DV(家庭内暴力)で逮捕される基準と刑事弁護方法

DV(ドメスティックバイオレンス)と聞くと、夫からの妻に対する日常的な暴言・暴行で、身体中が痣だらけになる…というような事案を想像する人が多いと思います。
しかし、DVには様々な態様があります。
些細な夫婦喧嘩の流れの中で夫がつい手を上げてしまい、妻が「ちょっと注意してもらおう」「相談してみよう」という程度の軽い気持ちで110番通報した結果、想定外に夫が逮捕されてしまうこともあるのです。
この場合、逮捕・勾留期間中の夫が会社をクビにされ、望んでもいない家庭崩壊が起こる可能性も否めません
そのような悲劇を防ぐため、今回は、実際に弁護士事務所へどのようなDVの相談があったのかという具体例を挙げながら、DVで逮捕されるケース・逮捕されたらどうするべきなのかを解説します。
1.DV(家庭内暴力)とは?
DVとは「配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力」と定義されることが多いとされます。
日本では、配偶者暴力防止法(DV防止法)という法律があり、配偶者からの暴力の防止や被害者の保護等を図る体制整備を定めています(1条1項)。
実際に各都道府県には、配偶者暴力相談支援センターが設置され、被害者の支援をしています)。
この法律での「配偶者」は、結婚しているか・男女の性別を問いません(1条2項)。
また「暴力」は身体に対し危害を及ぼす攻撃だけでなく、これに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動も含まれます。例えば、無視し続けることによるPTSDなどの精神障害がこれにあたります。
刑法上では、DVは暴行罪(刑法208条)、それが怪我や身体の生理機能の損傷に至った場合(上記PTSDなど)は傷害罪(刑法204条)になります。
また、配偶者が拒否しているにもかかわらず無理に性行為を強制すると、不同意性交等罪になります(刑法177条)。
2.DV事件で逮捕されるケース
深刻なDV事件が起こっているならば、シェルターへの避難や離婚を考えなければなりません。
しかし、先述のように、妻が大事になることを予想していなかったDV事件の相談も少なくありません。
例えば、「夫婦間でちょっとした言い争いがありたまたま夫の腕が妻に当たったところ、妻が怒って交番に出向き被害申告をしたら夫が逮捕されてしまった」「夫婦喧嘩の流れの中で、夫が近くにあったナイフを手に持った(ナイフは妻には向けていません)のを見て、妻が警察官から注意してもらおうと110番通報したところ、逮捕されてしまった」というようなケースです。
このような場合でも、早期に弁護士が弁護活動を開始しなければ、勾留決定のまま会社の解雇などという非常に深刻な事態になる可能性があります。
DVで逮捕されても、その事実が会社に知られることはありません。
しかし、DVで逮捕されると、逮捕に続いて10日以上勾留されることがあります。2〜3日ならともかく、10日以上も会社勤めの夫が欠勤することになったら、会社に対して納得するような欠勤の理由を家族が伝えることは困難でしょう。
そうなれば、最悪の場合会社を解雇され、夫婦や子供の世帯の生活が成り立たないという深刻な問題が発生することになります。
もちろん、実際にDVがあり「妻に傷害を負わせてしまった」などのケースでも、逮捕される可能性は非常に高いです。
DVの被疑者を家庭に戻しても、そこでまたDVが発生する可能性は非常に高いと思われるのが通常ですから、警察・検察は原則として被疑者の身柄を拘束することがほとんどなのです。
3.DV事件で逮捕後の刑事弁護
(1) 逮捕後、家族は早めに弁護士を探すべき
DVがらみの依頼は泉総合法律事務所にも多数ありますが、多くは逮捕されて間もなくの刑事弁護依頼です。このような早期のご依頼ならば、妻・両親らと十分に打ち合わせして、釈放に向けてのポイントを押さえた身元引受書や上申書を作成してもらい、それらの書類と弁護士の意見書を検察官・裁判官に提出して働きかけることで、釈放を実現することができるケースがほとんどです。
しかし、妻や家族が弁護士に相談するのが勾留決定された後、というケースもあります。
これは、夫が逮捕されても大事とは捉えず「DVは夫婦間の問題で、暴行態様や傷害の程度も軽いし、すぐに自宅に戻って来るだろう」と考えたことによるものだと思います。こうなると、10日間の勾留決定の連絡を聞いてから急いで弁護士を探すことになってしまいます。
被疑者が既に勾留されている状態で依頼者からの要望に応えられる可能性がある唯一の方法は、「準抗告」という手続きです。
これは、裁判官が下した勾留決定を取消してもらう裁判を起こす手続きです。
(2) 準抗告認容を目指し、経験豊富な刑事事件弁護士への依頼が大事
準抗告認容のために重要なことは、事件の特質を的確につかんで、勾留の必要性(逃亡の恐れや証拠隠滅の恐れなど)がないことを具体的に裏付けて、準抗告申立書・添付資料を提出することです。
準抗告を審理する裁判官が認容の判断に傾くように熟慮しながら作成する必要があることは当然ですが、準抗告申立書の添付書類についても、身元引受書や妻や両親の上申書だけ添付すれば良いというものではなく、様々な必要書類を用意して添付します。
また、時間との争いになるため、依頼者の方が来所したならば大半の書類を法律相談の場で作成して署名押印をもらい、引き続いてすぐに準抗告申立書を作成する、というようなスピード感も大事です。会社解雇などを避けるには、1日でも早く釈放する必要があるためです。
もちろん、ただ早ければ良いというものではありません。中身のあるものをいかに早く作成するかが重要です。
DV特有の弁護活動が行える刑事弁護経験豊富な弁護士に運良く依頼できれば良いのですが、勾留取消のための準抗告認容はハードルが高いものです。最悪の場合、弁護士に依頼をしても準抗告棄却の勾留継続となってしまいます。
弁護士の選任に失敗しないためにも、刑事弁護経験豊富な弁護士を探す時間的余裕は常に考えておきましょう。
4.DVで想定外に逮捕されたらどうすればいい?
DVで夫が逮捕された場合で、「被害者」の妻が逮捕などを望んでいないケースもあります。
「少し注意してもらおうとしただけ」「相談をしようと思っただけ」など、そもそもDVや暴行とまでは言えないような事案の場合には、勾留の回避あるいは早期釈放を目指し、刑事弁護経験豊富な弁護士に刑事弁護を依頼することを強くお勧めします。
あらゆる刑事事件に関して釈放の実績が豊富な泉総合法律事務所へご相談いただければ、それぞれのご希望に沿った最適なサポートを提供いたします。
5.DVに関するご相談なら泉総合法律事務所へ
泉総合法律事務所では、実際にDVをして逮捕されてしまった夫の家族からの依頼や、軽い気持ちで警察に連絡をしたら想定外に夫が逮捕されてしまった妻からの依頼など、様々なDV事件・刑事事件に取り組んでおります。
万が一DV事件を起こしてしまった場合や、家族がDV容疑で逮捕されてしまったという方は、出来るだけ早く、DVの弁護経験が豊富な泉総合法律事務所へご相談ください。