大麻の所持・使用の罪の違い|所持せず使用とはどういうこと?
皆さんご存知の通り、大麻(マリファナ)は違法薬物の1つです。
大麻はかつて「大麻取締法」により規制されており、他の薬物犯罪と異なり、大麻の自己「使用」は処罰の対象となっていませんでした。大麻を「所持せず使用」という言葉があったのも、この理由です。
しかし、法改正により、大麻取締法は「大麻草の栽培の規制に関する法律」という名称に変わり、「大麻施用罪(大麻使用罪)」が新設されました。
本コラムでは、「なぜ、大麻の使用が禁止されずに所持や譲受のみ処罰対象となっていたのか?」また、「最新の法律では、大麻の所持・使用はどのように処罰されるのか?」を見ていきます。
1.大麻取締法とは?
大麻取締法は「大麻草の栽培の規制に関する法律」という名称に改正されました。
この法律内で「大麻施用罪(大麻使用罪)」が新設され、また、大麻の所持や譲渡については、「麻薬及び向精神薬取締法」による規制に移行しました。
「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品を言います。
もっとも、大麻草でも、「大麻草(その種子及び成熟した茎を除く)及びその製品(大麻草としての形状を有しないものを除く)」は規制対象から除かれています(第1条)。
大麻についての規制は刑法ではなく、「大麻草の栽培の規制に関する法律」と「麻薬及び向精神薬取締法」により行われています。
薬物は、薬物の性質に合わせて個別に規制がなされているのです。
現在、大麻について禁止される行為は、輸出入、栽培、製造、譲渡、譲受、所持、使用等です。
大麻の合法化について度々話題になりますが、一部外国で許されている医療用大麻も日本では認められていません。
もっとも、許可を受けた①大麻研究者、②大麻栽培者は、一定の目的のために大麻の栽培等が許されます。
大麻取扱いの免許を有する者が大麻を目的外で「使用」することや、一般人が大麻を「研究のため使用」することは禁止しています。
大麻を取り締まる法律に違反した場合の罰則は以下の通りです。
輸出入、栽培、製造
非営利目的の場合:1年以上10年以下の拘禁刑
営利目的の場合:1年以上の有期拘禁刑若しくは情状により500万円以下の罰金又はその両方譲渡、譲受、所持、使用
非営利目的の場合:7年以下の拘禁刑
営利目的の場合:1年以上10年以下の拘禁刑若しくは情状により300万円以下の罰金又はその両方
2.大麻「使用」が処罰されなかった理由
実は、かつて、大麻の自己使用自体は処罰の対象とされていませんでした。
これは、大麻の使用が他の薬物の使用と比べて、有害性が低いからといった理由からではありません。
覚せい剤やアヘン、麻薬等の自己使用は禁止されているのに、なぜ大麻の自己使用は処罰されないのでしょうか?
(1) 大麻の用途は多岐にわたる
大麻は、気分をハイにするなどの目的で、大麻を煙・樹脂・液体として体内に取り込んで自己使用するもの、と考えている方が多いと思います。
しかし、もともと我が国では、古来から大麻を宗教的儀式のために吸引したり、薬草として用いたり、その繊維を衣服に利用したりするなど、大麻を貴重な資源として活用してきた文化がありました。
現在でも、海外では医療用に大麻の部分的使用が行われています。日本においても大麻草の茎は麻織物に、種子は七味唐辛子に使用され続けています。
このような大麻を活用する実際上の必要性があり、しかも、後述のとおり、大麻には有害性がほとんどない部位があるため、大麻草の中でも、成熟した茎や種子は規制の対象となっていません。
つまり、大麻草の茎や種子を所持したり、譲受したりすることは処罰されない、とされていたのです。
もっとも、輸入に関しては以前から関税法(第69条の11第1項)で別途規制され、通達によって熱処理などの発芽防止処置が要求されています(昭和40年8月16日通商産業省告示第426号)。
(2) 尿検査で不正使用か否かの判別が不可能
そうすると、大麻の種子などの有害性のない部分は規制対象外なのですから、それ以外の大麻の自己使用は禁止すれば良いと考えるかもしれません。
しかし、両者の区別は困難です。というのも、大麻の使用が尿検査で明らかになっても、大麻のどの部分を摂取したかが特定できないのです。
大麻にはTHC(テトラヒドロカンナビール)という成分があり、これが幻覚症状等の有害性を引き起こします。成分の量に程度はありますが(成熟した茎や種子にはほとんど含まれていない)、これは大麻草全体に含まれています。
そのため、大麻草の茎や種子が体内に入った場合でも、尿検査で大麻の陽性反応が出てしまうおそれがあるのです。
そうすると、尿検査で陽性反応=大麻を不正に使用、と断定することはできません。
反対に、七味唐辛子を体内に入れた場合、これが微量であっても陽性反応が出ることがあり、正当な大麻の使用を委縮させることになりかねません。
そのような事態を避けるため、大麻に関しては自己使用を処罰対象から除外したのです。
もちろん、大麻の自己使用を処罰対象から外しても、大麻所持罪等で処罰することが可能なため、大麻規制から逃れることとなるわけではありません。
3.大麻を「所持せず使用」とは?
このように、大麻の自己使用は処罰対象から外れていました。そのため、大麻を使用しても、「所持していない」と言えば捕まらないのでは?との疑問が浮かぶと思います。
「所持」とは、対象物を事実上支配している状態です。
対象物を手で持っている、かばんに入れている、家のどこかに置いているといったケースは全て所持にあたります。
同居人が大麻を持ってきた場合でも、その事実を知っており、自分も自由に使用できたといった事情があれば、共同で事実上管理していたとして所持に該当すると判断されます(共同所持)。
大麻を使用する際には、それを一度所持、つまり、大麻を事実上の管理支配下に入れるのが通常です。そのため、使用したが所持していないということは、ほとんどの場合であり得ませんから、所持罪で立件できれば、取り締まり目的は達成されるわけです。
また、尿検査で大麻成分が検出されれば、自己使用が犯罪でないとしても、押収された大麻を、「所持」していた事実を裏付ける証拠のひとつになります。結局のところ、尿検査で大麻成分が検出されたら、「使用したが所持していない」の言い分は通用しないので、その場で現行犯逮捕されることが多かったと言えます。
4.大麻事件の起訴・不起訴の判断について
ここまでご説明した理由があり、大麻の「使用」は処罰されなかったものの、近年の若年層を中心とした大麻乱用の拡大を受け、令和5年(2023年)12月、法律は劇的に改正・厳罰化されました。
では、大麻の所持や使用で逮捕された場合、起訴・不起訴を決めるためにどのような捜査・取り調べが行われるのでしょうか。
(1) 大麻所持等の事実と故意を捜査
大麻所持等で逮捕された場合、警察が欲しい証拠は、被疑者が大麻を「所持」「使用」した事実と、その所持・使用についての「故意」を裏付けるものです。
「故意」とは犯罪事実の認識ですから、ここでは「大麻であることの認識」と、それを「自己が所持や使用をしたことの認識」ということになります。
通常、所持されていたものが禁止された「大麻」に該当するか否かは、警察の科学捜査研究所の鑑定で明らかになります。
また「所持」とは、事実上の物理的な支配です。
職務質問などでカバン内やポケットから大麻が発見された場合は、通常、所持の事実は明白です。ただ、被疑者は「知らないうちに誰かがカバンに入れたのだ」とか「拾ったものだが大麻とは知らなかった」などと弁解して、故意を否認する場合もあります。
しかし、もしも被疑者の体内から、被疑者が大麻を吸引していた事実を示す証拠が見つかれば、この言い訳は通用しなくなります。
そこで、被疑者の尿検査を行い、薬物反応の有無を調べるのです。
(2) 尿検査の実施
尿検査を拒否しても、裁判官による捜索差押令状が発布されれば、身体を押さえつけられて尿道にカテーテルを挿入され、強制的に尿を採取されてしまいます(※覚せい剤に関して強制による採尿を認めた最高裁昭和55年10月23日決定)。
尿検査で大麻の吸引が明らかにならない場合でも、例えば、被疑者が大麻片の付着したパイプを所持しており、その吸い口から被疑者と血液型やDNAが一致する唾液が検出されれば、やはり被疑者が所持していたものと推認できます。

[参考記事]
警察の尿検査は拒否できる?結果次第で逮捕・起訴されるのか
なお、大麻について「友人から預かったもので、自分の所有物ではない」と言い訳しても無意味です。所有者が誰かは問題外だからです。また、住居内に秘匿していた大麻について、「これは同居人のもので、自分のものではない」という言い訳をした場合は、被疑者の所持と言えるかどうかが問題となります。
この場合も、尿検査で被疑者が大麻を吸引していた事実が明らかになれば、被疑者の所持か、少なくとも同居人との共働所持と評価できますから、やはり尿検査が重要となります。
(3) 入手ルートの取り調べ
また、所持罪の故意を裏付ける供述とは別に、入手ルートについても取り調べられます。
これは被疑者が犯行に至った経緯として意味を持つだけでなく、捜査機関としては可能であれば販売者を追跡したいからです。
ただ、入手ルートに関しては、「クラブで踊っていたら、知らない奴から声をかけられて売られた」とか「繁華街を歩いていたら、知らない外国人からもらった」などと、作り話かどうかもわからない言い訳が出てくることが多いものです。
押収した被疑者のスマホやパソコンから、売買などを示すメールが発見されたケースなどを除き、被疑者が真実を自白しない限りは本当の入手ルートを知ることはできません。
そのため、(他に証拠がなければ)入手ルートの取り調べはほどほどで終了することがほとんどです。
大麻事件の証拠について、さらに詳しくは以下のコラムをご参考ください。

[参考記事]
大麻の譲渡・譲受・売買の証拠とは?
5.大麻取締法違反で逮捕された事件の過去の事例
過去に、元アイドルが大麻所持で逮捕され、懲役刑・実刑となることもなく「処分保留」で釈放された事案もあります。
この場合の大麻の所持は、車内(車の床)に大麻があったというもので、直接身に着けていたり持っていたりしたわけではなく、自分のものではないと否認しました。
体内からは大麻が検出されたため「使用」は認められる案件でしたが、所持していたとされた大麻については「大麻所持の認識、故意の立証が難しい」ことがポイントとなりました。
そのため、客観的に所持といえるか難しいと検察官が判断して、処分保留で釈放となり、その後は任意捜査となったものと思われます。
6.薬物事件も泉総合法律事務所へご相談を
このように、現在は大麻の自己使用も処罰と対象となっています。間違っても、「大麻は比較的安全だから自己使用罪が規定されていない」と考えて使用してはいけません。
捜査・取り調べの結果、大麻事件で逮捕されてしまった場合は、対処法を考えることが大切です。

[参考記事]
大麻で逮捕された!必ず懲役刑になるのか?
大麻取締法違反やその他の薬物犯罪で逮捕・勾留、起訴されてしまったという方、あるいはその家族も、薬物犯罪に強い泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

