痴漢冤罪を証明したい場合の正しい対応方法
実際には痴漢をしていないのに、被害女性や近くにいた目撃者、警察などに痴漢と誤解され逮捕されてしまう事案(誤認逮捕)は稀に発生します。
満員電車内での痴漢冤罪事件というのは、誰にでも起こり得る危険があるのです。
犯罪を証明するには証拠が必要ですが、痴漢事件においてもこれは例外ではありません。「どのような証拠が存在するか」を理解し、矛盾点を突きながら効果的に主張をしていくことで、痴漢冤罪を証明できるかもしれません。
しかし、このように高度な主張・交渉ごとは、痴漢事件の経験が豊富な弁護士に依頼をして行うことがおすすめです。
このコラムでは、痴漢の冤罪で誤認逮捕された場合の正しい対応方法を説明します。
なお、「冤罪」とは、正確には「実際には犯行を行なっていないのに、犯人であると疑われて有罪判決を受けた」場合を指しますが、本コラムでは痴漢の犯人に間違われてしまうことを広く「冤罪」を表現しています。
1.痴漢の証拠とは?
現在では、警察も痴漢事件の取り扱いには慎重になっています。警察庁は各警察署に対し、ひとつひとつの証拠に有罪を支えるだけの証明力と信用性があるかどうかを逐一検討する姿勢を指示しています。
この観点から、警察も痴漢事件においては、次のような視点から事件を観察し、冤罪を防止しようとしています。
- 当事者の供述以外の客観的な証拠があるかどうか(DNA鑑定・防犯カメラなど)
- 被害女性や目撃者の証言にあいまいなところはないか
- 満員電車内の状況から別の者が痴漢をした可能性はないか
- 被疑者と被害者の身長差や、被疑者の当時における腕の位置などから、痴漢行為が物理的に不可能ではなかったか
- 被疑者の否認する態度や状況説明の供述は、痴漢と疑われた当初から一貫しており、ぶれていないか
したがって、痴漢だと誤解されても、冤罪であると最初から最後まではっきりと否定するべきです。「勘違いをするような位置に立っていたかもしれない」「少しだけ触れていたかもしれない」などと思い、途中から主張を変えてはいけません。
とは言え、ほとんどの被害者は意図的に嘘をついて被疑者を陥れようとしているのではなく、満員電車という現場の状況から、偶然接触したのを痴漢と勘違いしていたり、触っている手を掴み間違えたりしているだけだと思われます。
つまり、被害者は、真実被害に遭っており被疑者に痴漢をされたのだと信じてしまっているのです。
このように虚偽を述べる動機がない被害者の供述の中に、信用性の疑問点を発見し指摘するのは、なかなかに難しい作業です。
また、痴漢の目撃者がいた場合、目撃者の証言と被害者の証言が一致してしまえば、被疑者が犯人であることを争うのは至難の業となります。
犯人であることについての客観的な証拠がなくとも、被害者が痴漢に遭ったこと及びその犯人がその被疑者・被告人であることを合理的に説明できるとすれば、有罪になってしまう危険はあると考えておきましょう。

[参考記事]
痴漢の証拠とは?繊維鑑定・DNA鑑定で逮捕されるか

[参考記事]
性犯罪のDNA鑑定(検査)で犯人は特定できる?
2.痴漢冤罪で逮捕されたらどうなる?
警察がこちら側の主張を受け入れてくれない場合には、「被疑者」として逮捕され取り調べされるケースがあります。
「逮捕」による身体拘束は48時間ですが、被疑者が痴漢を否認している場合には、証拠隠滅や逃亡の恐れがあると判断して検察庁に身柄送検をするケースがほとんどです。
検察庁に送検されると、検察官が被疑者を取り調べます。被疑者の「痴漢をしていない」「冤罪だ」との言い分も聞いてくれますが、これに納得してくれることは通常なく、10日間の勾留を裁判官に請求することになります。
さらに、裁判官は被疑者が容疑を否認していると、検察官と同様に証拠隠滅や逃亡の恐れがあり勾留の要件を満たすと判断して勾留決定することがほとんどです。
このように、痴漢と誤解され逮捕・勾留されると、最大で23日間身柄拘束される可能性が高いです。
こうなると、会社を無断欠勤で解雇されるなど深刻な状況になってしまうのです。

[参考記事]
痴漢で逮捕されるケース|逮捕された後の流れはどうなるか
【冤罪と誤認逮捕の違い】
誤認逮捕とは、真犯人でない者を逮捕することを指します。
これは冤罪と似ていますが、意味は少し異なります。冤罪は「濡れ衣を着せられ、有罪判決まで受けた」という状況を意味します。一方、誤認逮捕は「有罪か無罪か判断するよりはるか前の逮捕段階で犯人を見誤った」場合に起こることです。つまり、「誤認逮捕の結果として冤罪が生まれる可能性がある」ということになります。
3.痴漢冤罪への対処法
(1) 弁護士に相談する
痴漢を疑われ、周囲の状況を見てもらっても疑いが晴れない場合には、弁護士に相談しましょう。
いくら自分が真犯人でないといっても、被害者本人や捜査機関はあなたが犯人と思っているわけですから、しっかりとした証拠が見つかるまではなかなか疑いは晴れません。
その場合、法律の専門家である弁護士を呼べば、捜査機関を説得することはもちろん、犯人ではないことを裏付ける証拠等を収集してくれます。
他にも、取り調べにおいてどのように供述するべきか、何を黙秘すればいいかなどのアドバイスを受けることができるので、被疑者の方の心強い味方となります。
誤認逮捕の後に起訴されることがあれば、前科がつく可能性が極めて高くリスクが大きくなります。早期に弁護士へ相談して、そもそも起訴を避ける弁護活動をしてもらいましょう。
(2) 損害賠償を請求する
誤認逮捕された場合や冤罪の判決を受けてしまった場合に、被害者や警察に損害賠償請求をしたいと考える方もいると思います。しかし、満足な賠償を受けることは難しいケースが多いです。
誤認逮捕された場合は、被疑者補償規定により、身体拘束された期間1日につき1,000円以上1万2,500円以下の補償を受けることが出来ます。
しかし、これは検察官の裁量によるところが多く、保証を受けられるのは「その者が罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由があるとき」に限られます。実際には十分な補償金が支払われない、あるいは1円も支払われないことも多く、救済手段とはなっていないのが実情です。
一方、起訴後に無罪判決が出された場合には、刑事補償法により補償を請求できます。補償金額は前述と同じです。
また、有罪判決を受けた(冤罪となった)後の拘禁期間も補償の対象となります。
これとは別に、国家賠償法に基づいて損害賠償を警察(国)に請求すること自体は可能です。
しかし、誤認逮捕=違法とはならず、請求には「故意または過失によって違法に他人に損害を加えたとき」という要件がありますので、請求は困難な場合が多いです。
したがって、損害賠償請求を考えるのではなく、冤罪は早いうちに疑いを晴らして釈放を得ることが何より大事です。弁護士に相談しながらどのような手段をとるか判断しましょう。
4.痴漢冤罪の相談は泉総合法律事務所へ
冤罪は、その人の人生を大きく狂わせます。最初から全力で戦わないと、痴漢犯人の汚名を着せられて、残りの人生を棒に振ることになりかねません。
そのような事態を避けるには、痴漢の否認事件・冤罪事件について経験のある弁護士に依頼するべきです。
泉総合法律事務所は、痴漢事件の弁護経験が多数ございます。
痴漢で誤認逮捕されてしまい冤罪のリスクが生じても、当所の弁護士が被疑者の方を全面的にバックアップし、勾留阻止・身柄解放を目指します。ぜひ一度ご相談ください。
特に誤認で逮捕された場合には、犯行を否認していると多くの場合で身体拘束をされてしまいます。
逮捕・勾留から一日でも早く解放されるためには、どうぞお早めに弁護士までご相談ください。
5.痴漢冤罪に関する実際の質問
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Q.痴漢冤罪で特定されるかどうか不安です。警察に行くべきですか?
20代の男性です。先日、相当混雑している電車に乗り込み、スマホを取り出すためにポケットに手を入れようと考え手を下に降ろしました。しかし、その後も乗客は増え続け、手を上に上げることができなくなりました。
電車が動き出し、揺れと相まって斜め前の女性の臀部にかなり強く複数回当たってしまいました。何も言われなかったので特に気にしないでいたのですが、その後、身体を必死に動かして私から離れようとしていました。
私は何もした覚えがないので手の位置も変えず立っていたところ、私の手の位置を確認した後、顔を凝視してきました。その人は私と同じ駅で下車し、改札のところまで追跡されているような形でした。冤罪として逮捕されるのではないかと不安です。逮捕を避けるために、相談という形で警察に行った方が良いのかと迷っています。
前科・前歴はありません。また、Suicaを忘れたため切符を購入して乗車しました。
今回のような場合、通常逮捕や任意同行は一般的によくありますでしょうか?
また、仮に私のDNAだけが偶然検出された場合には、もう冤罪の晴らしようはないのでしょうか?A.本件で質問者様が特定される可能性は低いです。
通常、1回当たった後に手を上げるなどの対応をすることと思いますので、質問者様の手が複数回女性の臀部に当たったということは、痴漢の疑いをかけられていると思います。
しかしながら、今回は切符で出退場をしていることから、質問者様の特定は難しいように思います。特定されたとしても、かなり車内が混雑していたとのことですから、偶然に女性の身体に当たった可能性があると警察は判断し、まずは参考人としての事情聴取か任意同行を求めると思います。
質問者様のDNAが女性の臀部などから検出されても、車内は混雑しており、偶然に当たった可能性も十分に考えられます。質問者様が事実を述べれば十分対応できると思います。
以上より、特定される可能性は極めて低いと考えられますので、質問者様が警察に相談しに行くことはかえって誤解を招くと思います。
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Q.性行為の冤罪で、男性側は問答無用で有罪になりますか?
30代の教員です。17歳の元教え子が「家に来たい」と言うため、家で勉強会を行いました。そして 後日、その元教え子の友人から「彼女が性的暴行を振るわれたと言っている」と言われました。
一切そういうことはしていないし、勉強会の後日にも何度か元教え子含めた何名かで食事会を行っています。また、LINEでは誕生日祝いなどのメッセージを送っていますが、一切行為をしたようなLINEは送っていません。
被害者の証言のみで有罪になる場合はあるでしょうか?
A.詳細のやり取りを事前に取りまとめておくことがおすすめです。
かなり前になりますが、最高裁判決の補足意見で「被害女性の供述が具体的で迫真性に富んでいる場合にはそれだけで有罪とする証拠となる」との判断が示されています。
※この判断は、「補足意見とは言え侮れないものがある」と理解できます。もっとも、今回の質問者様の場合は、「その後」問題行為がなかったことを示すようなやり取りがありますので、その点を捜査機関に主張していくことが重要です。
念のため、当日のことやそれ以前のやり取り、その後のやり取りを詳細に取りまとめて捜査機関の取り調べに備えておくことをお勧めします。

