぼす薬物犯罪をビジネスとして組織的に行っている、非常に悪質な事案と見られています。

捜査機関側も麻薬組織からの報復・脅迫を受ける危険を常に意識しなくてはならず、これを撲滅する強い覚悟をもって捜査が行われます。
このため、強引な取り調べや被疑者の人権侵害にわたる捜査を受けることもあるようです。

麻薬特例法違反で逮捕された場合、早期に弁護士を依頼し、被疑者に保障された権利の説明、取り調への対応方法、今後の刑事手続きの見込みなどについて的確なアドバイスを得るべきです。

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