痴漢は何罪になる?刑罰と逮捕後の流れを解説

痴漢行為は「不同意わいせつ罪」や「迷惑防止条例違反」として罰せられる犯罪です。
検挙された後は適切に対処しなければ、起訴されて罰金や懲役刑になる可能性があります。
本記事では、痴漢行為が該当する罪について、具体的な刑罰の内容、そして逮捕から裁判(処分決定)に至るまでの一連の流れを解説します。
1.痴漢は何罪?|罪名・刑罰
電車内やバス内など、公共の場での痴漢行為は被害者に深い心の傷を負わせるだけでなく、加害者本人の人生も大きく狂わせる事件と言えます。
そのような痴漢は何罪に該当するのかというと、以下の2つです。
(1) 迷惑防止条例違反
各都道府県が独自に制定している、いわゆる「迷惑防止条例」は、条例の名称・痴漢に該当する行為の内容やその罰則にも、都道府県ごとに違いがあります。
痴漢に該当する行為内容について、例えば東京都迷惑防止条例では、以下のように規定しています。
第五条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、次に掲げるものをしてはならない。
一 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。
三 前二号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。
「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為」とは、被害者が実際にそう感じたか否かではなく、一般人がそのように感じる行為といえるか否かが問題となります。
また、身体に触れる動機は、必ずしもわいせつ目的である必要はないとされています。
困らせたいとかスリルを味わいたいといったものでも、一般的にみて人を著しく羞恥させたり不安を覚えさせたりする行為であれば、処罰の対象となります。
「卑わいな言動」とは、最高裁判決(平成20年11月10日)で、社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言語または動作をいうと解釈が示されています。
たとえば、耳に息を吹きかける行為などは卑わいな言動にあたります。
痴漢行為に関する東京都迷惑防止条例違反の刑罰については、以下の通りです。
通常の場合「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」(8条1項2号)
常習の場合「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」(8条8項)
(2) 不同意わいせつ罪
不同意わいせつ罪は、迷惑防止条例違反よりも悪質な痴漢行為を行った際に適用される可能性があるもので、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。」と刑法176条に規定されています。
ほとんどの痴漢は、比較的刑罰の軽い迷惑防止条例違反に問われるにとどまるケースが多いのですが、下着の中に手を入れる行為等、犯行態様が悪質な場合には、身体を触る行為それ自体が暴行と評価され、同意しない意思を形成すると理解されており、不同意わいせつ罪の構成要件に当てはまります。
また、不同意わいせつ罪における「わいせつな行為」とは、「被害者の性的感情を害し、被害者に恥ずかしいと思わせるような行為」です。

[参考記事]
痴漢で不同意わいせつ罪に問われた場合はどうすればいい?
2.どのような行為が痴漢になるのか?
上記を踏まえて、過去に検挙例がある痴漢行為を中心に、具体的な痴漢の定義を考えていきます。
(1) 身体に触れる・下半身を押し付ける(押し付け痴漢)
身体に触れる痴漢行為には、次のような事例があります。
- 手で着衣の上から胸部や陰部を触る(すれ違いざまに触る行為を含む)
- 足を他人の臀部や陰部に押し付けたり、自身の股間を他人に押し付けたりする(押し付け痴漢)
満員電車では、バランスを崩したはずみで手などが人の身体に触れることもありますが、それだけで犯罪になることは考えられません。
しかし、そうして人の身体に触れたことを奇貨として身体を触り続けた場合、痴漢として罪に問われる可能性があります。
なお、自身の身体ではなくかばんや傘で他人の身体に触った場合でも、当たった場所によっては卑わいな言動に該当する可能性も十分に考えられます。
(2) 匂いを嗅ぐ
電車などの空間で他人の匂いが流れてくるのは自然なことで、それを嗅ぐ行為がそれだけで犯罪になるとは考えられません。
しかし、至近距離でそれと分かる動作を伴って匂いをかぐ行為は、卑わいな言動に該当する可能性があります。
また、匂いをかごうとして、不安や迷惑を覚えさせるような方法で他人につきまとった時点で軽犯罪法違反(軽犯罪法1条28号)となる可能性もあります。
(3) 卑わいな言葉をつぶやく・首筋や耳に息を吹きかける
公共の場所や乗り物で卑わいな言葉を口にする行為は、(その内容にもよりますが)卑わいな言動にあたるとされる可能性があります。
また、故意に他人の首筋や耳に息を吹きかける行為は、一般的に性的興奮を連想させるものといえることから、卑わいな言動にあたる可能性も考えられます。
(4) 卑わいな画像などを他人に見せる(エアドロップ痴漢)
一時期、iPhoneユーザー同士で画像や動画を共有できる機能を悪用して、わいせつな画像を他人のスマートフォンに表示させる新手の痴漢(エアドロップ(AirDrop)痴漢)が頻発したことがあり、逮捕事例もあります。
電車内などで自身の近くにいるiPhoneユーザーを検知して、任意のユーザーを選んで画像を閲覧させ、反応を楽しむという手口です。
また、アナログな手法ですが、通行人に声を掛けて卑わいな文章を読むよう依頼するという事例も発生しています。
これらは、いずれも意図せずにわいせつな画像や文章を目にさせるという点で、卑わいな言動に該当するといえます。
なお、エアドロップ痴漢に関しては、わいせつな画像を不特定または多数にわたって送った場合に成立する「わいせつ電磁的記録頒布罪」(刑法175条1項)に該当する可能性もあります。
(5) 他人の衣服に体液をかける・衣服を切り裂く
電車内などで、他人の衣服に精液をかける行為も痴漢として認識されている行為ですが、刑法犯としてより重い器物損壊罪(刑法261条)により処罰されます。
見知らぬ人物の精液が付着した衣服は心理的に着用することができなくなることから、衣服としての効用を失わせたものとして、損壊した場合と同等の刑事責任が問われるのです。
カミソリなどで衣服を切り裂く行為も器物損壊罪です。
器物損壊罪の罰則は3年以下の懲役、30万円以下の罰金または科料となり、迷惑防止条例違反よりも重い刑が規定されています。
【「じっと見つめる」行為は痴漢として処罰される可能性は低い】
ここまで、犯罪となる可能性が高い痴漢行為について解説してきました。
一方で、「じっと見つめる行為」はどうでしょうか。これは「失礼な行為」とはいえるかもしれませんが、処罰に値するような性的道義観念に反する行為と評価するのはやや困難といえます。
しかし、特定の人物に対して反復してこのような行為を行った場合は、ストーカー規制法や迷惑防止条例のつきまとい禁止条項に触れることは考えられます。
3.痴漢で逮捕された後の流れ
(1) 逮捕〜勾留まで
痴漢行為が悪質であるなどの理由で、検挙後にそのまま逮捕された場合、まずは警察官から取り調べを受けることになり、その後48時間以内に身柄を検察官のもとに送られます。
検察官は、身柄を受け取ってから24時間以内かつ逮捕から72時間以内に、裁判官に勾留請求するか、それとも釈放するかを判断します。
検察官から勾留の請求を受けた裁判官は、被疑者に質問したり、被疑者の弁解を聴取したりします。
裁判官は、住居不定、罪証隠滅のおそれ又は逃亡のおそれがあるなどの理由で、捜査を進める上で身柄の拘束が必要と判断した時には、被疑者の勾留を認めます。
痴漢犯罪の場合、犯行を否認しておらず、被疑者と事件後に接触するおそれがなく、住所や家族、勤務先がはっきりしているならば、罪証隠滅や逃亡のおそれはないとされ、そもそも検察官が勾留請求をしない場合・裁判官が勾留請求を却下する場合もあります。
(しかし、不同意わいせつ罪の痴漢は極めて悪質であるとされて勾留決定をされるケースも多いです。)
勾留期間は原則10日間ですが、10日間の勾留期間内で必要な捜査が終わらない場合には、検察官はさらに最長10日間の勾留延長請求を行います。
検察官は、この最大20日間の勾留期間以内に、被疑者を起訴するか、あるいは釈放するか(不起訴・処分保留)の判断を行います。
(2) 最終的な刑罰の決定
痴漢で逮捕された被疑者の処分としては、不起訴(起訴猶予)もしくは起訴のどちらかになります。
起訴された場合の刑罰としては、罰金刑もしくは懲役刑が考えられます(不同意わいせつ罪の場合は懲役刑のみ)。
初犯であれば、起訴されても罰金で終わるケースが多いと思われますが、性犯罪の前科がある場合や、犯行態様が非常に悪質な場合には、懲役刑(執行猶予付き)という結果も大いにあり得ます。
なお、罰金でも刑罰には変わりないため、前科はついてしまいます。
4.刑罰を避けるためには弁護士へ
痴漢は「迷惑防止条例違反」あるいは「不同意わいせつ罪」に問われ、多種多様な類型があります。自分では「痴漢ではない」「このくらいなら大丈夫」と思った行為であっても、その場で現行犯逮捕されたり後日逮捕されたりして、起訴・刑事罰となる可能性があります。
痴漢をしてしまった場合には、早急に弁護士に相談されることをおすすめします。
不起訴処分や執行猶予付き判決を獲得するためには、刑事弁護の経験豊富な弁護士に刑事弁護をご依頼ください。
痴漢事件について豊富な弁護経験を持つ弁護士は、痴漢として検挙される可能性や処罰の見通しをつけて、的確にアドバイスをすることができます。
また、被害者との示談交渉をすぐに行い早期に示談が成立すれば、起訴処分を回避したり、重い刑罰を防いだりすることができるかもしれません。
弁護士が早期に活動を開始することにより、刑事処分を回避できる可能性がぐっと高まるのです。
泉総合法律事務所の弁護士泉義孝は、刑事事件、中でも痴漢の弁護経験につきましては大変豊富であり、勾留阻止・釈放・不起訴の実績も豊富にあります。
痴漢をしてしまった方、痴漢犯罪で家族が逮捕されてしまったという方は、お早めに泉総合法律事務所の無料相談をご利用ください