暴行・傷害 [更新日]2026年9月17日

傷害事件の示談金・慰謝料の相場|全治期間別の目安と暴行罪の場合

傷害罪の示談金・慰謝料の相場|怪我の程度に応じて変わる?
弁護士 泉義孝
監修 弁護士 泉 義孝
所属:第二東京弁護士会
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「ついカッとなって他人に暴行を加え、怪我をさせてしまった」
「警察から傷害事件として呼び出されているが、示談金はいくらかかるのか?」

示談内容について合意してもらい、示談金を支払うことで被害が金銭的に補てんされると、刑事手続においては加害者に有利な事情として考慮されます。
つまり、被害者との示談が成立すれば、早期釈放、減刑、不起訴などにつながるのです。

本記事は、傷害事件を起こしてしまい被害者との示談交渉・示談金の支払いを検討されている加害者側(およびご家族)の方に向けた解説記事です。
加害者の立場から、示談金の内訳や相場、不起訴・釈放に向けた対応方法を分かりやすく解説しています。

1.傷害罪とは?

傷害罪は、人の身体を傷害することによって成立する犯罪であり、法定刑は15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です(刑法204条)。

刑法204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する

被害者の訴え(告訴)がなくても検察官が起訴できる「非親告罪」ですから、示談が成立して被害者が告訴を取り下げたとしても、法的には100%起訴されないという保障はありません。
しかし、示談が成立さえすれば(前科前歴があったり、被害の程度が重い事案であったりする場合でなければ)、検察官が起訴を控えてくれることが期待できます。

「傷害」とは、判例によれば、人の生理的機能に障害を与えることです。
外見的に痕跡のあることは必要ではありませんから、病気に罹患させることや、頭痛、腹痛、意識障害、失神、嘔吐など心心的なの症状、ノイローゼやPTSD等の精神的な症状を生じさせることも「傷害」です。

もちろん、傷をつけて出血させる、骨折させるといった物理的外形的に明らかな機能障害も「傷害」です(脂肪を除く)。
健康体の生理機能を障害した場合だけでなく、もとからあった怪我や病状を悪化させることも、被害者の現在の生理機能を害しているので、やはり「傷害」となります。

一方、古い判例では、女性の毛髪を根本から切断することは暴行にすぎず、傷害にはあたらないとしています(大判明45.6.20刑録18・896)。その行為自体により健康が害されるおそれはないためです。

暴力行為の結果相手に怪我が生じなかった場合は、暴行罪(刑法208条)として、2年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金、拘留又は科料にとどまります。

暴行行為によって傷害の結果が発生した場合には、たとえ傷害を負わせるつもりがなかったとしても傷害罪が成立します。
一方、暴行以外の方法で生理的機能を害する場合は、傷害罪は「故意犯」です。例えば、人に薬物を飲ませて昏睡させる行為は生理的機能を害する傷害行為ですが、ただの風邪薬と間違って飲ませた場合には、犯罪事実の認識がなく傷害罪は成立しません(過失傷害罪が問われる余地はあります)。

2.傷害事件における示談の重要性

傷害罪を犯すと、逮捕・勾留される可能性が大いにあります。
早期に釈放され、最終的に不起訴となるためには、被害者との「示談」が必要不可欠になります。

刑事事件における示談とは、①加害者が犯行を認めて謝罪し、②被害者に示談金を支払い、これと引き換えに、③被害者は加害者を宥恕(※)し、告訴や被害届を取り下げるという合意をすることです。
その合意の証拠として、「示談書」という一種の契約書を作成します。

※「宥恕」(ゆうじょ)とは、寛大な気持ちで許すという意味です。示談書に「処罰は望まない」、「寛大な処分を望む」、「宥恕する」などの宥恕文言を記載することで、宥恕の気持ちを表明してもらいます。

示談の成立により、示談金の支払いで被害が金銭的に補てんされ、宥恕文言で処罰を求める感情が無くなったことが明らかになるので、加害者に有利な事情として考慮されます。
よって、捜査段階において示談が成立した場合、検察官は、身体拘束から早期に釈放したり、起訴・不起訴の決定をするに際して罰金刑にとどめたり、あるいは、不起訴処分(起訴猶予)で終わらせたりすることも考えられるのです。

さらに、捜査の初期段階で示談が成立すれば、逮捕されても勾留請求されない、あるいは勾留延長を請求されないなど、早期の身柄解放が実現する可能性も高くなります。

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3.示談金と慰謝料の違い

傷害事件のお悩みでよくあるのが、「示談金と慰謝料は何が違うのか?」という疑問です。
日常会話では同じ意味で使われることも多いですが、法律的には明確な違いがあります。

結論から言うと、「示談金」とは事件解決のために加害者が被害者に支払うお金の総額(合計)のことであり、「慰謝料」は示談金を構成する内訳(要素)の一部です。

示談金(損害賠償額の総額)は、主に以下の区分(要素)を合計して算出されます。

  • 実損害(実際に生じた金銭的被害)
    治療費・通院費・薬代:病院にかかった費用や薬代の実費
    通院交通費:通院のためにかかった電車代、バス代、タクシー代など
    休業損害:怪我の治療や通院のために仕事を休み、収入が減ったことに対する補償
  • 慰謝料(精神的苦痛に対する補償)
    入通院慰謝料:怪我をさせられたことや通院を余儀なくされた精神的苦痛への補償
    後遺障害慰謝料:後遺症が残った場合の精神的苦痛への補償
  • 宥恕(ゆうじょ)代金・迷惑料
    被害届の取り下げや刑事処罰を望まないこと(宥恕)に対する対価としての金額

このように、「示談金 = 治療費 + 休業損害 + 慰謝料 + 迷惑料(宥恕の対価)」という構成になっています。そのため、怪我が重く通院期間が長くなったり、仕事を休ませてしまったりした場合は、慰謝料だけでなく実損害(治療費や休業損害)も膨らみ、結果として示談金の総額が高くなります。

4.全治期間別:傷害事件の示談金の目安・相場

では、示談の結果被害者に支払う示談金の額は、どのようにして決まり、いくら程になるのでしょうか。

(1) 傷害事件の示談金相場の考え方

傷害罪の示談金は、まずは実際にかかった治療費等の実損害が算出されます。そして、これに各種慰謝料や迷惑料が加わります。

実損害については容易に金額を決定できますが、問題は精神的損害を補てんする慰謝料の金額です。

精神的損害については目に見えるものではありませんので、実費として計算することはできません。そこで、怪我の程度(入通院期間や後遺症の程度)はもちろん、犯行に至る経緯・動機・目的、犯行の方法、犯罪の結果(程度)の重大性や犯行態様、被害結果が将来に及ぼす影響、被害感情の強さ等、様々な事情を考慮して慰謝料額を決定することになります。

また、損害賠償請求では加害者の支払能力以上の金額を要求しても、ない袖は触れません。よって、加害者側(支払う側)の資力が金額決定に大きな影響を与えることも少なくありません。

このような理由から、「傷害罪の示談金相場」といっても、具体的な金額を示すことは難しいのです。
それでも、「このくらいの金額で示談する例がよく見られる」という参考を示すことはできます。

(2) 全治期間別の示談金の目安

先述の通り、傷害事件の示談金は、被害者の怪我の程度(全治期間)によって大きく変わります。全治期間が長くなるほど、治療費や休業損害が増えるだけでなく、被害者の精神的苦痛も大きくなるため慰謝料額も高額になります。

以下に、比較的軽度の傷害事件における全治期間別の示談金(慰謝料・実損害を含む総額)の相場目安を表にまとめました。

もっとも、「このくらい金額の例がよくある」といった参考程度にしてください。事案ごとの個別の事情(暴力行為の悪質性・計画性、被害者の過失の度合い、加害者の資力、反省の度合いなど)によって金額の増減が図られることになります。

全治期間 示談金(総額)の相場目安 怪我の具体例・特徴
全治1週間 10万円 〜 30万円程度 打撲、擦過傷(擦り傷)、軽度の捻挫など
全治2週間 20万円 〜 50万円程度 顔面の腫れ、全治2週間の打撲・捻挫、軽度の挫創など
全治1ヶ月 50万円 〜 100万円以上 骨折、全治1ヶ月の重い打撲、通院や通院休業を要する怪我

全治1週間の目安(10万円〜30万円程度)

全治1週間程度の軽微な打撲や擦り傷の場合、治療費や休業損害はそれほど高額にはなりません。そのため、示談金の大部分は慰謝料および示談(被害届取下げ)の対価となります。

初犯で被害者の許し(宥恕)が得られれば、10万円〜30万円程度で示談が成立し、不起訴処分となるケースが多く見られます。

全治2週間の目安(20万円〜50万円程度)

殴打による顔面の腫れや、全治2週間の打撲・捻挫などは、傷害事件で非常に多く見られるケースです。通院回数が数回程度におさまることが多いため、実損害+慰謝料で20万円〜50万円程度が相場となります。

ただし、全治2週間であっても部位(顔面など)や犯行の悪質性によっては慰謝料が上乗せされることがあります。

全治1ヶ月の目安(50万円〜100万円以上)

骨折や縫合を要する傷など、全治1ヶ月を要する怪我の場合は、長期間の通院や休業が必要となるケースが増えます。

治療費や休業損害などの実費が高額になることに加え、被害者の処罰感情も強くなりやすいため、示談金は50万円〜100万円以上、重傷や後遺症のリスクがある場合は数百万円規模になることもあります。

(3) 暴行罪の場合の示談金相場

相手に暴力を振るってしまったものの、「幸いにも相手に怪我がなかった(病院を受診する必要がなかった)」という場合は、傷害罪ではなく「暴行罪(刑法208条)」が適用されます。

  • 暴行罪:人の身体に対して不法な攻撃(殴る、蹴る、胸ぐらを掴む、髪を切る等)を加えたが、怪我が生じなかった場合。
  • 傷害罪:暴行によって相手に怪我(生理的機能の障害)を負わせた場合。

法定刑においても、傷害罪が「15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」であるのに対し、暴行罪は「2年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金、拘留又は科料」と明確に区別されています。

暴行罪の場合、相手に怪我がないため「治療費」や「休業損害」といった実損害が発生しません。そのため、示談金の内訳は基本的に「精神的苦痛に対する慰謝料(および迷惑料)」のみとなります。

暴行罪の示談金相場は、5万円〜30万円程度です。
怪我をさせていない分、傷害罪よりも示談金の水準は低くなる傾向にあります。

胸ぐらを掴んだ程度であれば数万円〜10万円程度で合意できるケースもありますが、公衆の前で恥をかかせた場合や、執拗に暴言・暴行を繰り返したような悪質なケースでは、20万円〜30万円程度の慰謝料を請求されることもあります。

5.まとめ

酔っ払った勢いなどで相手に暴行を加え、怪我を負わせてしまう可能性は誰しもあります。

大怪我をさせてしまった場合や、犯行が計画的で悪質だった場合など、傷害事件の慰謝料(示談金)は時としてかなり高額となります。被疑者となってしまったら、出来るだけ早く反省の意を示し、被害者の方との示談を成立させることが重要となります。

傷害事件や暴行事件を犯してしまった場合は、刑事事件に詳しい泉総合法律事務所の弁護士、泉義孝にご相談ください。
被害者との示談交渉を早期に成立させ、不起訴を目指します。

刑事弁護は泉総合法律事務所、弁護士泉義孝まで

当事務所では、刑事弁護経験24年の弁護士泉が、すべての在宅事件の相談・弁護を直接担当いたします。

着手金は原則25万円と明朗会計です。

平日は9:00~20:00、土日祝は9:00~18:00で受付しておりますので、警察からの呼び出しでお悩みの方は、お早めにご相談ください。

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