万引など窃盗 [更新日]2025年10月20日

社内・職場での盗難|バレたら逮捕される?

社内・職場での盗難|バレたら逮捕される?

自分が所属する会社内にあるものでも、会社の金銭・機材・備品等や、他の社員の私物を盗むことは当然ながら犯罪です。

会社で物を盗んだ場合、刑事事件として逮捕・起訴される可能性があるだけでなく、会社から処分(減給、懲戒解雇など)を受ける可能性があります。
刑事罰と会社の処分は別個のものなので、混同してはいけません。

本コラムでは、社内の盗難について行われる処分と、これに対する正しい対応について説明します。

1.社内の物を盗んだ場合に成立しうる犯罪

社内の物を勝手に持ち出して自分のものにしてしまったり、処分してしまったりすることは犯罪です。この場合に成立しうる犯罪は、窃盗罪横領罪です。

  • 窃盗罪(刑法235条)他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。
  • 横領罪(刑法252条1項)自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の拘禁刑に処する。

窃盗罪と横領罪の違いは、犯行時にその物の占有が誰にあったかです。
占有とは、その物を事実上支配している状態です。被害品が他人の占有に属していた場合には窃盗罪が、自分の占有に属していた場合には横領罪が成立します。

会社の物を自分が占有しているか否かは、具体的な事情により判断します。

例えば、社屋内に設置された金庫に入っている現金を盗んだ場合や、会社の備品であるパソコン等を奪った場合、店舗の従業員が商品を盗んだ場合は、その現金やパソコン、商品は、会社経営者やその物品の管理責任者が占有していると評価されるので、窃盗罪が成立します。

他方、会社から持ち帰って自宅に保管している商品や、社屋外で自由に扱うことが許されている会社の器具等を処分(転売)してしまうなどした場合には横領罪が成立します。

なお、会社の金銭を管理する経理部門の従業員のように、その社会生活上の地位に基づき反復継続して被害品を占有する者が横領行為をしたときは、業務上横領罪として刑が重くなります。

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2.捜査機関による逮捕と会社からの処分

犯罪が発覚して警察の捜査が入り、被疑者が特定されたら逮捕・起訴される可能性があります。
これは、刑法に触れる行為をしたことにより国家から受ける刑事処分です。

職場での窃盗では、これとは別に、働いている会社からも懲戒処分を受ける可能性があります。
また、職場の他の社員の私物を窃盗したならば、その社員から民事の損害賠償請求を受ける可能性もあります。

(1) 刑事処分

窃盗罪・横領罪などを問わず、刑事犯罪を行った場合、捜査機関により逮捕・勾留の身体拘束がなされる可能性があります。

もっとも、逮捕・勾留は闇雲にできるというものではなく、それを行う理由と必要性が求められます。
例えば、在宅では被疑者が犯罪の証拠を隠滅する可能性がある、又は処罰を免れるため逃亡するおそれがあるといった場合です。

また、捜査が終了して「起訴」がなされると裁判となります。
日本の刑事司法は有罪率が非常に高いので、有罪判決を避けるためには、起訴を回避する(起訴猶予などの不起訴を獲得する)ことがとても重要です。

なお、たとえ罰金刑であっても有罪判決である以上、前科として記録されてしまいます。

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(2) 会社からの処分

職場での窃盗では、国から受ける刑事処分とは別に、会社から懲戒処分を受ける可能性があります。

会社が行う懲戒処分は、各会社の就業規則に基づいて行われます。懲戒処分には各企業毎に様々な内容がありますが、多く見られるものとして以下のものがあります。

  • 戒告:口頭で注意すること
  • 譴責(けんせき):始末書を提出させて戒めること
  • 減給
  • 出勤停止
  • 降格
  • 諭旨解雇:懲戒解雇が相当な事案でも、罪一等を減じて退職金の一部又は全部を支給する解雇とする場合や、会社と従業員の話し合いのうえで自発的な退職を促す場合(応じないときは懲戒解雇とする)など、様々なパターンがあります
  • 懲戒解雇:会社による一方的な解雇処分で、退職金全部の不支給を伴うことが通常

なお、解雇については、労働契約法による制限があります。

労働契約法16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする

窃盗や横領は重大犯罪ですが、懲戒処分は企業内の秩序維持を目的とするものですから、犯罪行為が会社業務と無関係な私生活上の非行に過ぎない場合は、懲戒解雇をすることは「解雇権濫用」であり認められないことがあります。
しかし、会社の物品を窃盗・横領したとなれば、企業秩序違反(職場規律違反)は明白ですので、諭旨解雇や懲戒解雇が相当な場合も多いと思われます。

なお、会社の物品を窃盗・横領したことで会社に経済的な損害を与えた場合には損害賠償義務を負います。これを支払わない場合、民事訴訟を提起されることがあります。

3.職場の物を盗んでしまったらどうするべき?

上記のような処分が一挙に重なると、被疑者の生活はままならなくなってしまいます。刑事罰や不当な処分を回避するためにも、お早めに弁護士にご相談ください。

弁護士は、弁護活動として以下のことをサポートします。

(1) 被害者との示談交渉

示談とは、示談金を支払う代わりに犯罪事実を許すとする当事者間の合意を言います。

窃盗・横領事件では、被害者との示談が非常に重要です。
会社側との示談が成立することで、検察官が起訴を控える判断をしてくれる可能性が高まります。

そもそも、会社側に窃盗がバレたものの警察に被害届・告訴状を提出していない段階であれば、示談により会社が「横領した金額を返済してくれれば被害届を出さない」と言ってくれることもあります。

その場合は、速やかに会社と示談交渉を行い、犯罪によって生じた被害金額を適切に支払うことで、刑事事件として立件されることはなくなると考えられます。
社内で発生した比較的軽微な窃盗・横領事件では、被害届・告訴状が提出されなければ、警察が動くことはありません。

(2) 会社の処分を争う

前述のとおり、会社の物品を窃盗・横領したときは、企業秩序を乱すものとして懲戒解雇等の重い懲戒処分を受ける可能性が高くなります。
しかし、たとえ窃盗・横領が事実あっても、懲戒処分の内容は、規律違反行為の内容、程度、その他諸事情に照らして相当なものでなくてはなりません(懲戒処分の相当性原則)。

例えば、長年にわたり誠実に勤続し、勤務態度も良好で会社に貢献してきた営業部員が、顧客から預かった売上金のうち数万円をついパチンコで使ってしまったという事案では、(そのような行為を何度も繰り返していた事実があるならともかく)懲戒解雇が相当とは言えません。
また、労働者の身に覚えがないのに窃盗を疑われている場合、指紋や防犯カメラ等の証拠もないのならば、懲戒処分の前提である犯罪事実の有無自体を争う余地があります。

このような場合、労働事件に強い弁護士に依頼し、代理人として会社側との交渉を行ってもらうことができます。

解雇を避けられないような事案でも、交渉次第では懲戒解雇を回避して諭旨解雇・普通解雇としてもらえたり、退職金の一部支給を受けることができたり、賠償金の一部減免を認めてもらえたりという有利な条件を引き出せる場合もあります。

会社側が応じなければ、労働審判や民事訴訟で懲戒処分が無効であることを主張してもらうこともできます。

刑事罰や不当な処分を回避するためにも、お早めに弁護士にご相談ください。

4.まとめ

会社の物を盗むのはもちろん犯罪です。反省して、以後同じことを繰り返さないように誓う必要があります。
しかし、そうだとしても過度の制裁を受けることは妥当ではありません。

不当な制裁を免れるべく、会社の物を盗んでしまった方は弁護士にご相談ください。

5.社内・職場の窃盗に関するよくある質問

  • Q.職場での盗難の疑いを持たれています。

    職場の更衣室で盗難が起き、自分に疑惑が向けられています。
    自分は何もしていませんが、更衣室への出入りが多い事から自分しかいないと責め立てられました。指紋が出たら犯人になる、弁償しろと言われて精神的に参ってます。職場にも居づらくなっており、精神的苦痛で夜も眠れません。

    防犯カメラはありますが、盗んでいないので私の帰る姿だけが写っていると思います。

    ですが、私は中学生の時に一度万引きで指紋を取られた事があるので、警察にも疑われるのではないか?と不安です。職場に中学時代の万引きがバレるのも怖いです。

    また、証拠もないのに一方的に犯人呼ばわりする上司に損害賠償請求はできますでしょうか?

  • A.無実を主張し続けることが大事です。

    実際に盗難をしていないのならば、大事なのは無実を主張し続けることです。

    中学時代の前歴は、警察などの捜査機関は把握していますが、前歴など犯罪に関する個人情報は最高裁判例でもっとも高度なプライバシー情報として開示することは禁止されており、警察など捜査機関が職場などに開示することはありませんので、ご安心ください。

    一方的に犯人呼ばわりして不特定多数人に伝えれば、刑法上の名誉棄損罪が成立します。不特定多数ではなく質問者様だけに言っている場合でも不法行為として慰謝料請求できます。
    しかし、この場合の慰謝料の金額は多いものではないため、弁護士に依頼をするメリットはほとんどないようにも思われます。

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