勾留とは?勾留要件・期間・流れ・対応策を解説

警察から家族に「(ご主人・奥さんを)逮捕しました」と連絡が入ったり、早朝自宅に私服警察官が訪れ家族を警察署に連行して逮捕となったりすると、その後どうなるのかを心配して、多数のご家族が泉総合法律事務所にご相談に来られます。
このような場合、一刻も早い決断と行動が求められます。
早期に釈放してもらうため、勾留阻止、勾留回避、および釈放活動といった刑事弁護が重要です。
本記事では、逮捕後に続く「勾留」について、回避方法や取消方法などを解説していきます。
1.勾留とは?
刑事事件で逮捕された場合、引き続き勾留(逮捕に続く身柄拘束)されてしまうことがあります。
被疑者の勾留は、長期に渡り人の身体及び行動の自由を侵害する処分であるため、刑事訴訟法は勾留の要件を厳格に定め、裁判官に慎重な判断を要求しています。
(1) 勾留の要件
勾留の要件は、以下の通りです。
- 罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある
- 定まった住居を有しない
- 罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある
- 逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある
さらに、被疑者を勾留することにより得られる利益と、これにより被る被疑者の不利益を比較衡量した結果、被疑者を勾留することが有効であることも要件です(勾留の必要性)。
上記の要件に当てはまらない場合には勾留なしで釈放となり、在宅事件として普段通りの生活をしながら検察の呼び出しに応じ、捜査に協力していくことになります。
なお、勾留の理由については、勾留状謄本の交付請求により知ることができます(刑事訴訟法207条1項,刑事訴訟規則302条1項,74条)。
(2) 勾留の期間
警察官からの送致を受けた検察官が被疑者を取り調べて、「引き続き身柄拘束して取調べをする必要がある」と判断した場合、「勾留請求」を裁判官に対して行います。
そのまま裁判官が勾留決定をすれば、まずは10日間勾留されます。
さらに、勾留の期限を超えてなおやむを得ない事由があると認められて勾留延長されれば、追加で最長10日(合計で最大20日間)勾留され、日常生活から完全に隔離されてしまいます。
「やむを得ない事由」とは、例えば、共犯者が複数いたり、被疑事実や押収した証拠物が多数あったり、被疑者と参考人の供述に食い違いがあったりする場合が考えられます(※最高裁昭和37年7月3日判決)。
逮捕直後から勾留請求までの数日間の留置でも、会社を解雇されることがありえます。まして10日間の勾留となると解雇はほぼ確実と言えます。
2.勾留を阻止・回避する方法
では、勾留を避けるためにはどのような主張をするべきなのでしょうか。
(1) 検察官の勾留請求を阻止する
まずは、「勾留請求」を阻止します。
勾留請求とは、検察官が被疑者の身柄を引き続き刑事施設に拘束することを裁判官に対して求める手続きです。
弁護人を逮捕段階で選任した場合、弁護人となった弁護士は、検察官に対して勾留請求をしないよう、折衝します。
具体的には、
- 家族や弁護人の身元引受書、上申書(家族が責任をもって示談を取り付けることなど)を検察官に提出する
- 具体的事情を加味しながら、勾留の必要がないことを説明する
といった弁護活動を行います。
(2) 裁判官の勾留決定を阻止する
弁護人の折衝にもかかわらず勾留請求が認められると、原則として、被疑者・被告人は勾留期間が経過するまで刑事施設に留まることになり、仕事や学校に悪影響が出る可能性があります。
そこで、勾留請求されてしまった場合、弁護士は裁判官に対して勾留請求を却下させるための弁護活動を行います。
例えば、弁護人となった弁護士が、担当裁判官に面会を申し入れて、家族や弁護人の身元引受書、上申書(家族が責任をもって示談を取り付けることなど)を裁判官に提出します。その後、裁判官と面会して勾留の必要がないことの具体的事情を説明して、勾留請求を棄却するよう求めていきます。
時間の都合が付く限りは、裁判官も弁護士の面接要求を無視したりはしないのが一般的です。
具体的には、以下のことを主張すれば、勾留決定を阻止できることがあります。
- 被疑者の勤務先など身元がしっかりしている
- 重大犯罪ではない
- 出頭確保が認められる
- 証拠隠滅のおそれがない
3.勾留をされてしまったらどうするべきか
(1) 勾留の理由を把握する
先述の通り、逮捕後勾留されてしまい納得がいかないという場合、被疑者や弁護士は理由を知るために勾留状の謄本の交付を請求できます(刑事訴訟規則154条)。
弁護士は、勾留状の謄本の記載内容を踏まえて、後述する準抗告等を行うかどうかを検討します。
あるいは、「勾留理由開示請求」という手続きも可能です。
これは、勾留されている被疑者(被告人)や弁護人などからの請求に基づいて、裁判官がいかなる理由で勾留したかを公判において明らかにする手続です。
勾留理由開示請求は、あくまで勾留の理由を教えてもらうだけで、証拠資料の標目や具体的な内容までは告げてもらえません。
しかし、被疑者の解放に向けての弁護活動のヒントになり得るほか、裁判官に対して勾留の要件について再考する機会を与え、勾留延長につき慎重さを持つことを促し期得るため、メリットが大きな手続きになります。
勾留の理由を把握した上で勾留を取り消すことが期待できる場合は「準抗告」や「勾留取消の申立て」を別途行う必要があります。
(2) 準抗告の申立て
勾留延長の理由を確認して、その記載内容が不合理であったり、事実と反していたりする場合には、弁護士が被疑者の意向を踏まえて準抗告をすることになります。
「準抗告」とは、勾留決定をした裁判所に対し勾留決定についての不服を申し立てることです。
準抗告では、決定を覆すに足りる「相応の理由」が必要となりますので、ハードルが高くなります。
したがって、準抗告を行ったことがある経験豊富な弁護士に依頼すべきです。
具体的には、そもそも被疑事実(疑われている犯罪)が重いものではないこと、被疑者には仕事や家族があり逃亡するおそれがないこと、証拠を隠滅する蓋然性がないこと、前科前歴がないこと、余罪がないことなどから、勾留の必要性がないことを主張します。

[参考記事]
準抗告とは?早期釈放を目指すなら泉総合法律事務所へ!
なお、泉総合法律事務所では、4週連続で4件の準抗告が容認された実績もあります。
(3) 勾留取消の申立て
勾留の取消請求は「勾留決定は不当ではなかったが、その後に勾留の必要性がなくなったため、勾留決定の取り消しを求める」というものです。
たとえば、被害者との示談が成立し示談書を検察官に提出しても釈放されない場合などには、この勾留取消請求をすることが多いです。
あるいは、病気で入院する必要性が生じた場合や、親族や配偶者が危篤状態となったり亡くなったりした場合などにおいて、被疑者を一時的に解放してもらう「勾留執行停止」の手続もあります。
(4) 被害者との示談を取り付けて不起訴を目指す
勾留や勾留延長が行われる中でも、弁護士は不起訴に向けた活動を継続します。
検察官が量刑を考えるときの考慮要素として、刑事訴訟法248条では、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重、情状、犯罪後の情状が挙げられています。
この中で逮捕・勾留された後に対応できるのは、「犯罪後の情状」をよくすることになります
特に、被害者との示談が成立すれば、ほとんどのケースで被疑者は勾留満期前に釈放されると言って良いです。
→ご相談内容「示談したい」
3.まとめ
刑事事件で逮捕後は、更に勾留・勾留延長され、身体拘束が続くことがあります。
勾留請求の却下を求める、あるいは勾留がなされてもその取り消しを求めるには、法律のプロである弁護士にご相談ください。
泉総合法律事務所は、難しいと言われる準抗告が4週連続で認められ、被疑者の釈放に成功した事例があります。
→「釈放・保釈してほしい」