暴行・傷害 [更新日]2025年8月12日

重傷の傷害罪の刑罰の重さ|怪我の程度で量刑が変わる!

重傷の傷害罪の刑罰の重さ|怪我の程度で量刑が変わる!

傷害事件を起こしてしまった場合、相手の怪我が重傷なケースでは、早期に弁護士に依頼をして被害者と示談をすることが不起訴のために大切です。
怪我の程度が全治数ヶ月以上などの重傷であれば、警察の捜査の力の入れようも本格的なものになるのが通常です。

ここでは、重傷の傷害事件の刑事弁護について解説します。

1.傷害事件の処分と怪我の程度の関係

刑法204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。

傷害事件において、「起訴されるか・不起訴になるか」「刑罰が重くなるか・軽く済むか」の判断で最も肝心なのは、傷害の程度です。
もちろん、犯行の動機や悪質性、被害回復の状況、被疑者の反省の度合いなども影響はありますが、相手の怪我が重傷であれば罪状が悪くなるのは仕方がないとも言えるのです。

刑事事件で逮捕されると、逮捕から48時間以内に検察庁に身柄を送致されます。
しかし、軽傷の傷害事件ならば、警察に連行されて任意での事情聴取を受け、手書きの上申書を作成したところで釈放されるケースが多いです。そして、後日警察に呼び出されて供述調書を作成したところで警察での捜査は終了し、検察庁に書類送検だけされるのが通常だろうと思われます。

他にも、他方にも非があり(一方的ではなく互いに暴行をしたなど)、かつ傷害の程度が軽微な場合には、弁護士を通して示談すれば警察が検察庁に書類送検せず事件を終了させる(微罪処分となる)こともありえます。

しかし、傷害の程度が重傷ですと釈放は難しくなり、逮捕に続く勾留を受けることが多いほか、被害者との示談できなければ罰金刑に留まらず起訴・正式裁判の可能性が高くなります。
量刑についても、重傷であれば拘禁刑となったり、罰金の金額が高くなったりする可能性が高いです。

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2.実際にあった重傷の傷害事件の刑事弁護

泉総合法律事務所がかつて承った重傷の傷害事件の刑事弁護の事例について、ぼかして言及します。
(※事例内容については、弁護士の守秘義務に則り、実際の事案と事実関係や登場人物を改変しております。実際の相談例ではございませんのでご了承ください。)

(1) 事件の概要

本件は、「飲み屋で酔っぱらっていたら近くの人が絡んできたのでつい殴ってしまいました」というケースで、ひどい暴力を加えて被害者が大怪我をした事案です。

もちろん、被害者は警察に被害届を提出し、医師の診断書も提出しました。
幸い後遺症はありませんでしたが、かなりの大怪我で、傷害の部位から再発が懸念されるような重傷でした。

警察は、店内、道路、最寄り駅の防犯カメラを解析し、更にSUICAの使用履歴の分析などをして被疑者にたどり着き、数ヶ月後に令状逮捕にこぎつけました。

この傷害事件では、被疑者の家族が大まかな状況しか分からず、単に「警察に逮捕されて留置場に留置されている」程度しか分からない状況で、当所に弁護依頼をされました。

(2) 勾留決定・準抗告の棄却

弁護士は、検察官に「勾留の必要性はない」と働きかけましたが、重傷事件となった本件では残念ながら勾留請求となりました。
その後、勾留請求を審理する裁判官に対しても弁護士の意見書などを提出して釈放を働きかけましたが、勾留決定となりました。

それでも諦めずに、準抗告(3名の裁判官からなる裁判所に対して、別の裁判官の勾留決定の取り消しを求めて裁判を提起すること)をしましたが、棄却されました。
準抗告では、傷害の程度が重大であったことや、被疑者の弁解が被害者・目撃者の証言と食い違うこと、逃亡の恐れがあることを棄却の理由としておりました。

(3) 勾留後・勾留中の示談活動

被疑者が10日間の勾留となると、逮捕とあわせて2週間近く身柄拘束され、かなりの期間で欠勤となります。
また、本件は傷害の程度が重かったので、起訴・正式裁判の可能性もありました。

起訴されれば、保釈が認められない限りは継続して起訴後勾留されます。さらに、有罪となれば執行猶予がついても前科がつくことになりますので、それは何とか避ける必要がありました。

そこで、弁護士は被害者の連絡先を検察官から教えてもらい、その後、直ちに弁護士から被害者に連絡を入れ、勾留期間内での示談成立を目指しました。

傷害の程度は重傷でしたが、傷害事件から数か月経過し傷害も治癒しており、被害者の被害感情も多少和らいでいたように思えました。
被害者の代わりに謝罪するとともに謝罪の手紙を渡して、被疑者の事情もある程度汲んでいいただき、何とか示談をまとめさせていただきました。

(4) 不起訴を獲得(解雇されず)

翌日、示談書を検察官に提出したところ、その日に勾留取消となり、釈放されて元通り出勤することができるようになりました。
会社は解雇とならずに、刑事処分は後日不起訴となりました。

この重傷の傷害事件では、示談できなければ起訴され正式裁判になる可能性があり、そうでなくても罰金刑になる可能性は高かったと思われます。

3.重傷の傷害事件の刑事弁護

(1) 被害者との示談交渉が最優先

傷害事件を起こしてしまった場合、特に重傷事件で勾留となったケースでは、示談取り付けによる釈放活動・不起訴活動が必要となります。
先述の通り、重傷の傷害事件においては意見書等だけで釈放を目指すことが難しい事例も多いので、一日でも早く被害者との示談を成立させることを優先します。

さらに、示談の結果は釈放のみならず、最終的な処分結果に大きな影響を及ぼし、不起訴あるいは減刑の可能性も高くなります。

しかし、当事者同士やその家族が被害者と示談交渉を行おうとしても、そもそも被害者側の連絡先の開示すら受けられません。仮に被害者が知り合いである場合などに話ができても平行線をたどり全く話が進まないことがほとんどですし、場合によっては直接連絡をすることで被害者に更なる恐怖心を与えてしまうリスクもあります。

そこで、弁護士が間に入ることで、この示談交渉がまとまる可能性は大きく高まります。
示談したい

(2) 示談金額も怪我の程度により変動する

傷害罪の示談金は、まずは実際にかかった治療費等の実損害が算出されます。そして、これに各種慰謝料が加わります。

実損害については容易に金額を決定できますが、問題は精神的損害を補てんする慰謝料の金額です。
精神的損害については目に見えるものではありませんので、実費として計算することはできません。

そこで、怪我の程度(入通院期間や後遺症の程度)はもちろん、犯行に至る経緯・動機・目的、犯行の方法、犯罪の結果の重大性、被害結果が将来に及ぼす影響、被害者の過失の度合い、被害感情の強さ等々、様々な事情を考慮して慰謝料額を決定することになります。

比較的軽度(全治1ヶ月以内)といえる怪我の場合の「示談金の相場感覚」としては、10万円~100万円程度となる場合が多いようです。
一方、全治1ヶ月以上の重傷となれば、50万円~180万円以上の示談金が必要になると考えるべきです。

なお、傷害事件の場合は、示談交渉をしている時点では将来後遺障害が残るかどうかわからないことが少なくないです。
しかし、後遺障害の有無が分かるまで示談を先延ばししていては、双方にとって心理的負担になりますし、事件の証拠も薄れてしまいます。

そこで、このような場合に示談を成立させるなら、「万一新たな損害が発覚した場合には再度交渉する」という趣旨の条項を記載して合意をします。

傷害罪の示談金・慰謝料の相場|怪我の程度に応じて変わる?

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4.傷害事件は弁護士へ相談を

泉総合法律事務所では、被害者が勾留決定となった場合、早急に示談活動を行い、勾留期限前に示談を成立させて釈放となるように最大限努力しています。

もっとも、示談は高度な交渉ごとであり、特に重傷事件では勾留期限内に必ずしも成立するとは限らないのが事実です。
一日でも早い釈放のため、どうぞお早めに弁護士へご相談ください。

泉総合法律事務所は、釈放活動経験、示談交渉経験が豊富な弁護士が代表を務めており、釈放に向けて諦めずに弁護活動をいたします。

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