暴行・傷害 [公開日]2025年7月22日

暴行事件を起こし自首をしたい場合の弁護士依頼

暴行事件を起こし自首をしたい場合の弁護士依頼

刑事犯罪における「暴行罪」とは、暴力を振るった結果相手が怪我をしなかった場合、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金に処するというものです。

暴行事件を起こしてしまった場合、適切な対応を取らなければ起訴をされ、前科がついてしまうリスクがあります。そこで、自分が犯人であることがまだ発覚していない段階から「自首」をすることも一案です。

自首は、刑事処分の決定において重要な情状酌量事由となります。しかし、一人で警察に出向くのはおすすめしません。自首の動向や自首後の対応に精通している弁護士に、事前に相談・依頼をするようにしましょう。

刑事事件に精通した弁護士に依頼をすることで、自首の準備から事件解決まで安心してサポートをお任せできるだけでなく、被害者との示談交渉も円滑に進められます。

本記事では、暴行事件での自首を考えている方に向けて、弁護士依頼の重要性と具体的な自首の手続きの進め方について解説します。

1.刑事事件の自首の効果

刑事事件における自首は、刑法第42条により「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる」と規定されて います。

つまり、自首の効果を得るためには「事件あるいは罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に行うこと」が条件ですので、罪を犯した人物が既に発覚している、あるいは捜査や逮捕が手配されている状態で警察に行っても、法的な意味での自首は成立しません。

また、刑の減軽についてはあくまで「減軽することができる」とある通り、裁判官の裁量次第であるということに注意が必要です。

とはいえ、自首は量刑の判断において「真摯な反省の態度」として評価され、検察官や裁判官の心証に好影響を与えるケースがほとんどです。
暴行事件の場合、自首により刑の減軽が期待できるだけでなく、起訴猶予処分(不起訴処分)や執行猶予付き判決の可能性も高まります。そもそも逮捕・勾留されず、在宅事件で手続きが進むことになる可能性も高いでしょう。

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さらに、暴行事件では被害者の処罰感情も量刑判断において重要な要素となりますが、「自首をした」という事実は、その後の被害者との示談交渉においても有利に働く可能性があります。
被害者としても、自ら出頭した被疑者と、最後まで逃げて反省の態度を見せない被疑者ならば、前者の方が心象も良くなるのは当然と言えます。

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2.自首を弁護士に依頼するメリット

自首は、ただ警察署に身一つで行っただけで有効に成立するとは限りません。また、何の前準備もせず自首をすると、その後の手続きで却って不利になってしまうリスクがあります。

よって、暴行事件で自首を検討しているならば、事前に弁護士にご相談ください。

(1) 事前の書類準備や取り調べ対応をサポート

自首を弁護士に依頼する最大のメリットは、自首の効果を最大にするための事前準備を任せられることです。

自首をすると、その後警察で取り調べを受けることになります。この取り調べで、「そのような犯罪が実際起こったのかどうか」「その人が本当に犯人なのか」ということについて、警察が裏付けを取るのです。

ここで不利な供述をすることは絶対に避けなければなりません。誘導尋問などが行われる可能性もありますので、事前に取り調べでの対応方法や返答内容について準備しておく必要があります。

黙秘権の行使についても適切なアドバイスを受けていれば、被疑者の方は更に安心です。供述調書に署名する前の内容確認についても、弁護士から念入りにチェックする箇所を聞くことができます。

更に、自首の際に弁護士が上申書や反省文などを準備していれば、この取り調べもスムーズに終わり、そのまま在宅事件となる可能性が高くなります。

また、自首をする際には、万が一のことも考え、周囲への事前の連絡をし、身の回りのもの・お金を準備する必要があります。

自首はなるべく早く行う方が効果も大きいですが、焦ることなく、弁護士と一緒にしっかりと事前準備を行うようにしましょう。

(2) 自首のタイミングについてアドバイス

刑の減軽や情状という観点で言えば、自首は早ければ早いほど良いのは確かです。しかし、自首のタイミングや、そもそも自首をするべきか、しない方が良いかという問題については、刑事事件に精通した弁護士でないと判断が難しい領域です。

弁護士は、事件ごとの性質や現在の証拠を分析し、自首のタイミングについて最適な時期を見極めます。
例えば、証拠隠滅の疑いを避けるためなるべく早く自首すべきか、それとも示談交渉を優先すべきかといった判断は、法的な専門知識なしには困難です。

また、そもそも事件が発覚していない場合や、被害届が出されていない場合は、自首が最適解とは限りません。この点についても、弁護士に相談をしてみることがおすすめです。

(3) 被害者との示談交渉も代理ができる

弁護士依頼のもう一つの重要なメリットは、被害者との示談交渉をそのまま代理で行ってもらえることです。

暴行事件では、被害者との早期示談が、釈放、不起訴、減刑などにつながる重大な要素となります。しかし、被疑者本人が被害者と直接交渉することは感情的対立を招きやすく、かえって解決を困難にする場合があります。そもそも被害者の連絡先を知らないというケースもあるでしょう。

そこで、弁護士が間に入ることで、被害者との冷静かつ建設的な示談交渉が可能となります。
弁護士が誠意を持って対応すれば、適正な示談金額での合意に至る可能性が高まり、不起訴獲得の可能性も高くなります。

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(4) 刑事事件の解決まで継続的に寄り添ってくれる

前述の示談交渉も含め、弁護士は自首後の刑事手続き全体を通じて、依頼者の権利を守り、不当に重い処罰を避けるための弁護活動を行います。

刑事事件では、逮捕・勾留により家族との面会が制限される中で、弁護士だけが自由に面会(接見)できる存在となります。
これは、被疑者の方の精神面でも大きな支えとなります。

3.自首から解決までの流れ

(1) 事前準備と弁護士相談

自首を決意したら、先述の通りまずは刑事事件に精通した弁護士に相談することが第一です。
弁護士は、事件の詳細をヒアリングした上で、自首のやり方やタイミングについてアドバイスします。

自首をするべきだと判断し、実際に弁護士と契約をしたら、自首に必要な書類や、取り調べで想定される質問への回答を準備していきます。

また、弁護士からは逮捕・勾留の可能性の見通しについても説明を受けられますので、必要ならば家族への連絡方法なども事前に決めておきます。

(2) 警察署へ自首に行く

自首当日は、弁護士が警察署まで同行します。
警察では、まず自首の申告を行い、その後に詳細な事情聴取が始まります。この際、弁護士が同行したと分かれば、警察官も不当に圧迫的な質問や誘導尋問などはしないと思われます。

取り調べ後の供述調書の作成時には、内容を慎重に確認し、事実と異なる記載がないかをチェックすることが大切です。この点についても、弁護士と事前に打ち合わせをしておきましょう。

自首の後は、そのまま逮捕される場合もあれば、在宅事件として処理される場合もあります。これは事件の性質や証拠隠滅・逃亡の恐れなどを総合的に判断して決定されますが、重大犯罪以外で自首をしているならば、多くのケースで在宅事件となると思われます。

(3) 警察・検察の捜査

自首後の捜査段階では、警察や検察による追加の取り調べが行われます。弁護士は各回の取り調べ内容を聞き、被疑者の方が一貫した供述を維持できるようサポートします。

同時に、弁護士は被害者との示談交渉も並行して進めます。特に、初犯かつ軽微な事件で示談が成立すれば、検察官が不起訴の判断をする可能性は高くなります。

(4) 処分の決定

検察官は捜査を終えた事件につき起訴・不起訴を判断しますが、この段階でも、弁護士は意見書の提出や検察官との面談を通じて、不起訴処分略式起訴(罰金刑)を求める活動を行います。
万が一起訴された場合は、執行猶予付き判決罰金刑を目指します。

有効な形で自首をした多くの暴行事件では、初犯であれば罰金刑や不起訴処分となる可能性が高いです。

4.まとめ

暴行事件を起こした場合、自首をすることは刑事処分に良い影響を与えます。しかし、自首の後にも適切な手続きを踏むためには、専門家である弁護士のサポートが不可欠です。一人で警察に出向くことは却って不利な結果を招く危険性があるため注意しましょう。

不安な方は、刑事事件に精通した弁護士に自主の同行を依頼することで、事前の準備から取り調べへの対応、被害者との示談交渉まで、一貫したサポートを受けることができます。特に、被害者との示談の成立は減刑に大きく影響するため、弁護士に交渉の代理を依頼することをお勧めします。

泉総合法律事務所は、自首への同行を行なっているだけでなく、刑事事件に非常に力を入れており、警察に逮捕された後の対応・被害者との示談交渉も万全の体制で執り行っております。

お悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

5.暴行事件と自首に関する実際の質問

  • Q.暴行罪で自首しました。量刑や執行猶予の有無の可能性を知りたいです。

    先日、人(未成年)を複数発殴打してしまい、その後自首しました。その後、傷害罪で取り調べ等が進みましたが、結果として暴行罪で正式起訴され、近々簡易裁判所で公判を受けます。

    相手の被害は全治2週間の顔面打撲でした。初犯です。

    弁護士に示談交渉を依頼しましたが、最終的には示談を拒否されてしまいました。

    これからの生活に非常に不安を抱えているので、想定される量刑や執行猶予の有無の可能性など一般論で教えていただきたいです。

    A.執行猶予付きの懲役判決の可能性が高いです。

    初犯であれば、自首していること、傷害結果が全治2週間と重くないこと、示談を取り付けられなかったものの示談を申し入れていること、質問者様が十分反省していることなどから、執行猶予付き懲役刑判決の可能性が高いと思われます。

    なお、起訴前に被害者との示談が成立していれば、本件は不起訴あるいは罰金刑にとどまった可能性が高いです。

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