薬物事件 [更新日]2025年8月21日

薬物事件で逮捕された!不起訴・実刑回避のためにするべきこと

薬物事件で逮捕された!不起訴・実刑回避のためにするべきこと

薬物の所持・使用が判明して逮捕された場合、他の刑事事件とは異なる多くの注意点があります。
ここでは、薬物事件で逮捕された場合、不起訴を得るために注意するべき点について解説します。

ちなみに、様々な薬物を取り締まる各種法律と、薬物犯罪に関する刑罰については以下のコラムをご覧ください。

薬物事件を取り締まる法律の種類と刑罰

[参考記事]

薬物事件を取り締まる法律の種類と刑罰

1.薬物事件で逮捕された際の注意点

覚醒剤・大麻・コカイン等の薬物犯罪で逮捕されたときには、その後の処遇や刑罰に注意点があります。

(1) 長期の勾留(身柄拘束)がされる可能性が高い

薬物犯罪は、他の刑事犯罪と比較しても「勾留」される可能性が高いです。
勾留とは、逮捕後に引きつづき警察の留置場内で身柄を拘束されることです。

犯罪行為で勾留されるのは、被疑者に逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがある場合です。

薬物犯罪は、①薬物の入手先という「共犯者」が必ず存在しますし(野生の自生する大麻を所持した場合を除く)、②薬物という証拠は容易に処分できます。
このため、共犯者と口裏を合わせる、薬物を破棄して証拠を隠滅する可能性が高いと考えられています。

このような理由から、薬物事犯で逮捕されたら、引き続いて10日間勾留されることを覚悟しなければなりません。
逮捕期間を合わせると、身体拘束の期間は13日間に及びます。

更に、薬物事犯の場合、起訴・不起訴を判断するために対象薬物の「鑑定」が必要です。
薬物犯罪は、指定された成分が含まれているかどうかによって犯罪の成否が決まりますし、どの程度含まれているかにより犯情が変わってくるためです。

ただ、繁忙により鑑定にはかなりの時間がかかるケースもあります。
この場合、10日間の勾留期間に捜査が間に合わず、勾留延長されて最大20日間の身柄拘束が続きます。

逮捕期間中は、家族と一切面会できません。勾留中も、家族との接見は警察官立ち会いの下で1日10分程度しかできないとされています。

接見とは?|被疑者との接見は弁護士に相談を

[参考記事]

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(2) 被害者が存在せず示談ができない

薬物事犯の減刑が難しい理由の一つとして「被害者と示談ができない」ことがあります。

たとえば、暴行や傷害、痴漢、盗撮、窃盗などの「被害者」がいる犯罪であれば、被害者と示談を成立させることにより、処分を軽くできる可能性が高くなります。
起訴前に示談ができれば、初犯かつ軽微な罪状のケースでは、多くの事件で不起訴にしてもらえると思われます。

しかし、薬物事犯は、輸出入や製造、使用、所持をするものですから、「被害者」は存在しません。

示談ができないので、示談によって情状をよくするという方法はとれないのです。

2.薬物事件で不起訴を目指すための対策

では、こうした薬物事犯において、少しでも処分を軽くするにはどうするべきなのでしょうか?

(1) 反省の態度を示す

まず、薬物犯罪が事実であるなら、しっかりと反省の態度を示すことです。

事実を認めるのであれば、「何故、薬物に手を出してしまったのか?」「自分の考え方、生活態度、交友関係などのどこに問題があったのか?」を真剣に考え、「二度と薬物に接しないためには、どのように改善することが必要か?」に自分なりの答えを見つけるよう努力しましょう。

そして、その反省を取調官に伝えて、供述調書に記録してもらうことです。
調書に記載されれば、検察官も裁判官も目にすることができ、しかも、被疑者自身が作成した反省文よりはおおむね信用されます。

(2) 贖罪寄付を行う

薬物事件には示談ができる被害者がいません。
しかし、示談に代わる方法として、贖罪寄付という方法を取り反省の態度を示すこともできます。

贖罪寄附は、日弁連及び各地の弁護士会が設けている制度です。贖罪、つまり罪を償う気持ちで弁護士会にお金を寄付すると、弁護士会が贖罪寄附を行ったという証明書を発行してくれますので、これを情状証拠として検察官に提出することができます。

寄附されたお金は、日弁連・弁護士会が行っている、人権の擁護と社会正義を実現する活動のための法律援助事業基金に充当されます。
法律援助事業基金は、弁護士による法律援助を必要とする人たちのために使用されます。

贖罪寄付・供託の効果|本当に不起訴になるのか?

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3.薬物事件における弁護士の活動

薬物事件のように、逮捕・勾留・起訴の可能性が高い刑事犯罪は、少しでも早く弁護士に弁護依頼をすることがおすすめです。

薬物事件の依頼を受けた弁護士は、まず、身体拘束されている本人と接見し、これからの弁護方針を練ります。

逮捕直後の段階で弁護士がついた場合には、引き続きの勾留を避けるべく検察官と交渉し、本人は反省していること、身体拘束による不利益が大きいこと等を伝え、勾留を避けるよう働きかけます。

それでも勾留をされてしまった場合には、早期の釈放・不起訴処分を獲得すべく、上で述べた贖罪寄付のサポートをする、身体拘束から解放された後の再犯を避けるためダルク(薬物治療施設)への入所を提案するなど、再犯防止の計画を練ります。
他にも、依存性・常習性が強くないこと、使用回数と頻度が少ないこと、自ら求めて入手したものではなく偶発的犯行であることなど、被疑者に有利な事情を洗い出して主張します。

家族の方に再犯防止のための協力をお願いすることも不可欠です。
家族や勤務先などがしっかりしていて、今後の監督を期待できることを主張することも効果的なのです。

それでも起訴処分となってしまった場合には、何とか実刑を回避するため、公判において本人の弁護人として活動します。
事案によって細部は異なりますが、被告人は再犯の可能性が低いこと、深く反省していること等を主張していくことになります。

このような活動を行えば、薬物犯罪でも不起訴処分にしてもらえる可能性も出てきます。

4.薬物犯罪の弁護は泉総合法律事務所へ

主な薬物犯罪の起訴猶予率は、次のとおりです。

法律 起訴率 起訴猶予率
覚醒剤取締法違反 75.4% 9.2%
大麻取締法違反 49.8% 32.8%
麻薬取締法違反 61.6% 16.1%

※「令和4年版 犯罪白書 第4編/第2章/第3節/1」より

起訴猶予は、検察官が起訴して有罪判決を得ることもできると判断したうえで、諸事情を考慮してあえて不起訴とするものです。

重大犯罪につながりやすい覚せい剤事犯の起訴猶予率はかなり低いですが、大麻事犯では3割以上が起訴猶予となっています。
薬物犯罪で逮捕されることが、ただちに起訴・有罪・前科につながるわけではないのです。

とは言え、やはり薬物犯罪の起訴率はかなり高く、軽い気持ちで薬物に手を出すのは絶対に避けなければなりません。

薬物使用で逮捕されてしまった場合、身柄拘束される可能性が高く、その期間も長引くことが多いです。そうなると、解雇や退学などの問題も発生してきます。

薬物犯罪を何度も繰り返していたり、初犯でも社会に薬物中毒を蔓延させる危険性の高い重大犯罪(覚せい剤やヘロインの営利目的の所持等や輸出入など)を犯したりすれば、確実に相当な長期間の実刑になります。
特に、覚せい剤の営利目的輸入罪は最高刑が無期懲役まであり、裁判員裁判となりますので、極めて長期間の実刑になるだけでなく、事件の処理自体も相当長期化することになります。

実際、令和3年に覚醒剤取締法違反で起訴された6,558件のうち、起訴猶予なしの実刑になったのは48.2%とかなりの数におよびます。

軽い気持ちで薬物の受け取りを了解すると、長い期間を刑務所で過ごすことになりかねません。
不利益をできる限り小さくするために、お早めに刑事事件の弁護実績が豊富な泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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