薬機法(医薬品医療機器等法)の指定薬物とは?所持・使用で逮捕
「疲労回復」「ストレス解消」「精力増強」「リラックス効果あり」など、様々な効能をうたい、名称を「ハーブ」「アロマ」「リキッド」などとした商品を見たことはありませんか?
これらの中には、実際には覚醒剤や大麻などの成分を含んだ違法薬物や、人体に有害な作用を及ぼす「危険ドラッグ」が紛れている可能性があります。
さらには「薬機法」により「指定薬物」として販売・所持・使用などが禁止されているものもあり、これに違反すると逮捕・勾留を経て起訴され、刑事罰を受けてしまうこともあります。
本コラムでは、薬機法(医薬品医療機器等法)の指定薬物について解説していきます。
1.薬機法(医薬品医療機器等法)と指定薬物
(1) 法律の目的・概要
「薬機法(医薬品医療機器等法)」は、正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と言います。薬機法は、旧「薬事法」を改正した法律として、2014年11月に施行されました。
その目的は保健衛生の向上で、そのための施策のひとつとして、「指定薬物の規制措置」を行うとされています。
(2) 指定薬物の定義(危険ドラッグ・脱法ドラッグ)
では、その指定薬物の定義とは何なのでしょうか?
1 危険ドラッグ
危険ドラッグとは、覚醒剤や大麻など規制薬物の含有物と類似した科学物質を混入させた物質です。体内に摂取すると精神刺激作用や幻覚作用などを生じさせますので、規制薬物と同様の有害性が疑われます。
これらは、乾燥植物片・粉末・液体・個体(錠剤)といった形態で、「合法ハーブ」「アロマ」「リキッド」「お香」などの名称で販売されるケースが多いです。
法規制の対象となる成分を含まない「合法ドラッグ」「脱法ドラッグ」などと称される場合もありますが、実際には規制対象である成分を含むケースも数多くありますので、安易に信じるのは危険です。
2 その他の「指定薬物」
「指定薬物」とは、厚生労働大臣が、薬事審議会の意見を聴いたうえで、「①精神毒性を有する蓋然性が高く」、かつ「②人の身体に使用された場合に保険衛生上の危害が発生するおそれがある物」として指定する薬物です。
「精神毒性」とは、中枢神経系の興奮作用・抑制作用、幻覚作用を指します。また、これらの各作用を維持したり、強化したりする作用も含まれます。
2026年4月30日時点で、指定された物質は357項目に及んでいます(「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条第十五項に規定する指定薬物及び同法第七十六条の四に規定する医療等の用途を定める省令」第1条1号〜357号)。
なお、他の薬物規制法における規制対象となっている薬物は除きます(覚せい剤、麻薬・向精神薬、あへん・けしがら)。
例えば、覚せい剤は「覚醒剤取締法」、大麻は「麻薬及び向精神薬取締法」および「大麻草の栽培の規制に関する法律」の規制対象です。
これらは、指定薬物からは除外され、それぞれの法によって規制されます。

[参考記事]
薬物事件を取り締まる法律の種類と刑罰
2.「合法だと思っていた」は通じない
指定薬物を購入したり、所持したりして摘発された場合、「合法な薬物だと思っていた」と弁解する方は多いです。
確かに、指定薬物に関する規制違反の罪は故意犯であり、犯罪が成立するためには犯罪事実の認識が必要です(刑法38条1項)。
しかし、この場合に必要とされる事実の認識とは、「当該薬物の薬理作用を認識し、そのような薬理作用があるために当該薬物が指定薬物として指定されている薬物と同様に規制され得る同種の物であること」の認識で足りるとする裁判例があります。
つまり、「規制対象として指定されていること」を知らなくとも、規制される理由となっている「薬理作用(中枢神経系の興奮作用・抑制作用、幻覚作用、これらの各作用を維持・強化する作用)を有する物質」と認識していれば犯罪となるのです。
【裁判例】福岡高裁平成28年6月24日判決
ハーブ販売店で危険ドラッグ(植物片)を購入した被告人が、購入の際、販売員に合法か否かを確認し、合法で規制されていないと説明されたから、合法なものと信じていたと供述し、所持の故意が欠けると主張した事案です。裁判所は、被告人が過去にも危険ドラッグを使用して、体が楽になったり、気持ちが良くなったりする一方、自動車の運転などは危険と認識していたことを指摘し、指定薬物とは知らなくとも、規制理由となっている薬理作用のあるドラッグと認識している以上は、事実の認識に欠けることはないとして、被告人の控訴を棄却して、懲役6月とした一審判決を維持しました。
3.指定薬物の規制内容と罰則
(1) 指定薬物の規制内容
指定薬物については、次の各行為が禁止されています(法76条の4)。
- 「医療等の用途」以外の用途に使用する行為
- 「医療等の用途」以外の用途に供するために製造する行為、輸入する行為、販売する行為、授与する行為、所持する行為、購入する行為、譲り受ける行為
つまり、禁止行為は、「医療等の用途」以外の用途のために、使用・製造・輸入・販売・授与・所持・購入・譲受をする行為、ということになります。
「医療等の用途」とは、「疾病の診断、治療または予防の用途及び人の身体に対する危害の発生を伴うおそれがない用途として厚生労働省令で定めるものを指します。
たとえば、病気の治療や、大学等の教育機関における学術研究などのケースです。
(2) 指定薬物の広告の禁止
指定薬物の広告を行うことも禁止されています。例外的に許されるのは、次の各場合だけです。
- 医事・薬事・自然科学に関する記事を掲載する医薬関係者・自然科学研究従事者向けの新聞・雑誌での広告
- その他、主として指定薬物を「医療等の用途」に使用する者を対象として行う広告
もちろん、指定薬物のインターネット広告も禁止されます。
(3) 規制違反の罰則の重さ
指定薬物の使用・製造・輸入・販売・授与・所持・購入・譲受の禁止違反
法76条の4に違反し、次の各行為を行った場合は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金刑となり、両方の刑が併科される場合もあります。
- 「医療等の用途」以外の用途に使用する行為
- 「医療等の用途」以外の用途に供するために製造する行為、輸入する行為、販売する行為、授与する行為、所持する行為、購入する行為、譲り受ける行為
業として違反を犯した場合|刑の加重と両罰規定
次の各違反行為には、より重い刑が科され、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金刑となり、これも両方の刑が併科される場合があります。
- 業として、「医療等の用途」以外の用途に供するために、指定薬物を製造する行為、輸入する行為、販売する行為、授与する行為。「業として」とは、社会生活上の地位に基づき、反復継続して行う(または反復継続する意思をもって行う)ことを指します。
- 「医療等の用途」以外の用途に供するために、指定薬物を所持する行為(ただし、販売または授与の目的で貯蔵・陳列した者に限る)
また、この場合、会社などの法人の代表者や従業員などが、その法人などの業務に関して違反行為を行ったときは、違反行為の行為者への刑罰とは別に、法人などにも1億円以下の罰金刑が科されます。これを両罰規定と呼びます。
広告禁止違反(法76条の5違反)
指定薬物の広告禁止に違反した場合は、2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金刑となり、両方の刑が併科される場合もあります。これも両罰規定があり、法人などにも200万円以下の罰金刑が科せられます。
4.逮捕されたらすぐに弁護士へ
指定薬物に関する犯罪が発覚するきっかけは様々です。
- 街中での職務質問によって、指定薬物の所持が発覚
- 税関による荷物検査で、輸入品に隠された指定薬物が発覚
- 販売元が保存していたデータから、指定薬物のネット購入が発覚
指定薬物の犯罪で逮捕された場合は、ただちに弁護士を呼ぶようにしましょう。
(1) 被疑者が弁護士を呼ぶ方法
弁護人に依頼をすることは、身柄を拘束された者に保障された憲法上の権利です。
捜査機関は、逮捕された被疑者に対して、弁護士を選任できることを告げます。この時、警察官や検察官に「弁護士を呼んでほしい」と言えば、警察官・検察官がその地域の弁護士会に連絡してくれますので、弁護士に相談することが可能になります。
さらに、具体的な弁護士・弁護士法人・弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることもできます。
過去にお世話になった弁護士がいる場合や、薬物事件に強い弁護士に覚えがある場合は、弁護士を指定すると良いでしょう。

[参考記事]
当番弁護士の仕組み|国選弁護人、私選弁護人との違いは?
(2) 薬物事犯の勾留は長期化しやすい
指定薬物に限らず、薬物犯罪では身体拘束期間が長期となり易い傾向があります。逮捕に続き、勾留され、さらに勾留延長によって、身体拘束期間は最大約23日間に及びます。
「薬物」という証拠を隠滅することは簡単ですし、薬物を被疑者に販売・譲渡した共犯者が存在するので、身柄を開放すると、証拠を隠滅したり、共犯者と口裏を合わせたりする危険が高いと判断されるからです。
また指定薬物で起訴するには、当該薬物が指定の成分を含有していることを確実に証明しなくてはらないので、捜査機関の繁忙により、薬物の分析・鑑定に時間がかかる場合もあります。
(3) 不起訴・執行猶予・早期釈放を目指した弁護活動の内容
指定薬物犯罪を含む刑事事件の弁護人として、被疑者の権利・利益を守る刑事弁護活動を行うことができるのは弁護士だけです。
弁護士は、指定薬物犯罪の刑事事件において、主に、次のような刑事弁護活動を行います。
- 逮捕・勾留された被疑者の早期釈放を求めて検察官・裁判官に働きかける
- 不起訴処分を求めて検察官に働きかける
- 起訴された場合は、保釈を裁判官に求める
- 公判では、裁判官よる執行猶予判決を求める

[参考記事]
薬物事件で逮捕された!不起訴・実刑回避のためにするべきこと
なお、指定薬物犯罪では国選弁護人による弁護も利用できますが、国選弁護では弁護士を選ぶことはできず、残念なことに、熱心さに欠ける弁護士や刑事弁護の経験・実績が浅い弁護士が選任されてしまう例もあります。
できるならば、指定薬物犯罪の刑事弁護経験・実績が豊富な弁護士を、私選弁護人として選任することをお勧めします。

[参考記事]
国選弁護人がやる気なし?解任を申し出たい場合はどうすればいいか
5.弁護士に依頼するメリット・まとめ
指定薬物犯罪で逮捕された場合、早期に弁護士に依頼することが肝要です。
早々に弁護士を選任することは、十分な弁護活動を可能とし、身柄拘束期間の短縮、不起訴処分の獲得など、依頼人の利益に繋がります。
是非、泉総合法律事務所の無料法律相談を御利用ください。

