傷害致死罪とは?成立要件・刑罰・逮捕後の流れと弁護士依頼の重要性
傷害致死罪は、「ちょっと突き飛ばしただけのつもりが、打ち所が悪く相手が亡くなってしまった」「喧嘩になってつい殴ってしまったところ、亡くなってしまった」など、予期せぬ結果によって問われることがある重大犯罪です。
傷害致死となれば、殺意はなかったとしても3年以上の有期拘禁刑という重い刑罰が科される可能性があります。
もし本人やご家族が傷害致死罪で逮捕・捜査されているならば、今この瞬間からの対応が、その後の裁判結果を大きく左右します。
本コラムでは、傷害致死罪の定義・成立要件・刑罰・逮捕後の手続きの流れを詳しく解説したうえで、刑事事件に強い弁護士に早期相談すべき理由をお伝えします。
1.傷害致死罪とは?
(1) 傷害致死罪の定義
傷害致死罪は、刑法第205条に定められた犯罪です。
第205条
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期拘禁刑に処する。
条文の通り、「身体を傷害し」「その結果として人を死亡させた」場合に成立する犯罪です。
分かりやすく言えば、「相手を傷つけるつもりで暴力を振るったところ、相手が死亡してしまった」という状況です。「殴るつもりだっただけで、まさか死ぬとは思っていなかった」というケースでも、この罪が問われます。
傷害とは、他人の身体に対して怪我を負わせることを指しますが、広義には病気に罹患させることも含まれると解されています。
(2) 暴行罪・傷害罪・殺人罪との違い
傷害致死罪を正しく理解するうえで、周辺の犯罪との違いを整理しておくことが重要です。
「暴行罪(刑法208条)」は、人の身体に対して暴行を加えたものの、怪我に至らなかった場合に成立します。たとえば、殴りかかったが相手がよけた、叩いたが痛みしか残らなかったというケースです。
「傷害罪(刑法204条)」は、暴行によって相手に怪我を負わせた場合に成立し、法定刑は15年以下の有期拘禁刑または50万円以下の罰金です。
傷害致死罪は、このような傷害行為の結果として相手が死亡した場合に成立します。
暴行罪・傷害罪・傷害致死罪は、行為そのものに大きな違いはなく、相手にもたらした結果の重さによって適用される罪が変わるという点が特徴です。

[参考記事]
暴行罪・傷害罪の刑事弁護全般
そして、傷害致死罪と「殺人罪(刑法199条)」との最大の違いは「殺意(殺人の故意)」の有無です。
「相手を殺そう」という意思を持って行為した場合は殺人罪となります。一方、傷害致死罪は「傷つけてやろう」「暴力を振るおう」という故意はあっても、「殺すつもりはなかった」という点に違いがあります。
ニュース等でよくある事例としては、真夏の車内に親が子どもを長時間放置した結果、その子どもが熱中症で死亡してしまったというケースです。この場合、ほとんどのケースで親に殺意はありませんので、傷害致死罪が成立します。
(3) 法定刑と量刑判断のポイント
傷害致死罪の法定刑は、3年以上20年以下の有期拘禁刑です。殺人罪(死刑または無期もしくは5年以上の有期拘禁刑)よりは軽いものの、罰金刑の選択肢はなく、実刑になれば相応の期間、刑務所に収容されることになります。
また、刑法上、執行猶予が付けられるのは拘禁刑3年以下の判決の場合に限られます(刑法25条)。傷害致死罪の最低刑は拘禁刑3年ですから、執行猶予を獲得するためには、法定刑の最低ラインである「拘禁刑3年」の判決を目指すか、酌量減軽(刑法66条)によって3年未満の刑に減じてもらう必要があります。
量刑の判断では、以下のような事情が考慮されます。
- 凶器の有無・使用方法(素手か、刃物か、鈍器かなど)
- 暴行の回数・態様(一発か、執拗に繰り返したかなど)
- 計画性の有無(突発的なトラブルか、事前に計画していたか)
- 被害者遺族との示談の有無
- 被告人の反省・謝罪の態度
- 前科・前歴の有無
これらの要素が悪い方面で重なると、判決は重くなる傾向にあります。逆に言えば、いかに有利な情状を積み上げるかが弁護活動の核心となります。
2.傷害致死罪の成立要件
(1) 構成要件①:故意があること
傷害致死罪が成立するためには、まず「相手を傷つけよう」「相手に暴行を加えよう」という故意が必要です。
ここで重要なのは、「死なせるつもりはなかった」としても罪が成立するという点です。殺意は不要であり、傷害の故意または暴行の故意があれば足ります。
たとえば、大きな石を被害者に向かって投げ、たまたま頭に命中して死亡させた場合、「石を命中させるつもりはなかった(脅すつもりだっただけ)」としても、暴行の故意は認められるため、傷害致死罪が成立し得ると考えられています。
「たまたま打ち所が悪かっただけ」「まさかこんなことになるとは思わなかった」という言い訳は、傷害致死罪の成立を否定する理由にはなりません。
(2) 構成要件②:傷害行為と死亡結果の間に因果関係があること
次に、暴行・傷害行為と被害者の死亡との間に因果関係があることが必要です。
つまり、「その行為がなければ死亡は起きなかった」という関係性が認められなければなりません。
逆に言えば、仮に暴力を振るったとしても、死亡の原因がまったく別の要因(たとえば持病の発作など)にある場合は、因果関係が否定される可能性があります。
もっとも、傷害行為が死亡を「引き起こした」と判断されるケースは非常に広く解釈される傾向があり、軽い暴力であっても因果関係が認定されることがあります。
(3) 殺人罪・過失致死罪との要件の違い
傷害致死罪と混同されやすいのが「殺人罪」と「過失致死罪」です。
殺人罪との違いは先述の通り、「殺意の有無」です。捜査機関は、事件の態様(使用した凶器の種類、攻撃した部位、暴行の激しさなど)から殺意を推認することがあります。そのため、逮捕当初は傷害致死罪として扱われていたケースが、捜査の進展とともに殺人罪へ切り替わるリスクも否定できません。
過失致死罪(刑法210条)は、「うっかりぶつかってしまった」「不注意で相手を転倒させてしまった」といった、傷害・暴行の故意すらない場合に問われる罪です。
法定刑は50万円以下の罰金であり、傷害致死罪とは大きな開きがあります。
傷害致死罪か過失致死罪かの分岐点は、まさに「故意があったかどうか」にあります。
なお、死亡結果についての予見可能性(過失)が必要かどうかについては学説上の議論があります。
多数説は「死亡結果の予見可能性がない場合には傷害致死罪は成立すべきでない」とする一方、判例は予見可能性を必須としない立場をとっています。
いずれにせよ、実際に傷害致死罪が問題となる事案では、死亡結果の予見可能性がないというケースはきわめて稀です。
3.傷害致死罪で逮捕後の流れと弁護士の活動内容
(1) 逮捕から裁判までの刑事手続きの流れ
傷害致死罪で逮捕されると、以下のような刑事手続きが進行します。
1 逮捕(最大72時間)
逮捕後、警察は被疑者の取り調べを行い、48時間以内に検察官へ身柄を送致します。この期間中は弁護士以外との面会が制限されます。
2 勾留(最大20日間)
検察官が裁判所に請求し、裁判所も認めれば10日間の勾留が決定します。さらに最大10日間の延長が認められることもあります。
傷害致死罪のような重大事件では、逮捕に続く勾留が認められる可能性が高く、合計で最長23日間身柄が拘束されることになります。
3 起訴・不起訴の決定
勾留期間中に、検察官が起訴するか不起訴にするかを判断します。起訴されると裁判に進みます。
傷害致死罪は、裁判員裁判の対象事件に該当する可能性があり、一般市民が裁判員として参加する形で審理されます。

[参考記事]
裁判員裁判の対象事件|選ばれる確率・年齢は?
4 裁判(公判)
起訴された場合は、裁判所で公判が開かれ、最終的に有罪・無罪および量刑が判断されます。傷害致死罪には罰金刑がないため、略式裁判にはなりません。
(2) 弁護士による具体的な弁護活動
1 早期釈放のための活動
逮捕・勾留中に弁護士ができる最初の活動が、早期釈放に向けた取り組みです。
弁護士は、逮捕直後から本人と接見(面会)し、取り調べに対する適切な対応や黙秘権の行使についてアドバイスします。
また、勾留請求への異議申し立てや「証拠隠滅・逃亡のおそれがない」ことを裁判所に訴え、早期釈放を目指します。
身柄の拘束が長引くほど仕事や家庭生活への影響が深刻になるため、この初動対応が非常に重要です。
2 被害者遺族との示談交渉
傷害致死罪の弁護活動において、被害者遺族との示談交渉は最も重要な取り組みのひとつです。
示談が成立すれば、不起訴処分を獲得したり、有罪判決であっても刑の大幅な軽減・執行猶予獲得につながったりする可能性があります。
ただし、被害者が亡くなっている傷害致死事件では、遺族の怒りや悲しみは非常に深く、加害者本人や家族が直接接触することはほぼ不可能です。
弁護士であれば、検察官経由で被害者遺族の連絡先を入手したうえで、中立的な立場から誠実に交渉を進めることができます。
感情的な対立が起きやすい場面でも、法律の専門家として適切な賠償額を提示し、折り合いをつける橋渡し役を担います。

[参考記事]
傷害罪の示談金・慰謝料の相場|怪我の程度に応じて変わる?
3 正当防衛・過剰防衛の主張
相手から先に暴力を振るわれ、やむなく反撃した結果として相手が死亡した場合には、正当防衛(刑法36条1項)または過剰防衛(同条2項)を主張できる余地があります。
正当防衛が認められれば無罪となり、過剰防衛が認められれば刑の減軽・免除が可能となります。
もっとも、これらの主張が認められるためには、攻撃の急迫性・防衛の必要性・行為の相当性などを丁寧に立証する必要があり、豊富な刑事弁護の経験を持つ弁護士の関与が不可欠です。

[参考記事]
どこまでが正当防衛か?要件を事例・判例から解説

[参考記事]
過剰防衛とは?正当防衛との違いと要件
4 不起訴・執行猶予を目指す活動
起訴された場合でも、弁護士は量刑を有利な方向へ導くためのあらゆる活動を行います。
示談成立の事実や被告人の深い反省、再犯可能性の低さ、社会復帰に向けた環境の整備などを裁判所に丁寧に伝えることで、執行猶予付き判決の獲得を目指します。
4.なぜ今すぐ弁護士に相談すべきか?
(1) 傷害致死罪は「初動」が結果を決める
傷害致死罪は、最低でも拘禁刑3年が科される重大犯罪です。逮捕後の手続きは迅速に進み、勾留期間はわずか最大23日間。この短い期間中に方針を固め、示談交渉に着手し、不起訴や執行猶予につながる布石を打たなければなりません。
時間は極めて限られており、逮捕直後の対応が最終的な裁判結果を大きく左右します。
「逮捕(勾留)されてからゆっくり考えよう」という余裕はありません。捜査機関は逮捕直後から取り調べを開始し、本人の供述が証拠として積み重なっていきます。
法律の知識がないまま取り調べに臨むことは、知らず知らずのうちに自分に不利な供述をしてしまうリスクがあります。
(2) 示談交渉は「時間が命」
被害者遺族との示談交渉は、早ければ早いほど成功可能性が高まります。
時間が経過するほど遺族の悲しみと怒りは固まり、加害者側との話し合いそのものを拒否されるケースが増えます。また、起訴後に示談が成立するよりも、起訴前に示談が成立している方が、不起訴処分を得られる可能性は格段に高くなります。
弁護士に依頼することで、逮捕直後から示談交渉の準備に入ることができます。一方、弁護士なしでは遺族の連絡先を知る手段すらなく、示談の機会を完全に失うことにもなりかねません。
(3) 勾留中の供述が裁判に直結する
取り調べの場では、「正直に話せばわかってもらえる」と思いがちですが、法律的な知識なしに行う供述は、予期しない形で不利な証拠となることがあります。
たとえば、感情的になって「腹が立ったから殴った」と述べれば、それが積極的な傷害の故意を示す供述として使われる可能性があります。
弁護士は接見を通じて取り調べ対応をアドバイスし、不利な供述を防ぐとともに、正当な権利(黙秘権など)の行使についてもサポートします。
この対応の有無が、後の裁判での争点に直接影響します。
(4) 国選弁護人では不十分
「逮捕されても国選弁護人がつく」と考えている方も多いかもしれません。しかし、国選弁護人には大きな限界があります。
まず、国選弁護人は自分では選べません。裁判所が選任するため、刑事事件の経験が豊富な弁護士が選任される保証はありません。
また、国選弁護人が選任されるまでには時間がかかり、その間にも取り調べが進んでしまいます。
さらに、国選弁護人は担当する案件が多く、一つひとつの事件に十分な時間とリソースを割けないケースもあります。
一方、私選弁護人(自分で選んだ刑事事件専門の弁護士)は、依頼を受けた直後から積極的に動き始めます。
示談交渉・早期釈放申請・取り調べ対応と、刑事手続きの各段階で手厚いサポートを受けることができるのです。
傷害致死罪のような重大事件であればあるほど、弁護士の経験と専門性が結果を大きく変えると言えます。

[参考記事]
国選弁護人がやる気なし?解任を申し出たい場合はどうすればいいか
5.傷害致死罪などの刑事事件は弁護士へ相談を
「弁護士に頼むほどの事件なのか分からない」「費用が心配で相談に踏み切れない」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、傷害致死罪は放置するほど状況が悪化する犯罪です。弁護士費用よりも、適切な弁護を受けないことによる代償のほうが、はるかに大きなものになります。
泉総合法律事務所では、傷害致死罪をはじめとする刑事事件に豊富な経験を持つ弁護士・泉義孝が、迅速かつ丁寧に対応いたします。
逮捕直後の方はもちろん、「捜査されているかもしれない」という段階でもご相談いただけます。まずはお気軽に無料相談をご活用ください。

