少年事件 [更新日]2025年8月29日

家庭裁判所からの呼び出し|少年が呼び出される理由とその後の流れ

家庭裁判所からの呼び出し|少年が呼び出される理由とその後の流れ

中学生や高校生が窃盗などの罪を犯した場合、少年法に基づき、成年に対する通常の刑事手続とは異なった手続が行われます。

簡潔に言うと、家庭裁判所が原則として少年の処分を決定するのですが、その手続きにおいて少年が家庭裁判所から呼び出されることがあります。

ここでは、家庭裁判所に少年が呼び出される理由と、その後の流れについて解説します。

1.少年が家庭裁判所に呼び出される理由

罪を犯した少年が家庭裁判所に呼び出されるのは、以下のような理由によるものです。

なお、事件が極めて軽微で、犯罪の原因・少年の性格などからみて家庭裁判所の専門的判断によらなくても保護処分の必要性がないことが明白であるなど、一定の要件を充足する場合、警察官は「簡易送致」という手続きをとります。その場合、基本的に呼び出しは行われず事件は終了します。

(1) 家庭裁判所調査官が調査を行うため

少年が犯罪事件を起こした場合、警察官又は検察官は捜査のうえ、事件を家庭裁判所に送致するのが原則です。
そして、家庭裁判所が少年の処遇(処分)を決定します(※少年事件における少年の処分は、刑罰という扱いではありません)。

家庭裁判所が少年の処分を決定するにあたっては、少年の罪責だけでなく、少年の「家庭及び保護者の関係、境遇、経歴、教育の程度及び状況、不良化の経過、性行、事件の関係、心身の状況」、少年の周囲の「家族及び関係人の経歴、教育の程度、性行及び遺伝関係等」など様々な情報が必要です。
この情報を集める役割を担うのが家庭裁判所調査官です。

家庭裁判所調査官は、これらの情報を聴取するため、必要に応じて少年やその保護者を呼び出すことができます。

※検察官による捜査には、大きく分けて、少年の身柄を拘束しながら行う「身柄事件」と、身柄拘束をせずに捜査を進める「在宅事件」の2種類があり、在宅事件の場合には呼び出しが行われます。身柄事件の場合、少年は警察署の留置場あるいは少年鑑別所で生活することになります。

少年事件における家庭裁判所調査官の役割

[参考記事]

少年事件における家庭裁判所調査官の役割

(2) 少年審判を行うため

事件の送致を受けた家庭裁判所は、調査次第で審判開始の決定をします。
審判とは、事件を犯した少年の処遇を家庭裁判所が決定する手続きをいいます。

少年審判に際しても、少年の呼び出しが行われます。

2.家庭裁判所から呼び出された後の流れ

次に、家庭裁判所から呼び出しを受けた後の流れを説明します。

調査の目的で家庭裁判所に呼び出され、家庭裁判所調査官による調査結果を受けた後、家庭裁判所は少年審判を行うか否かを決定します。
少年審判の開始決定がなされると、少年審判期日が設定されます。

当日の少年審判は非公開で行われます。家庭裁判所の裁判官(審判官)・調査官・付添人は、事件や少年の生活環境・反省の内容等について、少年・保護者に質問をします。また、付添人や少年にも発言の機会が与えられます。

裁判官は、通常、審判手続の最後に少年の処分を決定して告げます。
少年に対する最終的な処分の種類は、大きく分けると、「検察官送致」「保護処分」「都道府県知事又は児童相談所長送致」「不処分」の4種類があり、そのうちの保護処分には、「少年院送致」「保護観察」「児童自立支援施設又は児童養護施設送致」という3種類があります。また、中間的な処分として「試験観察」というものもあります。

これらの処分について、詳しくは以下のコラムをご覧ください。
少年事件解決の流れと弁護士依頼の重要性

なお、審判の服装などは自由ですが、審判も裁判の一種ですので、社会常識としてふさわしい服装で出席しないと、その者の発言の信用性・説得力が損なわれますから気をつけましょう。

3.家庭裁判所から呼び出された場合の正しい対応

(1) 呼び出しには素直に応じる

呼び出しの理由やその後の流れを理解していても、急に家庭裁判所から呼出状が届いた場合、これからどのようなことになるのだろう?と非常に不安になると思われます。

とは言え、呼び出しを正当な理由なくして無視すると、同行状が発せられ家庭裁判所に強制的に連れていかれる可能性があります。したがって、呼び出しには素直に応じるようにしましょう。

(2) 弁護士に少年事件弁護を依頼する

家庭裁判所から呼び出しがあった場合に限らず、少年が事件を犯してしまった場合には、法律のプロである弁護士に相談するべきです。

少年の問題性は様々で、付添人となった弁護士は、その少年の置かれた環境や、更生に協力してくれる周囲の人材に応じて、多様な弁護活動を行います。
具体的には、弁護士に相談し付添人となってもらうと、以下のようなメリットがあるでしょう。

少年事件における付添人の役割

[参考記事]

少年事件における付添人の役割

観護措置の回避

少年が事件を起こすと、事件は全て家庭裁判所に送致されます。
送致を受けた家庭裁判所は少年審判を開始するか否かを決定しますが、それに先立って少年を「観護措置にするか否か」を決定します。

観護措置に付されると、少年鑑別所に送られます。
少年鑑別所では、少年の生い立ちや性格等、処分を決めるための事実一切についての観察がなされます。

少年事件の場合、鑑別所送致を回避することが必ずしも最良とは言えません。しかし、少年鑑別所に送られると、最低2週間、通常は4週間以上の期間に渡り拘束されることになるので、通学や通勤ができず、日常生活に支障が出てきます。
事案によっては回避が適切なこともあるので、そのようなケースでは、付添人となった弁護士は観護措置を回避するための活動を行います。

少年鑑別所に入る基準|生活・期間などわかりやすく解説

[参考記事]

少年鑑別所に入る基準|生活・期間などわかりやすく解説

審判不開始決定を求める

家庭裁判所により審判不開始の決定がされると、事件はそこで終了します。
弁護士は、保護処分が不要と判断される事案では、家庭裁判所に少年に審判を行う必要が欠ける等の主張をしていくことになります。

例えば、「事件が軽微である」「示談が成立し被害者が処分を望んでいない」「深く反省している」「両親が事態を重く受けとめて家庭環境が改善された」「雇用主が引き続きの雇用を約束してくれている」など、保護処分をしなくても、今の時点で十分に更生が可能であることを主張するのです。

審判において少年院送致の回避を求める

少年審判の際、弁護士は少年の付添人として出席することになります。
少年院送致が見込まれる事案では、これを避ける活動が眼目となります。

少年院は成人の刑務所とは異なり、刑罰を受けるための施設ではなく教育機関です。
しかし、少年院に送られると、最短で4ヶ月、長い場合は2年間にわたって収容されることになります。

このような施設に行かずとも、社会内で更生が期待できるなら、少年院送致は回避したいところです。

そのため弁護士は、少年院送致をさけ、保護観察処分(少年を施設収容せず、社会内で保護司や保護観察官の監督・指導を受けながら更生を図る処分)の獲得を目指して活動します。

保護観察処分とは?少年事件の解決事例と共に解説

[参考記事]

保護観察処分とは?少年事件の解決事例と共に解説

通常、少年審判の処分内容は、調査官の意見に左右されます。
付添人となった弁護士は、審判期日前までに次のような活動を行い、その結果をできるだけ早期に調査官に報告します。

  • 被害者への謝罪を行い、示談を成立させる
  • 事実関係に争いがあれば、事件現場にいた少年の友人や目撃者などに話を聞き、報告書を作成し提出したり、審判当日の証人尋問の実施を裁判所に求める
  • 学校と交渉し、身柄解放後の復学や担任教師らの指導監督を誓約してもらう
  • 雇い主と交渉し、身柄解放後の復職や雇い主らによる指導監督を誓約してもらう
  • 少年が無職、無就学の場合は、保護者などと相談し、就職先や通学先を選定・確保する
  • 両親の不和、放任など、家庭環境に問題性があるなら、親の自覚を促して改善を求め、その成果を裁判所に示す

4.まとめ

少年が家庭裁判所に呼び出しをされたならば、素直にこれに応じる必要があります。
その際、まだ弁護人をつけていなければ、少年事件に対応する弁護士にご相談・ご依頼することがおすすめです。

少年事件においては、少年鑑別所や少年院への収容が、逆に少年やその周囲にネガティブな影響を与えてしまい、かえって更生の障害となってしまう事例も珍しくありません。
そのような事態を避けるためにも、ご子息が犯罪を犯してしまった場合には、泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

刑事事件コラム一覧に戻る